氷結系最強になりたくて!   作:無銘のヲタク

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大学受験があってまったく投稿できてませんでしたっ!!無事大学も決まり、ある程度準備も終えたんで、執筆再開します。

これからもこの作品を読んでもらえると嬉しいです!!



学園ビッグイベント開始

 

翌朝、学園に登校してから自分の席に座り、机に突っ伏していた。

 

「────ふわぁぁあ……」

 

「どうしたの、グラス?寝不足?」

 

「まぁ、ちょっとな……」

 

なんかゼータの罰ゲームって言ったら、結構ヤバいのを要求される気がして全く寝れなかったんだよ。

流石に一応上司だから、そこら辺は分かってるだろうけど……

 

「どうせあれだろ?学年問わず色んな女子から告白されて、どの子にするか夜通し悩んでたんだろぉ?」

 

「それはそうですよ!グラス君もクールぶってるけど、裏では結構ムッツ────うぼっ!?」

 

「ジャガ!?おいグラスお前、図星つかれたからって何す────ぐえっ?!!」

 

お前ら変態馬鹿共と一緒にすんな。まったく…俺大丈夫かなぁ?やっぱり『なんでも』なんて言うんじゃ無かったな……

 

「怖えぇぇ....」

 

あ~心なしか腹が痛くなってきた……

 

「シド、俺ちょっとトイレ行ってくるわ」

 

「今から生徒会の説明があるらしいけど?」

 

「それはお前が聞いといて……いや、お前が真面目に話を聞くわけないか」

 

今も体で隠しながら、手元のスライムハンドグリップをずっと握ってるのを見て呟く。興味ない説明より自己研磨優先。こいつなら当たり前のことだ……

 

「まぁいいわ。どうせ生徒会のこととか俺には関係ないし。行ってくる」

 

俺は背を向けてそのまま教室後ろの扉から出て、トイレに向かった。

 

────────────────────

 

「ふぅ....スッキリした」

 

中々の曲者だったが、なんとか討伐できた。

 

俺は謎の達成感を得つつ、身支度をしてトイレの個室から出て、蛇口を使って手を洗っている。

 

 

すると、

 

 

「っ?」

 

突然感じた、学園全体を覆うような謎の力に水を止めるために蛇口を捻ろうとしていた手が止まる。

 

「なんだ?この感じ」

 

何か魔力が吸われてる気が....

 

 

「────動くなっ!」

 

 

おっと?

 

トイレの入り口辺りから声が聞こえて、そちらに振り向くと、フードを目深に被り、全身を黒装束で覆ったあからさまな不審者が俺に剣を向けている。

 

「この学園は我等()()()()()()()()()()が占拠したっ!!」

 

!!学園を占拠した……だと?というか『シャドウガーデン』ってこいつら教団の奴等か。

 

「見たところ武器は持っていないようだが、抵抗しようなどとは考えるなよ?気づいているかもしれんが、既にこの学園一帯では()()()()()()()()()()からな!」

 

そう言われて、背中で氷の剣を作るのを試すと、何かに阻害されたように形が成せず溶け落ちる。

 

「うわっホントだ....」

 

てことはこいつの言ってることは全部本当のことで.....つまり、いま学園で起こってるのは.....!

 

学園物アニメでは超定番で、年頃の男子なら誰だって一度は妄想する展開のっ!!

 

 

 

謎のテロリストによる学園ハイジャック!!!

 

 

 

「さぁ、分かったなら大人しく投降し────」

 

「こうしちゃいられねぇ!」

 

こんなビッグイベント、『氷結系最強』を目指すものとして参加しない訳にはいかないっ!!

