黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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師と弟子

イゼルは杖の先端を赤く光らせる。

「[フレイマー]!」

燃え盛る炎を打ち出してきた。

 

いきなり火の上級魔法を使ってくるあたり、本気で殺しにかかってきてるのがわかる。

対するサリスはというと、まあ当然かとは思うが水の上級魔法[フォール]を使い、水の柱で火をかき消した。

 

「サリスさん…!」

 

「サリス司祭…!」

己の身を案ずるアレイとイクアルに、サリスは笑顔で返した。

 

「大丈夫ですよ。私は弟子に負けるようなヤワな司祭ではありません」

 

それを聞いたイゼルは、喚き散らした。

「あぁ…!またそうやって私を見下して!」

 

「見下す?そんなつもりはないのだけど」

 

「…自覚してないあたり、流石ね!いっつも私をこき使って、偉ぶって…ちょっと立場が上で、経験があるからって、態度でかすぎなのよ!」

 

「私は大きい態度など取っていない。お前に高位の司祭となる資格があるか、試していたに過ぎない」

 

「はあ…?あんた、それっぽい事言えば許されると思ってるんじゃないでしょうね!

私はあんたの一番弟子だった。心の底からあんたを尊敬してたし、あんたのことが好きだった。だから、どんなに理不尽な事を言われても耐えてきた。なのにあんたは、私にだけ苦しい思いをさせ続けた。しかも、最初に弟子になり、一番力があったこの私を差し置いてトーラを先に昇格させた上、私にくれるはずだったオームの魔導書もあいつに与えた。

…あんたは、私の事なんてどうでもよかったんでしょう!私は、あんたの部下になって、城で働くのが夢だったのに!なのに…なのに裏切られた…!

私は…あんただけは許したくない!!」

どうやら、こいつはサリスの有能な弟子であったが、他の弟子に嫉妬し、やがて嫉妬と憎しみに囚われてしまったようだ。

 

「イゼル…」

サリスはため息をつき、そしてきっぱりと言った。

「そのように捉えていたのなら、やはりお前に私の後を継ぐ資格はない!」

 

「な、なんですって…!」

 

イゼルの魔弾を弾き、サリスは続けた。

「私は、特定の弟子を贔屓していた訳じゃない。

お前には、確かに司祭としての優れた力があった。しかし、お前には司祭の心がない。故に昇格を見送り、オームの魔導書もまた与えなかった」

 

「司祭の心…?」

 

「そう。全ての人に敬意を払い、礼節と純潔、生命を何よりも重んじ、欲を捨てる。それがセスト…司祭としてあるべき心。

お前にはそれがなかった。でも、私は…」

 

イゼルは、それ以上聞こうとはしなかった。

 

「もういい!」

 

「イゼル、聞きなさい」

 

「黙れ!…さっき言ってたわね。私はもう、あんたの弟子じゃないって。

なら、本気で殺しにかかってもいいわよね?」

 

イゼルのまわりに、電気を帯びたドクロが複数現れた。

 

「あんたさえそう言ってくれれば、私も安心よ。

新たな主のために、遠慮なく任務に掛かれる!」

 

そう言って、ドクロを一斉に飛ばしてきた。

 

サリスが杖を構えて呪文を唱え、大量の白い球体を召喚してドクロを受け止め、かき消す。

「イゼル…ここまでお前が堕ちているとは思わなかった。皇魔女に化けて好き勝手やった上、再生者と契約を交わすとは…。

もはや、今のお前は私にもどうしようもない。

ならば、せめて誠の死を持って皆に謝罪を!」

 

ここで、サリスはこちらを見る。

 

「申し訳ありませんが、協力していただけないでしょうか。

イゼルは再生者尚佗の力を得ている。しかも、リッチとなって。

あれでは、さしもの私でも撃破に時間がかかります。

どうか、お力添えを!」

 

「わかりました!」

 

「喜んで!」

 

奴は、俺たちを不機嫌そうな顔で見てきた。

「龍神、朔矢…」

 

