黒界異人伝・生命の戦争  〜転生20年目の冒険譚〜   作:白い花吹雪。

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星気霊廟・生存者の試練4

式神が姿を消すとともに、星霊達が一斉に襲いかかってきた。

左側の4体を私が、右側の4体を龍神さんが倒す。

 

「[フロスト・バイト]!」

 

「[ジグルスの雷光]」

 

星霊は術を受けると簡単に消滅した。

 

「気を抜くなよ!すぐに奴らは戻ってくる!」

彼の言う通り、5秒もしないうちに奥のトンネルから新しい個体が出てきた。

いや、違う。新しい個体ではない。

今しがた倒したやつが、復活してきたんだ。

 

今倒したのは8体、つまり復活してくるのも8体。

全ての個体が同じタイミングで、きれいに並んで出てくる。

 

「無理はするなよ、余裕を残せ!」

龍神さんにそう言われた。

時間もそんなないし、出てくる場所がはっきりしてるんだから、全力でやっていいんじゃない?と思ったけど、その考えは程なくして崩れ去った。

 

しばらく復活してきた敵をすぐに倒す(龍神さんはリスキルと呼んでいた)というサイクルを続けてわかった。

最初はいいけど、そのうち矢も魔力も減ってきて、敵を倒し続けるのが難しくなってくる。

 

そうなると、倒し損ねる敵が出てくる。

近づかれると弓で狙うのは難しいので近接で、と言いたい所だが、切り替えているうちに詰められてしまう。

 

龍神さんが気を配って私に近づいてきたものを倒してくれるけど、これでは彼が危ないし、何より私自身の気が緩む原因になりかねない。

そこで、少しずつ後退して距離を取った。

 

「なんで距離を取った?」

 

「龍神さんが心配だから…

あと、武器を変える時間の余裕を持ちたいからです」

私がそう答えると、彼は微かに笑った。

「そうか…やっぱり、君は生まれつきの吸血鬼狩りだな」

 

「どういうこと、ですか?」

向かって来る敵を捌きながら会話する。

 

「普通の奴は、サポートがいると気が緩む。

互いに相手と自分を守るって意識が薄れるから、いずれやられる。

サポートがいるからこそ、自分と仲間を気にかける…

立派な吸血鬼狩りの戦術だ」

 

「そうですか…?っ!」

矢を外したので、マチェットに持ち替えて近づいてきた所を斬った。

 

「間接で仕留め損ねたら近接に替える。

これも吸血鬼狩りの業だ。あとは…」

喋っている彼に、一匹の星霊が高々とジャンプして襲いかかってきた。

 

同時に私の方にも敵が来たので、左手で地上の敵を斬りつつ右手で魔弾を撃って空中の敵を凍らせた。

続けて、次々に来る星霊達に冷気の霧を浴びせて速度を低下させ、弓に持ち替えてブレイドの矢を連射してまとめて撃ち抜く。

遅れて来た一匹はギリギリまで引き付け、回し蹴りを食らわす。

 

「自分の方の敵を倒しつつ術やアイテムで仲間をサポートする、敵の数と距離に応じて武器を替える…

完璧だ」

龍神さんは、私が凍らせた星霊を蹴り砕きながら言った。

 

「…私は、決して完璧などではありません」

 

「異人としてはそうかもしれない。だが、少なくとも技量を持つ吸血鬼狩りとしてはほとんど完璧だ」

 

「…」

彼はやたらと私を褒めるけど、私はそんな強い異人じゃないし、才もない。

祖先は偉大な陰陽師かも知れない。

でも私は、人間から転生した普通の水兵だ。20年やそこらしか生きてないし、戦いの経験も、彼が来るまではほぼ無いに等しかった。

 

彼はなぜ私をここまで持ち上げるのだろう。

疑問には思ったけど、そこから彼の行動への疑いが生まれる事はなかった。

 

なぜか、彼が私を裏切るとはどうしても思えなかった。

 

―まあ、当然ではあるかも。

彼はタイプ2の殺人鬼、根っからの悪人ではない。

第一、彼には…

 

って、また変なことが頭に浮かんできた。

何よ、タイプ2の殺人鬼って。

何?彼に何があるって言うの?

 

これ、ほんと何なんだろう。

定期的に変なことが頭に浮かんでくる。

知らないはずの言葉を使った文章だったり、見たことない景色を見て懐かしい気持ちになったり…

もしかして、私は二重人格者なのだろうか?

それとも、ある種の精神異常者なのか…

 

 

 

 

さて、そうこうしているうちに10分が経過し、試練は終わった。

式神に案内された部屋にはやはり緑の木箱があり、それを開けると声が聞こえてきた。

『生存者の試練を乗り越えし者よ…

あなたには、不死者と戦う力と強さがあるようです。

しかし、驕ってはなりません。

隙を見せた時にこそ、不死者は襲ってくるのです。

くれぐれも気を抜かぬよう…』

 

箱の中には、一枚の紙が入っていた。

それは最初白紙だったけど、広げると徐々に何かが浮かび上がってきた。

 

「これは…」

映し出されたのは、東ジーク大陸全域の地図。

あちこちに黒い丸がついていて、丁度マトルアのあたりに赤い丸がついていた。

 

「ただの地図じゃないな。

黒丸の意味はわからんが、赤丸はたぶん…」

 

「次に行くべき場所、ですね。

これがあれば、行き先に迷わなくて済みそうです」

どうやら、試練を最後まで受けてる時間はなさそうだ。

試練は途中でやめることも出来るはずなので、次の試練への入り口の式神に一時中断する旨を話し、星気霊廟を後にした。

 

 

地図の黒丸の意味…。

私はなんとなくわかるような気がする。

地図の中には一箇所だけ、薄い黒丸があった。

それも含めると、黒丸は全部で八箇所にあった。

という事は、ひょっとして…。

 




導きの地図
・・後を・・、・・・と戦う・・。
汝の・・・・。されど・・・は、
如何・・・であろう・・。
・・る・、真の・・、・・心・・潜んで・・・。


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