黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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吹雪の中で

大きい打ち上げ花火が打ち上がった直後のような衝撃が、伝わってくる。

吹っ飛ばされそうなほど強い…という訳ではないけど、それでもその威力の凄さは伝わってくる。

 

そして、二人は切り合いを始めた。

高速でやり合っているけど、互いに攻撃を完璧に受け止めている。

 

「すごいことになってるな…」

龍神さんが、異形の腕を小脇に抱えて短剣を刺しながら言った。

 

…あっ、そうだ。

私は、彼らの手助けをしないと。

 

「氷法 [アイスボウル]!」

片方の異形に氷の魔弾を飛ばして凍らせ、それを操ってもう片方にぶつける。

もちろんこれで倒せるようなものでもないけど、それでも幾分ダメージは通るだろう。

 

「ん…?あ、そうだ!」

今のを見て、樹さんが何か閃いたらしい。

 

「アレイ!こいつを凍らせてくれ!」

彼は、棍の両端にカランビットのような形にした水をつけて言った。

 

「えっ?わかりました」

よくわからないけど、彼には何か考えがあるのだろう。

 

冷気を吹き付けて水を凍らせると、彼の考えが私にもわかった。

こうする事で、両端に湾曲した氷の刃を持った、鎌のような武器が出来上がる。

 

「よっしゃ!これで…」

あとは、それを振るえば一気に戦力が上がる。

 

「鎌技 [ソウルスラッシュ]!」

彼は鎌の技を使い、異形を一体仕留めた。

(樹さん、鎌の技使えたんだ)

 

ところで、武器としての鎌といえば柄に刃が横向きについたものがイメージされる事が多く(実際、私の知ってる鎌の使い手もみんなそのタイプを使っている)、今樹さんが使っているような縦向きに刃がついた鎌はあまり見かけないし、イメージする人も少ないと思う。

でも、実はこれが正規の戦鎌(ウォーサイズ)で、人間の武器としても古くから使われてきたものだと聞いた事がある。

 

彼は、それを知っているのだろうか。

結構マイナーな情報だけど、探求者なら知っていても不思議はない。

 

「すげえな、ホントの戦鎌みたいじゃんか」

龍神さんは知っていたようだ。

 

「みたいってかまんまだよ。てか、昔はこのタイプがメインだったしな。[クライブラス]」

 

もう片方の異形にも技を当てて怯ませ、彼は龍神さんに笑いかけた。

 

「なあ…いつものやつ、久しぶりにやろうぜ?」

 

「鎌でいけるのか?」

 

「大丈夫だって。ほら、行くぞ」

 

「…わかったよ」

そして、龍神さんは刀に電気を流し、肩の高さで横に持って樹さんの横に並んだ。

 

樹さんが棍を横に構えて回すと、小さな水柱が生えてきて、徐々に大きくなっていく。

そして、それが大木と見紛うほどに大きくなった時、龍神さんがその中に飛び込み、刀を構えたまま回転する。

 

すると、水柱が竜巻のようになり、通電して黄色く光り輝く。

樹さんはそれを確認すると、水柱を異形の方へ動かす。

そして、異形を電撃と激流で切り刻む。

 

見た目からもかなりの威力がある事が伝わってくる合技だ。

 

「ボルテアテムペスト!」

技名を叫んだのは樹さんだけだった。

でも、そんなのはさして重要じゃない。

大事なのは、あくまで威力と効き具合だ。

 

 

「ふう…」

水柱が消え、龍神さんが姿を現す。

そして肝心の異形はというと…

跡形もなく消滅していた。

 

「よし!あとは…」

 

ここで、私達は改めてアリス三世達の方を見る。

 

二人は時折技や術を使いながら、乱闘を繰り広げていた。

 

「えーっと…これはどうすればいいんだ…?」

 

「そうだな、とりあえず…観戦するか?」

 

「観戦って…それは良くないでしょう」

 

「じゃあどうする?あのパターンの戦いは、変に手を出すとロクな事がないぞ」

 

「…」

樹さんの言う通りだとは思う。

でも、このままだと埒が明かない。

 

何か、いい方法がないだろうか。

 

 

 

 

「っ…」

今もなお降り続けている黒い雪は、もうそれなりに積もっている。

足が少し動かしづらく、微妙なだるさを感じる。

既に闇の力が溜まってきているようだ。

 

この雪に宿る闇の力は、戦いにはバカにできない影響を及ぼす。

このままだと、私達はいずれ完全に身動きが取れなくなり、戦闘不能に陥ってしまう。

その前に、どうにかワーグルを倒して欲しいけど…

 

(何か、何かないかしら…)

私は必死で考えた。

そして…

 

 

 

はっ!と閃いた。

(そうだ)

 

上手くいく保証はないけど、やってみよう。

向こうが雪を降らせてくるなら、こっちも雪…いや、吹雪を放ってやる。

 

「氷法…」

私は大きく息を吸い込み、手を大きくゆっくりと回し、

 

「ニヴルブリザー!」

吹雪の術を放つ。

 

一応強力なダメージ系の術だけど、今回はそれよりも向こうの体勢を崩すのが目的だ。

 

果たして…

「うわっ!」

 

見事、ワーグルが体勢を崩した。

 

「…!」

そこを見逃さず、アリス三世が技を決める。

 

「奥義 [高尚なる魔人の裁き(インペリアルジャッジ)]!」

 

白く、交差する光を放つ斬撃をワーグルに撃ち込んだ。

 

「…」

 

 

 

 

ワーグルは地面に落ち、胸から血を噴き出すように流しながら言った。

 

「見事…だ…」

 

アリス三世が刀をその首に刺すまでに、ワーグルはこう言い残した。

 

「あの方が…お前達を…待って…おられる…

あの方は…ミゴルの…山頂…に…いる…

まあ…お前達では…辿り着けぬ…かも…しれんが…な…」

 

そしてワーグルは、今際の際に言い捨てた。

 

 

「尚佗の加護が、あらんことを…」

 

 

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