黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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一時帰還

ワープした先はレークの町中。

龍神さんが「前と違うな?」と言ってきたので、詳細を説明した。

 

「ワープ先は、私の意思で決められるんです。今回は、町が変わりないか確かめたいので町中にワープしました」

 

ここからすぐにアルノに向かってもいいんだけど、まずはレークに被害が出ていないか確認したい。

 

道を歩いている何人かの子に話を聞いてみたけど、レークには特に変化はないようだった。

「なんか、みんな変な目で見てくるな…」

マリルが怪訝な顔をしてぼやくので、理由を説明する。

 

「仕方ないわ。レークでは、白水兵はあまりよく思われてないから…」

 

「ニームの水兵とは偉い違いだな。…なんだ、殺人者に何かされた経験があるのか?」

 

「ええ。一部の外部の人が、ちょくちょく私達の体や臓器を目当てにしてこの町にくるの。

その中によく殺人者がいるから、この町では殺人者はネガティブなイメージが強いのよ」

マリルは納得したようだった。

 

「なるほどな…確かに、水兵なんて体も臓器も高く売れるだろうしな」

ここで、龍神さんが口を挟んできた。

「そういう事だな。言うて俺も昔、水兵が人身売買されてるのを見たことがある」

 

「それ、どこで見たんですか?」

思わず聞いてしまった。

 

「ジヌドっていう、殺人者の町だ。

たぶんそのうち行くことになるだろう」

 

「あまり行きたくないです…」

 

 

さて、そろそろお昼になるので、二人を連れてジュームの店へ向かった。

 

「アレイ、ここは?」

 

「ここは私が務めている店です。せっかくなので、ここで食事をしていきましょう」

手頃な席を見つけて座る。

 

店内にはそれなりに人がいた。

今の時間にしては、空いているほうだ。

…それにしては、何やら厨房が慌ただしい気がするけど。

 

「ここで君働いてたのか?」

 

「はい。基本的には調理を担当してますね」

 

「え、じゃ、アレイ料理人だったのか?」

 

「言ってなかった?これでも私、10年以上ここで料理人やってるのよ」

 

「へえ…野暮な事聞くけどさ、業績はどうなんだ?」

 

「まあまあね。あと三ヶ月くらいしたら、料理担当の正式なリーダーになる予定なの」

 

「そうか。じゃ、それまでに旅を終わらせないとな」

 

その時、一人の水兵が歩いてきた。

注文を取りにきたのかな、と思ったけど、その困ったような顔を見て違うと判断した。

 

「…アレイ」

 

「ミュエルさん、どうしたの?」

 

「今、時間ある?」

 

「ええ。どうしたの?何かあったの?」

 

「見て」

彼女は、向こうに悟られないように窓際の席に座るお客を指し示した。

「あそこのお客様なんだけど…」

 

それは、一人の太った男性客だった。

何か料理を食べているが、テーブルにはすでに数枚の皿が積み上げられている。

 

「あの人、ただでさえ忙しい今の時間帯に来て、次から次へと注文してくるもんだから、人手が足りなくなってしまって…悪いんだけど、ヘルプ入ってもらえる?あの人が帰るまででいいからさ」

 

「わかりました。彼らに事情を説明したら行くから、待ってて」

 

「ありがとう」

 

そして、ミュエルさんが奥へ戻っていくと、マリルが言ってきた。

「今の人、知り合いか?」

 

「ええ。私の一つ上の立場の人。

龍神さん、申し訳ないですけど、ちょっと忙しいみたいなので入ってきますね」

 

「わかった」

 

 

そして、一旦店を出て裏から入った。

 

 

厨房に入ると、店の人達に、「あれ、アレイさん?」「戻ってきたの?」と口々に言われた。

 

「あー、話すと長いんだけど…とりあえず、今は一旦戻ってきたの。

ミュエルさんに臨時のヘルプを頼まれたから、入るね」

 

「ミュエルさんに?」

 

「うん、なんか、今…忙しいんでしょ?」

 

「ええ…4番の席の方が、次から次へと注文をされるものだから、もう忙しくて…」

彼女がそう言っている間にも、みんなは料理を作ったり別のお客へ注文を取りに行ったりと大忙しだ。

 

「わかった。じゃ、私は料理に回るね」

 

「ありがとうございます。では、私は他のお客様への配膳と注文に回ってきます!」

 

そして、私は速やかに着替えを済ませ、料理をしている子に声をかけた。

「お疲れ様。大丈夫?」

 

「!アレイさん!?」

 

「説明は後よ。まず、急いで作りましょう!私も手伝うから!」

 

「…!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

…あれから、もう1時間は経った。

例のお客は、未だに居座り続けている。

向こうは食べる速度が異様に早く、長くても10分程で一つの料理を平らげてしまう。

しかも毎回違う料理を注文してくる上、5分以上待たせると喚き散らすので、その度に誰かが行って説得しなければならない。

 

「アレイさん…大丈夫ですか…?」

 

「え、ええ…」

とは言ったものの、なかなかにしんどい。

今までにも何人もの迷惑なお客を相手してきたけど、あれはその中でも最強格だ。

「人間にしては食べ過ぎだし、異人でしょうか」

 

「いや、異人にしても何か変だわ。きっと、何か目的があるのよ」

 

「目的って…?」

 

「それはわからないけど…」

と、ここで普通のお客さんに注文を取りに行っていたリルエが戻ってきた。

 

「10番席、注文入りました」

 

「…え?」

彼女は私と同い年で、元はライフセイバーだったのだけど、3年前にこの店に来た。

つまり、私の同級生の後輩だ。

普通の水兵…なんだけど、ちょっと天然な所がある。

 

「注文って、具体的に何を…」

 

「いや、それが…」

リルエは、何やら困惑している様子だった。

 

「何?まさか別の迷惑客?」

 

「いえ、そうじゃないの。なんか、料理の注文はなくて、かわりにこれをアレイに、って渡されて…」

それは、1枚の白い紙だった。

 

「なにこれ」

広げてみると、何か文字が書かれていた。

『気づいてるかもしれないが、あの客はただの客じゃない。

そして、あそこで物を食ってるのにも裏がある。

裏から回って出てきてくれ。一度、町全体を見回ってみよう』

 

「これは…」

恐らく、龍神さんの書いたものだ。

あれがただのお客ではなく、裏があるというのは…何となくそんな気がしてはいたけど、彼もそう感じていたと知って確信を持った。

 

「なにかわかったの?」

 

「ええ。…ちょっとごめん、外行ってくる!」

 

「え!?」

扉の前で、ミュエルさんに事を手短に説明した。

手短に、というか簡略過ぎるような言い方だったけど、ミュエルさんは理解してくれた。

さすが、察しのいい人だ。

 

 

 

 

裏から出ると、龍神さん達がすでに待機していた。

「おっ、来た来た」

 

「さあ、行こう」

 

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