黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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敵討ち

アレイは、強烈な一撃をどうにか受け止めた…

今までよりも強力な氷の壁を生成して。

「…ほう。氷の術で私の炎を受け止めるとは。

さすがは…」

楓姫はなぜかそこで口ごもり、それ以上喋らなかった。

 

それより、アレイが心配だ。

氷で火を受け止めるのはかなりの魔力と技量を要する。

彼女の魔力がどれくらいなのか、正確には知らないが、例え上限が大きいとしても、これだけ強烈な炎を受け続ければだいぶ消耗しているだろう。

 

万が一魔力が切れれば、一気に勝ち目が薄くなる。

一応、即時回復の薬も持ってはいるが…それでも、使う隙の事を考えるとアテにはなるまい。

 

ある程度の手慣れであれば、自身の限界を考え、消耗し過ぎないように調節して戦うものだが…アレイにそれが出来るだろうか。

 

「…」

アレイは、若干息を荒くしている。

肉体的・精神的に消耗しているのだろう。

相手を倒すために必死になるのはいいことだが、我を忘れてしまうとろくな事がない。

 

「アレイ…無理はするな」

 

「無理は、してません…」

残念ながら、そうは見えない。

アレイの年齢的な事を踏まえても、少なくとも肉体的には消耗していると考えるのが自然だ。

 

「そうですよ、無理はなさらない方が身のためです」

 

「余計なお世話よ…!」

 

「あら、善意で申しておりますのに。

あなたは私達の希望、私も傷つけたくはないのです」

 

「私は生者よ!アンデッドなんかの希望にされたくない!」

 

「酷い言い草ですね。あなたの姉がそれを聞いたら、なんと思うでしょうか」

 

「っ…!」

 

「あなたの姉は、本来ならばそのまま死んでいた存在。

あなたが姉と話したり、笑い合ったりできていたのも、私達がいればこそなのですよ」

するとアレイはうつむいて、

「…確かに、そうかもね」

と言った。

 

しかし、その直後、

「でも、それで言ったら私だって一度死んでる…!

私の姉を…あんた達なんかと一緒にしないで!!」

と叫んで顔を上げ、弓を引いた。

 

「あらあら、妙な所で強情ですねえ。姉にそっくり」

楓姫も刀を抜いた。

 

「アレイ…!」

声を上げたが、もはや彼女に届くことはなかった。

いや、届いていても、それが彼女の激情を抑える理由にはなり得なかった。

 

「奥義 [スターライトブリザード]!」

 

アレイに呼応するように、楓姫も炎を放つ。

「奥義 [炎炎轟轟]!」

 

燃え盛る火炎と凍える吹雪。

それが激突し、巨大な水の柱が生まれ飛び散ったその時、彼女の真意に気づいた。

 

 

 

「ふむ…この力は…。

やはり、私の見立ては正しかったようですね」

楓姫は刀を収め、魔導書を取り出した。

 

「他の連中はともかく、あなたの魂にはこれ以上ないくらいの価値がある。それを、確認出来ました。

遊ぶのはこの辺にして、そろそろ締めましょうか」

魔導書を開き、呪文を詠唱する。

 

「[ソウル・スティール]」

相手の魂を抜き取る闇魔法。

それを、アレイに向けて放った。

 

アレイの体が薄く発光し、魂を抜き取られ…

 

 

 

 

 

「!!!」

アレイは無傷だった。

いや、正確には、アレイの前に黒い翼が現れて魔法を防いだのだ。

その翼の主はもちろん…

 

「キャルシィさん!」

ピンと翼を広げ、アレイを守った水兵長。

その顔には、複雑なものが浮かんでいた。

「アレイちゃん…よかった」

 

「なっ…いつの間に、どうして…!

はっ…まさか!」

 

「そのまさかよ!さっき、私とあんたの奥義がぶつかった時に飛び散った水で、二人を開放したの!」

 

「そんなはずはない…あの程度の水で、私の火が消えるはずが…!」

 

「わかんないの?私とあんたの術がぶつかれば、相応に強力な副産物が生まれる!」

奴は、それに納得したようだった。

 

「な、なるほど…確かにそうですね…!

