黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
「…!」
私たちは振り向いた。
そこには、なんと龍神さんの姿が。
「龍神さん…!?」
「…二人とも、無事でよかった!」
「あなたいたのね。てか…」
「それより、見ろ!」
彼の見た方には、先程の女性がいた…
短剣を手にしていたけど。
「彼女が…どうかしたの?」
「…わからないか!?こいつは…!」
と、女性が龍神さんに斬りかかった。
「余計な事言わないでもらえる?」
「なんでだ?すぐにわかる事だろう。それに、どの道彼女らも知ることだ」
「…それも、そうね」
途端に、部屋に異様な魔力が満ちた。
「水兵、だっけ?あなた達にも教えてあげる。私はカナ・エルネイア。この森の食人鬼よ」
私は心の底から驚き、そして震えた。
「食人鬼…?」
アメルはピンときてないようなので、私が説明した。
「食人鬼は、他種族を殺して、その肉を食べる事で生きていると言われる種族。殺人者系の上位種族よ」
「えっ…!?」
食人鬼は、知名度は殺人鬼や無双者に比べると低い。
でも、殺人鬼以上に数が少ない種族。
そして、殺人鬼と同等かそれ以上に、私達の脅威となる種族でもある。
「そう…私は、この森に来る奴を狩って生活してるの。そしてあなた達は…」
彼女は魔力の満ちた短剣を私達に向けてきた。
「な、何する気…?まさか、私達を…!?」
「ふふ…海人なんて初めて。どんな感じなのかしら」
短剣を舐めて笑う彼女の前に、龍神さんが躍り出た。
「おーっと、残念だがそうはいかないね」
「なんで?私とあなたは、同族でしょう?」
「ふん…俺とお前は、似て非なる存在だろうが」
食人鬼は殺人者系の上位種族ではあるけど、殺人鬼や無双者とは少し縁が遠く、どちらかと言うと
そして屍食者は異人や人間の肉を食べて生き、死んでも復活する事がある、アンデッドに近い異人の一種。
「あら、知ってるの?」
「当然だ。俺は吸血鬼狩りだからな…アンデッドに関係ある事は、徹底的に調べてる」
「へえ…」
女性…もとい食人鬼カナは、龍神さんに怪しげに笑いかけた。
「それで?なんであの子達をかばうわけ?」
「あの二人は、わけあって預かってるんだ。だから、こんな所で死なせる訳にはいかないんだよ」
「ふーん。なら、守ってみなさい」
カナは、短剣を右手にも持ち出した。
そして、その魔力が更に強くなった。
この魔力…今までの異人とは格が違う。
これはまるで、歴戦の魔女のような…
カナは短剣を払い、斬撃を3発飛ばした。
それらは全て、私達に向かってきた。
技名の宣言がなかったので、反応が遅れた。
でも、アメルが槍で斬撃を弾き飛ばしてくれた。
「…!」
「技の銘を言わない…って事は、本気なのね」
異人の技は、出す時必ずしもその技の名前を口に出す必要はない。
まあ、私はかっこいいから…っていう理由で技名を宣言して、技を出してるけど。
私だけじゃなく、異人はみんなそうだろう。
でも、それがない…となると、それだけで殺意というか…気迫が伝わってくる。
みんなが自然にやってる儀式的作法をやらないと、それだけで相手に格の違いを感じるのは、なぜだろう。
「本気?まさか。私は、ただ獲物を狩るだけ」
そう言いながらも、短剣を2本同時に投げてきた。
それはブーメランのように回転しながら飛んでくる。
「霜降のスノーラル」で動きを鈍らせ、確実にかわす。
そして、カウンターとばかりに矢を放つ。
「[ターンブレイド]」
カナは矢を躱したけど、すぐに背後から矢が戻ってくる。
でも、それもわかっていたかのようにかわしてきた。「!」
「返り射ち系の技ねぇ…なるほど」
カナは、私を感心したような目で見てきた。
「それなりに経験はあるのね。なら、こんなのはどう?」
短剣を構えてぐるんと一回転し、短剣を投げてきた。
避けた…つもりだったのだけど、短剣が戻ってきた。
そしてそのまま私のまわりをぐるぐると回り、全身を切り刻む。
短剣は私の頭から足までを斬った後、カナの手に戻った。
「アレイ…!」
おびただしい量の血が、私の体から流れる。
指を落とされたりはしてないけど、痛みで指を動かせない。
返ってきた短剣についた血を舐めとり、カナは言った。
「そこそこね。なんか、ちょっと人間の血に似てる。
もしかして…人間上がり?」
「だったらどうなの?」
アメルが飛びかかる。
カナはアメルの槍を受け止めたけど、アメルが槍を炎上させると「あつっ!」と声を上げて手を離した。
そこに、アメルは槍を打ち込んだ。
「…っ!」
カナが短剣を突き出すと、アメルは少しバックし、槍を突き出してしゃがみ、片足立ちでぐるりと一回転してカナを転ばせ、首目掛けて槍を打ち付けた。
間一髪、カナは槍を回避して跳ね起きた。
「あなたも、やるじゃない?これは、狩り甲斐のある獲物が来たものね…」
カナが不気味に微笑む所に、龍神さんが斬りかかった。
異人・食人鬼
その名の通り異人・人間問わず他者の肉を主食とする殺人者系の種族。
通常の食事をとることもあるが、基本的には他種族を捕食して生きており、死亡しても復活する事がある。
捕食した相手の魔力や能力を取り込む能力を有する者もいる。
昇華すると反逆者になるため分類上は殺人者系の上位種族だが、殺人鬼や無双者と比べると屍食者に近い。