 

「なっ!?てめぇ、突然何を言ってやが────」

 

「うるせぇっ」

 

俺は一瞬で相手の懐に入り、持っている剣を奪い取ってそのまま横一閃。身体が胴体で真っ二つにされた男は声を上げるまもなく息絶える。

 

俺はその剣をそのまま自分の腰に携えてからトイレから廊下に出て左右を確認した後、眼の前の窓から外の様子を視認する。

 

そこには武器を取り上げられた生徒達が講堂に向かって列を為している光景が広がっていた。

状況から察するに既に教室にいた生徒たちはテロリストに確保されちゃって、全員講堂に集められてるって感じだ。

 

にしてもゼータが何か『教団』が企んでるみたいなこと言ってたけどもしかしてこれのことか。まさかこの魔剣士学園の襲撃を計画していたとは…態々魔剣士だらけのこの学園に踏み込んでくるなんて、余程手に入れたいものがここにあるのか?

 

……まあ大した情報もない状況で考え続けるのも無駄だな。今は今回どうやってかっこよく活躍するかの方が大事だ。

 

さっきの奴は魔力は封じられて使えないって言ってたけど.....

 

俺はさっきの数十倍の魔力を込めると、さっきと違い溶けることなくちゃんと氷剣が形作られる。

 

なるほど?ある一定以上の魔力を込めたら無効化されないのか。並みの魔剣士ならともかく俺レベルの魔力量と魔力コントロールがあればゴリ押しでもいけるか......まぁそれじゃあ面白くないよな。

 

せっかく魔法が十全に使えないっていうシチュエーションなんだ、それに従って遊んでやるか。

 

俺は手に出した氷剣を霧散させ、誰もいない廊下を歩きながらこの先の行動を思索する。

 

 

いやぁ、じゃあこっからどういう展開にしようか....

 

 

「────貴様ッ!!ここで何を────ガッ!?」

 

このまま単身乗り込んで、生身で全員ボコボコにするか?

 

「なっ、お、お前一体何も────ぐぁ!?」

 

いやでもそれじゃ味気ないし.....何より教団が動いてんだから、アルファ達の方も何かしら裏でやってるだろうし、自分一人で片付けるのはよろしくない。

 

「はっ、あの二人をやったようだが、この俺【半信────ごばぁぁ!!?」

 

まぁでも、『シャドウガーデン』が動くなら俺的にもかっこよくクールに登場してかつ『氷結系最強』としての威厳を見せつけられるような登場が出来る気もするしいいか。

 

そういえば、あのバカ(シド)は今何やってんだ。この前の時みたくモブらしく大人しく捕まってるか……いやない。アイツがこんなビッグイベントに乗ってこないわけがない。大方モブらしく敵にやられたふりでもして学校の中を彷徨いてんだろ。

 

そうと決まれば、いろいろ段取りとか考えるためにも今はシドに合流するのが先決だな。

 

じゃあ......

 

思考をそこで切り、俺は腰に提げた剣を抜いて振り返る。そして目の前にはいつの間にか集まっていた教団員が数名。奴らは全員敵である俺に対してその剣を向けている。しかし、大量に転がる仲間たちの死体を前にした彼らの表情は恐怖に染まっていて俺が剣を抜いたのを見ると次の標的が自分たちであることを否応にも認識し、わずかに後退りをする。

 

「お前らにはアイツを見つけるまでの遊び相手になってもらおうかな」

 

「き、貴様……魔力が封じられているはずなのにどうしてそれほどの動きができるっ!!」

 

「うーん……日頃の筋トレの賜物、かな?」

 

「ふ、ふざけるなっ!そんなことで魔力で強化された者の剣を捌けるわけがない!!」

 

ふざけてないんだが……まぁ、普通の筋トレじゃなくて魔力とか使ってえぐい魔改造した感じだけどね。

 

「てか、そんなことどうでもいいだろ。どうせお前ら全員死ぬことは決まってんだ、せめて最後まで抗ってみろ」

 

「く、くそがぁぁぁぁぁ!!!」

 

恐怖に震え動かない足を奴等はその恐怖をごまかすように叫び声を上げ、必死の形相で俺に切りかかってくる。

 

「少しは楽しませてくれよ?」

 

────────────────────

 

