黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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星気霊廟・月の試練

一度階段まで戻り、真っ直ぐ進んで行くと、全身が真っ白く虎を思わせる姿をした式神が奥へ続く通路の前に立っていた。

 

「この先は月の試練です。受けますか?」

 

「月の試練?」

 

「はい。星術において「月」に属する術及び属性の実力と経験を試す試練です」

 

星術は九星天術と同じく「星」を用いる術で、太陽、月、星、宇(そ)宙(ら)の四つの系統がある。

 

一般的には太陽が火と光、月が闇と氷、星が水と地、宇宙が雷と風の属性を持つとされる。

九星天術と違いそこまで難しい術ではないので、使用者は多い。

…最も、真骨頂である星奥義を使おうとすれば話は別だけど。

 

私は星の星術を使える。龍神さんはどうなんだろう。

 

「なら丁度いいな。星術なら月と宇宙を使えるんでね」

 

そう言ってくれて安心した。

 

 

「挑戦なさるのですね。では、どうぞ」

 

通された先の部屋は、部屋全体に水が並々と張られていて、奥と今入ってきたドアの前以外床が全くなかった。

 

一瞬、泳げばいいんじゃ?と思ったけど、水に足を浸ける直前で察した。

これはただの水じゃない。浸かるのはやめておいた方が良さそうだ。  

 

ならば飛ぼうか?

いや、この部屋には浮遊魔法を無力化する結界が張られている。

 

となると…?

 

「水を凍らせて、そこを歩いて行きましょう」

 

「それ以外になさそうだな」

 

私達は術の構えを取る。

 

「氷法 [永久氷床]」

 

「月術 [冷月光]」

 

水はあっさり凍り、ここから奥のドアまで真っ直ぐ続く氷の道が出来た。

 

滑らないよう注意しながら進んでいく。

 

ドアまであと少しという所まで来たとき、突然水面が光り出した。

それはカメラのフラッシュのような強烈なものだった。

 

「いゃっ…眩しい…!」

 

「ぬぉっ…!

い…[陰翳落とし]…!」

 

龍神さんが術を唱えてくれた事で、光が収まった。

すぐにドアを開け、次へ進む。

 

ドアの先は直線の通路になっていて、魚と狼をくっつけたような姿の銀色の星霊が通路内を徘徊していた。

それらは私達に気づいたものから順に襲いかかってきた。

 

龍神さんが刀で斬っていたけど、これには月の星術以外効かない。

 

「物理は効きません!月術を…!」

 

「そうか!

月術 [月よ、冷たき望月よ(シャイニングムーン)]!」

 

氷と闇の複合術か。

見事全ての星霊に当たり、消滅させた。

 

「もう出てこないよな?」

 

「と思います。今のうちに!」

 

 

通路を駆け抜けた先の部屋では、床が一面猛々しく燃え盛る炎に覆われていた。

 

「熱っ…!なんだこりゃ、どうやって進めってんだ!」

 

彼は念のため、と言いながら氷の月術を放っていたけど、やはり効果がなかった。

 

「この火は、火ではないと思いますよ」

 

「は…?あ、もしかして日光焔か!?」

 

「恐らくは」

 

日光焔は太陽の星術の一つで、炎と同じように高温を放ち物を燃やすけど、光と火の属性を持つ。

通常の炎とは違い水や氷では消せず、闇の術で消すことが出来る。

 

「なら簡単な話だな…[シャドースプレッド]!」

 

龍神さんが闇の力を放射状に放つと、大部分の炎は消えた。

でも、ただ一箇所―

次へ続くドアの前だけは、炎が消えなかった。

 

「残るはここだけか。[シャドーボール]」

術を放っても、火は消えなかった。

 

「ありゃ?なんだ?」

 

「うーん…何でしょう…」

 

少し考えた末、私は答えを出した。

 

「あ、わかりました。

龍神さん、陰翳落としを使ってみて下さい」

 

彼は素直に術を使ってくれた。

 

「おお…消えた…!」

 

