黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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被害確認

リスウェ湖には30分足らずでついた。

そして、白水兵達の集落へ向かった…

 

 

「…!」

先に門をくぐったアレイが絶句する。

「アレイ!なっ…これは!」

 

思ったよりひどいことになっていた。

家々がことごとく壊され、廃村のようになっている。

「ひ、ひどい…なんでこんな事に…!」

 

「くそっ…あいつら!」

影喰らいの連中は、殺人者を襲うだけではなく、家や物を壊し、集落をめちゃくちゃにしていく。

ものを盗っていったりはしないが、やってる事は山賊と同じだ。

 

「…アレイ、気をつけろ!まだ奴らがいるかもしれない!」

奴らは、殺人者を根絶やしにすることを目的としている。

それは文字通り、一人残らず殺すのだ。

故に、一見もういないように見えても、しばらくはあたりをうろつく。

 

そして、奴らは基本的には殺人者や祈祷師、吸血鬼以外の種族には手を出さないが、獲物とつるんでいるとなると普通に襲ってくる。

だからこそ、アレイの身を案じなければならない。

 

殺人者(俺たち)のために無関係な水兵を…それも、若い上に希少価値のある娘を傷つけるのは、断じて許されない。

「…わかりました。では…」

 

アレイは探知結界を張った。

「…この近辺には、もう影喰らいはいません。

そして、そこの家の中にまだ一人生存者がいます」

 

「!本当か!」

 

「はい。すぐに助けましょう」

 

そこ、ではよくわからないので、具体的にどの家なのかアレイに指さしてもらった。

それは、左半分が大きく崩れた家だった。

入口は、なんとか開いた。

 

「ここの、どのあたりだ?」

 

「あそこの梁の上に」

アレイは、天井の太い梁を指さした。

 

「わかった。…おーい、生き残りがいるなら出てきてくれ。大丈夫、俺は殺人鬼だ」

 

声を張り上げると、少しの沈黙の後にそいつが顔を出した。

それは、子供の白水兵だった。

 

「…!」

 

「殺人鬼…?てことは、僕らの仲間…?」

 

「そうだ。さあ、降りてこい」

両手を伸ばすと、その子は恐る恐る足を乗り出し、飛び降りてきた。

 

受け止めてみた感じ、大した傷は負っていないようだ。

 

「大丈夫か?」

 

「うん…ありがとう。…あれ、お姉さん、なんか雰囲気がみんなと違うね。もしかして、本物の水兵さん?」

少年は、アレイの方を見て言った。

 

「ええ、私は正真正銘の水兵よ。…生き残った人がいてくれて、よかった」

 

「母さんがかくまってくれたんだ。…でも、母さんはきっと、あいつらに…」

少年は、涙をこぼした。

 

「…そうか。それは…残念、だったな。

とにかく、マトルアへ行こう。あそこにみんな避難してるはずだからな」

 

「マトルア…?あそこに、父さん達もいるのかな…」

 

「わからない。だが、ここにいても危険だ。今はとりあえず、あそこでかくまってもらうといい」

 

「この子一人では危険ですね。私達も行きましょう」

 

「ああ。…歩けるか?」

 

「大丈夫。痛いところもないし」

 

「ならいいわね。龍神さん、行きましょうか」

 

 

 

そして、俺たちはマトルアへ向かった。

城の門をくぐり、ロザミに謁見して訳を説明すると、すぐにその子を保護すると申し出てくれた。

子供はどこも痛い所はないと言っていたが、それだけではわからないという事で精密な検査を受ける事になったようだ。

 

マトルアの町の中には白水兵はおらず、城の中の医務室でみんなまとめて保護されていた。

その中には、アリクの姿もあった。

 

アリクは右肩と右腕を折られたらしく、右腕全体にごついギプスをはめていた。

「あ…あんた達…久しぶり…」

 

「アリク!生きててよかった」

 

「アリクさん!その様子…もしかして骨を…?」

 

「そう…率先して奴らに向かったんだけど…返り討ちにされて、このザマよ」

 

「とにかく、命があってよかったよ。マリルから話を聞いて、急いで来たんだ」

 

「そう、だったのね…まったく、本当に勤勉なやつ…

うっ、痛っ…」

 

その隣では、モイが寝ていた。

モイは肋骨に深い傷を負ったようで、胸全体に包帯を巻き付けていた。

 

「モイ…!大丈夫か?」

 

「…龍神…それに、例の妹も…」

 

「マリルから話は聞きました。大丈夫ですか?」

 

「平気だよ…このくらいの傷、昔は何回もしたもんさ」

 

「そうなんですか…?」

 

「ああ…それに、あたしらは戦ってなんぼの異人だ。

ケガくらい、どうってことないよ。ただ…影喰らいにやられるのはいただけないね。

早いとこ、この傷を治してみんなを助けてやらないと…」

 

アレイは、あたりを見渡して言った。

「集落の人達にこんなことをするなんて…影喰らいって、本当に防人の仲間なんでしょうか」

 

「残念ながら奴らは、間違いなく防人の仲間だ。

俺たちに言わせりゃ、ただのケダモノどもだがな」

 

俺も、影喰らいに喰われそうになった事が何度かある。

その度になんとか逃げ延びてきたが、どれも奇跡と言っていいようなものだ。

たぶん、運に味方されてなかったら、俺は今頃ここにいないだろう。

 

奴らは防人の一種だが、俺達相手には恐ろしく凶暴になる。

その強さと獰猛さは凄まじく、そこらの異形やアンデッドとは訳が違う。

熟練の殺人鬼や無双者でさえ、下手をすればやられる。

 

(マーラス)(殺人者から見た殺人者以外の種族)は俺達を化け物だ怪物だと言って怖がるが、俺達から言わせれば影喰らいのほうがよっぽど怖い。

 

「龍神さん…影喰らい、怖くないんですか?」

 

「そんな感情はとうの昔に捨てたよ。

奴らは俺達の天敵…俺達は生き残る為に奴らと戦う。

ただ、それだけだ」

 

そして、俺は拳を握り、天井を見上げて誓う。

白水兵(こいつら)をこんな目に合わせた影喰らいを、全て殺す。

例え、この体がどんなに傷つこうとも。

 

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