黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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最初の死海人

船長は左手を伸ばし、俺達みんなを捕らえてきた。

「急遽、今すぐに儀式を執り行う事になったが…それを見られたからには、どの道生きては返せんな!」

 

「あ…あなた達、何者!?」

アレイの言葉に、船長は鋭い表情で答えた。

「すぐにわかるわ…例え嫌だと言ってもな!」

 

 

 

 

そうして甲板まで引きずり出された。

そこにはやはり多くの海賊達がいた…のだが、みんなして上の方を見上げている。

 

船長は俺達を離すと、他の海賊達と同じように上を見上げた。

そして両手を広げて叫んだ…

「我らが主よ!我らが…偉大なる海の支配者の眷属よ!ここに、姿を現したまえ!」

 

 

すると、船のマスト全体が妖しく光った。

そして、そのてっぺん近くから何かが分離するように出てきた…

 

「あれは!まさか…!」

アレイが声を張り上げる。

炎のように赤く、しかし不気味に黒ずんだ長い髪を持ち、濃い青色の肌をした海人。

目を開けば、これまた不気味な桃色の瞳が見える。

もはや、何者なのかは考えるまでもない。

 

「死海人ミュウマ…だがなぜこの船に!?」

 

エーリングの疑問の答えは、これからわかるだろう。

 

 

 

ミュウマはゆっくりと舞い降りてきた。

同時に、海賊たちは一斉にひざまずいた。

 

「…バルク」

名を呼ばれた船長は、顔を上げた。

「此度の任務は、正直無理ではないかと思っていましたが…見事でした」

 

「勿体なきお言葉です」

 

「…それで」

奴は振り向き、アレイを見た。

「あなた様が例の妹…星羅こころ様の妹様ですね。水兵になったと伺っておりましたが…やはり、あの方に似ておられます」

 

「…私は、生の始祖の末裔よ」

 

「それも承知しております。…確かに、あの小賢しい女の面影を感じるお顔です。しかしそれはこころ様も同じこと。それに、あなた様はあの女とは違う。何しろ、既に我らの中核を担う方の実の妹なのですから」

 

「姉を知っているの?」

 

「もちろんですとも。我らが主であるラディア様を通じ、幾度かお会いしたことがございます。あなた様と同じような、素敵な目をしておられる方ですわ」

 

すると、エーリングが割り込んだ。

「…口を閉じろ!お前に彼女と話す資格はない!」

 

その槍をさっと躱し、ミュウマはエーリングを見つめた。

「…あら?見覚えのある方だと思ったら、レザイの騎士様でしたか。あなたのことは、我ら一同よく覚えていますよ…魔騎士エーリング」

 

「私とて、お前たちのことは忘れもしない。かつて生の始祖を始めとした、戦友達と共に戦ったあの戦いのこともな…!」

どうやらこの女、伝説の時代から生きているらしい。

まあ魔騎士…というか上位種族からすれば6000年なんて大した年月じゃないんだろうが。

 

「あの時は、私達は惨敗を喫する結果となりましたね…しかし、思い上がらないことです。が、ここでリベンジマッチ…と行くのは些か軽率です。まずは、例の妹様を回収しましょう」

 

ミュウマは再びアレイに近づく。

エーリングがつっかかるが、ミュウマには容易く弾かれた。

そこへ、ウェニーが魔弾を放つ。

「…?」

ウェニーの格好を見て、ミュウマは察したようだった。

「なるほど、アイゼスの皇魔女ですか。…とすると、セリールは既に死んだのですね?」

 

「そのようなこと、あなたには関係ありません!例え、セリール様がどうなっていようと…!」

 

「おやおや、心外なお言葉ですね。全ての生物には、いずれ死が訪れる。そうなれば、我らの世界へ来ることは避けられないのですよ」

 

「…!?まさか!」

最悪の想像をしたであろうウェニーに、ミュウマは不気味に笑った。

 

「ともかく、今の私の狙いはあなたです。…我らだけではない、我が主もまた、あなた様がこちら側へ来られることを楽しみにしておられますわ…アレイ様。さあ、こちらへ」

ミュウマは、その冷たい手を伸ばす。

 

「…!」

アレイは目を見開き、全身から謎の魔力を放った。

それにより、ミュウマは大きく後退させられた。

「こ…これは!?」

 

「命の護符…わかるでしょ?かつてシエラがまとっていた、陽の道よ!」

その言葉には、皆が驚いた。

陽の道とは、陰の道と対を成す「陰陽道」、即ち高位の魔法。

そしてそれを扱える者はごく一部の高位の異人だけで、元々はそのような者を「陰陽師」と呼んだ。

それがたまたま祈祷師…つまり闇を扱う種族の最上位種だった、というだけのことだ。

 

「陽の道…なるほど」

ミュウマは嬉しそうに笑った。

「素晴らしいですわ…!あなた様が、もうそこまで血筋の力を目覚めさせていたなんて!」

奴は何か勘違いしているようだ。

本気で、アレイがあちら側に行くとでも思ってるのか?

 

「ですが、このように雑兵を連れていたとは少々残念です。この者たちの相手は、私がするべくもないというのに」

 

「なに…!」

エーリングがミュウマを睨みつける。

 

「以前は、確かにそこの騎士どもに惨敗を喫しました。しかし、今回はそうはいきません。何しろ、彼らがいるのですから…」

奴は再び高く浮き上がり、海賊たちの上で静止した。

「この者たちが、あなた達の相手です。私が手を下すまでもなく、消えていきなさい…!」

 

ただの海賊が…と思ったが、よく考えれば奴は復活能力持ちだ。まともに戦っては分が悪い。どうにかして、ミュウマを叩かなければならないだろう。だが、果たしてそう上手くいくか。

普通に弓や術を撃ったのでは、まず間違いなく躱される。とすると…?

 

ともかく、船長を先頭とした海賊どもが向かってきた。

まずはこいつらの相手をして、突破の糸口を探すとしようか。

 

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