黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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怪物と伝説の力

追撃をしようとしたら、今しがた現れたばかりの顔がブレスを吐いてきた。それは意外にも冷気を帯びた、氷のブレスだった。

幸い、これを私が受けても大した傷にはならない。それより問題なのは、笑った顔が吐き出してくるブレスだ。

これは地味に痛いのもあるけど、何より風属性のように見えて黒属性なようで、ルーヴァルにも普通に通っている。

黒属性は白属性と対を成す万能の属性で、結界などで防ぐことはできない。つまり回避するにはよけるしかないのだけど、これがなかなか難しい。

 

私達は3人がかりで、縦横無尽に動き回って戦っているけど、それでも流未歌とその眷属全ての射程から外れることは難しく、大抵はどこかの攻撃を受けてしまう。

最悪、氷の攻撃を受けるのはいい。でも、笑った顔のブレスと、苦しんでいる顔から吐き出される火のブレスは食らえない。

後者などは、まともに食らったら一撃で瀕死になるかもしれない。

 

ここで、2人の足手まといになるような真似はできない。

そもそも、今回の相手はいずれ私が倒さなければならなかった存在。

私が、ここで倒れてはどうしようもない。

だから、私は生き残る。

そして、必ず勝つ。

 

 

「[氷河の風]!」

冷気を吹き付け、顔の一つを凍りつかせる。

そしてその間に、流未歌に向かって「アイシクル」を唱えた。

この時、残り二つの顔はちょうど龍神さんたち二人に攻撃していたので、私の攻撃を防いでくることはないはず、と思っての攻撃だった。

 

そして、私の攻撃は見事流未歌に命中した。

その体が凍りついたのを確認し、私は速やかに技を繋げた。

「弓技 [フローズンブレイク]」

氷を砕けるほどの威力がある矢を放つ技。

名前の由来に関係して、体が凍っている、もしくは凍傷を負っている相手に対しては威力が大きくなるという特性がある。

 

再生者である流未歌にもこれは適応されるようで、かなり有効な攻撃にできた…と思う。

現に、技を受けた流未歌は仰け反ってふらつき、若干バランスを崩していた。

そして何より、私を睨みつけて怒りの声を上げてきた。

「…お前、とことん私を怒らせるな。龍神に毒されたか?まあいい…まずはお前を、全力で潰してくれる!!」

 

そして、流未歌は3つの顔を総動員して技を繰り出した。

「[トリニティ・サイクロン]!」

今のは、3つの顔からそれぞれ炎、氷、黒い風のブレスが放たれた後に、流未歌自身が巨大な竜巻を起こす技だったはず。

言うまでもなく、まともに食らえばとても耐えられない。

 

しかし、技名の宣言の直後に龍神さんとルーヴァルが飛び出して、すべてを受けきってくれた。

「…傷は大丈夫か?」

 

「心配いらんさ。このくらい…」

 

「そうか…そうでないとな」

 

流未歌は2人を睨みつけた。

「うぬぬ…貴様ら…!毎度毎度邪魔をしおって!」

 

「当然のことをしてるまでだ。お前にアレイは渡さない、そしてお前にはなんとしても死んでもらう」

 

「私を殺せるものか…!お前のような屑に、私を…!」

 

「殺してやるさ…因縁を断ち切るためにもな」

龍神さんは、再び斬りかかる。

流未歌は、それを受け止める。

そして、ルーヴァルも同時に攻撃を仕掛け、流未歌を追い込んでいく。

そうして、ついに流未歌の眷属すべての顔を斬り裂き、流未歌自身もまた腹部を斬りつけて血を流させた。

 

「うっ…!」

流未歌が腹部を押さえて黙ったその瞬間、2人は合技を繰り出した。

龍神さんがルーヴァルに肩車される形で乗り、ルーヴァルが飛びかかると同時に空高くジャンプする。

そして、ルーヴァルが流未歌を斬り裂いたと同時に龍神さんが上から雷とともに刀を振り下ろす。

 

「[ツインパワー]!」

どちらの声か、それとも2人が同時に言った声かはわからないが、とにかくそう聞こえた。

 

ここで気づいたのだけど、ルーヴァルの剣技はすべて黒属性を持っている。

さっきから、彼が流未歌を切る時に妙な黒っぽいエフェクトが出ているな…と思ってたのだけど、考えてみるとあれは黒属性の演出だ。

流未歌が使ってきた技と同じ属性を持っているとは思わなかった。でも、これはかなりありがたい。

万能の属性である黒属性は、どんな相手にでも等しくダメージを与えられる。もちろん敵がやってくれば怖いが、味方がやってくれればこれ以上頼れる属性攻撃はない。

 

「あ…ぁっ……」

あちこちから血を流し、流未歌はふらつき始めた。

そして、最後は私が決める。

 

「[盤床・グラウンドゼロ]」

地の術奥義を使い、疲労と痛みを感じず、無限に技や術を使えるようにする。

流未歌はそれに驚いていたけど、構わず決める。

 

冰冰(ひょうひょう)たる魂の力』。奥義 [少女的絶対零度(アブソリュートゼロ)]」

魔弾を飛ばし、吹雪を起こし、大きな氷柱を降らせる、現状私が使えるの中で最強の技。

以前、スレフさんとの模擬戦の時に閃いたものだ。

最初のセリフは、今考えたもので深い意味はないけど…とにかく、この技は強い。

 

「…」

流未歌はもはや何も言うことなく、その体を透明にしていく。

そして、最期はこちらを見たまま、後ろに倒れて墜落していき、その途中で消滅した。

 

 

「よっしゃ!やったな…!」

 

「はい…!」

私と龍神さんは、手を触れ合って喜んだ。

しかし、ルーヴァルがすぐに喝を入れてきた。

「おっと、よもや忘れたわけではあるまいな?我々には、まだすべきことがある」

 

「あっ…と」

 

「そうでした。早く封印の祀具の所へいかないと」

 

「うむ。では…行くぞ!」

 

ルーヴァルは、再び高速で飛び始めた。

 

 

 

 

流未歌の巣。その内部は、恐ろしく不気味で醜悪な見た目・臭いだったけど、龍神さんたちと一緒にいると不思議と耐えられた。

もし1人だったら、途中でリタイアしていたか吐いていただろう。

普通の死体や血とはまた違った、グロテスクさがあった。

 

そうして、巣の最深部にたどり着いた。

「あったぞ…」

 

暗く、床にうっすらと光る魔法陣が描かれた部屋。

その魔法陣の中央には、黒っぽい色の扇が安置されている。

これを封印することで、流未歌を完全に封じることができる。

 

「私にやらせてください」

私は、一人で魔法陣の中へ踏み込んだ。

そして、扇に向かって手を翳し、封印の術を唱えた。

 

「星法 [(すばる)の子らの歓声]」

有効範囲は小さいが、祀具自体が小さいので十分だ。

そして、この封印は強力だ。もう、流未歌がこの世界に現れることはないだろう。

…少なくとも、私が生きている限りは。

 

「よくやったぞ、星羅の妹…」

ルーヴァルが、微笑んだ。

 

「さあ、これですることは終わった。地上に、帰ろうぞ」




世界観・白黒属性
八属性のいずれにも属さない万能の属性を指す、この世界固有の属性の名称。
白にはどの属性の力も含まれておらず、黒には全ての属性の力が含まれている。
一般的には司祭や魔女、魔王などの高位の種族が扱う属性だが、一部例外もある。
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