黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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決闘・4

「…はっ!」

ふっと目が覚めた。

疲れもあって、つい眠ってしまったようだ。

 

「お、お目覚めか?案外早かったな」

私の顔を覗き込んで、ラステが言ってきた。

「…今の状況は?」

 

「まあ…ご覧の通りだ」

辺りを見渡すと、ライマーはまだ戦っていた。

今もまた、風の術を使って攻撃している。

けれど、苦戦しているようだった。

 

「やっぱり、風じゃあ分が悪いか…」

ところで、今彼が戦っているのは短剣持ちのマーラヴで、私が敗れたのとは違う。

それについて聞いてみたら、今のは7人目で、ライマーはすでに1人抜きを決めたという。

 

「あいつは魔法専門みたいでな、さっきお前さんを破ったやつはわりとあっさり倒してたぜ」

 

「そうなの…」

確かに彼は武器を使わず、術や魔法だけで戦うタイプだ。故に、弓や間接物理攻撃の軽減を気にせず戦えたのだろう。

まあ体術もできなくはない…と聞いたことがあるけど。

 

 

その時、マーラヴの攻撃でライマーが大きく吹き飛んだ。ひょっとして…!と思ったけど、やはりそうだった。

「っ…これ以上はムリだ。辞退する…」

ライマーが降伏を宣言し、彼の敗退が決まった。

 

龍神さんとメレーヌさんは何か相談しているようだった。次どちらが出るかについて話しているのだろうか。

であれば考えがあったので、首を突っ込んで持論を話した。

2人は私の復活を喜びつつ、話を聞いてくれた。

 

「ここはメレーヌさんが出て、龍神さんが最後に出るのがいいと思います」

 

「ん…それってつまり、俺の出番はないってことか?」

 

「いえ…最後の最後に、龍神さんの出番があるような気がするんです」

 

「…どういうことだ?」

 

「何となくですが、最後が本番なような気がするんです。彼らは自分たちが追い込まれることを予測していて、特に優れた実力を持つ者を9人目として用意してるような…そんな気がして、仕方ないんです」

 

「なるほど、つまりそこで俺が顔を出すってことか」

 

「はい。メレーヌさんの実力は存じていますが、アンデッドとの戦いに慣れているわけではありません。ここは、熟練の吸血鬼狩りの彼に任せたほうがいいと思います」

 

「…そうね。確かに私は吸血鬼狩りじゃないし、本当に手強いアンデッドの相手は譲るわ。でももしそうでなかったら、残りの相手は私が全部倒しちゃうかもね?」

 

「面白え、やってみてもらおうじゃんか。アレイが感服する水兵の戦いぶり、見せてもらおうか」

 

「あら、ずいぶん上からね?まあいいわ」

そして、メレーヌさんが舞台を踏んだ。

 

 

相手は短剣持ち。つまり単純な技量の勝負になる…けど、これは心配いらないだろう。

メレーヌさんの実力は、私はよく知っている。

 

最初、向こうは開始早々突っかかってきた。メレーヌさんはそれを素早く切り返し、反撃を見舞った。

攻撃をギリギリまで引き付け、短剣で受け流しつつ右足を軸にして回転し相手の腕を斬りつけたのだ。

 

相手がそれで怯んだ隙をつくかと思いきや、メレーヌさんは敢えて棒立ちを決め込んだ。

そして相手が距離を取って斬撃を飛ばしてきたのを容易く弾き飛ばすと、素早く水の魔弾を放った。

 

一発も当てられないことに業を煮やしたのか、マーラヴは唸り声を上げて短剣を振り回した。

左右交互に振りかざし、小さな竜巻を複数起こしてメレーヌさんめがけて飛ばしてくる。

追尾タイプのようなので回避は難しい…と思ったら、メレーヌさんは迎え撃つように技を放った。

 

「[神速の刃]」

高速で短剣を振るい、襲ってくる竜巻を全て跳ね返して見せた。

相手は竜巻でダメージを受けたりはせず、すぐに次の構えを取り始めた。

左手にも短剣を生成して2本持ちになったかと思いきや、目の前で斬撃を交差させて十字を作り出し、そのまま光り輝く斬撃を飛ばしてきた。

 

見たことがある…あれは、[ライトニングクロウズ]だ。

祈りを込めて斬撃を飛ばす、光属性の強力な短剣技。

アンデッドになったとはいえ、向こうは司祭のようだし、使えても不思議はない。

直撃すれば致命傷もあり得る技だけど、メレーヌさんはどう対処するのか。

 

すると、メレーヌさんは意外にも普通に結界を張った。

水の結界のようだけど…大丈夫だろうか。

 

 

 

果たして技が着弾し…

見事、受けきって見せた。

 

結界は傷ついてはいたけど割れはせず、メレーヌさんも無事だった。

「光の技を使うなんて、さすが元司祭ね!」

相手に向かって、メレーヌさんはそう言った。

 

「けど、短剣の技量としてはまだまだね…その証拠に、ほら!」

メレーヌさんは右手を横に伸ばし、開いて見せた。

それで気付いたのだけど、右手にさっきまで握っていたはずの短剣がない。

 

「…もしかして!」

私は思わず声を上げた。

 

その、もしかしてだった。

次の瞬間には、マーラヴは高速で飛来した短剣に体を真っ直ぐに切り裂かれていた。

おそらくは、結界で防御した時に同時に短剣を投げていたのだろう。

 

そしてマーラヴが血を迸らせ、怯んだ隙に、メレーヌさんは一気に詰めた。

空高く飛び上がり、短剣を手に戻して、

「奥義 [双刃鳴・水光軌跡]」

短剣2本持ちになりつつ、2つの斬撃を放って払い抜けた。

マーラヴはさらに多くの血を噴き出し、辺りを舞う水滴と共に崩れ落ちた。

 

かつて私が初めて見たその時から、心を奪われた奥義。それを、再び見ることができた。

その喜びは、計り知れないくらい大きかった。

しかも、彼女はとても優しいし、きれいだ。

 

もし彼女が男性だったら、私は…

少なくとも、ファンにはなっていただろう。

それくらい、見惚れる技だった。

私も、あんなふうにかっこいい奥義を繰り出せたらなあ…

思わず、そう思ってしまった。




メレーヌ・ナヴァン
ナアトに住む水兵。年齢は23歳。
水に魔力を込め、性質を自在に変化させる[水磨]の異能を持っている。
ニーム出身だが、外での生活に憧れて町を離れた。
現在はナアトを流れる川の湊の創設者兼最高責任者として活躍しており、時折ニームに里帰りしている。
外見が美しいだけでなく抜群の戦闘センスも併せ持ち、短剣と水の術を用いた戦術の数々には心を奪われる者も少なくない。
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