場面は変わり、渡り廊下を歩く二人の影。一人はいたって平凡なモブA(自称)であるシド・カゲノー、もう一人は小柄な体に桃色の髪を携えた少女、シェリー・バーネット。こう見えてミドガル学術学園の2年生でシドより年上である。

 

「シド君。さっきはありがとうございました」

 

「別に気にしないでいいよ。偶々通りかかっただけだから」

 

この二人が出会って経緯としては、グラスの予想通り死んだふりで敵を欺いたシドが屋上に上がり、校内を見ているとペタペタと音を鳴らしながら歩いているシェリーの姿を見つける。

勉学を重視し、戦闘の技術はおろか足音の消し方なんて知りもしない彼女をシドがこっそり校内を徘徊する敵から守り、ストーリー(シドの妄想)が進んで終盤になるまでは隠れておくつもりだったが、何かとドジを踏もうとする彼女の姿に居た堪れなくなったシドが彼女と一緒に行動することにして今に至る。

 

「今はどこに向かってるんだっけ?」

 

「私のお父様の部屋、副学園長室です。あそこにはこのアーティファクトに関する資料が置いてあるので」

 

そう言った彼女の手には、四つの葉のような金属が十字に広がっていてその真ん中に赤い宝石が付いたアーティファクトがあった。

 

「そういえば、それって一体何────」

 

シドが疑問を口に出そうとした瞬間、廊下の先の階段から足音が聞こえてきて、二人とも動きを止める。

 

「し、シド君っ」

 

「大丈夫。シェリーはそこに隠れておいて。(見られても面倒だしね)」

 

「でもっ!」

 

「大丈夫だって」

 

中々自分一人で隠れようとしないシェリーを何とかしようとシドが手をこまねいている内に足音が近くなってきた。

 

「(あー、もう仕方ないか。シェリーにはあとでテキトーに誤魔化そう)」

 

そう考えて、シドは敵を仕留めるためにスライムを銃のように手に形作り、少しでもシェリーに見えないように体の側面に隠しながら出てくる敵に狙いを定める……が

 

「────やっぱり、こいつら程度じゃ退屈しのぎにもならねえか…って、あっ見つけた」

 

「グラスじゃん。何してんの」

 

階段を上がって姿を現したのは、僅かに顔を血で染めて、黒ずくめの男を片手で鷲掴みにしている自分の相棒だった。

 

────────────────────

 

「『強欲の瞳』ねぇ。それが魔力が阻害・吸収されてる原因ってことすか」

 

「はい。そういうことです」

 

あの後、合流した俺達三人は副学園長室に辿り着き、椅子に座って色々と情報整理を行っていた。まず、この魔力不能の事態の原因となっているのが『強欲の瞳』というアーティファクトらしい。

 

「『強欲の瞳』は効果範囲内にいる魔剣士や魔力体から魔力を吸収して一時的にため込むことができます。その結果として周辺で魔力の練成が困難になるんです」

 

「黒ずくめの人達は普通に魔力を使ってたみたいだけど」

 

「吸収させたくない魔力の波長をあらかじめ記憶させておくことができるんです。そうでなくては使用者本人の魔力まで吸収してしまいますから」

 

そりゃそうか。使った本人が魔力吸われちゃって全員共倒れ、なんてことになったらバカらしくてしかたない。敵味方見境なく魔力を吸うなら、使い捨ての兵を敵陣地に特攻させて相手方を魔力枯渇に追い込むみたいな使い方しか出来ないしな。

 

「面白いね。じゃあ覚えさせてない魔力は何でも吸収させてしまうの?」

 

「どうでしょうか……感知しきれない微細な魔力やもちろん容量を越える強大な魔力も吸収できないと思います。まあ、今の人間にそんな魔力は使えませんが……」

 

「だよね~」

 

思ってもないくせに

 

「グラスなんか言った?」

 

「んや、何にも。ところで結局先輩の持ってるそっちの装置は何なんですか?」

 

