黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
「な…!」
ニリとグラスが、口をあんぐりと開ける。
「あ、アレイ…それ…!」
龍神さん達も驚いていた。
私は、彼らに向けて微笑む。
「どうですか?これが陰の手の力ですよ。
[手数を増やす]とは、こういう意味なんです」
「手数を…って、物理的に、って事かよ…!」
「それ…本当にちゃんとした腕なの…!?」
当たり前だ。
これは術で作ったものではあるけど、私の意思で自由に動かす事ができる、紛れもない第三、第四の手。
「もちろんです」
「そ、そんな大昔の術で私達を倒そうなんて、甘いわよ!」
「手を増やしたからって、何になる!どの道お前に勝ち目はないわ!」
吸血鬼二人がそんな事を言うので、私はため息交じりに彼らの方を見る。
「そう…なら見せてあげる」
私は四本となった腕のうち、元の腕を組み、氷の腕で弓を射る。
ニリとグラスは、当然のように矢を避け、グラスは同時に詰めてきた。
「それだけか!大口叩く割に大した事ないな!」
そして、グラスは私に殴りかかってきた。
「…ふっ」
私は、組んでいた氷の腕を払って叫んだ。
「奥義 [スターライトブリザード]!」
これが、この手の使い方なのだ。
一本、または二本の手で技や術を使い、残った手でさらに強力な技や術を同時に使う。
こうする事で、基本形が人型である以上超えられない「手数」の壁を超える事が出来る。
「弓技 [光陰一矢]」
そしてそれは、当然ながら最大の武器となり…
「弓技 [レイヴンバレット]」
最大の防衛手段となる。
「[アビスドレイン]!」
「…」
「…?」
「何だ…」
「奥義 [
「ぎゃあっ!」
「ニリ!…ん?ぐぉっ!」
今のように、別々の攻撃技、または攻撃技とカウンター技を同時並行で使う事も可能だ。
もちろん、回復しつつ攻撃したり、防御しつつ補助術を使うなんて事も出来る。
腕が増えるというのは、それだけ影響が大きい事なのだ。
強力だけど、あまりにもシンプルな事であるが故に、今まで誰もやって来なかった。
―シンプルな事にこそ、強力な技や術のヒントがあるものなのよ。
「アレイ…すげえな、それ!」
「びっくりね、こんな事が出来るなんて!」
龍神さん達も感激してくれている。
「お…おの…れぇ…」
ニリとグラスは、震えながらも立ち上がってくる。
奴らの傷はみるみる再生していく。
武器も、あっという間に元通りだ。
「なんなのその手…!邪魔だったらありゃしないわ!こうなったら…グラス!」
「ああ!もう手加減も変なルールもナシだ…本気で行くぞ!!」
そして、二人は突っ込んできた。
「[カタストラッシュ]!」
ニリが剣を一振りすると、黒い波動が高速で飛んでくる。
私はそれをしゃがんで避け、返り射ちを決める。
すると、次はグラスが来る。
「[火炎乱撃]!」
棍の先に火をまとった攻撃は、当たる訳にはいかないので三発全て回避した。
「[剣閃払い]!」
すぐにニリが、横に広がる剣閃を放ってきた。
剣閃とは、剣や刀で放つ事が出来る魔弾のようなものだけど、術ではなく技。
そして、ものを斬ってもそのまま直進する…つまり貫通能力がある。
なので、私だけでなく龍神さん達もジャンプして回避した。
「奥義 [闇夢棍閃]!」
グラスは棍から黒い霧?を発生させ、それを刃状にして飛ばした。
回避しようとしたけど、左の脇腹に受けてしまった。
でも、苦しんでいる余裕はない。
続けてニリも奥義を使ってきた。
「奥義 [ブラッディーネイル]!」
刀身が赤い剣を複数生み出し、一斉に飛ばしてきた。
私は結界を張って防ぎ、龍神さんと朔矢さんは武器を振るって撃ち落とす。
「私の奥義を、そんな簡単に…!」
「お前、剣閃なんか使えるのか。…[サウザンドゲイザー]」
龍神さんの放った斬撃で、ニリは無数の傷を負い、血を噴き出した。
でも、すぐに再生してしまう。
「再生されるのがウザいわね…」
朔矢さんの言う通りだ。
ダメージを与えても即効で回復されるなら、奴らを倒す方法は二つしかない。
回復能力を封じるか、強力な攻撃で一撃で仕留めるか。
これも、本来ならば難しい課題だ。
でも、今の私なら…
「星術 [翠月の鏡]」
傷の再生や死者の復活を封じる術と、
「太陽術 [炎天波]」
熱と光で体力を奪う術を同時に使う。
翠月の鏡は二人の強みたる再生力を奪う術だし、炎天波もアンデッド特効の術なので効果抜群だ。
さらに、龍神さん達も参戦してきた。
「
「星術 [サザンクロスドリーマー]」
どちらも光属性かつアンデッド特効のある術。
しかも、そもそもの威力も高い。
怒涛の術の連撃を受けたグラスたちはふらつき、唸るばかりになっていた。
しかしここで気を抜いてはいけない。
すぐに技を撃ち込む。
「刃技 [ライトスマッシャー]」
「刀技 [雷月落とし]」
「[フェニックス・ホイール]」
朔矢さんの技はよくわからないけど、私と龍神さんの技は強力なものだ。
そして、さらにここから三人の合技につなげる。
「ゾーン展開!」
そう叫ぶと、私の足元に白い光が現れる。
これは、連携して合技や合術を放つ準備が出来た事を示すもので、同じようにしてゾーンを展開した人と連携した技や術を使える。
二人までならやらなくても良いけど、三人以上で合技を放つ時にはほとんど必須だ。
「「ゾーン展開!」」
龍神さん達も、察してゾーンを展開してくれた。
そして、私達は同時に叫ぶ。
「「ライトニングストーム!!」」
朔矢さんの旋刃盤に、私と龍神さんが光と電の力を込める。
そして朔矢さんがそれを二人に巻き付け、斬り裂く。
その時、私達が込めた力が解放され、二人に凄まじいダメージを与える。
それが終わった時、二人の負の吸血鬼はもはや形すら留めていない、物言わぬ黒ずみとなっていた。
「…あっ」
そんな中に、スカイストーンがぽつんとあった。
「きれいね…っと、見惚れてる場合じゃないわね」
朔矢さんが回収し、私に手渡してきた。
「さ、帰るわよ」
朔矢さんは、抜け出しの紐を取り出した。