黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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二人の関係

龍神さん達の方を見ると、2体のアンデッド相手に少しばかり苦戦していた。

再生力だけでなく攻撃力も高いようで、龍神さんも樹さんも傷つきながら戦っている。

 

樹さんは棍の先に水の刃をつけて斬りかかったり、龍神さんは刀を電気で熱して斬りつけたりしていたけど、どうもあまり効いていないようだ。

 

黒い雪はまだ降っており、すでに積もり始めている。

…心なしか龍神さん達の動きが鈍り、それで攻撃を受けやすくなっているように見える。

この雪を止めるためにも、ワーグルの片割れを早く倒さなければならない。

 

そのワーグルの片割れはというと、アンデッドを制御しつつアリス三世とやり合っていた。

器用な事が出来るものね、と思ったけど…さて、どうするか。

 

アリス三世が全力で攻撃を仕掛けているけど、ワーグルの結界はどうあっても割れない。

今までの相手とは違う、相当に強力な結界のようだ。

 

「はあ…はあ…」

アリス三世は、既に疲れが見え始めている。

仕方ない事ではあるけど、まずい状況だ。

 

そこで、一か八か賭けに出る。

「[興奮射ち]!」

ダメージは全くなく、興奮させる効果がある技をアリス三世に放つ。

 

彼女は素直に興奮状態となってくれた。

興奮はリスクも大きい異常で、彼女には申し訳ないけど…今私に出来る事は、これしか思い浮かばない。

 

興奮状態となったアリス三世は、さっきまでの疲れが嘘のように昂り、結界を叩き割らんと攻める。

「[悔恨斬り]!…[疾風一閃]!」

 

その顔は赤く、必死になっているのが伝わってくる。

まあ、これは私が興奮させたからだろうけど。

 

「ずいぶん躍起になっているな…」

 

「お前を…引きずり出すまで…私は…諦めない!

そして…お前を、必ず…殺す…!」

 

ちょっと、疑問を感じた。

アリス三世は、ワーグルを殺す事に執着しているように感じる。

なぜだろうか?

 

私は彼女を興奮させたけど、興奮はあくまでも精神を一時的に昂らせるもので、感情や人格にまで干渉するものじゃない。

精神力の弱い人なら、激情に飲み込まれて人格が崩壊することはあるけど、彼女はそんなヤワな異人ではないだろう。

 

となると…?

 

「未だに変わらんな…」

 

ワーグルの言葉を聞いて、私はピンときた。

やっぱり、この二人は面識があるんだ。

 

「っ…!」

アリス三世が目をつり上げ、怒りを露わにする。

それは、何か事情が見え隠れしている事を暗に示しているようだった。

 

(試してみましょう)

私は目を閉じ、能力を使った。

 

 

 

 

 

見えてきたのは、遥か昔のアリス城。

その中庭では、幼い女の子に母親らしき女性が武術の訓練をつけていた。

 

母親は大剣を扱い、体術と黒の術の扱いにも長ける人だったようだ。

紫色の髪と瞳をしていたので、恐らくは先代の城主…アリス二世だろう。

 

彼女は、毎日のように娘に武器や術の扱いを教えていた。

そして、読み書きや日常生活の動きの教育も怠らなかった。

それは厳しすぎるものでも、甘すぎるものでもなかった。

 

…ここまで見た限りだと、正直羨ましい。

私は、母親の記憶はほぼないから。

 

 

 

 

 

さて、そんな中気になる過去を見つけた。

アリス二世は、娘に光と闇の術も教えたいと考えた。

でも、彼女は風属性専門だったために、それができなかった。

そこで、はるばる遠くの国から名のある司祭と呪術師を呼んで娘の教育を頼んだ。

 

司祭の方はごく普通の男性で、特筆すべき点はなかった。

気になったのは、呪術師の方だ。

 

それは若い女の呪術師で、幼いアリス三世から見れば二人目の母親のような存在だった。

というのも、彼女はアリス三世を娘のように可愛がり、丁寧に闇の術や闇属性に関する事を教えていた。

 

一見、ごく普通の家庭教師のようだけど…

この呪術師の目は、ワーグルと同じものだった。

 

 

 

あれ、もしかして…?

 

 

 

いや、そんなはずはない。

だって、こいつはそんな由緒正しい家系の者ではないだろう。

それに、アリス三世は黒い吸血鬼(ノワール・ヴァンプ)だ。一体何千年前の話なのか。

 

…と思ったのだけど、次の瞬間見えた過去がそれを否定した。

 

その呪術師は、幼いアリス三世の前で二人に分身し、黒い雪を降らせて見せたのだ。

 

 

 

 

 

「ぐっ…!」

刀を弾かれ、カウンターを食らっても、決して諦めず、執念の表情を浮かべるアリス三世に、ワーグルは言った。

 

「未だに闇の本当の力を知らぬようだな…我が祖先の愛弟子であったとは思えん」

 

やっぱり、そうか。

こいつは、かつてアリス三世の家庭教師だった呪術師の子孫なんだ。

 

「私に師匠などはいない!」

 

「ほう?よもや忘れたのか?

幼き日の貴様に闇の術を教えた呪術師がいた事を」

 

「…!」

アリス三世は、思い出したようだった。

 

「我が祖先…呪術師リニアスは、素晴らしき呪術師であった。その技量を買われ、貴様の母親に娘の師匠として選ばれたのだ。

あの方は度量も大きく、面倒見の良い性格であった。さぞや、優れた教え方をしたであろう。

それを忘れてしまうとは…情けない事よ」

 

「忘れてなどいない!私は、確かにあの方に闇の術を教わった。そして、今もそれを覚えている!」

 

「そうか…ならば証明してみろ!」

 

両手を広げるワーグルに、アリス三世は闇の魔弾を飛ばした。

 

「私は、あの方の事は忘れていない。

故に、お前を殺さねばならない!」

 

「ほう…?」

ワーグルは、魔弾を躱しながら喋った。

 

「私は、あの方によく言いつけられていた。

『もし、私か私の子孫があなたの一族やこの町に牙を向く事があれば、その時はあなたの手で道を正して欲しい』…と!

だから、私はそれを果たす!

再生者の下僕となり、私だけでなく無関係な異人をも狙うお前を殺し、あの方との約束を果たす!」

 

そして、アリス三世は奥義の構えを取る。

 

「ふん…甘ったるい事を!

約束などは破るためにあるようなもの。

あの方は確かに優秀であったが、己の実力に自惚れ過ぎた。力を求めなさ過ぎた結果、最後はかつての同期達に上を行かれ、劣等感に苛まれて自殺したのだ!

道とは、人によって全く異なるもの…我らの事情も知らぬ貴様が、正すなどと言う事自体がおこがましいわ!」

 

ワーグルも構えを取った。

そして…

 

 

「奥義 [妖刀・魔喰神斬]」

 

「奥義 [黒霧・死神蝶舞]」

 

二人の奥義がぶつかりあった。

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