「あ、これはその『強欲の瞳』の制御装置のようなものなんです」

 

「制御装置?」

 

「そもそも『強欲の瞳』の特性として魔力をため込めるだけため込んで一気に開放してしまうようなんです」

 

「ほうほう」

 

「一気に……」

 

「はい、一気にすべてを……シド君、学園の生徒はすべて大講堂に集められたと言っていましたよね。魔力吸収の効率を考えるなら当然大量の魔力、在学する多くの魔剣士が囚われている大講堂に『強欲の瞳』を置くはずです。もしため込まれた魔力が『強欲の瞳』の許容量を越えて一気に開放されてしまったら────」

 

「学園が吹き飛ぶね」

 

「はい……その危険性を考えてお父様は学会へは公表せず、『強欲の瞳』を国に保管してもらっていたはずなのですが……」

 

「同じものがもう一つあったか。それとも盗まれたのか」

 

「あるいは……」

 

俺はもう一つの可能性に少し顔を顰める。

 

「グラス君?どうかしました?」

 

「……いや、なんでもないですよ」

 

もし俺が想像したパターンの場合、シェリー先輩は……できればそうであっては欲しくないものだ。

 

「…それで?その対処する方法がその装置ってこと?」

 

「あ、はい。この資料を解読してようやく分かったのですが、本来『強欲の瞳』はこの制御装置を使い魔力を長期保存するためのアーティファクトだった」

 

「長期保存…つまり魔力の開放を止められるってわけだ」

 

「そういうことですっ!!」

 

シェリー先輩は突然興奮したようにそう言って正面に座るシドに顔を近づける。

 

「凄いですよね!この自在に魔力を保存、運用する技術を再現できれば蒸気機関にブレイクスルーに────!!」

 

おうおう、なんかこの人急に饒舌になったな。まぁ、元々古代の産物の研究大好きヲタクみたいなもんだから、こういうのを見たら興奮するのも仕方ないか。

 

「ん゛んっ、それでこれからどうするの?」

 

「あっ、ん、ぅんっ。このアーティファクトの解析が終わったら地下から大講堂へ向かいます」

 

「「地下から?」」

 

「学園の施設は全て緊急時の脱出の隠し通路で繋がっているんです」

 

「隠し通路…!!」

 

「イイね…」

 

おお、なんとも男心を擽るワードじゃないか。胸が踊るねっ!

 

「起動した制御装置(アーティファクト)を『強欲の瞳』に近づけることが出来れば機能が停止するはずです。ただ……」

 

するとシェリー先輩は何やら決まりが悪そうな様子で顔を少し俯かせる。

 

「ん、どうしたんですか?」

 

「アーティファクトの調整に必要な道具を研究室に置いてきてしまって……」

 

「あーそれなら僕がとってくるよ」

 

「え!?で、でもシド君怪我してるのに…!」

 

「大丈夫だよ。こんなの掠り傷だから」

 

そう言うシドの体には胸から下腹部までにかけて大きな血の跡が広がっていて、どう考えても軽傷じゃないんだが……既に魔力の糸で縫われて傷はふさがってるし、内臓に傷がついてなきゃ何でも良いみたいな奴だからな。まぁ今回は……

 

「いや、お前はここにいろ。道具は俺が取ってくるから」

 

「え、なんで」

 

「いやまぁ、怪我してるし(思ってないけど)。それに万が一シェリー先輩しか居なくなったこの部屋に襲撃が来たら何もかもパーだろ」

 

「じゃあグラスが残ればいいじゃん」

 

「じゃあ言うが、お前に調整用の道具とか教えられても見て分かるか?」

 

それにこの馬鹿に気があって、癪だがより信頼されているシドが残った方が先輩の精神的にも安心だろ。

 

「……トイレしたいんだけど」

 

「我慢しとけウンコ野郎。じゃあ先輩、必要な道具教えてもらってもいいですか?」

 

「あ、うん。まずは────」

 

────────────────────

 

