黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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最初の町

アメルの元に戻ると、彼女が鞘を用意して待っていた。

なんでも、丁度今しがた鞘が出来た所だったらしい。

当たり前ではあるが、アレイのマチェットがぴったり収まった。

 

 

あとは、近くの店を回って回復や補助用のアイテム、あとアレイの希望で矢薬を買い漁った。

矢薬は、矢に特定の属性や特殊効果を宿す薬。

昔はよく使ってたが、最近は殆ど使ってない。

さて、結構色々と買ったが持ち運びは問題ない。モノを縮めてしまえるケースとバッグがあるからな。

それはアレイも同じようで、リュックに買った物を全部詰め込んでいた。

 

買い出しが終わったタイミングで、今日の目的を言い出す。

「今日の予定なんだが…」

 

「はい」

 

「山脈を越えてアルノに向かう。今は昼前だし、夕方までにはつけるだろう」

 

「わかりました。

あ、何か情報もあるかも知れないですね」

 

「確かにそうだな…まず、行くぞ」

 

 

門をくぐり道なりに進んでいく。

道は一応整備され、山賊避けの柵も立てられてはいるが、それもあまりしっかりしたものではない。柵が壊れてたりそもそもなかったりする所がざらにある。

でもぶっちゃけ、山賊が出てくる分には大した事はない。

それより問題なのは…

 

「っ、また!」

定期的に登場するゾンビだ。

「さっさと終わらせるぞ…

[水月斬り]」

 

「[疾風撃ち]!…[返り撃ち]!」

近くにいた奴らに斬り込み、アレイはその間に遠くの奴をやり、そして飛びかかってきた奴にカウンター撃ちを決める。

それらの矢は全て、見事頭を射抜いている。

「だいぶ精度高くなったんじゃないか?」

 

「皆さんに鍛えてもらったおかげです」

アレイはそう言いながら、死体から矢を抜いて矢筒に収める。

「矢薬塗った奴を使ったのか?」

 

「いえ、普通の矢です」

 

「ならよかった」

多めに買ったとはいえ、矢薬は貴重品。

次どこで手に入るかわからないので、なるべく雑魚戦では使わないようにしていきたい。

 

 

オズバ山脈は、越えるのにさほど時間はかからない。

遅く見積もって夕方までにつくと言ったが、実際には3時前についた。

思ったより敵が出てくる数が少なかったのもあるが、最大の要因は天気がよかったことだろう。

そして、アルノの方も綺麗に晴れていた。

 

 

もはやテンプレとも言える行動だが、とりあえずパブを訪ねて店主と話をしてみる。

「いらっしゃい。ご注文は?」

 

「酒はいらん。何か、情報はないか?」

 

「情報…ねぇ。

特にこれといったものは…あ!」

 

「何かあるのか?」

 

「ちょいと古い話なんだがね…

二週間くらい前に、町の外れで変な連中がうろついてるって、ちょっとした噂が流れたんだ。

直接見たわけじゃないが、なんでもそいつらはみんな、大昔の先住民族みたいな格好をしてたんだと。そして、みんなして石の斧とか槍を持って、固まって奇声を上げたり、変な踊りを踊ったりしてたらしい。

まあ夕方にはいなくなってたから、さほど大きな騒ぎにはならなかったんだけどな」

 

「そいつらに何か、共通した特徴はあったのか?

持ってる武器とか服の材質とか…」

 

「さあ…そこまで詳しい事は知らねえな。ただ、これも聞いた話だが、みんな体にオレンジ色の塗料で同じ模様のペイントをして、目が凄い血走ってたんだと。

何を叫んでるのかはわからなかったそうだよ」

 

「そうか…」

 

「後は…あ、そうだ」

マスターはアレイの方を向き、

「嬢ちゃん、レークの水兵さんだろ?」

と言ってきた。

「え、ええ…」

 

「お前さんの知り合いに、銀髪で長身の娘(こ)はいるか?」

 

「…いますけど、それだけじゃ誰かわかりません。帽子の帯の色はわかりますか?あと、本数も教えて貰えると助かります」

 

「ああ…確か緑の帯が入ってたな。本数までは覚えてないや。しかしまあ、あの子えらく可愛かったよ。

胸も大きくて、スタイルよくて、目はきれいな緑色で…

言うて俺も少し仕事忘れて見入っちまったからなあ…

あっと、ごめんな。で、その子はこの前うちに来たんだ。

それでな、こんな素敵なお店がこんな殺風景なのは勿体ない、もう少しお洒落にしたら、って、綺麗な彫刻をタダでプレゼントしてくれたんだ。しかも、町のシンボルにどうぞ、って、でかくて綺麗な彫刻を町に寄付してくれたんだ。

どこから来たって聞いたら、レークから来たって言ってた。

そんで、礼する暇もなしに帰っちまったんだ。

もし町に帰って会ったら、宜しく言っといてくれや」

アレイはすっきりしない表情を浮かべたが、すぐに、

「わかりました。ありがとうございます」

と表情を正し、礼をした。

「いやいや。しかし、あの子といいお前さんといい、水兵さんってのは礼儀正しいねぇ。一杯サービスするよ」

 

「…いいんですか!?」

 

「なーに、お安い御用さ。

ほら、あんたもついでにどうだ?」

 

「俺もいいのかい?」

 

「娘さんだけ贔屓する訳にいかねーだろ?

それに、あんた酒好きそうな顔してるぜ?」

 

「いい目してるなぁ…

んじゃ、マトルワインを一杯もらおうか」

 

「あいよ。お嬢ちゃんはどうするんだ?」

 

「私は、そうですね…

メークトールをお願いします」

 

「オーケー!待ってな、すぐ用意するぜ」

見れば、マスターの後ろの壁に直径2mくらいの輪に入った、鎖が3つ縦に繋がったような形の青い彫刻が飾ってあった。

…なるほど、これは確かに綺麗だな。

 

 

しかし、ここのマスターは素敵だな、全く。

人間界にも、こんなマスターがいる酒場があればよかったんだけどなあ…

そんな事を思いながら、注がれたワインをぐいと飲んだ。

 

 




国·都市·施設紹介
·アルノ
人間が中心の町としては大陸最南東に位置する町。
オズバ山脈を越えればすぐにレークに行けるので、レークへ向かう観光客はほぼ確実にこの町を通る。
特に目立った名所や特産品などはないが、交通の便は田舎の町にしてはかなり良い方。
古くからレークとの交流があった町でもあり、水兵と人間の文化が混ざりあって独特の文化を形成している。
中でも、内陸都市であるにも関わらず新鮮な魚介類が市場に安価で並ぶのは、大陸の他の都市にはない特徴であると同時に現在も水兵と深い関わりがある証拠でもある。
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