「何よ?感じ悪いわね」

 

「な、なんだ、俺たちだけ呼び捨てか?」

 

「殺人鬼相手に礼儀など不要です。…しかし、今はあなた達も貴重な戦力。どうか私に協力をお願いします。

否、協力しなさい」

 

「命令する気か?」

すると奴は小さく舌打ちをして、

「大人しく従いなさい。イゼルの代わりに、あなた達を殺してもいいのですよ」

と凄んできた。

 

「…ちっ、わかったよ」

 

「素直でよいですこと。…さて」

サリスは再びイゼルの方を見た。

 

「お前がそうなってしまったのは私の責任でもある。

ならば、私が終わらせる他はない。…」

そして、サリスは杖を掲げ、その先に巨大な魔力球を作り出した。

 

「皆さん…協力をお願いします!」

 

俺達は手を伸ばし、球体に魔力を流し込む。

イゼルは、そうはさせるかとばかりに魔法を撃ち込んできた。

 

「[アヴィース]!」

ブラックホールに似た闇の空間を生み出して敵を引き込む、闇の超上級魔法。

それに対するは… 

 

「太陽奥義 [夜明けの(デイブレイク・)(ルクス)]!」

アレイの太陽奥義。

 

渦巻く闇は、強烈な光に照らされて消えた。

 

「[テムペスト]!」

次は風の超上級魔法を出してきた。

これには、再びアレイが氷の術を使って対処した。

 

「氷法 [フロスト・バイト]!」

 

荒れ狂う暴風が吹き出す前に、複数の氷塊が風を食い止めた。

 

さて、そうこうしてるうちにサリスの魔力球の準備が整った。

「皆さん、ありがとうございます!」

サリスはそう言って、球を投げ落とした。

 

 

イゼルは球に飲み込まれ、球が消滅した時…

ダメージを負いながらも、そこに立っていた。

 

「イゼル…!」

 

「わ、私はこの位では倒れないわよ…

何せ、今の私には再生者の加護がついてるんだから!」

そう笑い飛ばすように言い、イゼルはサリスを睨む。

 

「私を軽んじた事を後悔しなさい!あんたのせいで、ここにいるみんなが死ぬのよ!」

 

「そうはさせない!」

 

再び兵士のローパー達を召喚し、それらはサリスに襲い掛かる。

 

…かに思えたのだが、なんとアレイに向かっていった。

 

アレイはとっさに兵士達を凍りつかせ、粉砕して攻撃を阻止した。

「な、なんで私を…?」

 

「あら、気づいてないの?」

イゼルは、不気味な笑みを浮かべた。

 

「私が与えられた、本当の使命。

この国を乗っ取った、本当の理由。

それはね、あんたをおびき寄せるためよ」

 

「私を…!?」

 

「そう。再生者尚佗は、あんたの身柄を欲しがっている。故に彼は、私にあんたを連れてこいと命じたの。

さあ、行くわよ!」

 

イゼルは黒い小さな空間を生み出し、そこに手を入れる。

すると、アレイの前に同じ空間が現れて手が伸びてくる。

 

「い、いや…!」

 

「やめなさい!」

イクアルとサリスと朔矢が手を斬った。

 

しかし、その手はすぐに再生した。

これも、再生者の力によるものか。

 

「正直、この国がどうのとかはそんな気にしてないのよね。…でも、あんたの身柄の確保とサリス様の始末だけは、絶対にやり遂げてやるわ!」

 

 

 

サリスは、イゼルに今更ながら質問した。

 

「イゼル。お前は、本当に私の下に戻る気はないの?」

 

「何を今更…!」

 

「…」

サリスはため息をつき、悲しげに小声で言った。

 

「残念だわ…イゼルは優秀な弟子だったのに。今ここで、私の過去の記憶を見せる事でも出来たら…」

 

これに、アレイはすぐに反応した。

 

「『偉大な司祭の過去の記憶よ、今ここに甦れ!』」

 

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