黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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風の通り魔

城を飛び出し、町へ繰り出したのはいいけど、どこに通り魔がいるのかわからない。

それは龍神さんも同じなのか、「誰か、餌がいればいいんだがな…」とぼやいていた。

だから、私が囮になりますと言った。

彼らが流未歌に操られているなら、私を狙ってくると思ったからだ。

 

でも、彼はそれを良しとしなかった。

「それはダメだ、危険すぎる」

 

「なら、私の分身を作って、それで誘い出すのはどうでしょう?」

 

「分身?作れるのか?」

 

「太陽術を使えば簡単にできます」

 

「ふーむ、分身か…微妙なところだが…まあ、いいか。試してみよう」

 

「はい」

私は太陽術の「幻日の鏡」を使い、「(よう)」の影を作り出す。

月術などで生み出す「(いん)」の影とは逆の性質を持つ影で、実体と影があり、動く速度も本人と同じだ。

ものをすり抜けたり攻撃を無効化したりは出来ないけど、攻撃を受けてもすぐには消えない。

要は、限りなく本人に近い影なのだ。だから、囮に使う分には申し分ない。

 

ちなみに、これは私が自分で身につけた知識じゃない。

以前取り込んだ殺人鬼の記憶に由来するものだ。

 

「何をすればいいの?」

呼び出した影は、私に礼をしてそう言ってきた。

 

「この町に通り魔がいるらしいの。でも、どこにいるかがわからない。だから、私の代わりに彼らをおびき出す囮役をやってほしい」

 

「…わかった」

影は何も手にせず、町中へ歩き出した。

まるで、レークにいる時の私のように。

 

「寄ってきたら、弓で仕留めましょうか」

 

「いや、奴らは反射神経が優れてるから、弓は躱される可能性が高い。俺が電撃で気絶させる」

 

「なら、私も術を使います。氷に閉じ込めて、彼らを拘束します」

 

「そうか…なら、やってもらおうじゃんか」

 

そうして、私達は隠れながら影についていった。

 

しばらくしても、それらしいものは現れない。

なんか、自分で言っておいてなんだけど、本当に食いついてくるか不安になってきた。

「大丈夫でしょうか…」

そう口走りそうになったその時、一人の男がさっと現れ、影に近づいてきた。

その男は影に対して、レークの水兵である事を確認してきた。

影がそれを認めると、次は私の名前を言ってきた。

「アレイ・スターリィ…で間違いないか?」

 

「…ええ、間違いないわ」

 

「そうか。…来てもらおうか」

男が影を連れて行こうとした瞬間、龍神さんが術を放った。

男はたちまち意識を失い、その場に倒れ込んだ。

 

私は手を伸ばし、(てのひら)を自分の方に向けて手を握るように動かした。

これは、「それを持って、こっちに戻ってきて」という影への指示だ。

もちろん、影は男を担ぎ上げて無言でこちらへ戻ってきた。

 

「下ろして」

私が下ろさせた男を、龍神さんはまじまじと見た。

「…やっぱり、通り魔だ。アレイ、拘束できるか?」

 

「はい。…[氷閉じ]」

氷で、手錠のような形で男の両手を拘束し、さらに全身を氷に閉じる。

相手は殺人者だ。決して油断せず、念には念を入れる。

 

「まだいますか?」

影が、龍神さんに尋ねた。

「ああ…まだ気配がする。だが、ここではもう今のやり方は使えないな、他の所に行こう」

 

 

 

そうして、別の通りにやってきた。

再び影を一人で歩かせると、やはりすぐに通り魔が現れる。今度は一気に4人、固まってだ。

「例の妹だな?一緒に来てもらう」とか「やっと見つけられたな…さっさとあの方に突き出そう」とか言っているあたり、やはり流未歌の下僕らしい。

それを聞いて、私は自然と術を放っていた。

「氷法 [ブリザードレイ]」

 

 

通り魔たちは、私の術で簡単に気絶した。

どうやら、氷属性の攻撃には弱いらしい。

「見事だ…というか、これが一番いいかもな。奴らは基本風属性だから、氷には弱い。変に俺が手を出すより、君に任せたほうがいいかもしれん」

 

「それなら、任せてください!」

私は喜んで引き受けた。

なぜかはわからないけど、彼らを捕えることに喜びを感じられたのだ。

 

 

その後、私達は次々に通り魔を捕まえていった。

彼らは、私の影に面白いくらい食いついてくる。

なんと、1時間程で全ての通り魔を捕まえられた。

まるで、釣りをしているかのようだ…海人(私達)は釣りは嫌いだけど。

 

「もう気配はないな…城に戻ろう」

龍神さんがそう言い、私は影にお礼を言った。

「ありがとうね。あなたのおかげで、だいぶ楽が出来た。『影武者のあなたに感謝を』」

最後の言葉は、生み出した影を消す時に言う言葉だ。

因みに「陰」の影を消す時には『不正完了』と言う。

私の影は、笑顔で消えた。

 

 

城に戻り、全ての通り魔を捕縛したことをシルトさんに伝えた。

シルトさんは、国に34人もの通り魔がいた事に驚きつつ、私達に感謝の言葉をかけてくれた。

そして、通り魔達には精神鑑定をかけた上で、流未歌に魅了されている者には相応の処分を下すと言った。

 

その際、私はシルトさんに言った。

「可能なら、流未歌がどこにいるか聞き出して下さい」

 

シルトさんは、頷いた。

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