黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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燐火の魔女

最初にアレイが矢を放った。

楓姫はそれを手で止めた…

と思いきや、矢は空中で縦に増殖し、数本が首や頭に命中した。

 

それらのほとんどは、刺さって間もなく燃えて消えてしまった。

しかし、ダメージは入っているはずだ。

 

「…弓、ですか。矢を受けたのは久しぶりです」

 

楓姫は、杖をアレイに向けた。

「炎法 [フェニックスレート]」

杖の先端から炎が吹き出した。

「[フリーズウォール]!」

アレイは冷気の壁を張って防いだ。

だが、これはちょっと悪手だ。

 

「冷気…ですか。これは都合がいい」

あっさりと彼女の属性を悟られてしまう。

まあまったく勝ち目がない訳では無いが…

それでも、きつい戦いになるのは間違いない。

 

「早とちりしないで!私が操る氷は、どんな火でも溶かせないわ!」

 

「どうでしょうねえ。冷気が熱に弱いのは自然の摂理かと思いますが…あなたにそれを覆す事が出来ますか?」

 

「…やって見せる!そして、あなたを倒してみせる!」

 

「左様ですか。では、やってみなさい。炎法 [ヒートブレーク]」

 

「氷法 [アイスブロック]!」

熱波の波動を氷の塊で防ぐアレイ。

しかし、分が悪い事は誰の目にも明らかだ。

 

「まずいわ…!」

キャルシィが術を使おうとしたが、無数の鬼火にまとわりつかれて動きを封じられた。

 

「手出しは無用です。私の目的は…」

ここでリヒセロが風の刃を飛ばし、その腕を斬りつける。

楓姫は斬られた所を見、そしてリヒセロを睨みつけた。

リヒセロの周りを小さな炎が回りだし、リヒセロは炎の渦に閉じ込められた。

 

「っっ…!!!」

 

「…私の目的は、あくまでも星羅の妹。あなた方のお相手は、後からいくらでもして差し上げます」

そして、奴はアレイ…ではなく、こちらに手を伸ばしてきた。

「彼女の守り手はもう不要です。

これからは、私達が彼女を守るのですから」

手を避けつつ喋る。

「なに…?」

 

「私達は、彼女に危害を加えるつもりはない。同胞の妹を、傷つける訳にはいきませんからね」

 

「傷つけないなら、どうするつもりだ?」

奴は少し考えて、口を開いた。

「そうですね…彼女をここまで連れてきてくれた謝礼として、少しだけ教えてやりましょう。

要するに、彼女には姉と行動を共にしてもらうのですよ」

 

「そうして、どうするんだ?」

 

「この大陸の北の果て…世界の分け目に行ってもらうのです。そして、分けられた世界を、一つに繋げてもらうのですよ」

分けられた世界、というのが何かはわからない。

だが、俺はアレイを守るのが役目。

奴が何と言おうと、答えは一つだ。

 

「そうか。なら、やっぱりアレイは渡せないな」

 

「そうですか。まあ結構です。始めから素直に渡してくれるとは思っていませんでしたので」

そして、楓姫は右手に炎を浮かべる。

 

「星羅の妹のついでに、あなたの魂も頂いていきましょう。炎法 [カーズフレイム]」

手をかざして飛ばしてきた炎の先端には、怪しげに笑う人の顔のような模様があった。

 

「雷法 [エルクボルト]」

電撃を打ち出し、炎を一旦受け止めてかき消した。

 

「炎法 [ファイアーシンボル]」

奴は、炎をでかい盾の形に整えて浮かべた。

一体何をするつもりだ、と思ったが、すぐにそれは消えた。

一見無駄な行動のように見えるが、今のは恐らく補助系の術だろう。

推測でしかないが、盾の形だった事からすると守りの補助か。

 

ためしに一つ、技を入れてみる。

「[モータルヴォイド]」

 

魂を斬ってダメージを与える技。

再生者にも効果があるはずだが、奴はさしたる反応を見せなかった。

 

(やはり防御を固めたか…)

と、奴は杖に手をかけて言った。

 

「殺人者ならば、わかりますよね?

欲しくとも手に入らないものがあれば、どうするか」

 

「ああ…。どんな手を使ってでも手に入れる。それが例え、誰かを傷つける事であろうとも」

 

「そうですね。という訳で、私もそうして彼女の身柄をもらい受けます。杖技 [スペルデューク]」

また強化の技だ。しかも、今度は攻撃系の。

これは面倒になるかもしれない。なるべくさっさと切り上げよう。

 

「やってみな」

ビームゲートを撃つと、アレイが矢を射って援護してくれた。

 

矢は躱されたが、電撃は当たった。

奴は少し痺れながらも、すぐ体勢を立て直してこちらを見つめてくる。

 

…と思ったら、凄まじい速さで斬りかかってきた。

「[影居抜き]」

 

聞き覚えのある技名に驚いたので、とっさに攻撃を受け止めつつ、改めて奴の武器を見る。

一見普通の杖だが、これは俗に言う「仕込み杖」。

片刃の剣を、自然な柄の鞘と持ち手で偽装した武器。

つまり、杖というよりは刀に近い。

 

「[白刃斬り]」

さっきは杖の技を使っていたが、今は刀の技を使っている。

ということは、一つの武器で二種類の武器種の技を使えるのか。

 

「[斬り裂きクラウン]」

しかも、結構強い技ばかりだ。

やはり、それなりの手慣れであるのだろう。

 

しかし、そんな事は関係ない。

そして、あまり長く流し続けるのも時間の無駄なので、反撃に転じる。

 

「[水月斬り]」

蒼い月をイメージして斬る技。

名前に水と入っているが、水ではなく闇属性。

 

「炎法 [ファイアガード]」

ガードされるのは先刻ご承知だ。

素早く別の技を見舞う。

 

「[斬瓜破(きりうりわり)乱刀]」

高速で刀を振るい、火の壁をかき消しつつ攻撃する。

 

「…熱っ!」

そうだ、こいつは火をまとってるんだった。

 

「馬鹿ですねえ。先程見たはずなのに」

楓姫は嘲笑しつつ、炎を吹き出してきた。

受け流しの構えを取ったが、中途半端なものであったために途中で崩れてしまった。

 

「ぐあっ!」

胸と顎のあたりに炎を喰らう。

それは火傷どころか、余裕で焼き焦がされそうなほど熱いものだった。

 

「龍神さん!…[スターアロー]!」

アレイがカウンターで入れた技は、もちろん炎で焼き払われ…ず、見事楓姫の胸を撃ち抜いた。

 

奴も驚いたような顔をして、胸を押さえた。

「っ…」

 

「き…効いた…の…?」

弱々しい声を聞いて思い出したが、キャルシィとリヒセロが火に縛られているんだった。

あの二人を早いとこ助けてやらないと。

すっかり忘れていたが、この戦いは、キャルシィがいないと話にならないのだ。

 

「ふ…うふふふ…」

楓姫は、薄気味悪い笑いをし始めた。

 

「この力…!やはり、あなたは彼女の血を継ぐ者!

そして、いずれ私達の同胞となる者!」

奴は、変にニヤニヤしながらアレイに杖…もとい刀を向けた。

 

「あなたになら、私の実の力を見せる価値がありそうです!」

 

そして、その刀身に強烈な赤い炎が集まっていく。

 

「この刃の炎撃、受け止めてみなさい!奥義 [大火竜殺刀]!」

 

 

 

 

 

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