黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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合流

海娘の長と俺を長の元まで連れてきた3人、あとさっき漂着者の話を伝えに来た海娘の5人で海を渡った。

真冬であるにも関わらず、海の水が温水プールのように暖かいのはなんだか不思議な感じがするというか、慣れない。

よくわからないが、この辺りにも冬はあるだろうに。

 

「冬か。確かにこの辺りにもあるけど、ちょっと涼しくなるくらいだね。20℃近くになれば、下がったなって感じ」

 

「そんなもんなのか。やっぱり亜熱帯なんだな」

昔、中学で気候帯について詳しく習った時は寒帯や冷帯の地域に一度は行ってみたいと思ったものだが…こうしてみると、熱帯も悪くないかもな、と思う。

 

「もしかしてあなた、寒い国の出身なの?」

 

「まあ…そんなとこだ。少なくとも、雪は積もるとこだったぜ」

すると、海娘たちははしゃぎ出した。

「雪!…うわぁ、懐かしいな。レークに行った時に初めて見た雪は、今でも覚えてる!」

 

「いいわね、雪。白くて冷たいやつでしょ?この辺じゃまず見れないから、一回見てみたいのよね」

 

「雪か…最後に見たの、いつくらいだったかな…こっちじゃ名前を知ってる、ってだけの子ばっかりだから、一回見せてあげたいんだよね」

 

「え?…あ、もしかして氷属性を使えるやつがいないのか?」

 

「私達の中には、ほとんどいないね。火属性だったらたくさんいるけど」

そこは…まあ、気候故のことだろうか。

そう考えると、冷帯であるレークやニームには氷属性の水兵が多くいるのだろうか?

 

 

 

しばらくして、目的地であるラノ島に到着した。

島には山はなく、平坦な地形だった。

上陸した砂浜から少し歩くと、すぐに見えてくる…この島の海娘の集落が。

 

「あっ、セズフィナさんたちだ!」

入り口らしきオブジェのところに海娘が長に気づくと、向かってきた。

 

「こんにちは、セズフィナさん!それに…ラフターの人達も!」

 

「ラフター?」

 

「私達みたいに、長の周りで働く海娘のことよ。それで…漂着者ってのは?」

 

「長のところにいるよ。案内します」

 

「ありがとう」

 

 

 

そうして彼女についていった先は、海岸の近くの家だった。

その近くには、天井だけのテント…というか、運動会なんかで見かけるようなテントみたいなものが3つほど並べられており、その下に見覚えのある顔があった。

 

「おっ、いたいた!」

声を上げると、みんながはっとした。

 

「あ!龍神じゃない」

 

「あっ!…えっと、龍神さん!お会いできてよかったです!」

朔矢たちに続き、海娘たちも反応する。

「あ、知り合いなんだっけ?」

 

「そう言えば、面識があるって言ってたね。彼女らはあなたの同族なの?」

 

「そっちの黒髪の方は同族だな。金髪の方は、水の国…アイゼスだっけ?の皇魔女だ」

 

「え、皇魔女…!?」

 

「はい、私はウェニー・ズーウ、アイゼスの皇魔女です!」

皇魔女は、明るい顔で言った。

 

「驚いた…こんなところに、皇魔女が来るなんて。そしたら、ファシェは…」

と、ここで奥から一人の海娘が歩いてきた。

 

「あなたが水の皇魔女様だったなんて。でしたら、もっと早く言ってくださればよかったのに」

それは、こちらにいる長…セズフィナより少しだけ背が高く、髪の色は同じ金髪だが、目は両方とも青色をしていた。

服は緑系のワンピースのような服で、これまた綺麗な日焼けした生足を覗かせている。

 

「あっ、あなたはこの島の海娘さんたちの…」

 

「ええ、私はこのラノ島の海娘の長、ファシェ・ラノエル・メリッソと申します。ウェニー様、あなたのお名前は伺っております。同族たる海人を何かと気にかけていただいているそうで…ありがとうございます」

 

「いえいえ、そのようなことはありません。海人の誘致は私が始めたことではなく、先代の皇魔女の代から始まったことですから」

 

「それを続けているのは、他ならぬあなたではありませんか。海人への情けと愛あってこその行動です。同じ海の者として、心よりお礼申し上げます」

長は、深く礼をした。

 

「私も、あなたのような尊い存在に会えたことを嬉しく思っています。熱帯の海域に移り住んだ水兵をルーツに持つ海人、海娘…現代において出会うのは難しいとされる海人と、こんな形で出会えるなんて!」

皇魔女さんにとっても、海娘の貴重さは周知の事実であるらしい。

 

「しかし、今思ったんだが…海娘の長には、翼がないんだな」

すると、朔矢に突っ込まれた。

「いや、今それ言う?」

 

「え、あ?今言わないほうが良かったか?」

 

「いや、そうじゃないけどさ…まあ、あんたはそういう奴なのは知ってるけど」

 

ここで、向こうの長が口を開いた。

 

「殺人者には変わり者が多いとは聞いていたけど、本当なようだね」

 

「そりゃどーも」

 

「あなたは…龍神、だっけ?朔矢さんから聞いたよ」

 

「そうだ。あんたは、この島の長…って言ってたが、もしかして海娘って島ごとに違う部族が存在する感じか?」

 

「そんなところ。まあ違いは名前…というか出身の島くらいで、私たちはみんな同じ1つの種族だけどね」

 

こちらにいる長…セズフィナによると、「私たち海娘は、この海にいる全員が同種同族。出身の島は違えど、同じ存在なの!」とのことらしい。

水兵とはまた違った考え方だ…いや、同じなのか?

 

「ところで…まあこれも聞いたかもしれんが、若い水兵は見なかったか?俺たちはその子と一緒に来たんだが」

 

「それがね、見てないんだよね。ただ存在は聞いたから、これから辺りの海域を探そうと思ってて…」

 

その時、一人の海娘が走ってきた。

…なんか、既視感を感じる光景だ。

 

「長!アテスの海峡近海を泳いでいた者からの緊急の連絡です。リーグルの海賊が出ました!」

 

それを聞き、向こうの長は顔を引き締めた。

「わかった。すぐに向かおう!」

 

「海賊?」

 

「そう。リーグルの海賊は、陸の海賊…陸人が作った海の強盗団。定期的にこの辺りに現れては、運行中の船を襲っているの」

 

「船…?あ、島同士でのか」

シェナー諸島の島々は、何も海娘だけが住んでいるわけではない。当然、人間や他の異人もいるだろう。

それらの種族が、海を渡る際に船を使うのは当たり前のことだ。

 

「海賊は、放っておけば大きな被害を生んでしまう。だから、もし現れたら私たちが迅速に討伐することになってるの」

 

「陸の海賊はそうだね。海の海賊…私たちの仲間の海賊ならいいけど、陸の海賊はろくなことしないから…」

長2人の会話を聞く限り、現代の海賊って感じっぽい。

俺がいた時代の人間界にいた、海賊と同じような感じだろう。

 

「皇魔女様。申し訳ありませんが、お話を伺うより海賊の撃退を優先していいでしょうか?」

 

「はい。海賊は我が国でも取り締まりの対象ですし、海娘と共闘できるのはまたとない経験です!」

 

「そう言っていただけると光栄です。では、みんな。報告があった、アテスの海峡に向かおう!」

 

そうして、再び海に飛び込むこととなった。

 

 

 

 

 

 

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