黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
「見事だ、アレイ」
「その発想はなかった。よく考えたな」
龍神さんと樹さんが褒めてくれた。
「うふふ…ありがとうございます」
私は普通に嬉しかった。
男性に褒められるのは、実にいいものだ。
「さて、後は奴らを待つだけだな」
「ええ」
白水兵のアンデッド…もといデスマッシャーは全て倒した。
これで、祈祷師達が現れるだろう。
「見事だ」
奴らは、手をゆっくり叩きながら、虚空から現れた。
「よくぞ奴らを倒した。お前達の実力は本物のようだな」
「見くびっていた訳ではないが、感心した。
やはり、そこらの冒険者とは違うようだな」
すると、樹さんが怒った。
「おい、そりゃオレへのあてつけか」
え、どうしたの?と思ったけど、よく考えれば当たり前か。
冒険者は、探求者系種族の最上位種族だから。
「そんな事に目くじらを立てる必要はあるまい。
何故なら、お前は冒険者になるまでもなく死ぬのだからな」
そして、奴らは再び武器を出した。
「もう逃げないだろうな?」
「勿論だ。我らは約束は守るからな」
「約束…ねえ。まあいい、さっさと始めようぜ!」
龍神さんが、リーダー格の男を睨みつけた。
「うむ…と言いたい所だが、その前に一つ、言い忘れていた事がある」
そして、リーダーはローブから不気味な肌の色をした顔を覗かせた。
「申し遅れた。私は、名をワーグルと申す。
この二人を部下として従える、呪術師だ」
この男、呪術師だったのか。
残りの二人も、顔を覗かせて名乗った。
「私は祈祷師メバロ…ワーグルの第一の部下たる男だ」
「私は、祈祷師のエリム。メバロの同期にして、ワーグルの第二の部下たる女」
男の方は不気味かつ不穏な雰囲気を漂わせているが、女の方は不気味さと美しさが入り混じった、独特な雰囲気を漂わせている。
祈祷師と言えど、女性であることに変わりはないのか。
「我らは、再生者尚佗様の力を賜った存在。
そして、特別な兵器を与えられた存在でもある…」
「特別な兵器…?」
「そうだ…それは尚佗様がお作りになられた、新種の生命体。あの方は、この世界で最高の研究者でもあるからな」
新種の生命体、と聞いてすぐにピンときた。
城で遭遇した、樹さんに化けていた怪物。
あれが、それだったんだ。
「そのうちの一つをお前達の所へ派遣したのだけど、見事に見抜いたでしょう?
あれこそグルーバ…尚佗様が作られた、生きた兵器。
吸血鬼とリヴィーを組み合わせた、新しい生命体」
アンデッドと異形を組み合わせて、新しい生物を作りだすとは。
恐ろしい事を考えるものだ。
「てことは、さっきの白水兵もその類いか?」
「いいえ。あれは普通のデスマッシャー…殺人者をゾンビ化させたアンデッド。
私達は、奴らの他に3体のグルーバを授かり、使命を与えられた」
「それが、アリス三世を殺す事…ってか?」
「それと、そこの娘を連れてくること。その娘は、こころ様の実の妹。私達にとっても、大きな価値がある存在」
「この子を、どうするってんだ!」
樹さんが、私をかばうように一歩前に出た。
「それは、お前が知る必要はない。
とにかく、その娘はこちらに渡してもらう」
樹さんは何も言わずに棍を構え、龍神さんも彼の左どなりに立った。
「…そう。なら仕方ないね、ワーグル」
女は、ワーグルの方を見ながら言って下がった。
「そうだな。…それと、殺人鬼よ。娘は勿論だが、お前にも来てもらう。尚佗様が、お前をお待ちのようだからな」
「そうかい…なら心配なさんな、あいつにはこっちから会いにいくつもりだったからな」
「そうか。ならば、余計な世話であったな。だが、娘はもらうぞ」
「それは出来ないね。アレイはあくまでも俺が連れていく」
「まだそんな事を言うか。諦めが悪いな」
「そりゃあな。で?そっちはどうするつもりだ?」
「わからんか。その娘を渡してもらえぬならば、奪うまでだ」
ワーグルがそう言うと、メバロが鎌を振るって斬撃を飛ばしてきた。
それは黒く、鈍く光るものだった。
龍神さんが刀で受け止め、弾き飛ばしてくれた。
「ほう…?高度な事が出来るのだな」
「さすがは殺人鬼…と言った所ね。なら、次は私が!」
エリムは弓に矢を番え、技を繰り出した。
「弓技 [ロストライフアビス]」
その技名を聞くや否や、私は魔弾を放って矢をかき消した。
何故なら、今のは即死の技だったからだ。
「ちっ…!邪魔しないでもらえる?」
「あんた達こそ、私達の邪魔をしないでよ。私達は、これから尚佗の所に行こうとしてるんだから!」
すると、エリムが反応した。
「あの方を呼び捨てに…!?
お前…こころ様の妹でありながら、なんて事を!」
「私は確かに星羅こころの妹…でも、その前に一人の生きた異人なのよ。独自の、唯一無二の意見があって当然でしょ!」
エリムは、口をあんぐりと開けていたが、すぐにまた喋りだした。
「久しく
ああ…こころ様がお気の毒。こんな状態で連れて帰っては、あの方に合わせる顔が無い!」
何やら騒ぎ出した。
「落ち着けエリム…我々の役目は、この娘を尚佗様の元へお連れすることだ」
「その通りだ。我らはあくまでも尚佗様の命に従う。
あの方の望みを叶えるのが役目だ…」
そして、ワーグルは手を差し出した。
「星羅こころ様の妹よ。お前は、こちらへ来るべき存在だ。さあ、来るがいい」
私は、その手を取る…ふりをして、その手を凍らせた。
「…!!」
「素直に手を握ると思った?」
「…」
ワーグルは、杖を構えた。
「ならば、仕方あるまい。
出でよ、ボルスペクター!」
虚空から、足のない幽霊のような姿をした黄色いアンデッドが現れた。
それは、体にパチパチと電気を帯びていた。
「霊体系のアンデッドなんて、久しぶりに見たわ…」
口ではそう言ったけど、霊体系のアンデッドなるものは見たことがない。
自然と、言葉が出てきたのだ。
「行け…」
ワーグルの一声で、それは私達に牙を剥いた