黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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後始末

「っし、終わったな」

龍神さんが安堵の声を出す。

 

「この二人はどうしましょうか…」

 

「簡易的に埋葬しときましょ。

この辺には岩がゴロゴロあるから、適当なのを選んで墓標にすればいいわ」

 

「そうですね…そうしましょう」

私とリヒセロさんで一応調べたけど、妙な物は持っていなかった。

 

「大丈夫そうね。それじゃ、始めるわよ」

キャルシィさんが翼で二人の遺体を覆う。

 

「おい、何をしてるんだ?」

龍神さんが不思議そうに聞く。

「埋葬の準備ですよ。ニームでは、死者を弔う時はまず、キャルシィさんがこうして遺体に残る未練や魔力を吸いとるんです」 

私が説明すると、キャルシィさんが補足した。

「そういう事。本当はこのまま埋葬してもいいんだけど、こいつらは祈祷師だし。怨霊とか、呪いやら祟りやらの根源になられても困るでしょ?だから埋める前に、対策しておくの」

彼はそれで納得したようだった。

 

 

キャルシィさんによる浄化が終わった後、みんなで穴を掘った。

そしてそこに二人の亡骸を入れて埋め立て、墓標代わりの岩を置いて手を合わせた。

すっかり日が沈んで暗いけど、やらない訳にはいかない。

敵とは言え、尊い犠牲なのは間違いない。

こうして弔うのは、同じ異人としての最後の礼儀であり、情けだと思う。

 

「そう言えば、こいつらが化けてた水兵たちの本物は?」

龍神さんに言われ、はっと気づいた。

でも、キャルシィさん達がまずは町の被害状況を直接見たいと言うので町に戻った。

襲撃から時間が経ち、アンデッドも減った事で落ち着いてきていたけど、まだ生々しく傷痕が残っていた。

悲惨な町の現状を見て、リヒセロさんは悲嘆に暮れた。

一方、キャルシィさんは冷静に街中を歩き回って生存者がいないか確認したり、かつて水兵だったモノを一思いに斬ったりしていた。

顔にも声にも出さないけど、きっと深く悲しんでいるのだろう。

 

重苦しい空気のまま、神殿に戻った。

すると、出迎えてくれた門番から知らせがあった。

「ニラルの入山口を護っていた者達から、自分たちは無事だという連絡がありました」

これで、ひとまずニラルの門番の人達の件は安心してよさそうだ。

 

その後調査した結果、神殿にいる水兵のうち、管理職の人と私を除いた27人が神殿に逃げ延びてきた町の生き残りであること、陰りの泉が壊された以外には神殿への被害はないことがわかった。

「泉の結界はまた張ればいいとして…

町の子達がこんなに減ってしまったのは痛いわね」

 

「町の復興も急がねばなりませんが、この人数では難しいでしょう。管理職の者に手伝ってもらったとしても、1か月はかかるでしょうし…」

 

「そうね…」

キャルシィさんは考えた挙げ句、

「ちょっと見てみる」

と目を閉じた。

一応龍神さんに説明しておく。

「キャルシィさんは、起こりうる未来を夢で見る事も出来るんです。見るってのはそういう事だと思います」

 

「そうか」

 

数分後、キャルシィさんは目を覚ました。

「アレイちゃん、悪いんだけど、しばらくここにいてくれない?

あ、もちろんあなたも一緒に、ね」

 

「町を元に戻すお手伝いをすればいいんですね?」

 

「いえ、そうじゃないの。もちろん手伝ってもらえるなら嬉しいんだけど…それより、さっきの奴らの残党がまた来るようだから、それを迎撃する方を手伝って欲しいのよ」

残党がまた来る、というと、あの時私達が逃がした祈祷師か。

「はい、喜んで」

 

「当然イエスだな。取り逃がした獲物が戻ってきてくれるんなら、願ったり叶ったりだ」

 

「ありがとう。ちょっと苦しい戦いになるかもしれないけど…お願いね」

キャルシィさんが、頭を下げた。

 

 

 

 

敵が来るのは明日の昼頃になりそうとのことなので、今のうちに備えておくことになった。

身体的にも精神的にも消耗している人達は早めに寝かせ、私達で最低限の復興と戦闘準備をしておく。

まずは陰りの泉を修繕し、結界を復活させる。

その作業中、ふと気になった事があった。

「泉の結界があれば、祈祷師なんて入ってこれない筈なのに…」

口にそれを出すと、リヒセロさんが反応してきた。

「そうですね。私もおかしいとは思います。

しかし、今は考えている暇はない。これ以上被害が出ないよう、対策するのが最優先でしょう」

確かにそうだ。

今私達がすべきなのは思考を巡らせる事ではない。

解決のため行動することだ。

 

 

泉の修繕が終わった時点で、11時をまわっていた。

「今日はここまでにしましょう」

という訳で、今日はもう寝ることになった。

キャルシィさん達は自身の部屋に行き、私達は与えられた来客用の部屋で眠った。

 

翌日、目覚めたのは6時。

「だいぶ長めに寝たのにすっきり起きれたな」

私からすればいつもより少し短い睡眠時間だったのだけど、龍神さんにすれば長かったのか。

「すっきり起きれるのは、この町全体がキャルシィさんの力を受けているからです。

本来体に合わない睡眠時間でも、十分な時間眠ったのと同じ効果が得られ、目覚めもすっきりするんです」

 

「それはいいな。寝る時間が取れない奴とか不眠症の奴にはぴったりだ」

 

「実際、そういう方が来る事はよくあるそうですよ。

今は来られても困るでしょうけど…」

「ははっ、そうだな…。っと、行かなきゃな」

 

 

 

食事を取りながら、キャルシィさん達と話した。

「町の復興を急ぐんですよね?」

 

「ええ。でも、あなた達が心配する必要はないわ。

昨日の夜、夢でユキと話してね。事情を説明して、レークの子を救援として送ってもらうことになったの。

だから、あなた達は何もする必要はない。

今日は波も穏やかだし、海底旅行でもして時間を潰してきなさい」

 

「え、そんなのんびりしていいんですか?」

 

「あなた達は大事な人だし、珍しいお客さんだもの。働かせる訳にはいかないわよ」

 

「海に入るのか?このクソ寒い中?」

 

「寒いからこそ、よ。今の時期、海の中は意外と暖かいの。それに今は暖房もないし、火術者も足りないから、地上にいても寒いだけよ」

 

「…俺泳げないんだが」

龍神さんが泳げないというのは意外だった。

「大丈夫ですよ。私がいれば」

 

「…?まあいい。暇潰しには丁度良さそうだしな」

 

「ふふ。じゃ、アレイちゃん。彼を、海の底に連れていってあげてね」

海の底に連れていって、という言い方はなんか変な感じだけど、確かに、龍神さんと一緒に海底に行くのもありかもしれない。

「じゃ、行ってらっしゃい。昼前には戻ってくるのよ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

そして、私達はニームの北の砂浜に来た。

「ここから入るのか?」

 

「ええ。あ、ちょっと待って下さい」

私は魔力を高め、龍神さんに触れた。

「何をしたんだ?」

 

「私の力を分けたんです。

これで、海に入っても大丈夫ですよ」

 

「泳げるようにもなるのか?」

やけに心配性な彼を、引きずるようにして海へ入っていく。

 

 

 

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