黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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控室にて

場内に出ると、観客の歓声が出迎えてくれた。

同時に、実況と思しき放送も聞こえてくる。 

 

「さあ、皆様お待たせ致しました!

出場選手が全て揃いましたので、これより、本日2回目のヴァットを開催します!

今回の参加チームは全部で16組、果たして優勝を手にするのはどのチームか!?」

まるでスポーツ実況だ。

この放送をしてるのもアンデッドか異形だと思うと何とも言えない気持ちになる。

 

「ここで皆様、たった今登場した選手をご覧下さい!」

そして、観客達の視線は俺達に集まる。

 

「なんと、今回は生きた異人が本試合に参加いたします!

はるばる外部より来た異人の生者!その実力は如何なものか!皆様、ぜひご注目下さいませ!」

 

俺は何もリアクションしなかったが、アレイは手を振り、マリルは苦笑いして手を上げて見せた。

こんな化け物どもに囲まれた中で歓声に応えるなんて、俺には出来ない。

 

「それではまず、試合のルールについての説明を行います。

試合は三対三、制限時間は10分です。

相手チームの全員を戦闘不能にすれば勝利となり、勝利したチームは別の勝利チームと交戦します。これを繰り返し、最終的に残ったチームが優勝です!

以上で、ルール説明は終了です。

さあ、それでは場内の皆様!最高の戦いをご覧あれー!!」

 

 

 

 

さっそくやるか…と思ったら、控室に戻された。

どうやら1回の試合で戦うのは二組らしく、俺達は最後の組らしい。

 

「待つのって退屈ですね…」

アレイは氷で椅子を作り、それに腰掛けていた。

さすがに床に直に座るのは嫌なのか。

まあ、セーラー服の女の子である事を考えると、それは当たり前かもしれない。 

 

マリルはというと、他を色々見てくるといって行ったきりだ。

どうやら、このコロシアムには選手が利用できる施設がいくつかあるらしく、それらを見てくるということだったが…。

一体、どこまで行ってるのやら。

 

俺はというと、壁に寄りかかって考え事をしていた。

一人で考え事をしたり、好きな事に没頭する時間は何よりも落ち着く。

というか、これら以外の事には基本興味がないし、やってもほとんど集中できない。

 

 

…しかし、よく考えると今の俺達もなかなかない組み合わせだ。

殺人鬼と水兵と白水兵。

言い換えれば、水棲異人と陸棲異人の組み合わせとも言えるし、殺人者と海人の組み合わせとも言える。

 

俺達3人の中だと、一番マシな人生を送ってきたのは…アレイだろうか。

マリルは元々捨て子だったのを拾われて育ったし、俺は元々自閉症持ちだった上に虐待だのいじめだのを受けて育った。

まあ、殺人者が幸せな人生を送ってきたはずはないから、当たり前ではあるかもしれないが。

 

思い返せば、ノワールに来られたのはとんでもない幸運だった。

生まれつきの特性もあってまともに仕事ができず、人間関係を上手く構築できず、社会で生きられなかった俺は、家族を始末した後に強盗殺人をやって生きていた。

社会が憎い、社会に生きられないならばせめて脅威となってやる…と思ってのことだったが、あのままだったらいずれ捕まって死んでただろう。

 

正直、今も社会が憎いし、社会に出ようとも思わない。

人殺しだと騒がれて追われてるのも、人間の時と同じだ。

だが、今はあの時と決定的に違う所がある。

それは、守るべき者がいることだ。

 

アレイは、絶対に守ってみせると思えた数少ない人物だ。

彼女が俺をどう思っているかは知らない。

しかし、少なくとも俺は彼女を最後まで守り通したいと思っている。

 

殺人鬼がそんな感情を抱くのか…と言われるかもしれないが、今までほとんど誰にも愛されず、理解されず、受け入れられなかった自分を理解してくれた者を、守りたいと思うのは当然の事だろう。

 

自分で言うのもなんだが、俺は本来、嘘つきでも残虐で冷酷な怪物でもない。

むしろ、素直で温厚な人間だったのだ。

きっと、本来は殺人者なんかではなく、探求者や魔法使いあたりになれたのだろう。

 

そうなっていれば、今の生き様もまた違っていたのかもしれない。

まあ殺人者になったからこそ得られたものも少なからずあるわけだが。

 

 

と、ここでマリルが戻ってきた。

右手に何かが入った袋を持っている。

「まだなのか?」

 

「ああ。何買ってきた?」

 

「いろいろね。あ、これ二人のね」

マリルは、何かの飲み物を乗り出した。

「それは?」

 

