黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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さざ波の怒り

さっそく、作戦会議に入った。

 

ちなみに、私はフィージアとの絡みは良くも悪くも一切ない。良くない噂と、多少の情報を人づてに聞いたことがあるくらいだ。

というのも、彼らは幸運なことにレークにはほとんど姿を見せないのだ。

その理由は、なんとユキさんでもわからないらしい。ただレークはニームと違い、彼らの本拠地であるシュンズネーアイから遠いし、いつでも使えるワープがあるわけでもない。

だから、それが理由なのかもしれない。

…と思ってたけど、レークから海を挟んですぐの所にあるアイゼスに来ているということは、そういうわけではなさそうだ。

 

「しかし、そもそもなんで奴らは…ああ、この子を追ってきたんだっけか。でもなんで、この子の居場所がわかるんだ?」

 

「探知魔法を使ったのではないかと思います。ただ、中級以下の探知魔法や質のあまり良くない魔法道具だと、探したい人のいる都市や国はわかっても、その中でその人自身を見つけ出すことは困難です。…故に、クリスラさんがこの国にいることまではわかっていてもそれ以上のことはわからず、国に留まって探しているというのが現状でしょう」

 

「あっ、そういうこと…でも、私がアイゼスに来る時には奴らに会わなかったんですよ…野盗として活動していた時も。どうして、そういう時に奴らに出会わなかったんでしょう?」

 

「それについては、私もわかりません。ただし、魔法のレベルが関係している可能性があります。位の低い探知魔法、および性能の低い魔法道具では、対象の捜索の際に時間差が発生したり、場所がズレたりすることがあります」

 

「それだと探知の意味なくないか…?まあでも、おかげで救われたな」

 

「はい、おかげでこうして彼らへの報復の作戦を練る時間ができました」

しかし、とウェニーさんは続けた。

「私は立場上、このような非公式なフィージアとの干渉の場に表立って出るわけにはいきません。私が彼らに手を出せば、シュンズネーアイの者たちがそれを口実にアイゼスを狙ってくる可能性もあります」

フィージアが強引かつ乱暴な真似を平気でする組織であることを踏まえると、それは否定できない。

 

「しかし、それはあくまで『表立って』という条件つきです。身分を隠し、変装した上でならなんら問題はないはずです」

 

「あ、変装するのか」

 

「私も彼らには私怨がありますので…」

と、ここで官吏が部屋に入ってきた。

私達が避けると、官吏はウェニーさんの前に来て話しだした。

 

会話を聞く限り、彼はこの前の自殺した水兵について調べた情報をまとめてきたようだ。

けれど、その中に「フィージア」という言葉が出てきた。

 

なんでも、自殺した水兵…サリメさんは、ここ数週間レークを離れてアイゼスに来ていたのだけど、それは父の墓がこっちにあり、先日命日だったからお墓参りに来ていたらしい。

でも、その途中にフィージアの者たち…クリスラさんを追っているのと同じ連中に見つかってしまった。

どうやら彼女の父親は生前、奴らから莫大な借金をしており、今になってそれを返せと迫ったらしい。

 

明確な証拠は見つからなかったようだけど、おそらく返せないと言って、奴らに何かしら脅迫されたのだろう。

それを真に受けたのか、あるいはとてもそんな額を返せないと思ったのか、はたまた他のみんなに迷惑をかけたくないと思ったのか、いずれにせよこのまま生きてはいられないと考えたサリメさんは、自ら命を絶った。

 

当のフィージアたちはと言うと、サリメさんが亡くなったことで生前の彼女の知り合いだった人達に代わりに借金を払えと当たるようになった他、レークの人達にまで手を出そうと考えている…ということらしい。

 

それを聞いて、私は激しい怒りが湧いた。

クリスラさんをここまで追い込んだのもそうだけど、サリメさんを自殺に追い込んだ上、無関係な人達やレークにまで手を伸ばすなんて。

クリスラさんも悪い人ではないし、サリメさんもいい人だった。

彼女らは…私の2人の同族は、奴らに殺されたも同然だ。

 

故に、ウェニーさんが官吏に言った一言はとても嬉しかった。

「すぐに、国内にいるフィージアを探し出してください。私達で、彼らを壊滅させます」

 

「しかし、陛下。それでは、彼らの親分格の指導者に喧嘩を売ることになります」

 

「先に喧嘩を売ってきたのはどちらでしょうか?彼らが罪のない海人を少なくとも2人追い込んで、社会的に死なせたのは事実です。海人は我が国の友…脅威にさらされているならば、守らねばなりません」

 

「確かにそうですが…」

 

「もし私達の行動の結果として、フィジアルが我が国に侵攻してきたら、私は全力で抗います。その際はきっと、ノグレはもとよりレークの方々も全面的に協力してくださるでしょう。私はアイゼスの皇魔女、この国を守るのも役目ですが、この海の民を守るのも役目です。彼らに仇なす者を廃除できなくば、海人たちの信頼を失います」

 

そこまで私達…海人のことを思ってくれていたなんて。

ユキさんに聞いてほしいくらい、嬉しい言葉だった。

 

「…わかりました。では、ただちに調査を開始します」

 

「お願いします。それと、レークの方にも連絡をしてください…戦闘に長けた者を数名、派遣してほしいと」

 

レークに?ということは、他の水兵にも協力してもらうということ?

ウェニーさんには、何か考えがあるのだろうか。

 

 

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