黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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旧友

「おっ、来たな」

階段の先の部屋には、一人の男性がいた。

それは薄い青色の髪と黒い瞳を持つ異人で、私は心なしか親近感を感じた。

 

「おお…誰かと思えば」

龍神さんは彼を知っているようだった。

 

「ん?あれ、水兵なんか捕まえたのか?」

 

「捕まえたて…人聞き悪いな」

 

「いや、だって水兵って町から出ない種族だろ?

普通は、捕まえて強引に従わせるもので…」

彼は口をつぐんだ。

…賢明な判断だ。

 

「…私は自分自身の意思で彼と旅をしています。

あと、水兵も町から出る事はあります」

 

「そうか。そりゃ悪かったな。俺は(いつき)ってんだ。龍神の、古い友達の探求者さ」

 

「私はアレイ。レークの水兵です」

 

「レークの…ねえ。あ、確かにこういう格好してたな。俺があの町に行ったのはもうずっと前だけど…今もその服のデザインは変わってないんだな」

 

「ええ。これは、町の誕生の時から変わってませんから」

私達のこの制服は、外部には水兵のシンボルとして知られているけど、最初から着ていた訳ではない。

 

私達は、陸に上がってしばらくはバラバラの服を着ていた。

でも、数千年後のある日、偶然1枚の服が海岸に流れ着いた。

それを誰かが拾い、修繕して着てみた。そしたら、そのデザインがみんなに好評で、これを元にした服を作って、それをみんなで着ようという事になった。

それが今の私達の制服の原型となり、以降は度々少しずつ手を加えられ、町の完成と共に今の形となった。

 

後にレーク以外の所に移った水兵達も、これを元にした制服を着る事にした。

そして、各町ごとに異なるアレンジが加えられ、結果として町によって違うデザインとなった。

つまり、全ての各地の水兵の町の制服は、私が今着ている制服が元なのだ。

 

「というか、よく覚えてますね。私達の服のデザインは、町によって違うのに」

 

「そりゃ、覚えてるよ。だって、水兵は…イイからなぁ…」

あっ、そういうこと。

 

「おいおい、年端も行かない子の前だぞ、少しは自重しろよ。アレイはそういう話嫌いだからな?」

 

「あっ、そうなのか。そりゃ悪かった」

 

「いえ、いいですよ…」

ここで、私はある事を考えた。

 

一つ、テストしてみよう。

さりげなく足を閉じ、頬杖をつくように手を顎に当てる。

 

すると、彼はすぐに反応した。

「おっ、いいポーズするな」

 

「…」

敢えて何も言わない。

次は、左手でサッと髪を払う。

これにも、彼は即刻反応した。

 

「いいね、いいね…!君、もしかして男好きか?」

 

「いいえ。ただ、男性を惹き付ける事には大いに興味があります」

 

ここまで食いついてくれるなら、大丈夫そうだ。

いよいよ、本領を発揮する。

 

「お?おおおお?」

面白い。彼の反応は、ずっと見ていたくなる。

 

私の魅力をわかってくれる人は、喜んで迎え入れる。

私は性的感情や恋愛感情はないけど、私に魅力を感じて進んでくる人は拒まない。

 

「ふふっ…」

少しばかり色っぽい声を出しながら、足を組む。

彼なら、きっとこの価値に気づいてくれるだろう。

 

彼はにやけ顔で、私の足を凝視してきた。

…やっぱりこの人、「わかる」人だわ。

 

私は、身長やスタイルはあまり優れていないことを昔から自覚していた。

故に、別の所で男性を惹きつけようと努力してきた。

その一つにして最大のポイントが、足だ。

 

私は転生した時から足が長かった。

なので、これを利用する事にした。

靴下とスカートの長さを調節し、足のむき出しの部分で魅力を演出する。

もちろん、日頃から足を引き締め、綺麗にする努力は怠らない。

 

