黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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悪風顕現

最初に、私達それぞれに一人ずつ影喰らいが突っかかってきた。

私は「祭事斬り」を決め、一撃で相手を真っ二つにした。

カイナさんとニルパさんもまた、技を出して相手を沈めていた。

そんな中、龍神さんは技も使わずに相手を斬り捨てていた。

 

すぐに次の敵が押し寄せてきた。

先頭のものが槍を構えて回転しながら突っ込んできたので「針氷樹林」で返り討ちにし、次に来た斧持ちを「水平閃光」で近づかせずに倒す。

そして素早く弓を抜き、「コスモウェーブ」で目の前の敵全てを倒す。

 

横に目を移すと、ニルパさんが剣持ちの相手に手を焼いているように思えた。

なので、魔弾を飛ばして相手を吹き飛ばす。

ニルパさんはお礼を言ってくれたけど、私はその顔を見ずにその横の敵に魔弾を放った。

こう言ってはなんだけど、わずかな事に反応して会釈してる暇はないのだ。

 

固まった敵を「ブリザードレイ」で片付けようとしたら、カイナさんが岩を落として倒してくれた。

それで気づいたのだけど、カイナさんはかなり善戦している。

ハンマーを派手に振り回し、時折術を使っては敵を潰したり壁に叩きつける。

それは、おおよそ皇魔女のものとは思えない戦い方だった。

 

「[ダークネルス]!」

一度に複数の弾を撃ち出すニルパさんの術で、一気に7人の影喰らいを倒した。

さらに龍神さんも技を繰り出し、8体の影喰らいを一撃で仕留めた。

そうして、あっという間に影喰らいの群れは片付いた。

 

その速度に、リッチは驚いていた。

「あら、驚いてるの?」

 

「むむ…よもやここまで出来るとは。しかし、私は簡単に倒れませんぞ!」

リッチは飛び上がり、杖を目の前で浮かべる。

「我が主の力、お見せしましょう。風法 [須臾(しゅゆ)の風禍]」

リッチの背後に青くて丸いものが現れ、そこから猛烈な風が吹き出す。

 

「ううっ…!」

カイナさんが偶像を取り出し、何かを唱える。

すると、暴風に吹かれても平気になった。

異能を使い、私達が飛ばされないようにしてくれたらしい。

リッチはそれに気づいたようで、「なっ…!」と驚いていた。

「ならば、次はこうです!風法 [カーレイストム]」

杖を振りかざし、丸い風の球を生成した。

それは徐々に大きくなり、やがて破裂すると同時に強烈な風圧を放った。

けれど、やっぱり私達は平気だった。

 

「あら、こんなものかしら?」

 

「…ば、バカな!これは流未歌様の力…そんな用意に防がれるはずが…!」

 

「私は魔女ですよ?再生者には敵わないまでも、その部下などには遅れを取りません」

 

「っ…おのれ!」

 

 

その時、天井に異変が起こった。

 

奇妙な風が吹き、謎の黒い空間が現れた。

そして、その中から何かが現れた。

 

 

それは、一人の若い女だった。

髪は白、目は緑色で、赤い和服を着ている。

一瞬異人のように見えたけど、すぐにその正体に感づいた。

 

「…!流未歌様…!」

リッチは、彼女の姿を見てひさまずいた。

 

「この女が、再生者流未歌…!?」

ニルパさんが声を上げたけど、それ以外は誰も喋らなかった。

 

「おぉ、我が主よ!今一度、この哀れな異人どもに制裁をお与え下さ…」

言い終わる前に、リッチは吹き飛ばされた。

 

「…ジストよ。数十もの生者を変えておきながら、たかだか4人の生者に手を焼く弱者など不要だ」

そして、流未歌はこちらを見てきた。

自然と、龍神さんとカイナさんが私の前に出た。

 

「ほう、ミジーの皇魔女と…お前か」

 

「久しぶりだなあ流未歌。少しは踊りも上手くなったか?」

 

「ふん…お前に見せるようなものはないわ。ものの真の価値を見抜けぬ者に見せるものなど、持っていない」

 

「価値って言葉の意味を知らんのか?昔と一緒だな。そもそもの根本的思想が間違ってるのに、価値もクソもあるか」

 

「…貴様にはそうとしか感じ取れぬのだな。だが、それはお前が未熟で愚か者であるからに過ぎない。

して、皇魔女よ。お前は私を知っているか?」

 

「もちろん…忌まわしき再生者、皇京流未歌。その名は、この地の誰もが知っている!」

 

「そうか…まあそうだろうな。言っておこう、お前達蝿がどんなに喚こうと、運命は変えられぬ」

 

蝿、という言い方にカイナさん達が驚いていたけど、私はそうでもなかった。

流未歌は根本的に生者を見下している。

かつてシエラに倒された時も、彼女らを始めとした生者を蝿と呼んで卑下していた。

 

「私達が蝿であるならば、お前は何だと言うのです!」

 

「私は風だ。ただ、一介の風。ただし…意思がある風だがな」

そして、流未歌は私の方へ漂ってきた。

 

「アレイ…だったな。星羅こころの妹と聞いたが…なるほど、確かに似ている。あいつにも、あの陰陽師にも」

 

「彼女を覚えているの?」

 

「当然だ。あの女共は、私が見てきた中で最も哀れな者たちの一人だった。よもや私達に楯突いた挙げ句、あのお方にまでも楯突くとはな…」

 

私は、一つだけ聞いた。

「死の始祖は…まだ生きているの?」

 

「あのお方は兼ねてより生きてなどいない。あのお方は『死』そのもの…私達が封じられている間も、彼の地で存在し続けていた。そして今は、再び私達の指導者となられた…」

 

「死の始祖…?奴が、またお前達を指揮していると!?」

カイナさんが声を上げる。

「これ以上言う必要はない。星羅の妹よ。詳しい事を知りたくば、あるいは自身の因縁に蹴りをつけたくば、我が住処まで来るがいい…生きては帰れぬ事を承知の上でな」

 

そうして流未歌は消え、黒い空間も消えた。

 

 

 

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