黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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二章・死の炎
おかしな夢


封印の結界を張ると共に、さっきまで弱々しかった床の魔法陣の光が強くなった。

これは封印の力が戻った証拠。これでもう大丈夫だ。

 

 

「これで、もう大丈夫ですよ」

 

「あ、ああ…」

龍神さんはぎこちなくそう答えた。

まあ無理もないか…

 

 

 

館を出ると、外はもうすっかり暗くなっていた。

夜だと言うのに、異形やアンデッドはいなかった。

館の中にもいなかったし、これでこのあたりはもう大丈夫そうだ。

しかし外に出て一歩踏み出した途端、激痛で倒れてしまった。

右肩もだけど、たぶん肋(あばら)骨や左足も折れてる。

館を出るまで平気でいられたのが不思議だった。

すごく痛かったけど、即効治癒薬を飲んだらすぐに痛みが引いた。

「どうだ?」

 

「…大丈夫です。痛みも引きました」

 

「なら良い。…これの効能は確かなようだな」

龍神さんは、まだ入っている治癒薬のビンを覗き込みながら言った。

「当然ですね、マーシィが作ったものですし」

 

「マーシィ…あの子か。

…そうだな、「魔女」の末裔なら当然の事だな」

龍神さんはどこか意味深にそう言った。

 

そう言えば、龍神さんはマーシィの先祖…メラリー·エルドと面識があった、らしい。

マーシィはそうでもないかもしれないけど、私は彼女の事が気になっている。

メラリーがどんな人で、どのように龍神さんと出会い、それから二人でどのように生き、どんな最期を迎えたのか。

何故かわからないけど、気になって仕方ない。

 

 

 

宿を取り、食事や入浴をささっと済ませて布団に入った。

 

 

 

 

 

気づくと、私は恐らく深夜?のレークの大通りに一人ぽつんと立っていた。

あたりには誰もいない。

(何これ?)

すると、後ろから、

「アレイ」

セレンの声がした。

「っ!びっくりした…」

そう言って振り向いて、そして驚いた。

セレンの頭の上に、白くて立体的な「?」が浮かんでいる。

「ほら、行こう」

セレンは驚きで硬直している私の事を気にも止めず、私の手を引っ張ってゆく。

 

 

 

 

なぜかエルトマに連れてこられた。

中には何人かの水兵がいて、その全員の頭に白い「?」が浮かんでいた。

「あ、来た来た。

アレイ、あなたのためにサラダ作っておいたよ」

カウンターの向こうからフィルが言ってきた。

「一緒にカクテルどう?」

椅子に腰かけているアメルはそう言ってきて、

「音楽鑑賞でもしない?」

ミリーは壁際に立ったまま、そう言ってきた。

どれも単独でなら嬉しいことなんだけど、こうして一気に、しかもみんなから一斉に…ってなるとちょっと気持ち悪い。

「え、ええ…」

返答に困っていると、

「あなたのためにサラダ作っておいたよ」

「一緒にカクテルどう?」

「音楽鑑賞でもしない?」

三人が、さっきと全く同じトーンで同じ言葉を繰り返した。

「え、えーと…」

さすがに怖くなり、後退する。

するとフィルはカウンターを越え、アメルとミリーはこちらに向かってきた。

その間の笑った表情は一切変化がなく、ちょっと不気味だった。

「あなたのためにサラダ作っておいたよ」

「一緒にカクテルどう?」

「音楽鑑賞でもしない?」

最初と同じトーンで同じ台詞を言いながら、同じ表情をして迫ってくる三人。

私は耐えられず、ドアを開けて飛び出した。

 

 

 

その後の事はよく覚えてない。

気づいたら、普通にお店で仕事をしていた。

そして帰り、珍しく降りてきたらしいユキさんに声をかけられた。

「あなた、昨日一晩どこに行ってたの?」

 

「どこに行ってたって…セレンに連れていかれて、フィルやミリーと一緒にエルトマにいたんですけど…」

 

「あそこは昨日休みだったはずよ。

昨日の夜、臨時の連絡があったからメール送ったけど既読ならなかったじゃない。

電話しても出なかったから、みんな心配してたのよ」

 

「えっ?」

電話なんてかかってきた覚えはない。

それに、あの時はミリーやフィルも一緒にいた筈だ。

「それに、フィルたちは昨日はずっと家にいたって聞いたんだけど?」

 

「……」

その直後、視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

「…!」

そこは真っ暗な空間だった。

よく見ると、前に何かある。

暗がりでよく見えないけど、あれは多分…

「陰りの泉?」

ニームの町の水神殿の敷地内にある泉。

本来は水がすごく綺麗なのだけど、今は…

 

 

 

 

 

 

その水は、血を流したように赤く染まっていた。

 

 

 

 

 

 

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