黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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ウェニーの計画

それから程なくして、レークから3人の水兵が派遣されてきたという話を聞いた。

早くない?と思ったけど、どうやらすでにアイゼスとレークを繋ぐワープが開通していたようだ。

まあサリメさんの一件で、アイゼスとレークの間にワープを置こうという話にはなっていたけど、こんなに早く開設されるとは。

 

でも聞いた所、意外とワープ装置の設置は簡単で、その上両方の町に置かれさえすればすぐ使えるようになるから、町の主の承諾さえあればすぐに開通させられるらしい。

いずれにせよ、これでいつでもレークとアイゼスを瞬時に行き来できるようになった。それは大きな進歩だと思う。

 

そして、派遣されてきた水兵というのはアメルとセレン、あとフィルだった。

アメルの顔を見て、私はすぐに「修行はどうだったの?」と聞いてしまった。

以前、蒼穹のブーツを手にした直後、苺さんの部下の元で修行するということでいなくなったわけだけど、あの後どうなったのか。

「大丈夫。おかげでだいぶ強くなれたから」

アメルは、槍を横にくるくる回して言った。

 

それから、3人はクリスラさんを見て驚いていた。

「あら、あなた、どうしてそんなボロボロの服を着ているの?」「レークの子じゃなさそうね…どこから来たの?」「どうしてそんなに汚れてるの?しかも武器も錆びついてるし…」と、口々に言った。

クリスラさんはそれで困惑していたようなので、私が「彼女には構わないで」と言った。

 

 

「セレン…はわかるが、あんたは…?」

旅を始める前、クラブで会っているはずなんだけど。龍神さんは、フィルのことを忘れているようだ。

一方のフィルは、しっかり彼を覚えていたらしい。

「あら、私を忘れたの?…まあ無理もないか。あの時は、カウンター越しにちょっと喋っただけだったしね」

 

「…?」

それで彼は思い出したようで、手を叩いた。

「あ、レークのクラブにいたバーテンダーか!でも、あんた戦いは得意…なのか?」

 

「ええ。こう見えても、アメルたちと一緒に前線に立つこともあるのよ」

確かに、フィルは前線に立って戦うことが多い。

レーク自体、敵が襲ってくることがあまりない平和な所だけど、海から異形が現れたり、町の入り口にもなっている山のほうで山賊が出たりすることはあり、そういう時には戦闘を得意とする町の水兵が立ち上がる。

そのメンバーの中に、フィルもよく混じっている。

私は彼女の戦いぶりを見たことはあまりないけど、セレンたちの評価を聞く限りそれなりには強いらしい。

 

「へえ…武器は何を使ってるんだ?」

 

「短剣。リーチは短いけど、その分小回りが利くから愛用してる」

 

「なるほどな。経験でしかないが、短剣を使う奴は基本立ち回りが上手いもんだ」

 

ここで、セレンが口を出した。

 

「私のことは無視するおつもり?」

 

「ああ…悪い悪い。そんなつもりはない。君は確か、薙刀使いの新メンバーだったよな?」

 

「ええ。あの後、ラニイさんに正式に『エンドストーム』のメンバーとして加入させてもらったわ。…あなたのおかげでね」

 

「俺は、期待できそうな奴を拾っただけだ。吸血鬼狩りになったのは、他ならぬ君自身の力だ」

セレンは、言葉にはしないまでもとても嬉しそうだった。

 

「…で、ウェニーさんよ。この3人を集めたのは、なんでなんだ?」

 

「あっ、はい!…彼女たちには、フィージアの拠点に突入する際に活躍してほしいと思います。最終的には、直接乗り込んで壊滅させたいので」

つまり、彼らの拠点に乗り込んで暴れるということか。物騒というか、乱暴な方法を思いつくものだ。

でも、セレンたちは嬉しそうだった。

アメルは元より、彼女らにとって、町の外で、それも皇魔女のために戦えるのなら、何でもいいのだろう。

 

「それは結構だが、奴らの拠点が具体的にどこにあるのかはわかってるのか?」

 

「それはまだ不明です。しかし、部下に調査させたところ、上手く利用すれば彼らの根城を突き止められるかもしれない事実がわかったのです!」

フィージアの者たちは普段、町中では目立たないように行動しているのだけど、特徴的な靴を履いているから、知っている人が見ればすぐにわかるらしい。

それで、そのフィージアの1人があるノートを落とした。それには、ざっと50人分の名前や貸し付けた金額、返済状況などの情報が載っていたのだという。

 

そして、それらの情報とは別のページに「殺人者を雇って返済を怠っている者の居場所を特定し、追い込み、場合によっては殺して臓器を売り払おう」という旨の記載があった。

つまり、彼らは殺人者を探している。

 

「…ってことは、殺人者をおとりに使って奴らをおびき出して、拠点の場所を特定しようということですね?」

 

「そうです。…でも、それには1つだけ問題があります」

 

「それは一体?」

 

「殺人者は、人とのコミュニケーションが苦手であったり、計画通りに動くことが困難である者が多いのです。よって、本物の殺人者を使うのはリスクがあります」

 

「では、誰にやれと…?」

すると、ウェニーさんは信じられないことを言った。

 

「アレイさん。あなたにお願いします」

 

「…えっ!?」

つまり、私に殺人者のフリをせよというのだ。

 

「そんなこと、できるわけないです!第一、種族の違いはすぐにバレます!」

フィージアの者たちなら、殺人者とそうでない種族の見極めくらいすぐにつくだろう。

そもそも私は海の異人だ。私の体には、取っても取れない海の香りが染み付いている。

 

「ええ、確かにそのままでは容易にバレてしまうでしょう。そこで、彼女に協力してもらうのです!」

 

彼女…?と思ったら、その人はすぐに姿を見せた。

 

それは、久しく見ていなかった殺人鬼…

朔矢さんだった。

 

 

 

 

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