黒界異人伝・生命の戦争 〜転生20年目の冒険譚〜 作:白い花吹雪。
「ずいぶん気にかかる言い方してくれるじゃんか?一体何をお話ししてくれるんだ?」
「まあ焦るな。
まず、お前さん達はロザミの使いでリスウェ湖に行ってきたのだろう?ご苦労だった」
「気にするな。大したことないお使いだったからな」
「そうですね。私としても、白水兵に会う事が出来てよかったです」
「そうか。冥月龍神、じゃったな。
お前さんなら、奴らとの交渉も容易だったであろう」
「まあな…あいつらは一応同族だし」
殺人者は一目見れば誰が同族かすぐわかるし、殺人者同士は仲がいいものだ。
「ならば、交渉は上手くいったのだな?」
「ああ。ロザミにいい報告が出来るな…って思いながら帰ってきた次第だ」
「それはよかった。
ところで、ここからリスウェ湖までの間で何か、変わった物を見なかったか?」
見事なタイミングだ。
丁度、報告したい事があったからな。
「ああ見たぜ。途中の河辺に、ルビーズ・ブエルが沢山生えてたんだ」
俺がそう言うと、ルーユは酷く驚いた。
「なに、本当か!?」
「本当さ。村をまるまる一個潰して、竹林を形成してたよ」
「なんたる事じゃ…
他にブエルが生えているのを見たか?」
「いや、今回見たのはあそこだけだった。
ただ、他の場所にも生えてるのかもしれんが」
「そうじゃな…」
ここでルーユは老眼鏡をくいと押し上げ、
「よく聞くのじゃ。今この国は数千年ぶりの危機にさらされておる。
わしらは、生きるために戦わねばならぬ。お前さん達には、可能な限りわしらと共に戦ってもらいたい」
と、凄みのある声で言った。
「一体何があったんですか?」
「先ほど、ロザミがミレールに向けて出発した。
その直後、楓姫の僕たる死霊騎士と祈祷師が国を襲ってきた」
「…!それで、どうなったんですか!?」
「持てる限りの戦力をつぎ込み、どうにか撃退した。
戦力にならぬ者たちは家に籠らせ、防衛に徹しさせたおかげで無傷じゃ。だが、戦わせた者達の被害は甚大なものになっておる。
ロザミはいつ戻るかわからん。奴らはいずれ戻ってくる。
わしとて国を守りたいが、何分この老体じゃ、とてもまともに戦う事はできぬ。
次に襲われれば、この国は終わるであろう。
…のう、お願いじゃ。
どうか、若く強いお前さん達がこの国を守ってくれ」
先代の皇魔女に、頭を下げられてしまった。
だが、ここで断る理由は全くない。
「わかった、やってやろう」
「私も精一杯戦います。これ以上、彼らの好きにはさせません!」
ルーユの表情が、悲嘆に暮れた暗い顔から希望に満ちた明るい顔へ変わった。
「やってくれるか!ありがとうのう…」
「しかし、私達だけであの二人を相手するのはキツいかもしれませんね…」
「だな。確かな実力がある味方が数人欲しいが…」
「それならばわしの弟子、リヒセロを呼ぼう。
あやつなら、きっと心強い味方になってくれるぞ」
なんだ、そういうことだったのか。
だからあの百合がパスポートになった訳だな。
「リヒセロさんを、ここから呼べるんですか?」
「うむ。あやつとは師弟の契りを結んでおるからの、どこにいても呼び出せるわい」
そして、ルーユは左の中指にはめた白い指輪を擦った。
「第3の弟子よ、顕現せよ」
指輪から小さな緑の光が飛び出し、地面に落ちた。
そしてそれは人型になり、リヒセロの姿になった。
「リヒセロ、ここに参上いたしました。
お祖母様、お久しぶりです」
「おお、元気そうじゃな。わしはおまえに会えて嬉しいぞ」
「私もです。あら、お客様がいらしたのですね」
「ああ。そしてこの者達は、マトルアの盾となる事を受け入れてくれた者達じゃ」
「…という事は、この国に何か大きな危機が迫っているのですね。
お祖母様、よろしければご説明をお願いします」
「うむ」
そして、ルーユは一連の経緯を話した。
◇
リヒセロさんはルーユさんから話を聞いている間、目を見開いたり相槌を打ったりしていた。
そして、ルーユさんが話し終わると、すぐに口を開いた。
「龍神さん、アレイさん。
どうか、よろしくお願いします。
私も精一杯戦いますので、共に頑張りましょう」
「はい!」
「おう!」
ルーユさんの話では、死霊騎士達が次に来るのは二日ほど後になるだろう、との事だった。
ルーユさんは「予感」の異能を持っていて、近い将来に起こる事は「予感」としてわかる。
なので、疑う必要はなさそうだった。
ところで、私は明日、行きたい所がある。
ルーユさん達にそれを言ったら、快く承諾してくれた。
宿を取り、龍神さんと同じ部屋にしてもらった。
そして、目的地と目的を話した。
彼は、喜んで了承してくれた。
「へえ、いいな。よし!明日行こうか!」