黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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決闘・2

さっきの相手と同じように「スレイブレイト」を放つ。

一撃では倒せないにしても、多少はダメージを与えられるだろう。

 

と思ったら、剣で魔弾をはねのけてきた。

結構な速度で飛ばしたはずなんだけど。というか、一般人のアンデッドなのにそんな高度なことができるなんて。 

色々思うところがあったけど、落ち着かないとと自分に言い聞かせた。

 

よく考えると、反射されなかっただけマシかもしれない。属性耐性である程度軽減できるにせよ、魔弾をそのまま返されると無視できないダメージを受ける。

それに、そもそも自分自身や味方の攻撃が跳ね返ってくることほど恐ろしいことはない。

 

戦闘で一番怖い攻撃は何か?と聞かれたら、私は「敵に回った自分や味方の技や攻撃」と答える。それは、姉の奥義を見たことがあるからこその答えだ。

 

私の姉は、奥義を7つ持っている。そしてその中に「体移しの鏡(ジェイルミラー)」と「翻しの翼」というものがある。

前者は相手グループの攻撃対象を強制的に仲間のうちの誰かに変更する、というもので、後者は10秒間のうちに自分に使われた技をすべてそのまま跳ね返す、というもの。

あまり見かけない効果の奥義だけど、その威力は見かけ以上に凄まじい。特に体移しの鏡(ジェイルミラー)は凶悪で、部隊を組んでいる相手に大して絶大な威力を発揮する。

 

姉は悪名高い再生者であるが故、多くの国や都市が重装備をさせた討伐隊を送ってくる。けれど、それらはいずれも全滅する。その最大の要因が、この体移しの鏡(ジェイルミラー)なのだ。

討伐隊はみんなで集団行動し、隊列を崩さず戦うことを前提とした訓練を受けている。だからこそ、思いがけず隊列が崩れると総崩れになる。

もちろん単独でもある程度戦えるのだろうけど、焦れば本領を発揮することは難しい。そうして、無惨にも殺されていく。

 

そして、姉は高位のアンデッドであるため、殺した相手を部下として蘇らせることができる。

今、姉は数多くのゾンビなどの部下を従えているけど、それらの大半はかつて自身を倒すためにやってきた討伐隊や傭兵、刺客のなれの果てだったりする…。

 

恐ろしいことだ。けれど、私にはどうにもならない。

それに、姉はなんやかんやで私のことは守ってくれているし、私もどんな形であれ、姉がいてくれて嬉しいと思っている。だから、私はこの件には口出しできない。

 

 

…だからこそ、技を反射したり、攻撃対象を切り替えたりされることの恐ろしさがわかる。

やられないうちに、やらなければ。

 

「氷閉じ」と「霜降のスノーラル」を重ねがけ、さらに足を撃って地面に固定する。

ここまですれば、しばらくは動けないはずだ。

弓に魔力を循環させ、弦を引き絞り…なんとか準備を終えられた。

 

「奥義 [破魔ノ矢・極光]」

久しぶりの奥義を放つ。

威力もそうだけど、何より耐性を完全に無視できるので、かなり有効打になるはずだ。

しかも、矢から円錐形に光が広がる都合上攻撃範囲も広く、回避されるリスクも低い。

 

強力な奥義だけど、ここまでしばらく使ってこなかった。別に何か特別な意図があったわけじゃない…けど、結構魔力を消耗するし、あまり乱発できるものじゃない。

一撃で仕留められる状況の時に使うのがベスト…なんだけど、果たしてうまくいくだろうか。

 

そう思ってたら、見事決まった。

強力な攻撃を受けずに済んだのは幸いだったけど、今になって後悔した。

まだあと4人いるのに、こんなに魔力を使って大丈夫だろうか。

…まあ、技は魔力を使わないものが多いし、なんとか乗り切ろう。

 

5人目も一般人のマーラヴだった。武器は私と同じ弓。

どれほどの技量を持っているのだろう。まずは、様子を見よう…

そう思った直後、右目の横をかすめ飛んでいった矢ににわかに恐怖を感じた。

 

そうか…何となくわかる。あの弓は、「乾きの弓」だ。水に棲むものに特効を持つ弓。

もとは魚や水棲の異形を倒すために作られたものらしいけど、どういうわけか水に棲む異人にも特効がある。

もし私があの矢を受ければ、手痛いダメージを負うことになるだろう。もちろん回避に念を入れるつもりだけど、万が一のため…

 

「[残像盾]」

残像を作り出し、次に来る攻撃を確実に回避できるようにしておく技を使う。

1回の攻撃にしか効果がないけど、保険として使っておく意味はあるだろう。

というか、考えてみれば私は盾を持っていないのだから、むしろこれをメインの防御手段として使ってもいいような気もする。

術を使うにしても魔力を消費するし、何より基本は回避なのだから、それが一番いいかもしれない。

 

と、向こうは「コスモウェーブ」を出してきた。

放った矢から衝撃波を放ち、広範囲を攻撃する技。

範囲が広いので回避は難しい。私は空高くジャンプしつつ矢をつがえた。

正直食らいそうな気がしたけど、一発だけなら防げるしなんとか。

 

「[光陰一矢]」

空中で技を決め、マーラヴの胸を撃ち抜いた。

膝をついたところで素早く追撃を仕掛けたのだけど、結界で防がれた。着地と同時にもう一度矢を放ったけど、これも同様だった。

 

それからはしばらく互いに弓技を出し合った。

向こうは威力のある長弓を使っていたし、「レイヴンバレット」や「マルチボルト」などの私も扱える技を使ってきたことから、結構な実力があるようだ。

 

また、向こうは「アローシールド」を使ってきた。

これは私は使えない技だから効果がよくわからなかったけど、おそらくは矢などの間接物理攻撃のダメージを減少させるもので、その効果は半分ほどだろう。

実際、それまではレイヴンバレットを一撃決めると怯んでいたのに、この技を使ってからは二発でやっと怯むようになった。

 

このままでは決着に時間がかかるので、マチェット…もとい星巡りの刀を用いた奥義、もしくは術を使いたいところだけど、魔力が回復するにはまだ少し時間がかかる。

となると、しばらくはこのまま撃ち合いを続けるしかないか。

 

けれど、そうなると体力が持たない。

心がどうあれ、体は次第に疲弊する。

弓を引くのも結構体力を使うし、それに加えて回避したり技を出したりしてるから尚更だ。

向こうはガンガン攻撃してくるから、休む間もない。かと言って、まさかここで疲労回復薬を飲むわけにもいかない。

 

この上は、ダメ元で強力な技を出して押し切るか。

どうせ、私が倒れてもまだ控えの人達がいる。

ならば、せめて敵を少しでも弱らせられるように…そして、命を落とさないように戦おう。

 

 

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