夕日が差し込む校舎内をグラスは一人歩く。手にはシェリー先輩から伝えられた必要な道具が書かれた紙を持っている。

 

「えっと、確かこっちが研究室…ってあ?」

 

「ああん?」

 

グラスが廊下の角を曲がったところ、視線の先には五人の剣を持った男たちがいた。その中でも一人の男は他の者のようにローブを被っておらず、赤い襟付きのシャツに赤いバンダナを巻いている。

 

「あれ、割と魔力感知には気を張ってたんだが、やはりこの環境下じゃ乱れるか。こっからは気配察知に意識を割くか」

 

「おいおい。まだこんなとこに学生が残ってやがった。つーかお前か?うちの3rdと2ndをやったのは」

 

「序列は知らねえけど、ここら辺の奴等を片付けたのは俺だよ。悪い?」

 

「いーや?ただお前みたいな魔力を使えない学生にやられちまうなんて、やっぱり1stより下の奴らは使い捨ての雑魚だな。だがその血の量、余裕そうな顔して、もう戦う体力なんざ残ってねえだろ…お前ら、殺れ」

 

男の指示と同時に取り巻きの内二人が剣を抜いてグラスに走って近づいてくる。二人の男の刃が振るわれようとした瞬間────

 

「「────!」」

 

「……は?」

 

突然二人の首が消え、切断したであろう箇所から血が噴き出し、糸が切れたように胴体も地面に落ちる。そのタイミングでカチリと剣が鞘に戻された音が鳴る。

 

「てめえ…!今何をし────」

 

バンダナの男が問いかけようとした瞬間、目の前からグラスの姿が消えたかと思えば、今度は後ろの二人が僅かな呻き声を上げて血を噴出しながら膝から崩れ落ちる。

 

「なっ!?」

 

バンダナの男はその事態に驚きつつ、自身の前に双剣を構え、さっきまで気楽な心持ちから警戒度を最大まで引き上げ、次の攻撃に全神経を集中させる。

 

「(次はどこからくる!?前か?右か、それとも左────)」

 

「さっきの口ぶり、お前がその1stなのか?」

 

「(後────!?)がぁっ!!?」

 

男は背後から聞こえた声に反応するも反撃も防御も間に合わずに吹っ飛ばされる。男は何とか受け身をとって相手のいた方に剣を構える。そして男の視線の先にはグラスがその顔に僅かに笑みを浮かべて立っている。その笑みに男は恐怖を感じるとともに冷や汗を流す。

 

「で、どうなの?君がチルドレン1stなの?」

 

「(…俺をチルドレンって呼ぶってことはお前、教団のことを把握してる口か)ああ。俺がチルドレン1st、『叛逆遊戯』のレックスだ」

 

「あ、その名前確かニューが言ってた…その名前って自分が考えたの?」

 

「何…?」

 

「いやだって、何なんだよその二つ名。字面だけとったらゲームとかで遊んでる時に駄々こねてる餓鬼みたいじゃん。痛々しくて俺じゃあとてもとても…」

 

「……ぶっ殺す!!」

 

レックスはグラスの言葉に怒りを露わにする。どうやら名前を馬鹿にしたグラスの発言が相当キたようだ。まぁグラスもグラスで『氷魔ブレイブソルジャー』とか名乗ってたから人のことは言えない気がするが、それは今置いておこう。

 

何やらレックスが二つの剣の底を合わせたかと思えばそこから魔力が流れ出して、彼の周りを網目状の魔力の線が囲む。

 

「お?なんだこれ」

 

「これはな!『網』だ!この魔力制限下で普通の人間がそんな速度で動けるはずがねえ!おそらく自己加速のアーティファクトでも使ってんだろうが、これならお前がどんな速さで動こうと『網』にかかった瞬間俺は気付ける!!さぁ来いよ!他の雑魚どもはアーティファクトの初見殺しでどうにかなったんだろうがこの俺様にはもう通じねえ!!この俺の名を馬鹿にしやがったことを後悔させ「話が長ぇ」ぐぁっっ!!?」

