黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
その後は、アンデッドに混ざってプラズモも出てくるようになった。
これは、主に私と龍神さんで仕留めた。
樹さんは言わずもがな、私も電属性の攻撃を受けると致命傷になりかねないので、極力喰らわないよう集中して戦った。
でも、攻撃しつつ完璧な回避、を続けることはできず…結果的に数発受けてしまった。
一応自力で回復できるくらいの傷で済んだけど、それでもかなり痛かった。そして回復を繰り返したこともあり、魔力はだいぶ減ってしまった。
そんな状態で、目的の場所についた。
遺跡の中央にある、大きな城のような建物。
その最深部が、遺跡の中心。
そして…
尚佗の眠る場所だ。
遺跡に入ろうとしたら、2体のプラズモが道を塞いできた。
「何者だ!」
「貴様ら生者が、尚佗様に何の用だ!」
プラズモが喋るのも驚きだけど、尚佗に仕えているというのも驚きだ。
…いや、ここまでにもプラズモは何体かいたから、そういう事だったのなら説明はつくけど。
『待て…』
また、あの声だ。
今度のは、龍神さん達にも聞こえているようだった。
『その者達は、私の大切な客人だ。通せ』
「はっ…」
それを聞いたプラズモ達は、潔く私達を通してくれた。
そして…
「うっは、なんだこりゃあ…」
樹さんが唸る。
床には例のごとく魔法陣が書かれていて、その中央には水色の鎧が置かれている。
この鎧に、尚佗が封じられているのだ。
ところで、この魔法陣には、他の所では見かけない文字が使われている。
そしてこの文字は、よく見たら、ニーム手稿に使われてる文字と同じだ。
読めはしない…けど、なんとなくわかる。
恐らくこの文字…もとい魔法陣には、再生者を封じる力があるのだろう。
そして、それは効果を発揮すると光り輝く。
その光が弱々しくなっている、ということは…。
「よくぞここまで辿り着いた。流石だな」
冷静な男の声がした。
声の主は、言うまでもなく尚佗だ。
「尚佗。来てやったぞ。さっさと出てこい」
龍神さんが言うと、彼は素直に姿を現した。
細身の体に、スリムな手足。
黄色の短髪で、緑の上着と青のズボンを身に着けた、一見普通の民間人のような姿をした男。
これが、電の再生者儡乃尚佗か。
「こいつが…」
感嘆の声をあげる樹さんを尻目に、尚佗は私を見てきた。
「星羅の妹…いや、アレイ…だったな。…」
「…何よその目」
「おっと、不快にさせてしまったか?それは済まない。何せ、あまりにも嬉しくてな。私は長い間、お前を待っていた。あの方のために…」
ここで、尚佗は黙った。
「おっと、これ以上は言えないな。とにかく、お前にはこちらへ来てもらわねばならない。我らには、どうしてもお前が必要だ」
尚佗は手を伸ばしてきた。
その手には、パチパチと静電気のような電気が這い回っている。
「その手を、取ると思う?」
「…いや、思わんな。ふむ…」
さっきから、こいつはじろじろと私を見てくる。
「さっきから何なの?」
「少なくとも、見た目は普通の水兵だな。だが、明らかに妙な力を感じる。…この力は、殺人者のものか?お前…もしや殺人鬼を取り込んだのか?」
「ええそうよ。もうしばらく前の事だけどね。私に冤罪をかけようとしてきた奴を、取り込んでやったのよ」
あの時の事は、今でも思い出すと怒りが湧く。
一歩間違えていたら、ここまで来られなかったどころか、町にも帰れなくなり、私の人生そのものが終わる所だった。
「ほう…それで、新たな力を得た…と。水兵の小娘にしては、なかなかな事をするな。
…いや、小娘と呼ぶのは無礼か」
「どういうこと?」
「確かな実力と行動理念、勇気を持ち、自ら我が前まで来た者を貶すのは、礼儀に反するからな」
変な所で律儀な再生者だ。
「礼儀だと?」
樹さんが口を挟む。
