黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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ミジーへ

「と、言いますと?」

 

「術極意は基本的に皇魔女専用ですが、例外として、皇魔女に代わり再生者と戦ってくれる者には伝授してもよいことになっています。

しかし、それには皇魔女に匹敵する莫大な魔力の持ち主でなければなりません。

あなた方は、近代稀に見る優秀な魔力の持ち主。きっと、術極意を習得できるでしょう」

 

「そうなのか。じゃ、教えてもらえるのか?」

 

「いえ…残念ながら今は制限がかかっていましてね。かくいう私達も、使えない状態なのです」

 

「じゃ、俺達も使えなくないか?」

 

「いえ、そうではありません」

 

「…?どういうことだ?」

すると、スレフさんが説明してくれた。

 

「本来、術極意は私達皆が一つずつ使えるものだが、今は再生者の封印された祀具から流れる力に邪魔されて使う事が出来ないんだ。

しかし、もし再生者を倒す事が出来たなら、そいつが司る属性を担当する皇魔女は、術極意を使えるようになるだろう」

 

「…てことは!」

 

「ああそうだ。お前達は地と火の再生者を倒した。それはすなわち、地と火の皇魔女が力を取り戻したということだ」

 

「じゃ、そいつらを捕まえれば…!」

 

「そうなるな。でも、いきなり押しかけてもダメだと思うぞ」

 

「そうですか…まあ仕方ないですね」

すると、ロザミさんが思いがけない助け舟を出してくれた。

 

「心配いりません。私が彼女らに紹介状を書きますので」

 

「本当ですか!」

 

「それはありがたい。しかし、なんでそこまでしてくれる?」

 

「あなた方には、我が国と民を救って頂いた恩がありますからね。この程度、容易い事です」

 

「じゃ、前言ってた謝礼ってのは…」

 

「これで、よいでしょう?」

 

「ああ、十分過ぎるほどだ」

 

「では、すぐに書きますので少々お待ちを。

…しかし、まさか楓姫までも倒してしまうとは。只々驚かされるばかりです」

 

「いえ、あれはニームの長達に協力してもらったおかげです」

 

「ニームの長…ですか。ということは、彼女は水の力を取り戻されたのですか?」

 

「はい。私達が解き放ちました」

 

「それはお見事です。…っと、書きました。これをお持ち下さい」

ロザミさんは、2枚の手紙を私達の手に飛ばしてきた。

 

「え、もう書いたのか?」

 

「はい。私、速筆は得意ですので。

それぞれを、ミジーの皇魔女カイナとフルスの皇魔女イクアルに見せれば、事情をわかってくれるかと」

ロザミさんがそう言うと、スレフさんが反応した。

「地の皇魔女と火の皇魔女…あいつらは素直だし、ロザミとも仲良いから、大丈夫そうだな」

 

「ありがとうございます。どっちがここから近いですか?」

 

「マトルアからだと、ミジーが近いですね。

本来はワープで直行できるのですが、今はなぜか使用不可になっているようでして…」

 

まあ、それは仕方ない。

向こうにも事情があるのだろうから。

 

「そうか。なら町中の転送魔女に飛ばして貰えばいいかな」

 

「その必要はないぜ。私がお前らを飛ばしてやるよ」

 

「は、そうか。それはどうも…」

何だろう、さっきから龍神さんの動きがなんか変だ。

そう言えば、白い世界(ブラン)から来た人の中には、一部スレフさんの姿や言動に既視感を感じる人がいるらしいけど…もしかして、彼もそうなのだろうか。

 

彼女は人と違う事を大切にしているらしいし、独自性に走った結果なんだろう。

それで誰かに似る…っていうのは、ただの偶然だと思う。

私は、純粋に彼女は独特で面白い人だと思うのだが。

 

 

 

          ◆

 

 

ヤバい、めちゃくちゃキョドってるのがわかる。

明らかおかしいって、アレイも気づいているだろう。

でもまあ、仕方ないよなぁ…

 

電属性を扱う皇魔女、スレフ・ジニマス。

オリジナリティを大事にする魔女であるが、なぜかその姿と言動に既視感を感じる者が少なくない、とは聞いていたが…

その理由がよーくわかった。

 

いや、まあ他人の空似なんだろうが…こりゃ、細かい違いはあるにせよ、喋り方なんかは完全に某有名STGのあいつだ。

 

一体誰に似てるんだろうな、とは思ってたが…まさかこんな成りだったとは。

しかも、武器が弾幕って…見た目どころか、戦闘スタイルまでプロジェクトオブイーストな方だった。

 

よもや、ノワールに来てあの名作シリーズを思い出す日が来ようとは…

まあ、やったことないが。

 

