黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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翌朝、俺達はすぐに塔へ向かった。

塔へは、1時間半ほどでついた。

 

塔のまわりには、大量のゾンビの無惨な死体が転がっていた。

ラカル達は、塔に入る前からけっこう派手にやったようだ。

 

「ちょっと待って下さい」

突然、アレイがそう言ったので立ち止まった。

 

「どうした?」

 

「なんか、嫌な予感がします。信じたくはないですが…とりあえず、見てみます」

 

「わかった」

 

アレイは目を閉じた。

塔の中を覗いてみるのかと思ったのだが、過去を見てみるという意味だったようだ。

 

「…」

アレイはしばらく黙っていたが、やがて目を開け、

「えっ?そんな…!」

と、悲鳴のような声をあげた。

 

「どうした?」

彼女の反応からして、何を見たのかはほぼわかったようなものだが、一応聞く。

 

「龍神さん…これ、見て下さい!」

アレイは、空中に映像を映し出した。

 

塔の最上階に鎮座する、大振りの斧を持った体格のいいゾンビ系のアンデッド。

おそらく、こいつがゼガラルだろうか。

 

そこへ、ラカル達一行がやってきた。

ゼガラルは部下たるゾンビ達を倒されたことに憤慨しつつも、ここまでこられた異人がいた事に関心し、部下を新たに呼び出して彼らの相手をした。

 

ラカル達は、途中までは割と押していた。

だが、そのうち僧侶が倒れると、そこから戦士、魔法使いと倒れ、やがて勇者も倒れてしまった。

 

「どうして…どうして…!彼らは、あんなに強かったのに…!」

アレイが嘆いているが、俺としては「まあ…予想通りだな」という感じだった。

 

正直、ラカル達の戦いぶりは悪くなかった。

戦士と勇者が肉薄して、僧侶が回復やサポートをし、魔法使いが遠隔攻撃。

一見上手い感じに連携が取れていて、大抵のやつとは張り合えるように思える。

 

だが、奴らはひとつ、重大な欠点があった。

そして、それを突かれた。

 

奴ら一行は、攻守共にバランスよく配慮していた。

そして回復は、一応戦士と勇者も回復アイテムを持ってはいたが、基本的には僧侶と魔法使いに任せていた。

 

これが問題だったのだ。

これまでの旅ではそれでよかったのかもしれないが、特定の役割を誰かに完全に任せるのは、高位のアンデッドとの戦いにおいてやってはいけない行為の一つ。

 

その理由は、至って簡単。

一つの役割に当たっている者がやられると、一気に全体の予測やプランが崩れ、結果的に総崩れになるからだ。

 

故に手慣れた奴は、例え部隊を組んでいても、誰かに特定の役割を任せっきりにはしない。

回復など、最低限自分でできるだけの用意はしておく。

不死者狩り…もとい吸血鬼狩りのパーティにおいては、突出して得意な役割があり、かつ相応の実力がある…という奴がいない限り、役割というのはほぼ名ばかりなのだ。

 

まあ、RPGだったらバランスが取れたチーム編成なんだろうが。

ドラ◯エとかF◯(ファ◯アー◯ムブレム)とかなら回復役、物理の削り役、魔法の削り役、壁役、と分ける意味もあるのだが…あいにくこれはゲームではないので、役割分担をする意味はあまりない。

むしろ、パーティの倒壊を招きかねない。

 

いずれにせよ、今のでラカル達が敗れたことがわかった。

大陸の皆さんには残念だが、勇者はここに死したのだ。

 

ならば、する事は一つ。

 

「アレイ、俺達も向かうぞ!」

 

俺はアレイを引っ張るようにして、塔を駆け上った。

道中の階をうろついていたゾンビは、全て倒していく。

こうしないと、後が怖いからだ。

 

 

 

さて、ものの数十分で塔の最上階についた。

階段を駆け上がり、奴の姿を目に捉える。

 

奴は、壁沿いにずらっと並んだゾンビの前で、まるで俺達が来る事をわかっていたかのように構えていた。

「やっと来たか…待っていたぞ、我らに逆らわんとする愚か者よ」

 

「悪かったな。すぐに登ってきてもよかったんだが、どうも先客がいたみたいなんでね。しばらく観戦させてもらったよ」

 

「そうであったか。だが、奴らはもうここにはおらんぞ」

 

「…!」

アレイは、弓を構えた。

 

「まあ、そうだろうな。ところで、お前の部下どもはそれだけか?」

 

「えっ…?」

アレイがちらりと俺を見てきたが、何も言わない。

すぐにわかることだからだ。

 

「ほう…わかるのか」

ゼガラルは、にやりと笑った。

 

「そりゃあな。…俺は吸血鬼狩りだぜ?わかんなくてどうする」

 

「吸血鬼狩り?…ならば余計に好都合だ。こやつらの実力のテスト相手にふさわしい!」

そして、奴は斧を高くかかげた。

 

すると、奴の後ろからふらふらと数体のゾンビが現れる。

それを見て、アレイは小さく悲鳴をあげた。

「…!なんてこと…!」

 

それは…まあ、もはや説明不要かもしれないが、先程俺達が見ていた、かつての勇者一行の成れの果てだった。

 

「やっぱりそうしたか」

 

「当然だ。こやつらは、私をあと数歩の所まで追い詰めた。だが、魔法を封じたらあっさり巻き返せた。所詮は低級の異人、儚いものよ。

だが、こやつらの実力は本物だ。故に、我が下僕…ことに王典様の下僕として、使ってやることにしたのだ。

…さあ、行け!この二人の命も奪って、同胞にしてやるのだ!」

 

勇者ラカル…いや、死勇者ラカルといったところか。

奴とその仲間は、かつて敵だった死人の命に従って動き、俺たちを襲ってきた。

 

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