黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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風の術極意

洞窟に戻り、私達は着地した。

「いやー、思ったよりあっさり行ったな」

あっさり…?

私としては、そんなあっさりでもなかったのだけど。

 

「全くだ。流未歌の幻など、我らの敵ではなかったな」

 

「まあ、殺人者系2種族と水兵の力を合わせたんだ。やれない敵なんかいやしないさ!」

 

「であればいいがな。とにかく、お前たちは我が術で町まで送ってやろう」

 

「いいのか?」

 

「当然だ。…それに、お前たちに会いたがっている者がいるからな」

 

「え?」

龍神さんはわからないようだけど、私はわかった。

確かに、今一番私達に会いたいのは彼女だろう。

 

「では、さらばだ。またいつか会おう、我が後輩たる若人。そして、シエラの生まれ変わりよ」

 

「えっ…?」

ルーヴァルは、それだけ言って私達を転送した。

 

 

 

 

 

気がつくと、私たちはナアトの城にいた。

さらに、そこへ兵士が偶然通りかかった。

彼は驚きの声を上げつつ言った。

「あ…あなた方を、皇魔女陛下がお待ちしておりました!陛下は今、玉座におられます!」

 

やっぱり、そうだったか。

私たちは、すぐに玉座の間へ向かった。

 

 

 

「あら、もう来たの?」

シルトさんは驚いていた。まあ当たり前だけど。

 

「反逆者に送ってもらいまして。…それより、私たち、やりました!」

 

「ええ、知っているわ。風の術極意が、突然使えるようになったもの」

 

「おっ!それじゃ…!」

 

「ええ。あなたたちに、私の扱う術極意を教えます」

そして、シルトさんは術を唱え、魔空間を作り出した。

 

「では、始めましょう」

シルトさんは左手を胸に当て、目を閉じた。

そのまま浮き上がり、そのまま3メートルくらいの高さまで浮上して静止した。

そして目を開き、何かを叫ぶかのように口を開けて、手を振り払って術を放った。

すると、不思議なものが放たれた。

緑、青、白、黄色…いろいろな色が混ざった光が、横にほとばしった。

それはまるで、虹を見ているかのようだった。

 

「すごい…」

私は、思わずそう言った。

 

「確かにすごいな。きれいだった…」

龍神さんも感嘆したところで、シルトさんは降りてきた。

「[皇断・ゼノスウィンド]。風と魔力を一体化させて放つ術で、同時に飛行もできる。放つ風は一応風属性だけど、黒属性も含有しているから実質黒属性ね。それと、この術による飛行には耐性や特効の変化はない。つまり、飛行系特効の影響を受ける心配はない。雷や氷に怯える必要がなくなるのよ」

それは、私としてはかなりありがたい効果だ。

ただでさえ怖い雷を、恐れなくて済むのは助かる…まああくまで飛行系への特効が無くなるというだけで、もともとの特性が変わるわけじゃないから、私の海人としての雷に弱いという特性は変わらないのだろうけど。

 

「では、あなたたちも試してみなさい。私がやったように、手を胸に当てて祈りながら詠唱する。そうすれば、できるはずよ」

 

私は、おそるおそる試してみた。

手を胸に当てて目を閉じ、どうか上手くいきますようにと祈りながら術を唱える。

「[皇断・ゼノスウィンド]」

すると、私の足が浮き上がった。

正直興奮したけど、そんな場合ではない。

私は意識を集中し、限界まで浮かび上がる。

そして、体が止まったのを感じると同時に目を開き、手を払った。

さっき見たのと同じ光がほとばしり、同時に宣言した。

「『風よ、我が意のままに』」

自然とセリフが出てきた。

まるで、奥義だ…いやまあ、風術の奥義に該当する術だけど。

 

「すげえな…」

龍神さんの言葉を受けながら、私は舞い降りた。

「風の術で飛んだの、初めてです…」

 

「そうかもね。あなたはもともと海の異人だし、風とは縁の無い存在だものね」

 

ちなみに、龍神さんも同様に術を習得した。

彼もまた、すんなりと覚えられていた。

シルトさんは、「こうもすんなり覚えられるとは思わなかった」と言っていた。

 

 

魔空間を出た後、シルトさんは次に私たちが行くべき場所も示してくれた。

「南の国、アイゼスへ行くといいでしょう。以前、あそこの皇魔女があなた達に会いたがっていたわ」

 

「アイゼス…?本当ですか!?」

私は喜んだ。

アイゼスは、大陸の南部に存在する国。

水の皇魔女によって治められており、常に水との共存をモットーとしている。

国内の至る所に水があり、それは王城内でも例外ではない。

また海に面した国であり、大きな入江があることから、数多くの船や海人が入ってくる。

それは私たちにとっても同じで、レークから近いこともあって多くの水兵が海から行く国だ。

私は、なかなか行く機会がなかった。

一度、行ってみたいとは思っていたけど…。

 

でも、今度行けるというのなら都合がいい。

大陸で最も海人を理解してくれている国に、この旅の途中で行ける。

それが、嬉しかった。

 

 

「ナアトからアイゼスへのワープは、残念ながらない。けど、ジヌドに行けば向こうへのワープがあると聞いたことがあるわ。龍神、知らない?」

 

「ジヌドに?…あ、そういやそんなのあったかもな。よし、そしたらまずはジヌドに行こう」

 

「それなんだけど…あの町では、最近何か大きな事件があったみたいなの。何があったのかはよくわからないのだけど…年のため、気を付けて」

 

「?どういうことだ?」

 

「その…詳しい情報が入ってきていないから、正確なことはわからないの。町が崩壊したとか、そういうことではないと思うけどね。でも、とにかく何かあまり良くないことがあそこで起きていることは確か。あなたたちに影響があるかはわからないけど、一応用心して」

 

「…よくわからんが、とりあえず…」

 

ジヌドで何があったのだろう。

シルトさんもわからないとなると、一体どんなことが起こったのか。

何となくだけど、ただならぬことが起きているような予感がした。

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