黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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救援要請

「入りなさい」

入ってきたのは、一人の術士の男。

「失礼いたします。

陛下。先程、町の東口に瀕死の重傷を負った白水兵(びゃくすいへい)が現れました」

 

俺達は、その報告に驚いた。

「白水兵が…?それで、どうなったの?」

 

「現在は最寄りの診療所で保護し、手当てを行っています。何やら、水兵と殺人鬼に会いたい、と申しているとか…」

 

皇魔女は、こちらを一度振り向いた。

「わかった。すぐに行きましょう。

お二人とも、来てくれるわね?」

 

「はい!」

 

「もちろんだ!」

 

という訳で、皇魔女と男と共に城を飛び出した。

 

 

 

 

診療所とやらにつくと、多くの人が集まっていた。

そして事情を説明して、診察室へ赴く。

そこでベッドに寝かされていたのは…

 

「マリル!?」

なんと、マリルだった。

服がボロボロにやぶれ、全身に無数の切り傷や刺し傷ができている。

二人の術士が賢明に治療しているが、回復には時間がかかるだろう。

 

「う…うぅ…」

マリルは、痛みを顔を歪めながら唸っている。

 

「どうしたんだその傷!てか、なんでこんな所に!?」

 

「あんたらに…会うため…川を…下って…きたんだ…」

 

「どういう事だ?」

 

「集落…が…襲われた…」

 

「襲われた?」

白水兵の集落が襲われる?

そんなの、聞いたことないが。

 

白水兵は殺人者の仲間な上、集団で生活してるから、下手に手を出せば痛い目を見るのは誰の目にも明らかだろう。

白水兵に手を出す奴なんて、知能の低い異形か低級のアンデッドくらいで、そんな連中は相手にもならないはずだ。

 

まして、一人二人でいる所を襲われる、ってのならまだしも、集落自体を襲うなんて…そんな事する奴いるのだろうか?

 

…いや、いるんだろう。俺が知らないだけで。

「ああ…それで、僕はあんたに…共鳴をかけた。

そして…行こうと…してる場所を…特定して…川を…下ってきたんだ…

頼む…どうかみんなを…!」

 

「襲われた…って…あなた達は殺人者の一種でしょう。殺人者の集落を襲うような存在なんて、私の知る限り存在しないのだけど」

 

皇魔女陛下もそう言っていた。

 

「シルト…さん…」

なんだ、マリルはこいつを知ってたのか。

 

「本当…なんだ。僕らにも…一つだけ…怖いものがある。

僕らを狙う…天敵と…呼べる存在が…」

 

それで、俺はマリルの言いたい事がわかった。

…そうか、そういう事なら、納得がいく。

 

「天敵?あなた達は、むしろ他の種族の天敵となる側の種族でしょう?」

 

「いや…そうじゃねえ」

俺が喋りだすと、みんながこっちを見てきた。

 

「龍神さん…殺人者の天敵って、もしかして…」

 

「ああそうだ…『影喰らい』だ」

 

「影喰らい…?」

 

すると、術士の男が反応した。

 

「影喰らいだと…!?」

 

「あら、知っているの?」

 

「はっ。影喰らいは、正式名称を『悪影喰らいの者達(ダクネスイーター)』といい、この世界の一部の地域に古くから存在する防人の近縁種です。

人間や他の異人に害を加えようとする異人を殺して喰らう使命を持っているとされており、主に殺人者や祈祷師を標的としているといいます。

そのような異人を捕食しているために、それらの種族を遥かに凌駕する戦闘力を持っているとか…」

 

「説明どーも。…ま、そういう事だ。

奴らなら、白水兵の集落を襲うって話も納得がいく」

 

皇魔女は、マリルの方を見た。

「そうなの?」

 

「うん…僕らは…あいつらにだけは…勝てない。

奴らが…集落を襲ってきた…。僕も…立ち向かった。

けど…このザマだ…」

 

「影喰らい…」

アレイが、ぽつりとつぶやく。

 

「とにかく、お前が生きててよかった。他の連中は、どうなったんだ?」

 

「わからない…アリクと…僕は…逃げ切れたけど…他の…みんな…は…」

 

「そんな…」

 

「とにかく…リスウェに…向かって…くれ。あんた達が…頼りだ…」

 

マリルは、そこまで言って血を吐いた。

「マリル!」

 

「うっ…!はあっ…はあっ…」

その様子から、今のマリルの容態を察した。

俺はもう長い間人を殺してきた。故に、こういうのはすぐわかるのだ。

「まずいな…失血がひどい。術士さん達よ、止血剤はないか?」

 

「あいにく、切らしてしまっておりまして…」

 

「マジか…なら仕方ない」

持ち歩いている止血剤をマリルに飲ませた。

 

「これで、とりあえず出血は止まるはずだ。今のうちに手当と輸血を頼む」

 

「はい…!」

術士達はすぐに準備を始めてくれた。

 

「マリル…」

アレイは、心配そうにマリルを見つめていた。

そして、こちらにその目を移してきた。

「龍神さん…マリルは、助かるんでしょうか…」

 

「わからん。だが、信じる他ない。それより、リスウェに向かった方が良さそうだな」

 

「えっ?でも、樹海に行くんじゃ…」

 

「同族がこんなにされたってのに、黙ってられるか!」

 

「でも、相手はあなた達を食らう存在なのでしょう?」

 

「だから何だ!このまま黙ってりゃ、殺人鬼の名が廃る!

他にも生き残りがいるなら、全部助ける!

そして…みんなの(かたき)を討つ!」

 

すると、マリルが微かにうなった。

「マリル…!」

 

「頼む…僕らに…代わって…奴らを…」

 

「それ以上言うな!大丈夫だ…お前らの敵は、俺達が取る!アレイ、リスウェに向かうぞ!」

 

「は、はい!」

 

 

町を出ると、川がある。

この川はリスウェ湖に繋がっている。

マリルは、ここを下ってきたのだろう。

傷を負っても川を下れるあたり、さすがは白水兵と言ったところか。

 

「アレイ、力を送ってくれ」

 

「はい」

アレイに力を与えてもらい、川に飛び込む。

流れはやや急だが、関係ない。

全力で、流れに逆らって泳ぐ。

 

アレイの能力で遡って見た所、集落が襲われたのは昨日の夜のことで、生き残った白水兵達はマトルアに逃げ延びたらしい。

そして、その中にアリクもいたようだ。

 

マトルアの方では、アリクから状況を聞いたロザミが、落ちてきた連中をかくまって治療しているようだ。

これなら、心配はいらないだろう。

 

あとは、現地に行って状況確認だ。

そして、マリル達を…

集落を襲った影喰らいを、叩きのめす。

 

 

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