「そうだ。私は、何事も正々堂々としていなければ気が済まないタチでな」
「騎士みたいな事言うんだな。オレの同族のくせに」
「ん…?なんだ、よく見れば樹か。久しいな、千数百年ぶりといったところか…?」
尚佗は樹さんとも面識があったのか。
というか、尚佗は本当に元は探求者だったのか。
「そう…だな。けど残念だぜ。お前がこんな事になってるなんて」
「私はお前とは違う…何もかも。ただ、それだけのことよ」
そして、彼は龍神さんの方を見た。
「さて、久しぶりだな龍神」
「おうよ」
「今回は建前上アレイが必要だったが、私は本心ではお前の方に会いたかった」
尚佗は、龍神さんを睨むように見ながら言った。
「だろうな。俺だってお前とはやり合いたかったしな」
「それは光栄だ。…私とお前は、かつて何かとしのぎを削った間柄。そして今、ここでこの娘をかけて戦う。決着にふさわしいシチュエーションではないか」
「誰もアレイを渡すなんて言ってないぜ。それに、アレイもお前についていくとは一言も言ってない」
「ならば、奪うまでだ。本当は生きている方がいいが…まあ、結果的には同じ事だからな」
ということは、いずれ私を殺すつもりなのか。
「なら、なんで祈祷師達にあんな命令を下したの?」
龍神さんと樹さんは、驚いたようだった。
「聞こえていたのか。驚いたな…私は、お前達と一戦交えてみたかった。龍神は、かつて我が好敵手であった男。お前は、今回の主目的たる人間上がり。相手とするには、これほど都合のいい奴はいない」
「じゃ、なんでここに来るまでにアンデッドに私達を襲わせたの?」
「お前の力を見るためにやったまでだ。…もはや、気づいておろう。これまでにお前達が戦ってきた司祭や祈祷師、そして負の吸血鬼や異形は、全て私が仕向けたものだ」
なるほど、つまり私達はこいつに踊らされ続けていた…という訳か。
「それも、アレイの力を見るためってか?」
「そうだ。星羅の妹と言えど、弱ければ相手にする価値がない。だが、幸運にもお前には龍神がいた。だから、多少強い相手を仕向けても問題はない。それに、それらの戦いを切り抜ける過程でお前が強くなってくれれば、万々歳だと考えたのだ」
ちょっと、こいつの考えがわからない。
普通は、私が弱い内に潰そうとするものだと思うが。
「なんで、この子を強くしようと?」
「弱い娘を潰してもつまらない。それに、言っただろう?私は、正々堂々としていなければ納得がいかん」
「へえ…」
勇ましく返事をしたけど、正直自信がない。
道中の戦いで矢を消費してしまったし、魔力もまだ完全には回復していない。
「お前に既に十分な実力がある事はわかった。だがまずは、コンディションを整えようか」
尚佗が術を唱えると、なんと魔力がたちまち全快した。
その上、道中で失った矢も全て復活した。
「な…!」
「へえ…正々堂々、ってのは口だけじゃないんだな」
「当然だろう。私は、お前のようにしょうもない嘘を平気でつくような奴とは違う」
私は、弓を出した。
「む…よく見れば、あの陰陽師が使っていたものをいくつか持っているようだな。…ふっ、たらい回しにした甲斐があったというものだ」
尚佗は薙刀を出し、小さな稲妻を纏った。
「探求者はともかく、水兵と殺人鬼は貴重な素材だが…まあ仕方ない。
生者達よ。我が
儡乃尚佗
死の始祖に仕え、死の始祖の復活と生者の世界の征服を目論むアンデッド「八大再生者」の一人。
薙刀を操り、「電」の属性を司る。
元は探求者。
シエラの子孫であるこころが再生者となりアルピアの封印が解けて自由になったが、アレイが生きておりスタールの結界が消えていないために力を取り戻せていない。
龍神や樹のことを知っていたり、様々な異人や異形をけしかけてアレイを故意に強くしたり、いざ自分のもとに辿り着いたアレイ達を回復し、対等な立場での正々堂々とした戦いを望んだりと、再生者にしては異質な面を多く持っている。