黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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異形魔王

まずは私からいく。

「奥義 [グレイシャル・イロージョン]!」

少し溜めた後に氷の波動を撃ち出し、相手を凍らせる術。

 

さらにマリル達も続く。

「奥義 [ライトフィンガー]!」

マリルは手に光の爪をつけて引っ掻く。

 

「奥義 [オーデンの雷光]!」

龍神さんは手から青光りする電撃を撃つ。

 

これだけの猛攻を仕掛けたにも関わらず、バジャスはケロッとしていた。

そして私達の攻撃が終わると、すぐに口を開いた。

 

「終わりか?」

 

「終わり…!?」

 

「そうか。では次はわしが行こう」

バジャスは手を掲げ、黒い魔球を作り出した。

そしてそれを投げてくる…と思いきや、ボールのように真上に放り投げた。

 

魔球は途中で静止したかと思うと、無数の小さな魔弾に分裂して飛んできた。

避けるのは難しいので、結界を張って魔弾を弾く。

 

すると、バジャスは奇怪な踊りを始めた。

一瞬何をしてるのかわからなかったけど、すぐに理解した。

あれは「奇妙な踊り」、見た相手の魔力を吸い取る技だ!

 

私は目を閉じ、踊りをかわした。

魔力を吸われるのは影響が大きい。

しかも、相手は異形魔王だ。回復などにも使う魔力は、なるべく温存しておきたい。

 

 

そして、踊りが終わった所を狙って、矢を撃つ。

「[五点射ち]!」

 

そこに龍神さんとマリルも技を入れ、3人がかりでなるべく隙を与えずに攻撃する。

異形魔王は攻撃の威力が尋常でない事が予測されるので、極力攻撃させないようにするのだ。

 

龍神さんとマリルが何度も術を当てても、さほど効いていないように見えていたのだけど、その理由はじきにわかった。

奴は、いつの間にか吸魔の壁を張っていたのだ。

「吸魔の壁…か。こそくな事しやがる」

 

「やっと気づいたか。しかし、お主らのおかげでだいぶ体が温まったわい」

 

そう言って、奴は両手を広げた。

「[ギガスペル・メラージュ]」

 

私の体を、猛烈な炎が襲ってきた。

 

「アレイ…!」

 

「だ…大丈夫、ですよ…」

 

とは言え、今の術は私にはキツかった。

氷属性の私が火属性の術を受ければ言うまでもなく致命傷になる。

もう少しで、即死していただろう。

 

奴は間髪入れずに龍神さん達にも炎を放った。

二人も受けていた所を見ると、避けられないタイプの術なのかもしれない。

となると、かなり厄介だ。

私にとっては相性が悪い相手であり、下手をすれば普通に負けてしまいかねない。

 

消耗を避けるためにも、なるべく早く倒したい所だ。

しかし、術攻撃は効かない上に魔力を減らしてくる。

ということは、みんなで技を撃ち込んで速決、が一番楽なやり方だろう。

 

「龍神さん、マリル!合技を使いましょう!」

 

「よしゃ!」

 

「それを待ってたぜ!」

 

「じゃ、マリル!私達と共鳴して!」

合技は、普通に放っても十分強力だ。

しかし、他者と動きや思考・魔力などを共有できる能力者を中心とした合技はさらに強力なものになる。

ちょうどマリルが共鳴の異能持ちなので、都合がいい。

 

「かけがえのない者たちと、力と心を一つに!」

マリルが手を白く光らせて叫ぶ。

すると、彼と私達の体が白い光に包まれる。

 

不思議な気分だ。

マリルが、心の中にいるような…。

これが、共鳴というものか。

 

「よし、行くぞ二人とも!」

 

「ああ!」

 

「ええ!」

 

バジャスは気持ち悪いニヤけ顔で私達を見ている。

 

「おうおう、頑張っておるなあ。まあ、せいぜい気張るがいい」

 

このナメた態度をとってる異形に、必ずや制裁を下してやろうと思った。

その気持ちは、私のものか龍神さんのものか、はたまたマリルのものか。

 

そして、私達は繰り出す。

 

 

「「「合技 [スライサーフック]!!」」」

 

まず、マリルが短剣を二本持って縦に回転しながら切り抜ける。 

次に、龍神さんが私につかまり、私が紐をつけた矢を撃ち込む。

そして奴に肉薄した所で、龍神さんと二人がかりで奴を切り刻む。

 

 

ここまでやっても、奴はまだ倒れない。さすがにタフだ。

 

「[ギガスペル・ドゥーバー]」

空中に巨大な目玉を出現させ、そこから光線を撃ってきた。

これは追尾系の術でもなく、普通に避けられた。

 

奴は続けて、再び奇妙な踊りを踊ってきた。

これも目をつぶってかわし、すぐに矢を撃ち込んだ。

 

「[流星撃ち]!」

普通に矢を撃ちつつ、複数の矢を放つ技を使う。

 

