黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
振り返ると、見覚えのある人が扇を手にして立っていた。
それは、私の魔法服を作ってくれた人。
「カティーヤさん!」
そう、カティーヤさんだった。
前と同じ服を着ているのにはちょっと違和感を感じたけど…まあ、そんな事はいい。
「知ってるの?」
アメルが聞いてきた。
「…そっか、アメルは知らないんだっけ。あの人はカティーヤさん、無双者よ」
「無双者…?」
アメルは、降りてきたカティーヤさんに言った。
「よく知らないけど、ありがとう」
「…」
カティーヤさんは、それに反応してないようだった。
「…あれ?なんで反応しないの?」
そうだ、アメルにもカティーヤさんの事を教えなきゃ。
「あっ、待って。あの人はね、口じゃなくて心で会話するの」
「心で?」
「そう。だから…」
ここで口を閉じ、心の中で言う。
『こうやって、心の中で喋って』
「!?」
アメルは驚いたようだった。
まあ、それはそうだろう。
『これは…どういうこと…?』
『彼女の異能よ。お互いに、心の中で言った事が聞こえるようになるの』
『そういうこと…』
カティーヤさんが入ってきた。
アメルは、彼女の方を見た。
『どうして、こんな回りくどいことを?』
『それは…まあ…その…』
と、ここでカナが立ち上がってきた。
「無双者…ねえ。殺人鬼に続いて、無双者も出てくるなんて。ま、食料が増えるだけだからいいんだけどね!」
私とアメルは身構えた。
『ねえ…』
そこに、カティーヤさんが語りかけてきた。
『彼女、なんて言ったの?』
『えっ?』
驚くアメルに、カティーヤさん自身が説明した。
『ごめんね…私は、口で言われた事を、理解するのは苦手なんだよ』
アメルは一瞬え?という顔をしたけど、すぐに納得したようだった。
『そう…それは悪かったわね。
彼女は…要は、私達を食べる、って言ってる』
『ふーん。まあ食人鬼…だし、普通か。
まあ、私が来たからには…大丈夫だけどね』
なんかちょっと、言葉の選び方が変というか…分かりづらく感じた。
大丈夫、ってどういう意味だろう。
『おっ、ありがたい増援だな』
龍神さんも、語りかけてきた。
『龍神…かい。ここからは、私も参加させてもらうよ』
『ありがとな。助かるよ、マジで』
「何…?何なのあんた達!口で喋りなさいよ!」
カナが何やらごねている。
『…そっか、あいつには聞こえてないのね、これ』
『そうだよ。…私の言葉は、仲間にだけ伝わればいいからね』
言葉…?
この人は、自分の考えを口に出している訳ではない。
それを、言葉と言えるのだろうか?
まあ、大したことじゃないかもしれないけど。
『アレイ、アメル。あとは、カティーヤに任せよう』
龍神さんが語りかけてくる。
『えっ?大丈夫なの?』
『心配いらんさ。カティーヤ、いけるか?』
『いけるともさ』
そして、カティーヤさんは扇を顔の横に構えた。
「さあ、ここからは私が相手だ」
口でそう言ったのには、ちょっと驚いた。
「ふふ…ああそう!」
カナは魔力の刃を飛ばしてきた。
結界を張ろうとしたけど、その前にカティーヤさんが扇で風を起こして刃を跳ね返した。
『…!』
『あなた、風属性なのね…』
「私の刃を跳ね返すなんて…やるじゃない。なら、これはどう?」
カナはカティーヤさんに飛びかかる。
そして、龍神さんの時と同じように乱闘になる…かと思いきや、カティーヤさんはカナの攻撃を全て受け止めていた。
さらに、その上で扇を振るい、技も繰り出した。
詠唱はなかったけど、大きく円形に扇を振るって風の波動を起こしたり、広げた扇から炎を
というか、あれ奥義じゃないのだろうか。
「っ…」
「もう、終わり?」
傷を受けて手を地面に着くカナに、カティーヤさんは煽るように言った。
「そんなわけないでしょ…」
カナは目を光らせて飛び上がる。
そして、大量の魔力を放出し始めた。
「な、何する気…!?」
「きっと、奥義を使おうとしてるのよ!」
そして私は心の中で言った。
『カティーヤさん…!』
『なーに…大丈夫さ。私を信じなさい』
カティーヤさんは、手を精一杯伸ばして扇を広げる。
正直、これで防げるのか心配だ。
でも、かと言って結界を張ったとして、防げる保証はない。
なら、素直に彼女に任せたほうが良さそうだ。
そして、カナは「それ」を繰り出す。
「奥義 [
無数の刃が私達に襲い来る。
でも、カティーヤさんが扇から広げた風の結界は破られることなく、怒涛の攻撃を跳ね除けた。
「すごい…!」
「なっ…!」
技が終わると、すぐにカティーヤさんは動き出した。
「悪くはなかった。けど、ちょっと弱いね」
扇を広げ、カティーヤさんは奥義を放つ。
「次は私だ。奥義 [龍皇炎演舞]」
大きな緑の蛇のような生物…竜、だったか。
それが現れ、強烈な炎を吐く。
カナは火に包まれ、もだえ苦しんだ。
そこへ、さらにカティーヤさんは畳み掛ける。
「奥義 [
雨の混じった暴風が吹き荒れる。
風に乗った滴が、カナの体を切り刻む。
やがてカナの姿は暴風雨に遮られて見えなくなり、程なくして暴風雨は真っ赤になった。
カティーヤさんが技を外すと、そこにはカナの姿はなく、真っ赤な水とぐちゃぐちゃの肉片や皮だけが残っていた。
「うっ…!」
その様子に、私とアメルは吐き気を覚えた。
『はい、おしまい』
カティーヤさんは笑った。
『おしまい…って』
『食人鬼も、一応は私達の仲間。最期は無惨なものになって当然さ』
『まあ…そうだな。何はともあれ、ありがとなカティーヤ』
『これくらいお安い御用だよ。さて、私はこれで』
『えっ?』
『私はミジーに行ったんだ。そしたら皇魔女が、東の森に…例の二人が水兵を連れて向かった。けど、心配…だから、念の為行ってやってくれ、ってね。だから…来たんだよ』
『皇魔女…?あ、イクアル陛下ね。あの人、なんやかんやで私達の事気にかけてくれてるのね』
『あいにくだけど、私はこれ以上助けてやれない。
ミジーで、私が作った服の展覧会があるからね』
『あ、あなた服を作ってたのね。何て名前で作ってるの?』
『私は、メルティー、って名前で、やってるよ』
『えっ…!?』
アメルだけでなく私も驚いた。
「メルティー」は、有名なファッションデザイナー兼ハンドメイド作家。
その作品たる服は、どれも独特なセンスが光る秀逸なデザインのものばかりで人気が高く、店で買おうとすると結構な値が張る。
メルティーは女性だと言われているけど、種族や年齢、顔は一切不明の謎多き人物として知られている。
そして私も、彼女の手掛けた服を持っていたりする。
『あなたが、メルティーだったの…!?』
『そうだよ。もしかして、私が作った服を持ってるのかい?』
『ええ…あなたの服は、私達の間でも人気よ。私だって、三着ばかり持ってる』
『私もです。まさか、カティーヤさんがメルティーだったなんて…』
『はは…嬉しいね。ま、とにかく私はここまでだ。それじゃ、頑張ってね』
『はい。ありがとうございます』
カティーヤさんは、家を出て飛