黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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幽霊海賊船

甲板に引きずり込まれるように乗せられてすぐ、船長と思しき男が目の前に躍り出た。

白髪頭だが、顔はそこまで老けていない。

「…」

船長は俺たち1人1人の顔をじっと見てきたかと思うと、直後に両手を上げて叫んだ。

「よいぞ!この者たちこそは、始祖の贈り物だ!」

意味がわからなかったが、周りにいた海賊たちが囃し立てたことから、奴らにとって重要な意味のある発言であるらしいことはわかった。

 

「あ、あなた達は、一体何者なのですか!」

ウェニーの問いに、船長は意外なほど素直に答えた。

「我らはカディの海賊団。この海を統べる、真の支配者だ」

 

「カディの…!?ということは、カディードス海賊団と何か関係のある海賊なのですか?」

 

「そんな名前は知らんな…」

船長は左手を変化させ、長い触手のようなものにして俺たちを掴んで強引に引っ張り、甲板の後方の扉を開けて先の階段を降りた。

そして全員の武器を取り上げ、奥にあった檻に押し込んできた。

 

 

「わ…私達をどうするつもりだ!」

武器を奪われてもなお、エーリングがくってかかる。

「お前たちは、我らの神に捧げる生贄となるのだ…どう足掻こうと、逃げることはできん。今日の日付の変わる時刻ぴったりに、儀式が始まる。それまで、大人しくしておれ」

船長は高笑いして去っていった。

 

 

 

 

一応檻を叩いてみたが、かなり頑丈だ。

「こりゃ、破るのは難しいかもな…」

 

「そんな…」

その時、ウェニーの声が響いた。

「きゃっ!だ…誰です!?」

 

振り向くと、ウェニーとエーリング…の他に、誰かいた。

格好からすると、水兵のようだが…。

 

「え、え…えーと…」

どうやら混乱しているようだ。いきなり俺達が入ってきたからか。

こういう時歩み寄るのは苦手なのだが、俺が行かなくともアレイが手を差しのべてくれた。

 

「大丈夫、落ち着いて。私達はあなたの敵じゃない」

 

「…ほんと?」

 

「ええ。それに私は、あなたの同族。この制服が、何よりの証拠」

 

「た…確かに、わたしと同じ服装だね。…いつぶりだろう、同じ水兵に会うなんて…」

 

エーリングは、ここに水兵がいることに驚いていた。

「驚いたな、海賊船に水兵がいるなんて…」

すると、その水兵は答えるように喋りだした。

「わたしはセラ・レムリナ。昔はレークって町にいたんだけど、ある時あの海賊たちに捕まって…それから長い間、ここに閉じ込められてたんだ」

 

当然のごとく、アレイが反応した。

「レーク?あなた、レークの子なの?」

 

「うん…あれ、もしかしてあなた!」

 

「ええ…私はアレイ。レークの水兵よ」

 

「レークの…よかった、今もあの町はあるんだね。もう、ラディアに襲われてしまったかと…」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「知らないの?再生者ラディアは、すべての海人を支配下に置こうとしてる。そしてその一環で、沿岸の海人系異人がいる町を全部襲うつもりでいるんだよ!」

 

「えっ…!?」

なんでそんなことを知っているんだろうか。だが、本当であるならば重要な情報だ。

「それは本当か?」

 

「うん。あの海賊たちの話を漏れ聞いたから、間違いないよ!」

 

「…ウェニー様」

エーリングはウェニーを見た。

「…はい、彼女の話が本当なら、由々しき事態です。可及的速やかに、対策を講じねばなりません。ですが、まずはここから脱走するのが先かと思います」

…確かにそうだ。

 

「でも、どうする?武器は取られちまったし、この檻は頑丈そうだぜ」

 

「それなら、私の魔法で容易にできます。『アルトシス・プルーム』」

ウェニーが魔法を唱えると、全員の体が水のように崩れ落ち、液体となった…

 

 

 

「…すごい!」

アレイが歓声を上げたが、すぐにエーリングに口を押さえられた。

「静かに…奴らに気づかれる」

 

「あっ、ごめんなさい…でも、私達みんなの体を液体状にするなんて」

ウェニーの魔法。それは、俺達全員の体を一時的に液状化させるというものだった。

それで、液体にとっては隙間だらけである檻から何なく抜け出すことができた…というわけだ。

もちろん、脱出後すぐに元の体に戻った。

 

「これは高位の水術の1つで、術魔法全集第二十六章七項、1451ページに記録されている『液化魔法』の一種であり、同魔法の簡易的なものです。液化可能な時間はおよそ10秒、使用可能な対象は人や異形含む全ての物体。主な用途は、そのままでは困難な状況においての対象の移動。そして、今のような脱獄行為です」

ご丁寧にも、ウェニーは長々と、やや早口で説明してくれた。

聞いてもない説明を…と言いたいところだが、俺も似たような語りをすることが稀によくある。

 

「…とにかく、脱出できそうな所を探しましょう。船内を探せば、海賊どもに見つからずに出られそうなところがあるかもしれません」

 

「わかりました。…あ、えっと…セラさんでしたね?私は魔導都市アイゼスの皇魔女、ウェニー・ズーウと申します」

 

「アイゼスの…あれ、わたしが知ってる限りあそこの皇魔女様はセリール様だったと思ったんだけど…」

 

「セリール様、すなわちセリール・エウティア様は、先代のアイゼスの皇魔女であり、私の恩師でもあります。私は、あの方の後をついで皇魔女となりました」

 

「あ、後継ぎさんなんだ。でも、いつの間にセリール様亡くなってたんだろう…」

 

「セリール様の在位期間は、6248年間に及びます。これはアイゼスの皇魔女としては最長の在位期間です。そして今から141年前、老衰で亡くなりました。最期に、私にアイゼスの統治と三海霊の石を託し、『あなたの出来る限りの力を以て、この国を守りなさい』と遺してくださいました」

…妙に細かいのも、俺とそっくりだ。

というか、そんな昔の皇魔女を知ってるなんて…この水兵、何者だ?

 

「そ、そうなんだ…そうだ、この部屋の奥に、通路があるよ。その先に行けば…」

 

「脱出できそうなとこがあるかもしれんな。よし、行ってみるか」

 

奥の扉に鍵はかかっておらず、普通に開いた。

 

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