 

グラスは周りに張られている魔力の網がまるで無いものかのように、何か話続けているのを遮ってレックスの顔を側面から蹴って横の教室の中まで吹っ飛ばす。

 

「がっ!く、くそっ俺の網の感知速度を越えるほどの速さだってのか…!んなもん有り得ねえぞ!!」

 

目の前の事象に納得できない様子ながらもレックスは攻撃に備えて体を起き上がらせようとする。するとそのレックスの傍に何かが転がってくる。

 

「あ?んだこれ。つうか何だここは。暗くてよく見えねえが何かの像が並んで……」

 

暗い教室の中わずかに目を凝らしてレックスが周囲を確認しようとするのと同時に空いた扉から僅かに差す光がその教室の姿を露わにする。

 

「………………は?」

 

絶句し、僅かにそう声を溢したレックスの前には……

 

 

息絶えた時の姿のまま凍結させられた教団員達の氷像がズラリと並んでいた。

 

 

「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!?!!?」

 

レックスはあまりに衝撃的な光景にただ叫ぶことしかできずにいた。ふと何かに気付いたように下を向くとそこにはさっき自分の近くに転がってきたであろう凍った教団員の首があり、レックスは絶句し立ち竦む。そこに────

 

次はお前の番だ

 

 

悪魔がやってくる。

 

 

「これは、お、お前が……!!?」

 

「ああ。何か文句でもあるか?尤も、今まで散々悪魔憑き達を弄んできたお前らの意見なんか聞く耳持たんが」

 

「お前まさか『シャドウガーデン』の────!」

 

「さぁ、恐怖と共にその身に刻め……」

 

グラスの手がレックスの顔へと伸びていく、レックスは動かなくてはならないと頭では分かっていても自身の心体を支配する圧倒的な恐怖に身体が指一本たりとも動こうとしない。

 

「我が名はゼロ。『シャドウガーデン』の第零席にして覇道を征く者だ」

 

「あ、あァ……!──────」

 

僅かに聞こえた断末魔と共に残ったのは憐れに口を開いたまま息絶えたレックスの氷像。グラスはレックスや他の氷像を一瞥する。

 

「………醜いな」

 

グラスはそれらに背を向けて教室の扉から出ていく。さして出る寸前、彼が指をパチッと鳴らすと教室内の全ての氷像が粉々に砕け散った。

 

────────────────────

 

「名のある騎士だったというのに、魔力を封じられればあっけないものね」

 

開いた窓から夕日が差し込んでいる研究室の中で、ブラウンの髪をお団子にして纏めている女生徒もとい変装したニューは室内で横たわる第一王女アイリスが率いる『紅の騎士団』の副団長であった男、『獅子髪』のグレンの遺体を見てそう呟く。

 

どれだけ洗練された魔剣士であってもあの転生者二人(例外)を除いてほとんどは自分だけが魔力が制限された状況下では生き残ることは難しいだろう。むしろ魔力が使えない状態でシェリーをなんとか逃がすことが出来たことを称賛するべきだ。

 

ニューは息絶えたグレンの瞳をそっと閉じ、その視線を横に向ける。

 

「マルコ・グレンジャー…紅の騎士団に入っていたのね」

 

そこには壁に寄りかかって気を失っている青髪の青年姿があった。彼は頭から少ない量の出血がみられるがまだかろうじて息はあるようだ。

 

「……」

 

そんな彼を見てニューは何やら物憂げな表情を浮かべた後、右手に魔力制限下でも作れる簡易的な刃を作り出した。

 

 

「俺は止めないぞ」

 

「!!ゼロ様…?」

 

突如自身の主とも言える方の声が聞こえて、刃をしまってすぐに主のいる方に振り返る。その彼は何やら研究室の戸棚を開けて手に持ったメモを見ていくつか道具を取り出しているようだ。

 

「…ゼロ様は私の過去について把握なされているのですか?」

 

