黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
まずは私が技を使う。
「弓技 [レイヴンバレット]」
まあ予想通りというか、当然のことだ。
「氷法 [フロスト・バイト]」
複数の氷塊を生み出し、それを矢継ぎ早に飛ばす術を使う。
結界で防がれたけど、これも予想通り。
ここで、尚佗は私に向かってきた。
弓を凍らせ、一時的に硬化させて薙刀を受け止める。
魔弾で反撃しようとしたけどいち早く感づかれ、懐に飛び込まれて刺された。
痛みをこらえ、顔目掛けて魔弾を撃った。
至近なら、ほぼ避けられないはずだ。
ところが、奴は速やかに左に動いて魔弾を躱し、その上で私の顔を殴ってきた。
「アレイ!」
樹さんが心配してくれるけど、この程度で心配されるほど私はヤワじゃない。
私が立ち上がると、すぐにまた斬りかかってきた。
今度は素早くマチェットに持ち替え、応戦しようと構える。
すると、尚佗は滑り込むようにして足を斬ってきた。
ジャンプしたけど、間に合わなかった。
「っ…!」
着地の瞬間、斬られた右の足首に捻れたような感触と、激しい痛みが走った。
たまらず、治癒魔法を使った。
「…!!」
その刹那、尚佗が再び飛びかかってきた。
龍神さんが間に入ってくれたから、なんとか無事だった。
「ちっ…邪魔くさいな」
今のでなんとなくわかったけど、尚佗はかなりの使い手である上に、戦闘も手慣れのようだ。
薙刀は、戦鎌や斧などと同様、主に人間が使う武器で、異人で扱う者は少ない。
今まで私は、薙刀を使う異人は、友人であり同族でもあるセレンくらいしか見たことがなかった。
セレンは強い。
でも、こいつは恐らくセレン以上の実力を持っている。
「お前ほどの手慣れなら、一人や二人邪魔が入ろうと問題ないだろ?」
「ふん…」
尚佗は、龍神さんを睨みつけた。
「その通り…と言いたい所だが、生憎相手が相手だからな」
そして、尚佗は薙刀の刃に電気を溜め始めた。
それを見て、龍神さんは刀から片手を離し、手のひらに同様に電気を溜める。
「[スラッシュスパーク]」
尚佗の放った青い電撃を、龍神さんは黄色い電撃を放って受け止めた。
二人が押し合っている間に、私と樹さんは術を放つ。
「[アクアバースト]」
「[ブリザードレイ]」
手が塞がっているなら、回避なりガードなりは出来ないだろう…と思ってのことだったけど、龍神さんと押し合っている電撃から
攻撃は尚佗に届いたけど、威力は大幅に落ちた。
そればかりか、
「[雷王討ち]」
尚佗本人からのカウンターが飛んできた。
「[アイスブロック]!」
間一髪、電撃を防いだ。
龍神さんも蹴りを喰らい、引き離されていた。
「っ…!」
「やはり、お前は群れて戦うには向いていないな。
単独で、一人で戦ってこそ真価を発揮する。
お前は、昔からそうだった。
いつも、一人で自分の世界に住み続ける。
そして、つまらぬ事でも飽きずに続ける。
そこは、私は素直に羨ましいと思っていた。
しかし、今ここにおいては、それはお前の弱みとなる」
尚佗は薙刀を後ろ手に持ち、技を繰り出した。
「薙技 [風土の乱れ車]」
薙刀を回して土埃を巻き上げ、それに紛れて龍神さんを斬りつけた。
あの程度の技なら大丈夫だろう、と思ったのだけど、彼は普通に食らっていた。
しかも、それなりのダメージを受けたようだった。
「えっ…?」
私は思わず声に出してしまった。
「地の攻撃じゃ、あいつには分が悪いな…」
樹さんの呟きを聞いて、意味がわかった。
そうだ、彼は電属性。
そして、今の技は地属性だったんだ。
電属性は地属性に弱いので、電属性の者が地属性の技を受ければ致命傷になる。
確か、威力が倍になるんだっけか。
なんて事を考えてたら、私達の方にも土埃が飛んできた。
「っ!」
これはただの土埃じゃない。
口の中がザラザラするのと同時に、魔力が奪われる。
「アレイ!」
樹さんが四角く水柱を張ってくれた。
お陰で土埃を遮断しつつ、口の中の砂を洗い出せた。
「ありがとうございます」
私が水中で深呼吸し、髪を手で
私は、にっこりと笑って返した。
「por favor mira(見ていて下さい)」
水中で体勢を整え、同時に水をたっぷり髪に吸い込む。
水兵の髪は吸水性と保水性が高く、たくさんの水分を含む事が出来る。
絞れば、スポンジのように水が溢れてくるほどだ。
私達は、陸に上がったばかりの頃は髪に大量の水分を貯めて、陸上で活動しやすくなるようにしていた。
その名残が、今もこうしてあるのだ。
そしてもう一つ。
水兵は水に入っている間…正確には、体が濡れている間、自身を強化できる。
それは、全ての身体能力と魔力が3倍になるというもの。
「…」
尚佗を眼に収めた私は、弓にブレイドの矢を番え、静かに弦を引き絞る。
尚佗は、こちらに気づいて電撃を打とうとしてきた。
でも、樹さんが水を噴きかけて妨害してくれた。
そして…私は矢を放つ。
「弓技 [ウェーブショット]」
矢は尚佗の左の脇腹に当たった。
尚佗は最初平気な顔をしていたけど、次第に顔をしかめ、私を睨んできた。
(効いたわ…!)
今の技には、水の力が宿っていた。
海人は電気に弱いけど、水属性の攻撃は電属性の相手にも通るはず…!
そう思っての事だった。
「やるな…だが、この程度、大した事はないわ」
尚佗は矢を抜き、投げ捨てて言った。
「お前を…種族として見くびっていたようだ。
ここからは、全力で行かせてもらう」