「[ギガスペル・リバー]」

激流を呼び出してきたけど、私には関係ない。

泳いで余裕で向こうまでたどり着き、マチェットを振るった。

 

 

血が迸ると共に、バジャスはへたれこんだ。

そして、アリクさんも光に包まれ、元の姿に戻った。

 

「…ここは?私は今まで何を…」

 

「アリク!よかった、戻ったんだな!」

 

「マリル?龍神と…アレイだっけ?」

 

「はい!アリクさん…よかったです!」

 

喜ぶ私達の耳に、バジャスの汚らしい声が入ってきた。

「ぐぅ…お、おのれぇ…」

私達は、一斉に奴の方を見た。

 

「わしが…このわしが…

こんな奴らに…負けるだと…!?」

 

「あいつは…!」

アリクさんは立ち上がり、バジャスにゆっくりと歩み寄っていく。

 

「な、なんだ?どうしたんだアリクちゃん!?」

 

「ちゃんとか言うな…

えっと、異形魔王バジャス様、だったっけ?」

顔は見えないけど、声の調子からしてかなり怒ってるのが読み取れる。

まあ、当たり前か。

 

「私を穢しておいて、生きて帰れるなんて思ってんじゃないでしょうね…」

アリクさんは剣を抜く。

 

「え…?ちょ、アリクちゃん、落ち着け…!」

 

「うっさいわね…この際、手加減はなしよ。肉片になるまで切り刻んでやるわ!!」

 

 

そして、それからは…

思わず目を覆ってしまいたくなるほど、凄惨かつ壮絶に切り刻まれるバジャスの姿を見せつけられた。

 

当然ではあるだろうけど、アリクさん、めちゃくちゃ怒ってた。

…関係ないけど、異形から元に戻った姿には、もう嫉妬の感情は湧いてこなかった。

さっきまでのアリクさんは妙に大きかったから妬ましかった。平均的なサイズになった今は別に嫉妬したりはしない。

 

 

 

「終わった。

みんな、私を助けてくれてありがとね」

アリクさんは眩しいくらいの笑顔で笑った。

その白い服と剣は血まみれだったけど。

 

「いやいや。アリクが無事でよかったよ」

 

と、バジャスが消滅して、何かを落としていった。

それは、青い玉だった。

そしてそれを見て、アリクさんはあっ、という顔をした。

 

「やっと見つけた。これよこれ」

 

「それは?」

 

「これは青のスカイストーン。尚佗の根城に乗り込むために必要なものの一つ」

 

「尚佗の?」

 

「そう。私は、これが欲しくてここに来たのよ」

その時、床や壁、天井が光りだした。

 

 

 

そして光が消えると、建物の内装がガラリと変わっていた。

いや、正確には元のアルノの町に戻ったのだ。

ここは役所の奥の部屋だったらしく、数人の人間が何が起きたのかわからない、という顔で私達を見てきた。

 

 

 

役所を後にし、元通りになった町をゆく。

やはり、水兵と人間の文化が混じったこの町は素敵だ。

 

「マリル、あんたなんで種族着なの?」

 

「それを言うなら君も種族着じゃないか」

 

「私は町とかに寄らないつもりだったからね」

 

「なら、僕だって君を探して、それで…!」

 

小競り合いが始まりそうなので、私が本題に入らせる。

 

「喧嘩はやめて下さい。

アリクさん、さっきの青い玉の話ですが…」

 

「あ、そうだったね、言ってなかったね。

電の再生者尚佗は、かつてクルイア帝国の遺跡を空に浮かべて自身の国とした。

そこに乗り込むために、三聖女はスカイストーンというアイテムを集めた。

それは青、赤、黄の3つ。それらをすべて集めて、北西のポームの町にいる黒い吸血鬼(ノワール・ヴァンプ)の婦人に渡すのよ。そうすれば、雷神の護りを得られる」

 

「雷神の護り、って?」

マリルと龍神さんは知らないだろう。

私が説明する。

 

「雷神の護りがあれば、尚佗の居城へ乗り込む事ができる。

あれがあったからこそ、三聖女は尚佗の落とす雷にも耐えられた」

 

「そうか。じゃ、俺たちにも必要そうだな」

龍神さん、さすがだ。

再生者の雷は、電属性の者でも受け止めきれない可能性が大いにある。

 

「そうね。本当は私が倒したかったんだけど…いいわ。あんた達に任せる」

 

「え?アリク、いいのか?」

マリルが気にする。

 

「いいのよ。私は早いとこ集落に戻らないと。

わざわざ迎えが来てくれたんだものね」

 

それを聞いて、マリルは納得したようだった。

 

 

町の入り口で、マリル達と別れた。

「じゃ、あんたらとはここでお別れだな。

色々あったけど楽しかったよ、じゃあな」

 

「ああ」

 

「ばいばい、マリル。

アリクさんも、さようなら」

 

「ええ、さよなら」

 

 

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