黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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事後

その後、王は役人達に連れていかれた。

私達は役人に保護してもらい、専用の施設に連れていかれた。

なんでも、ここで1週間ほど十分な療養を取り、大丈夫そうであれば町に返してもらえるらしい。

ここでは睡眠、娯楽、食事、全てがまともなラインのもので、私たちの体と心はみるみる回復していった。

最も、城での不衛生な生活のせいで体にダニや蛆(うじ)が寄生していた一部の人たちは、治療の際になかなか大変な思いをしたらしいけど。

施設で生活を始めて3日目になると、役人たちによるリアース城内の調査が終わった、私たちの能力を封印していた術が解かれたという話を受け、みんなやっと力を取り戻す事ができた。

…この時、私はやっと気づいた。

どうして、私は能力を奪われなかったんだろう?

 

その日の夕方、あの時の役人の1人が私に面会を申し込んできた。

私がお礼を言いたかったのと、どうしても気になる事があったので受けた。

 

「助けてくださり、ありがとうございました」

 

「こちらこそ、奴の拘束に協力してくれた事に感謝する。奴の処分はこちらに任せてほしい」

 

「ありがとうございます。

それと、龍神さんたちは…」

 

「普段なら捕まえて縛り首にでもする所だ。

だが、今回は奴らがいたからこそ、ヴラドの悪行を見抜くことができたのでな、特別に見逃す事にした」

 

「どういう事ですか?」

 

「あの日、朔矢が突然出城に出頭してきたのだ。水兵達を連れてな。

奴は、自分の身柄が欲しければくれてやる。だがそのかわり、リアースの城に一団を仕向けろ、と言ってきた。

最初は意味がわからなかったが、奴の連れていた水兵の中に肩や耳に蛆が湧いている者がいてな、これはただ事ではないと判断した。

そこで念のため奴を拘束した上で、リアースの城へ向かった。その結果、龍神を罠にかけて捕獲したと言い張るヴラドに会ってな。奴から話を伺い、あの集会を開いた訳だ」

 

「そう言うことでしたか…」

 

「だが、あの時君が声をあげていなければ、我々もヴラドの話を信じきっていたかもしれん。

その意味でも、君の功績は誠に偉大だ」

 

「そんな…

私は、みんなを助けたかった。ただそれだけです…」

 

「心では思っていても、それを行動に移せない者は少なくない。

特に、君のような幼い者ではな。

それから、君たちの長…つまり水兵長だが…」

 

「!ユキさんは…どうなったんですか!?」

 

「彼女は酷く衰弱していてな、傷口や頭部の一部が腐敗し蛆が湧いていた。

だが懸命な治療により、今は殆ど完治している。

とは言え、しばらくはここで生活してもらって栄養をつけねばならないだろうがな」

 

「そうですか…でも助かったならよかったです。

それと、私は…」

 

「君はもう十分だろう。もう帰ってもいいと思うぞ。

大丈夫だ、すでに何人かの水兵は町に帰っているからな」

 

「…ありがとうございます。

それでは、帰らせて頂きます」

 

「うむ。

装備を出口に手配しておくから、忘れないように。

町でも元気でやるのだぞ!」

 

「はい!ありがとうございました!」

 

 

 

 

 

 

 

家に帰った時には既に20時をまわっていた。

久しぶりに帰ってこられた事と、明日からまた普段通りの生活ができる事の喜びで心が躍ったけれど、もう夜も遅いので、途中で買ってきたカップラーメンだけすすって入浴、歯を磨いて寝た。

 

 

 

 

 

そしてそれから1週間後には、ユキさんも帰ってきた。

保護される前は、化膿した傷の痛みと蛆に体を食い荒らされる事による痛みで夜も寝れず、死んだ方がマシなんじゃないか、と思うほどの苦しみを日夜味わっていたらしい。

だからこそ、役人が来るきっかけを作ってくれた殺人鬼…もとい朔矢さんと龍神さん、そして最後の一押しになる台詞を言った私に、感謝していると言ってくれた。

「そう言えば、龍神さんたちは…」

思わずそう呟いたら、ユキさんが答えてくれた。

「それなら心配ないわ。

彼らには、じきにまた会えるから」

 

私には、意味がわからなかった。

 

          ◆

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