「飲み物屋で売ってたんだ。甘酸っぱくて美味しいよ」

 

「それ、本当に大丈夫な奴か?」

 

「大丈夫だって。ほら、飲みなよ」

 

渡されたので、恐る恐る飲んでみる。

酸っぱさを残しつつ甘さを加えたヨーグルトのような味で、悪くはない。

 

「どうだ?美味しいだろ?」

 

「まあ…な」

 

しかし、アレイは何やら怪訝な顔をしていた。

 

「どうした?嫌いなのか?」

 

「嫌い、っていうか…なんか、体が受け付けない。

生理的に無理、っていうか…」

 

「?そうか…」

 

マリルはもう一つ、クッキーのような食べ物も買ってきていた。

これは特別美味いというものでもなかったが、アレイは毛嫌いせずに食べていた。

 

 

 

 

「ふう…。しっかし、待ってるってのも暇だな…」

 

「そうね…。何か適当に話でもして、時間潰しましょうか」

 

「そうだね。えーと、何の話がいいかな。

あ、そうだ。折角だしさ、君の姉の話を聞かせてくれないかな?」

 

「お姉ちゃんの?別にいいけど」

アレイはさらっとそんな事言ってるが、普通に重要な情報が出てくる可能性のある会話だ。

この先、奴をどうするか考えるためにも、邪魔せず聞くとしよう。

 

「じゃ、話してくれ。僕もあいつの事を知りたいんだ」

 

「わかった。まず、人間だった時は、お姉ちゃんは私とは3つ離れてたの。でも、今は違う」

 

「なんで…あ、種族が違うからか?」

 

「そう。お姉ちゃんが死んだ時、私は5歳だった。で、私は10歳の時に水兵になって、それから20年たって14歳になった。でも、お姉ちゃんは25年経った今は、24歳なの」

驚いた。こころが、まさか俺と同い年だったとは。

まあ基準は全く違うのだが。

 

「お姉ちゃんに会ったのは19年前…水兵になって一年が経った時。

町の外れを歩き回ってたら、偶然大きなお屋敷を見つけたんだけど…なんか、唐突に入りたいっていう気持ちが湧いてきて…中に入ったの。

そしたら、玄関で女の人が待ってて…お姉ちゃんだって、すぐわかった。話を聞いたら、色々あって…アンデッドとしてだけど、復活できたって言われたの。

私とか他の人を襲う気はない、これからはここに住むから、レークの長にも言っておいて…って言われたわ」

 

「それで?レークの長はそれを認めたのか?」

 

「お姉ちゃんがアンデッドだって聞いた時は認めないつもりだったみたいだけど、私が誰も襲わないはず、って言ったら一応は認めてくれた。

そして、後でお姉ちゃんに面会して、絶対にレークの人に手を出さない事を条件に、町の近くに住むことを正式に許してくれたわ」

 

「なるほど…。で、あいつは姉としてはどうなんだ?」

 

「たまに喧嘩したりもするけど、基本的には優しくていい姉よ。今は旅をしてるからできないけど、レークにいた時は、週に何回かはお姉ちゃんの家に行ってたの。泊まったりもするし…逆にお姉ちゃんが私の家に来ることもある。

お姉ちゃんは再生者ではあるけど、悪い人じゃないの。私としても、まあ…色々あるだろうけど、出来ることなら、これからも普通の姉妹であり続けたいと思ってる」

 

アレイにとっては、例え再生者となろうとも、やはりこころは姉なのか。

まあ、当然ではあるかもしれない。

それに、14歳やそこらの女の子に、肉親が全くいない孤独は辛すぎるだろう。

 

「そうか…。僕には兄弟姉妹はいなかったから、気持ちはわかんないけど…確かに、肉親とはなるべく一緒にいたいよな」

 

「姉は、再生者だからってだけでよくないイメージを持たれてるけど、私からすればそんな事無い。

むしろ、手を出されなければ何もしない、大人しい不死者よ」

 

「ふーん…。てかそんなとこで生活してて、吸血鬼狩りに襲われないか?」

 

「昔は度々来てたけど、今はほとんど来ない。

お姉ちゃんが、全部返り討ちにしちゃうから…」

そこはさすが再生者って感じだな。

まあ、俺はそうはならんが。

 

と、ここで放送が聞こえてきた。

「間もなく、4組目の試合を行います。出場者の皆様は、ご準備下さい」

 

「お、きたきた!」

 

「私達の出番ね。頑張りましょうね!」

 

「ああ!」

 

 

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