黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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二人の朝

翌朝、私が起きたのは5時過ぎ。

町にいた時より、だいぶ早く目が覚めた。

 

龍神さんは、すでに起き出していた。

「おはようございます。朝が早いんですね」

 

「いつもこうだからな」

 

「そうなんですか?」

そう言いつつ、彼の過去を見た。

 

彼は、普段は夜1時頃に眠り、朝5時頃に起きる。

彼はなかなか寝付けないタイプのようで、布団に入っても寝付くまでに2時間近くかかったり、朝まで一睡もできないこともあるらしい。

 

でも、彼は4時間ほど眠れば十分な体質なので、普段は生活に支障をきたしてはいないようだ。

 

そしてここからが驚いたのだけど、龍神さんは毎朝のルーティンを決めていて、それを徹底しているらしい。

 

朝起きたら、まずは時間を確認する。

そうしたら、窓を開けて日光を浴び、しばらくは携帯をいじる。

そして、6時には朝食をとり、それが終わったらお風呂に入り、歯を磨く…といった感じだ。

 

別に変わった事はしてないけど、私が驚いたのはその徹底さだ。

二度寝や長風呂は全くせず、食事はいつも同じ位の時間で調理でき、同じ位の時間で食べられるものを食べている。

そして何らかの理由でルーティンが急に変わると焦り、時には怒り出すこともある。

 

ここまで日々の生活の時間割をきっちり守れるなら、彼、時間管理とかは得意そうだ。

ただ、予想外の事に速やかに対応できない、というのはちょっと難点だけど。

 

「アレイ、風呂入るか?」

 

「あ、はい!」

 

「先に入っていい。俺は朝飯済ませてから入るから」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

お風呂から上がったら、少しだけ髪の水を切る。

水兵は、髪が濡れたままのほうが何かと都合がいいのだ。

 

鏡に向かい、髪を結ぶ。

私は髪型にはちょっとしたこだわりがあり、いつも表編みの三つ編みを2本下げている。

アレンジは、敢えてしない。

 

私は手先が器用なのもあって、時間さえあれば一人で髪を結べる。

最初のうちは上官や他の人にやってもらっていたけど、練習して自分でできるようになった。

 

…それより、急がないと。

龍神さんを待たせるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

朝食を済ませ、チェックアウトするためにロビーで待つ間、座椅子に腰掛けて新聞を読んだ。

「『勇者ラカル、ペレスの町に到着。バーサクの塔突入前の最終準備か』…

もうそんな所まで行ったんだ」

 

勇者ラカルとは、最近この大陸全土で話題になっている人物。

再生者を倒し、世界をアンデッドから解放するために立ち上がった若い戦士で、まずは再生者王典の討伐を目指しているという。

 

彼はアイドルばりに美しい風貌なのもあって、すぐに話題の人となった。

数ヶ月前からずっと話題になっていて、定期的に各地を支配する高位のアンデッドやそれらと繋がりのある異人を倒し、人々を解放しているというニュースが聞こえてきていた。

 

そしてバーサクの塔は、この町から西にしばらく行った所にあるペレスという町の近くにそびえる塔で、王典の部下であるゼガラルというアンデッドが住処としているらしい場所だ。

あくまでも噂だけど、ゼガラルはペレス含む近隣の町や国の支配を狙っている…らしい。

 

でも、そこにラカルが行ったというのなら、まあ安心だろう。

ラカルは戦士でありながらアンデッドを殺す事ができるし、少なくとも私よりはずっと強いから。

 

「アレイ、終わったぞ…」

 

「あ、終わりましたか」

戻ってきた龍神さんに、話題を振ってみた。

「龍神さん、聞きました?勇者ラカルがペレスの町に行ったらしいですよ」

 

すると、彼は意外な反応をした。

「ラカル…?誰だそれ?」

 

「…え?」

そもそも知らないとは驚愕だった。

 

「知らないんですか?最近ずっと新聞とかで取り上げられてる人なんですが…」

 

「…全く。俺、読書とゲームとアンデッドくらいにしか興味なくてな」

いや、興味がなくても聞いたことくらいはあると思うのだけど。

最近、もはや知らない人がいないレベルで流行ってる人を知らないとは…もしかして、龍神さんって流行にすごく疎い人なの?

 

 

 

 

宿を出ると、夜は見えなかった町の景色が見えた。

 

「うわあ…」

雪の積もった、いかにもなファンタジー感がある町並み。

これが、ミトルの町…

レークでも有名な町だ。

 

「きれいに積もってるな」

龍神さんは、足元の雪を手ですくい、雪玉にしてその辺に放り投げた。

 

「何してるんですか?」

 

「いや…特に意味はない。ただ…何となく、な」

 

「…?それより、せっかくミトルに来たんですし、もっと色々見て回りましょう!」

 

「だな!」

ミトルの町の住人は、主に「戦士」という種族の異人だ。

戦士は家族や友人、恋人などを守るために戦う事を選んだ人間が進化したものとされる異人で、またの名を「ドワーフ」ともいう。

その多くはパワフルで豪快な戦い方をし、武器も大剣やハンマー、斧など重量級のものを扱う事が多い。

 

ところで、ミトルはアルノと同じく、異人と人間の文化が混ざり合っている町だ。

アルノは私達の町であるレークに近かったから、必然的に互いの文化が混ざったけど、ここにはアルノとはまた違った事情がある。

 

人間が異人になる場合、大抵は「有力種族」と呼ばれるいくつかの種族の中のどれかになる。

そして、その中の一つが戦士。

 

ミトルは元々人間の町だったのが、いろいろあってある時から戦士になる人間が現れるようになった。

それがきっかけで、ここは戦士と人間が共存する町になったのだ。

 

「それじゃあ、まずはどこに行きましょうか」

 

「そうだな…ハグルにでも行ってみるか」

 

「いいですね!行ってみましょう!」

 

 

 

 

ハグルとは、町のほぼ中央にある戦士達の集落。

町の守り手でもある戦士達。

彼らの多くは、ここに住んでいる。

 

彼らは外部の人に対して友好的だ。

故に、ここに観光目的で外から来る人も少なくない。

 

「いやー、未開の民族の集落…って感じでいい雰囲気出してんな」

 

龍神さんは、辺りを見渡しながらそう言った。

 

そして少し歩くと、一人の男性が声をかけてきた。

「おっ、見かけない顔だな。お客さんか?」

 

「はい。私達はアルノから来ました」

 

「アルノ…ねえ。てか…もしかしてあんた、水兵さんか?」

 

「はい。私は、レークの水兵です」

私がそう答えると、男性は何やら騒ぎ出した。

 

「やっぱり!こりゃ、いいお客が来てくれたもんだ。

ちょっと待ってな、今ボスを呼んでくるから!」

 

そして、彼は一際立派な家の中へ走っていった。

 

 

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