黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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遭難、そして

翌朝、幸いにも雪は止んでいた。

寒さも、昨日までと比べるとマシになっている。

 

俺達は交代で風呂に入った。

そして最後…アメルが入っている間に、アレイが心配そうに言ってきた。

「龍神さん…昨日の夜、アメルに襲われたりしませんでした?」

 

「ん?ああ、まあ…」

 

「ならよかったです」

そしてアレイは、申し訳なさそうに言った。

「水兵って、気に入った人には遠慮なく関係を迫るんです。特に龍神さんは、私達を助けてくれた前例があるので…きっと、みんな狙うと思います。

これからも、私以外のレークの水兵に会う事があったら、その点に留意しておいて下さい」

 

やはり、そうなのか。

「わかった…ありがとな」

 

 

 

町を出て森に向かう。

 

アメルは、まるで騎士のような立派な槍を背負っている。

水兵…というか海のものの槍は三叉のイメージがあるが、アメルの槍は見た感じ普通の槍だ。

二メートルくらいある柄は黒く、刃は鈍い銀色の光沢がある。

 

「その槍が君の武器か」

 

「そうよ。ガラムレトって言うの」

 

「誰が名前をつけたんだ?」

 

「私。これはね、私が魔力と精魂を込めて鍛えた、この世に一本だけの槍なの」

 

ここで、アレイが軽く解説してくれた。

 

「ガラムレトっていうのは、昔海人の間で使われてた言葉で「火の槍」って意味なんです」

 

「へえ…てことは、その槍には火の力があるのか」

 

「ええ。この槍には、火の魔力が宿ってる。まあ、私自身の術も火属性なんだけどね」

 

「水兵にも火属性がいるのか。…あれ、てことは、結果的に火と水を使えるのか」

 

「そうよ。火と水は相性が悪いって思われがちだけど、術で合わせて使う分には全然そんなことないの」

 

「まあそれは…な。ところで、君は戦闘の経験はあるのか?」

 

「もちろん。私、これでもセレンと同じくらい戦い好きなのよ」

 

「ほう…」

俺がそう言うと、アメルは妖しげに笑った。

 

「信じてないの?…まあ、見てなさい。戦いになったら、私の槍さばきをしかと見せてあげる」

 

 

 

そうしてるうちに森に着いた。

 

この森のどこかに奴らが…という事で、とにかく歩き回った。

どこにいるかはわからないが、とにかく歩き回って見つけてやる。

 

 

…だが、そんな無計画に歩き回った所で見つけられるはずもなく、あっという間に数日経ってしまった。

しかも、デタラメに歩き回ってるうちにアレイ達ともはぐれてしまった。

 

こんな事なら、影喰らいが森のどこにいるのか、ロザミなりイクアルなりに聞いておけばよかった。

 

      

 

 

 

       ◇

 

 

 

龍神さんとはぐれてもう3日になる。

アメルも、どこかへ行ってしまった。

今、どの辺にいるのかもわからない。

 

また雪が降ってきた。寒い。

あれからだいぶ歩いたけど、ただ疲れただけだ。

もう日も暮れる。

 

「はあ…はぁ…」

寒さと疲れが限界に達し、倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

「アレイちゃん」

聞き覚えのある声がした。

「え…キャルシィさん…?てことは、これは夢…?」

 

「そう、夢よ。それより、あなたに伝えないといけない事がある」

 

「なんでしょう?」

 

「あなたと彼らは生きてる。でも、今までとは違う危険が迫ってる…気をつけなさい」

 

「どういうことですか?」

 

「あなたは助かった。でも、これは次にくる脅威の前に訪れた、ひと時のかりそめの安心に過ぎない。

彼はともかく…彼女とあなたは危ないわ。くれぐれも油断しないようにね…」

そう言い残して、キャルシィさんは去っていく。

 

「ちょっと、待ってください…!」

 

 

 

 

目が覚めた。

そこは、小屋のような建物の中だった。

どうやら、誰かが私を見つけてくれたようだ。

 

(私…助かったのね)

 

でも、すぐに夢で見た事を思い出した。

キャルシィさんは、未来に起きる事を夢に見る事ができ、誰かの夢に入ってそれを伝えることもできる。

 

(危険が迫ってる…って言ってた。でも…何のことだろう?)

 

その時、部屋の扉が開いた。

そして、一人の女性が入ってきた。

 

「よかった…目が覚めたのね」

 

「わ、私は…」

 

「森の中で倒れてたの。ここは私の家よ」

女性は白い長髪に赤い目をしている。

なんだか、不思議な雰囲気の人だ。

 

「あなたが助けてくれたんですか。ありがとうございます」

 

ここで、アメルが部屋に入ってきた。

 

「あ!アメル!」

 

「アレイ…起きたのね。よかった」

 

「無事でよかった!」

 

「あなたこそね。私も、さっき起きたところなの。この人に救われたわね」

 

「いえいえ…あなた達を助けたのは、善意でやったことだから」

 

「でも、おかげで命拾いしたわ。ありがとう」

アメルは、女性に頭を下げた。

 

「…あっ、そうだ!龍神さんは!?」

私がそう言うと、女性は残念そうに言った。

 

「ごめんなさい、見つけられたのはあなた達だけなの」

 

「そうですか…でも、助かってよかったです」

 

「とりあえず、食事にしましょう」

 

 

出されたのは野菜サラダとカレー。

お腹が空いてたのもあって、とてもおいしかった。

 

……なんか、ふと龍神さんに初めて会った時のことを思い出した。

 

 

食事をしながら聞いたのだけど、女性はカナという名前で、ここに数百年前から住んでいるらしい。

殺人者系種族らしいけど、何もしていないので影喰らいには狙われないという。

 

 

 

 

「ごちそうさま。ねえ、少し休んでいい?」

 

「ええ。じゃ、私は片付けてくるわ」

 

そうして、女性は去っていった。

 

 

 

「んー、おいしかった!」

 

「本当ね。こんな森の中で、あんな美味しいものを食べられるなんて思わなかった」

 

「アメル、少し休んだら、龍神さんを探しに行きましょうか」

 

「そうね。この寒さだもの、ほっといたら凍えてしまうわ」

 

アメルは携帯を取り出し、何かし始めた。

「何してる?」

 

「ネットが繋がるか試してみようと思って…」

 

「あっ、そう。どうなの?」

 

「一応は繋がるみたい」

 

「そう…」

 

私は座り込み、ぼんやりと空を見上げた。

 

この部屋は暖かい。

長居すると、外には出たくないと思ってしまう。

 

でも、そういう訳にもいかない。

アメルにも言ったけど、龍神さんを見つけないと。

 

「龍神さん…どこにいるんだろう…」

 

 

 

 

その時、空間に奇妙な歪みが走った。

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