とは言え、俺はオタクではない。

ただ、見覚えのあるような格好の奴が出てきた事に驚いて困惑しただけだ。

なので、そろそろ落ち着く。

 

「それじゃ、行くぞ?」

 

「え、ここで?」

 

「ああ、私の飛ばし魔法は屋内でも使えるからな」

…バシルーラかよ。

果たして壁をぶち破って飛ばされるのか、それとも器用に入口まで連れてかれるのか…。

 

「では、お願いします」

アレイが一礼した。

 

「よし、じゃあ行くぜ…!」

スレフが杖を取り出し、振る。

 

そして、俺達は空高く飛ばされた―

 

 

 

のではなく、まわりの空間が歪んでゆらゆらと揺れて飛ばされた。

飛ばしというよりはワープ系の魔法のように思えるが、これなら確かに屋内でも使えるだろう。

 

ワープ先、つまりミジーの町は、マトルアの時と同様に一見何も起きていないように見えた。

町中には多くの人間や異人がいて…

 

「え?」

驚いた。なんと、町中に白水兵がいるのだ。

それも、お馴染みのセーラー服姿で。

水兵の偽物、みたいな感じで広く知られている白水兵が、普通に魔法都市の中にいるとは。

いや、厳密には白水兵が外部の町にいること自体はたまにあるが、それは服を着替えた状態での話。まさか種族着のまま来てるとはな。

珍しいが、同時に何かあったのかと気にもなる。

 

「白水兵…ですよね、あれ。何か探してるみたいですが…どうしたんでしょう」

アレイがそう言うので、声をかけてみる。

 

「おい、あんた!」

 

「ん?…あ、友達か。本物の水兵を連れてるなんて珍しいな」

 

「え、ご友人なんですか?」

 

「いや、そうじゃない。白水兵には、同じ殺人者系の異人を友達って呼ぶ文化があるんだ」

 

「そうそう。あ、あと、僕はちゃんとここの皇魔女さんに許可をもらって、種族着で来てるからな」

 

「許可なんているんですか?」

 

「僕らは種族着のまま町に来ると町の人を困らせたり驚かしたりしちゃうから、町に来る時は着替えてから来るんだ。けど、今はちょっと訳があってね。この町の皇魔女さんに事情を説明した上で、種族着で町を歩く事を認めてもらうよう願い出て、許しを得たんだ」

 

「事情、って何ですか?」

 

「僕らの長が姿を消したんだ」

 

「長が?一体何があったんだ?」

 

「この前、うちの湖にマトルアとノグレの軍が来て、僕らと一緒に大量発生してた異形を掃除したんだ。その後、僕らの長…アリク・マリーロは、ちょっと出かけてくるって言って集落を出ていった。

だけどそれっきり、夜になっても帰ってこなかった。

連絡もつかないし、どこにいったのか誰も知らない。

だから、集落を代表して僕が彼女を探してるんだ」

 

「てことは、お前はリスウェの白水兵か。なんでお前が選ばれたんだ?」

 

「選ばれたんじゃなく、立候補したんだよ。

ちょうど暇してたからね、一仕事しようかなと思って」

 

「なるほど。じゃ、今ここの城に皇魔女はいるのか?」

 

「さっきはいたから、いると思う」

 

「わかった。よし、行こう」

 

 

 

城門の兵士は、ロザミからの使いだと説明すると通してくれた。

 

 

 

 




異人詳細解説・白水兵編
東西ジークで古くから確認されていた半水棲異人の一つ。
おもに沼や湖の近くで暮らしているが、海や川の近くで暮らしているものもおり、ジークの沼や湖の近くにある異人の集落は大抵白水兵の集落。
水兵とはまったく異なるグループの異人だが、水兵のように長を中心とした集落を形成し生活している。
部外者に対して攻撃的かつ戦闘能力の高い種族であり、古くから水兵と誤認して接近し殺傷された者が多数いたため「偽水兵」などと呼ばれる。
白「水兵」と名にあるが、水兵は海人系の異人で、鰭(ひれ)や鱗などを欠く陸生の海人であるのに対し、白水兵は水辺で暮らすうちに水中に適応した殺人者の仲間(そのため、水兵と比べると人間に近い)。
その社会も水兵とは異なるもので、長はあくまでも部族の取りまとめ役であり特別な権力はないとされている他、通常の白水兵間でも上下関係は一切なく、皆が友人や家族のように接している。
また水兵と異なり男性が存在する他、他の殺人者系種族と異なり生殖能力を有し、長も通常の白水兵と同様に夫を持ち、子を産み育てる。
同じ殺人者系の種族に対しては友好的。
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