黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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南の洞窟

酒場を出て、道行く人数名から少し話を聞いてみた。

その中に、例の謎の集団がどこへ行ったのか、それを知る手がかりになりそうな話を聞けた。なんでも、謎の集団は街の外れで騒いだあと、南の方に向かっていったらしい。

 

「南か…ずいぶん変な方に向かってったんだな」

 

「そうですよね。

この町の真南って言ったら、山とその向こうの海岸くらいしかないと…」

ここでアレイは言葉を切り、少し考え込んだ。

「…いや、もしかしたら」

 

「何か知ってるのか?」

 

「あそこには洞窟があって、以前はカルト宗教や異形の溜まり場になっていた事があったんです。

なので、もしかしたら…」

 

「良からぬ集団の巣になってるかもしれない、と。

十分にあり得るな、行ってみよう」

 

途中で町の中央の広場を通った。

ここには一本の白い鉄柱が立っているのだが、今回はそのてっぺんに、酒場で見たものに似た青い彫刻が飾られていた。

これもまた酒場で聞いた、レークからきた水兵が寄付してくれたものだと言う。

「「綺麗な」彫刻だな…」

 

「そうですね…んー…」

アレイは何かうなっていた。

「どうした?」

 

「マスターは、以前来たのは銀髪で長身の、緑帯の水兵って言ってましたよね…」

 

「そうだったな。知り合いか?」

 

「帯が緑色だった、って事は管理職のはずですが…

管理職の人で、銀髪長身で目が緑…っていう人は知らないです。

レークの水兵なのは間違いないでしょうけど」

 

「見たことないだけじゃないか?」

 

「そうなんでしょうか…」

 

 

さて、アルノの南はオズバ山脈の最西端。

木はまともに生えていない上、登る事はほぼ不可能な岩山になっている。

なので、山賊がまれに降りてくるくらいしか人の気はない。

 

町からまっすぐ南に進むと、確かに山のふもとに洞窟が口を開けていた。

覗き込んでみるとかなり深い事がわかった。

「見るからに怪しいな」

 

「どうします?」

 

「決まってるだろ、入るぞ」

リアースの城を夜に探索した時と同様に術で灯りをつけ、入っていく。

 

 

 

 

      ◇

 

洞窟の中は暖かい…というか長袖では暑いくらいだ。

でも、何があるかわからないのでジャンパーを脱いだりはしない。

「自然の洞窟にしちゃ、ずいぶんとなだらかだな」

 

「誰かが手をつけたんでしょう。

…あれ?」

突然明るくなった。

…いや、正確には壁に一定間隔でランプが吊るされていた。

「これは…」

 

「普通のろうそくだな。

…やっぱり、いるな」

 

私達は武器を抜き、慎重に進んでいく。

しばらく進むと、カン、カンと何かを叩くような音が聞こえてきた。

「何の音でしょう?」

 

「石を叩いてるみたいな音だな…構えとけ」

私は弓に矢をつがえた。

 

進むにつれて音は大きくなっていく。

そして、音の発生源を目にした。

 

それは、たがねをハンマーで打ち付けて壁を削っている人だった。

ランプの灯りに照らされ、その明確な姿が見えた。

先住民族のような原始的な格好をし、体にオレンジ色の塗料で奇妙な模様をペイントした男性。

彼は私達に気づいたのか、手をとめてこちらを見てきた。

その目は血走っていて、怖いくらいだった。

 

次の瞬間、彼はうなり声を上げて襲いかかってきた。

組み付かれる前に胸を射ったけど、多少怯んだだけだった。

そこで素早く後ろに回りこみ、足を払って転ばせ、倒れるようにして頭に肘打ちを当てると、頭が砕けて血を迸(ほとばし)らせ、うめき声を上げて動かなくなった。

どうやら骨はもろいみたいだ。

「こいつは…」

 

「アウトル…

多少の知能があり、戦いを好むアンデッドの一種ですね」

 

「そうだな…てか、なんで知ってるんだ?」

 

「わかりません。ただ、何故かわかったんです」

 

「へえ…、

もしかしたら、シエラの記憶が受け継がれてるのかもな」

 

「そうでしょうか…」

 

 

その先にも、松明と武器を持った個体が3体いた。

「[ヘッドステッチ]」

朝の訓練でも使った技で、一番遠くから松明を投げようとしてきていたものを倒した。

龍神さんは技も使わずに前の2体を切り殺していた。

「技とか使わないんですか?」

 

「雑魚相手に使う必要はない。

最も、数が出てきたら別だけどな」

 

 

さらに進むと、石でできたシャッターが降りていて進めない所が出てきた。

ここまでに分かれ道などはなかったので、レバーなどで動かすものではないと判断し、

「氷法 [氷山崩し]」

術でシャッターを凍らせ、粉砕して先へ進む。

 

 

 

しばらく進むと、槍と大きな盾を持った個体が5体、横に並んで現れた。

幸い頭は無防備だったので、

「[矢の雨]」

上に複数の矢を放って、脳天を射抜いて倒した。

それとほぼ同時に、私の首を狙って矢が飛んできた。

矢を射ってきた個体は奥の小高い所にいた。盾を構えてた奴らの後ろから狙ってきていたらしい。

向こうは矢をつがえる動作の途中だったので、すぐに撃ち返した。

向こうの矢は当たらなかったけど、私の矢は敵の頭を射抜いた。これは流石に一撃だった。

 

更に奥へ進み、下に降りる階段を横に見て進むと広い空間に出た。

そこは広場のようになっていて、私達から見て左の壁には何かの彫刻?がある。

 

下の方を見ると、一人のアウトルが大勢のアウトルを前にして何か会話していた。

一人の方は体のペイントが青い。恐らくはリーダーだろう。

「龍神さんは普通の方を何人か倒してください。

私はリーダーをやります」

 

「わかった」

向こうとの距離は目測で70m。

弓を構え、正確にリーダーの頭を狙う。

そして、矢を放つ。

同時に龍神さんが技を放ち、大勢いるうちの半分近くを倒してくれた。

当然残ったやつらに気づかれたけど、すぐに柱の陰に身を隠し見つかるのは免れた。

 

 

下は騒ぎになっている。

今は見つかっていないとは言え、階段を登ってくるのは時間の問題だろう。

そこで、階段を登りきった所に罠を仕掛けておく事にした。

 

 




クリーチャー解説
アウトル
ある程度の知能と自我を持ち、同族のみで集まって独自の社会を形成している上位のゾンビの一種。
感情があり複雑な上下関係を理解でき、特定の宗教を信仰していたり、強い集団意識を持っていたりと、普通のゾンビよりも生きた人間に近い性質を持つ。

アウトル (蛮族)
辺境の地で暮らしていた部族がアウトル化したもの。
先住民を思わせる原始的な服装をし、体には一族の象徴である奇妙なペイントをしている。
部族内での立場によって体のペイントの色が違うようで、オレンジは平民、青は族長直属のリーダー格、赤は族長となっている。
武器には弓や石の剣、槍、斧を使っており、防具として盾や鎧·兜を装備しているものもいるが、中には松明やランプを武器として戦うものもいる。
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