今はタイツを履いてるから、全部は見せられないけど…それでも、十分な魅力があると思う。

龍神さんはちょっと特殊だからやらないけど、この人のような男性には、多少なりともアピールをしておきたい。

 

私はどちらかというと守ってほしい、攻めてきてほしい側なのだ。

心を惹き、掴んでおけば、いざと言う時私を守ろうとしてくれるはずだし、それに…私に見惚れてる男性の顔は、いい。

彼らの反応を見ると、女としての努力が報われ、評価されていると実感できる。

 

「どうですか…?この足、綺麗でしょう?」

 

「おうよ…最高だぜ」

 

ここで、さらに追撃する。

「私、他は小さいですけど、手と足には自信があるんですよ…でも、みんな周りの大きい人にばっかり行って、なかなかわかってもらえなくて…」

 

「そんなの気にするな。大きけりゃいいなんてのは、雑魚の考えだ。

特に俺は…君みたいな娘は大好きだ。まだ幼くて初心な感じと、色っぽさのギャップ。それが良さに繋がってるぜ」

 

そう言ってもらえると嬉しい。

私は他の水兵とは違う方面で勝負しているとはいえ、やはりみんなと比べると劣等感を感じる。

なので、このように男性から外見を評価してもらえると安心する。

 

「ありがとうございます。良ければ、後で夜のレークに来て下さい。お酒でも飲みながら話しましょう」

 

「いいねぇ、積極的じゃんか!よっしゃ、絶対行くよ。他の娘とも話がしたいしな」

 

水兵には、捕まえた男性が他の水兵と話す事に抵抗を感じる人もいるけど、私は別に…って感じだ。

そこまで支配欲が強いわけじゃないし、一心に私を見て欲しいという気持ちがあるわけでもない。

私は、あくまでも「来る者拒まず、去る者追わず」なのだ。

 

「さて、ではこれで。

龍神さん、ごめんなさい。彼と話をするならどうぞ」

 

「…ったく、樹は相変わらずのエロガッパだな。

ま、俺もアレイは可愛いと思うけどな」

彼の言葉には驚き、そしてとても嬉しかった。

龍神さんが、私を可愛いなんて言ってくれるとは思わなかったから。

 

「んで、話な。樹、なんでこんなとこに来た?」

 

「いやー、実はな。この城に生の始祖が使ってた7つ道具の一つがあるって聞いたんでな」

 

「ありゃ、そうなのか?」

 

「ああ、なんでも、蒼穹のブーツってのがあるとか…」

 

龍神さんは不思議そうな顔をしたので、私が説明した。

 

「蒼穹のブーツは、生の始祖が使っていたブーツ。

自由に飛行できるようになる上、全体の素早さを上げて動きやすくしてくれるんです。電や風の再生者と戦う時には、大きな手助けとなりました」

 

「へえ…そいつがこの城に?」

 

「聞いた話だから、本当かはわかんないけどな。

で、探そうと思ったんだが…まあ、なんだ。あの吸血鬼の圧に負けちまってな」

 

確かに、アリス三世はすごい威圧を放っていた。

 

「…なるほどな。あ、そうだ。今からあいつのとこに戻るから、来てくれるか?」

 

「え?何か用があるんですか?」

 

「まあそんなとこだ。樹、先に行っててくれ」

 

「わかった…」

彼は先に部屋を出ていった。

 

「…アレイ」

龍神さんは、深刻そうに言った。

「はい」

 

「あいつ、きれいだったよな?」

 

唐突にそんな事を言われて、一瞬驚いた。

でも、3秒で意味を察した。

 

彼は、前にラトナさんに会った時も「きれい」と言っていた。

あの時は、ただラトナさんの外見に対して言ってるのだとしか思わなかったけど、よく考えると、違う。

 

「きれい」というのは、吸血鬼狩りの間で使われる隠語。

そしてその意味は、「怪しい」。

つまり…

 

「ごめんなさい、私にはわかりませんでした」

 

そう返すと、彼は陰湿な表情をした。

 

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