「今のは光の属性が強い日光焔だったんですよ。

だから、闇―もとい陰の強力な術を使わないとダメだったんです」

 

「なるほど、な…」

 

次の部屋は長い下り坂になっていた。

そして、少し歩くと突然、後ろで何かが落ちてきた音がした―

 

「っ!走れ!」

大きな岩が後ろから転がってきた。

 

斜面の途中何ヶ所かにちょっとした段差があり、その上に何かあるのを見たけどそんなのに構ってる余裕はなかった。

 

無我夢中で走ってるうちにドアについた。

そこを開けたら…

 

 

 

「あれ?」

今出たのと同じ部屋に出た。

とすると…?

 

やはり、すこし進むと岩が落ちて転がってきた。

下り坂の途中に段差がある点も全く同じだ。

 

よく見ると、段差の上に置かれているのは何かの文字が刻まれたボタンか何かだった。

でも、やっぱり詳しく調べてる余裕はない。

 

 

そうこうしてるうちにドアにつく。

そしてそれを開けると、やっぱり同じ部屋が…

 

「どうなってるんでしょう?」

 

「何か仕掛けがあるんだろうが…何だろう?」

 

いや、仕掛けは何となくわかる。

途中の段差にあったものがヒントなんだろうけど、岩を何とかしないと…

 

あれ?ひょっとして…

 

「どうするかな…あの岩ぶっ壊すか?」

 

「いえ、そうじゃありません。ちゃんとやり方がありますよ」

 

「どんなやり方だ?」

 

「ご存知かと思いますが、月術の星奥義で、物の動く速度を変える物がありますね?それを使えばいいんですよ」

 

「ん…?あ、あれか。よし!」

歩みだすと、再び岩が落ちてくる。

途中まで逃げるのは一緒だけど、岩からある程度距離を取ったら足を止めて振り向く。

そして、

「月奥義 [月華時計]!」

 

龍神さんが、月術の星奥義を使えてよかった。

これで、岩の転がる速度は一時的に大幅に遅くなった。

今のうちに、仕掛けを解いてしまおう。

 

一つ目の段差の上にあったのは赤いボタンだった。

押すと、ボタンは消えた。

 

「そういうこと…」

 

次以降の段差にも、緑や青、白のボタンがあったので、それらの全てを押して最後のドアを開けた。

 

そこは、今までとは全く違う部屋だった。

一本の少し長い上り階段。

それを上りきると、そこには緑の木箱があった。

 

開けようと蓋に手をかけたら、頭の中に声が聞こえてきた…。

 

『月の試練を乗り越えし者よ。

あなたになら、これを使う資格があるでしょう。

しかし、自惚れることなかれ。あなたはまだスタートに立ったに過ぎない。

月は太陽あって光る。太陽なくして月は光れない。

それを、忘れぬよう…』

 

女性の声だった。

声の主の正体は、姿が見えなくともわかった。

 

「はい…」

気持ちを引き締め、箱を開ける。

中には、銀色の半月型の魔力石が入っていた。

 

 




·都市·施設紹介 
リット 
マトルアの南西にある町。
町自体はごく普通の町だが、生の始祖の出身地であるため知名度は高い。
町の南には、生の始祖を祀る墓である星気霊廟がある。

星気霊廟
リットの南にある、かつて生の始祖が行使していた式神と星霊達に守られた霊廟。リットを守る結界の中心でもある。
建立の際、生の始祖が一人で一晩のうちに建てた、という伝説がある。
霊廟という名の通り生の始祖ことシエラの墓があるが、建立された真の目的はいずれ来たる再生者の復活に備え、優秀な戦士を育成し吟味する試練を残すことだった。
伝説となった陰陽師が残した試練の場。
そこで与えられる試練は、数千年もの間、誰一人乗り越えられなかった。

銀月の石
私の・・・、不死者・・・。
・・・力は・・・。・・・汝の心・・・、
・・なもの・・・・か。
忘・・るな、・・・は、・・・に・・・・・事を。

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