「概ねはな。そこの青髪、ニューの許嫁だったらしいな」

 

「はい。尤も親が決めた政治的な婚礼なので当人たちに恋愛感情なんてありませんでしたが」

 

そう、元々ニューに限らずシャドウガーデンの彼女たちの中には貴族の令嬢も多くいてそんな彼女たちでも『悪魔憑き』になってしまえば一様に捨てられてきた。今まで愛してくれたものたちが突然自分を蔑み、虐げるようになる。そんな経験をした彼女たちだからこそ、教団だけでなくその家族や婚約者等にも恨みを持っている者も少なくない。

 

「ニューがそいつにやり切れない気持ちがあるなら、俺はそいつ等に刃を突き立てることを止めはしない。ただ……教団以外の人間はお前達には必要以上に殺して欲しくないとは思ってるがな」

 

「!!……私個人としてはそこまでどうする理由はありません。ゼロ様がそうおっしゃるのであれば…」

 

「そうか……で、そっちの準備はどうなってる?」

 

ゼロは戸棚の前に座った状態でニューの方を向いて僅かに微笑んだ後、ニューにそう尋ねる。

 

「現在シャドウガーデンは学園の周囲に潜伏し待機しています。ご指示があればいつでも動けます」

 

ニューの言う通り、学園の外にいる騎士団の目を掻い潜って、スライムスーツを着た者たちが各自待機していた。

 

「ただ、魔力が制限された状況下での戦闘はリスクが伴われます。普段通り動けるの七陰の皆様くらいですが……現在王都にいるのはガンマ様だけです」

 

「あーガンマかぁ……あれは魔力は多いけど戦闘センスがからっきしだからなぁ。別にガンマでも何だかんだどうにかなるとは思うけど、確実に学園が滅茶苦茶になるだろうし」

 

「あ、あはは……かくいう私も普段の半分ほどの力しか出せませんので……」

 

「そっかぁ」

 

「現在教団側は魔力阻害の利を活かして防衛体制を構築しており、集まった騎士団も制圧するに十分な戦力が整っておらず、事態は膠着状態になっております故、シャドウ様とゼロ様のご指示が出るまでは我々も待機という形になります」

 

「ふむふむ。なるほどねぇ……よしっ」

 

ゼロは必要な道具をすべて取り出し終えて立ち上がる。

 

「ところで、それらの道具は何に使うか伺ってもよろしいですか」

 

自身の報告を聞きながらもゴソゴソと作業していたのがずっと気になっていたようで、ニューが問いかける。

 

「アーティファクトの調整に使うんだよ」

 

「!!アーティファクトの?そのような知識まで…」

 

「いや、イータと偶に色々弄ったりしてるから俺も出来ないわけじゃないけど、今回は俺よりスペシャリストの人がいてね。まぁ、今魔力を阻害してるのが『強欲の瞳』っていうアーティファクトでな。それを無効化するアーティファクトの最終調整中なんだよ」

 

「(スペシャリスト?ゼロ様以外にもこの事態で動いていそうなのはシャドウ様かしら?)」

 

ニューは少し疑問に感じながらも、シャドウ様なら分かってもおかしくないと納得する。またシャドウの知らないところで彼のお株が少し上がったようだ。

 

「あの感じだと、日が落ちるくらいには完成すると思うから。お前達もそれに合わせて動けるように準備しといてくれ」

 

「承知しました」

 

そう指示を出すと、ゼロは踵を返して研究室を離れる。

 

「あ、そうだその前に」

 

ゼロは何か思いついたように足を止めて、ニューの元まで戻る。

 

「ニューに()()があるんだけど」

 

「頼みですか…?」

 

「もしそういう状況になったらでいいんだけど、その時は俺を────────」

 

 

「………え?」

 

 

いつもはあまり表情に出ない彼女だが、珍しく彼の発言に目を丸くして驚いた。

 

 





何か色々悩んでたら、めっちゃ長くなった…
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