もしや、始めからそれが目的で…!」

 

「そうよ。あんた相手には私だと分が悪いし…それに!

あんたには、私より恨みがある人がいるからね!」

 

その直後、奴は強烈な一撃を受けて吹き飛んだ。

攻撃を放ったのはキャルシィだ。

 

「そうよ…アレイちゃんの言う通り!

あんたには、私が誰よりも恨みがあるのよ!」

 

「私もです!お母様の仇を、今こそ討ちます!」

二人は武器を構えて言った。

 

「そうですか、そうですか…」

楓姫は、ゆっくりと立ち上がってきた。

「姉妹揃って、親の仇討ちという訳ですか…。

いやあ、全く持って本当に素晴らしい。

復讐心に燃える魂…最高ですねえ!

いいでしょう、すぐに母親に会わせて差し上げましょう!」

 

楓姫は高ぶり、炎を打ち出す。

「炎法 [ドラゴファル]」

 

「風法 [ストームベラル]!」

炎は、リヒセロの起こした風にあっさりかき消された。

楓姫はそれに少し違和感を感じている様子だったが、しかしそれでも続けた。

「炎法 [ブレイズガーン]」

 

「闇法 [シャドーロール]!」

さっきより強力な炎を巻き起こしてきたが、キャルシィの打ち出した魔弾にまたしてもかき消された。

 

「え…炎法 [ヒートブレーク]!」

 

「風法 [ジェットチェイサー]!」

熱波の波動は、たやすく押し流された。

 

楓姫の術は、ことごとく防がれる。

それに業を煮やしたのか、奴は刀を抜いた。

「っ…仕方ないですね!刀技 [デスブレード]!」

 

「斧技 [ネクロブレイク]!」

キャルシィの技は、刀の攻撃を容易く断ち切って楓姫の体を切り裂いた。

キャルシィはおろか、斧も一切炎の影響を受けていない。

 

「…なぜだ…なぜ私の体に触れて、平気でいられる!」

 

「わかるでしょ?」

キャルシィは、潮の心を手に持った。

 

「そ、それは…!」

 

「あんたが母さんと一緒に、あの船に縛り付けてたものよ。これがある限り、私はあんたなんか怖くない!」

 

「っ…おのれ!」

楓姫は刀を振りかぶり、キャルシィに斬りかかった。

 

「そうはさせない!」

リヒセロが、奴の刀を受け止めた。

そしてそこに、キャルシィが水の術を放つ。

 

「水法 [ブルーボール]」

顔よりも大きい位の水球を楓姫にぶつけた。

すると、熱したフライパンに水をかけたような音が鳴り響き、楓姫はもがき苦しんだ。

 

「ぁ…あぁぁぁ!!」

 

「お姉様…これは…」

 

「ええ…水に弱いってのは本当みたいね!これなら、楽にやれるわ!」

そして、キャルシィはこちらを振り向いた。

「あなた達も、頼むわよ!」

 

「はい!」

 

「よしゃ!」

俺はサウザンドゲイザーを放つ。

アレイはマルチボルト…を放とうとしたが、その瞬間何か閃いたらしく別の技を叫んだ。

 

「弓技 [神速射ち]!」

そして、アレイは凄まじい速度で無数の矢を放った。

まるで、マシンガンのように。

 

その全ては同じ場所に打ち込まれ、そして燃える事はなかった。

 

 

「…」

楓姫は矢を打ち込まれた腹を押さえ、頭を垂れた。

そして…

 

「…」

何か喋ったようだったが、聞き取れなかった。

ただ、キャルシィが瞬時に何かを察して俺達を引き寄せ、水のバリアを張った。

その直後、楓姫を中心とした爆発が起きた。

 

俺達は、キャルシィのおかげで無傷だった。

「やってくれましたね…」

 

楓姫は、鋭い目でこちらを睨んできた。

「この程度で勝った気にならない事です!

私は、あなた達などに負けはしません!」

 

奴は全身から炎を滾らせた。

「あなた達みな、焼き殺してくれましょう!」

 

「その前に、私達があんたを殺してやるわ!

あんたを、絶対に許さない!!」

キャルシィと楓姫は睨み合い、そして…

 

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