黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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決闘・5

次の相手も、メレーヌさんの敵ではなかった。

相手のマーラスは複数のトゲがついたいかにも痛そうなムチを振るってきたけど、メレーヌさんはその攻撃を巧みに躱して攻撃を当てた。

その振る舞いは、まるでユキさんの戦いぶりを見ているかのようだった。

 

私達の長であるユキさんも、ひとたび戦いとなれば棍とあらゆるものを魔力の結晶に変える技「クリスタラート」を用いて華麗に舞う。それはあたかも舞踊を見ているかのように、相手の攻撃を受け流して勝つ。

ユキさんの立ち回りは長として当然なのかもしれないけど、メレーヌさんの動きは、武器は違えどあれと比べても遜色ない。

何なら、リーチの短い武器を使っている分技量では上だと言えるかもしれない。 

 

そうして難なく相手を倒し、いよいよ最後の相手が現れた。

それは、さっき私と論争した司祭のマーラスだったのだけど、何やら様子がおかしい。

武器として杖を持っているのだけど、その杖全体を異様な力が覆っている。

重くじっとりとした空気…というかオーラが、それにただならぬ力が込められていることを物語っている。

 

「あれは…『乾きの杖』…?」

さっき私が対戦した弓持ちと同じ、水棲種族特効を持つ杖。でも、さっきの弓持ちはあんな異様な力はまとってなかった。一体、何が…。

 

その様子を見たメレーヌさんは、しばらく相手を無言で見つめたあと、両手を上げて「棄権する」と言った。

特効武器が怖いのだろうか?…いや、メレーヌさんがそんなことで退くとは思えない。きっと、何か他にわけがあるに違いない。

 

ともかく、選手は交代だ。

メレーヌさんが舞台を降り、私達側の最後の選手である龍神さんが代わりに登った。

その際、2人はすれ違いざまに短い会話を交わしていた。

()()()よ、用心して…」

 

「わかってる。よく気付いたな」

 

2人には、あの力が何なのかわかったのだろうか。

私には、何か強大な力の加護を受けている?ということ以外、よくわからないのだけど。

 

 

そうして、舞台上で2人は睨み合った。

…と思いきや、龍神さんは刀を抜いて迅速に斬りかかった。

向こうは結界を張って彼の攻撃を防ぎ、速やかに波動を撃って反撃した。

龍神さんはそれを躱しつつ技を繰り出し、縦に2本の斬撃を飛ばすと同時に刀身から電撃を放った。

 

どちらも結構強力そうだったけど、防がれた。

すると、彼は「やっぱりか…」と呟いて魔導書を取り出した。真っ黒い表紙、あれは…名前は覚えてないけど、闇の魔導書だ。

 

「[ヴィシャス]」

黒い煙が相手の体に絡みつき、炸裂する。

すると、相手が張った結界は簡単に割れた。

その隙をついて、彼は刀を振るう。

 

「[サウザンドゲイザー]」

複数に分裂する斬撃が飛び、アンデッドの体を切り刻む。でも、敵はそれで倒れはしなかった。

そして、杖を抜刀術のように高速で幾度も振るって反撃してきた。

 

龍神さんは後ろ向きに倒れ込んで回避し、跳ね起きつつ再び闇魔法を唱えた。すると、意外なほど効いた。

低い唸り声を上げ、大きく後退したことから、大きなダメージを受けたことが見て取れる。

ここで決めるとばかりに、彼は飛び込んで奥義を繰り出した。

「奥義 [蒼龍刀]」

 

派手な斬撃が迸り、アンデッドは膝をついた。

そこでまた、龍神さんは闇魔法を唱えた。今度は「マゥル」、消費は大きいけど威力が高い闇魔法だった。

それにより、アンデッドは完全に事切れた。

なんだか見てくれはすごかったけど、実際はそこまで大したことなかった…まあ彼の立ち回りや、特効が彼には効果がないこともあってのことなんだろうけど。

 

その瞬間、シルトさんが声を上げた。

「そこまで。原告側の全滅により、被告の勝訴とする。よって、第一審と同様に原告の訴えは棄却、被告は無罪とする」

 

かくして、私達の無罪は維持された。

同時に原告の代表も全滅したため、また控訴される心配もなくなった。まあ、もしされてもまた打ち勝つだけだけど。

 

 

 

その後、シルトさんは国民を城の前に集め、一般国民には多大な迷惑をかけたことを謝罪するとともに、殺人者には詳しく調べもせずに早まった行為をしたことを謝罪した。

そして、国民には国内の殺人者が基本無害な存在であることを、殺人者には、これからも犯罪行為を何もしない限りは不当な処罰・拘束をしないことを改めて告知した。

 

人々の反応が正直心配だったけど、問題なかった。

そもそもこの騒ぎの元凶である通り魔たちが流未歌の差し金であったこと、裁判に出廷した原告たちがアンデッドであったことをすでに知っていた彼らは、マーラヴたちの扇動に乗った自分たちの愚かさを悔いていた。

だから、殺人者やシルトさんを責めるということはしなかったのだ。

 

 

「ふう…これで一件落着だな」

ライマーが、寒さに震えながら言った。

「いやー、よかったよかった。やっとまともな仕事見つけたのに、こんなことで追い出されちゃあたまんないとこだったんでね」

ラステは、珍しく嘘偽りのない喜びの笑顔を浮かべていた。

 

「殺人者…確かに疑問が残る存在だけど、彼らなくしてはこの国は再生者に敵わない。流未歌が倒れるまでは、このままのほうがいいでしょうね」

メレーヌさんは、短剣を片手にそう言った。

そして、龍神さんは…。

 

「この国の騒ぎは収まった。これで、しばらくは大丈夫だろう。だが、俺たちにはまだやることがある。…アレイ」

 

「はい」

 

「シルトに一言言ってから、ブイクタの樹海へ向かおう。反逆者に会って、流未歌討伐に力を貸してもらえないか話してみよう」

 

「わかりました…」

龍神さんも、流未歌の実力を考えたのか。

ブイクタの樹海。かつて、三聖女が流未歌を倒す前に協力を願い出た、反逆者ラモンが住んでいた樹海だ。

今はラモンは亡くなり、彼の息子であるルーヴァルという反逆者が住んでいるそうだけど…私達に、力を貸してくれるだろうか。

まずは、シルトさんに旅立ちの旨を話してこよう。

 

そうしてシルトさんの告知が終わったあと、民衆はいなくなった。

同時にラステたちも去り、残った私達は城へ入った。

 

 

 

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