氷結系最強になりたくて!   作:無銘のヲタク

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変人と再会

 

俺の家系、コーリ家は辺境の田舎を統治していて、代々王都にある『ミドガル魔剣士学園』へ送り、そこで活躍する魔剣士を排出してきた。

 

剣術指南役には王都から雇った一流の魔剣士を呼び寄せて教えさせている。

ほら今も....

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

気合いの入った声と共に、腰に構えた剣を引き抜き、目の前の岩に幾閃もの斬撃を放つと、岩はその剣の軌跡に沿って切り刻まれ、音を立てて崩れ落ちる。

 

その様子を横で眺めていた使用人達は、拍手して、それぞれが「お見事」だの「流石です」だの、思い思いに称賛の言葉を口にしており、剣術指南役の男は今のを見て色々なアドバイスや何やらを伝えている。

 

 

そうやって()が汗を流している一方、俺はというと....

 

 

「ふわぁ.......」

 

それを横目に温かい陽の光を浴びながら、屋根の上で腕を組んで昼寝に勤しんでいた。

 

いや俺も最初の方は真面目に受けていたんだよ?

でも、やればやる程自分が扱う剣術よりも明らかに無駄が多いのが浮き彫りになってきたし、そのくせ剣術の先生は従来の型に沿うように強制してくるから、いい加減鬱陶しくなってきて最近はもうサボってる。

 

その代わりに、家の人が全員寝静まった頃に外に出て、朝になるまで鍛錬をしているから、剣術が衰えるようなことにはなっていないし、何なら色んなキャラを演じるために新しい剣術も開発中である。

 

ちなみに最初の方は父上が剣の修練に参加しろと言ってきたんだが、上の兄貴がめっちゃ頑張ってるからか、最近はそっちに力を割くようになって何も言われなくなった。

そのせいで家では『問題児』扱いされるようになったけど。

 

そうやって、いろいろ考えながら微睡みに身を委ね、のんびりしていると、家の入口の方に馬車が止まり、そこから三人降りてきて家の敷地内に入って来ているのが見えた。

一体誰だろうと疑問に思っていると、庭の方から少し降りてきて欲しいと、呼ぶ使用人の声が聞こえたので、姿勢を起こし一気に飛び降りる。

 

「どうしたの?」

 

「ご当主様がお呼びです。すぐに前庭に来るように、と」

 

「ふーん....分かった。態々ありがと」

 

俺がその言葉に従って前庭まで行くと、そこには父さんに兄さん、それにさっきの三人が居た。

 

「む、来たか。グラス」

 

「お前また寝てたのか?ちゃんと鍛錬に参加しろよな....」

 

「嫌だね。大体こんなお日様香るいい天気なんだから昼寝しないと勿体無いでしょ」

 

「お前なぁ......」

 

そう言ってため息をつく俺の兄のエースは俺と違い、ちゃんと真面目に何でもこなす優等生で次期当主は絶対彼だって言われる程だ。

ちなみに性格も超イケメンなので、近所やたまにある社交界の女の子にモテモテである。

 

最近は、この兄貴がこの世界の主人公何じゃないかって思うこともある。

 

「で、何で俺を呼んだの?」

 

「今日、お前ら二人にはこちらのカゲノー家のご息女二人と魔力無しでの模擬戦を行ってもらう」

 

「模擬戦?」

 

魔力無しってことは純粋に剣技での勝負ってわけか。

 

「エースにはこちらのクレア・カゲノー殿と、グラスお前はこちらの──────」

 

「待ってください」

 

ん?うおっ!なんか、あっちの可愛い娘さんがなんか怖い顔でこっち見てるんだが?

 

「......どうしましたか、クレア嬢」

 

父さんが喋っている途中で口を挟まれたのに、少し怪訝な顔をしながらクレアと呼ばれる女の子に尋ねる。

 

 

「相手は私一人よ」

 

 

......ほーう?

 

その言葉に俺は少し驚き、兄さんは少し眉をひそめる。

 

「それは....僕達二人を一人で相手取るということでしょうか?」

 

「そうよ。私の大切な弟を少しでも危ない目に合わせるわけにはいかないわ」

 

弟?あ、こっちの、言っちゃ悪いが何処か冴えない感じの男の子のことか。

まぁ身長とか見るに多分俺と同い年ぐらいか。

 

「それは些か傲慢ではありませんか....!」

 

まぁ…確かに一人で二人共とやるってこっちを舐めてるように聞こえるのも仕方ない。

 

ただ…この人はどっちかと言うと自分の力に絶対に自信があるタイプだな。

 

相手を軽視してるってよりかは『自分ならできる』って自信に満ち溢れてるよ。

 

「別にそういうわけじゃないわ。ただ、私なら出来る、それだけよ」

 

「ッ!!では今すぐ、始めましょうか!!」

 

兄さんは少し、いやかなり怒った様子で木剣を手に取って構え、それに応じてクレアさんも木剣を受け取り腰に沿えて構える。

 

 

 

「......おい、オトン!どういうつもりだ!

 

すまん。儂も最初は一人一人でと言ったんじゃが、クレアがどうしても、となぁ....

 

お前....まだ女の尻に敷かれてるのか....

 

うるさいわい!

 

 

 

何やら、父親同士がコソコソ話しているがどうでもいい。

今はこの戦いの結末がどうなるのか…見させてもらおうか。

 

 

「......」

 

「......」

 

「......ッ!!」

 

 

静寂を打ち破り、始めに動き出したのは兄さん。上段に構えていた状態からそのまま最速の突きを放つ。

無駄なく放たれた一撃は最短で相手へと迫るが、クレアさんは冷静に体を横にずらして、剣を避ける。

 

「!!」

 

「フッ!」

 

今度は彼女の方が兄さんに向けて、先程の兄さんよりも速い刺突を繰り出し、兄さんは回避は間に合わず、剣を構えて、それを防御する。

 

結果として、どちらともにダメージは負っていない。

しかし、冷静に回避したか防御させられたか、結果へと至る過程に明確に差があった。

 

「クソッ....!」

 

兄さん自身もその自覚があるのか、悔しそうな表情を浮かべながら、再度相手に向かって、押し出すように先ほども早く、手数を増やした連撃を繰り出す。

 

その光景は、パッと見ならば兄さんが追い込み、クレアさんが防戦一方になっているように見えなくはない。

 

しかし、

 

「くっ、ハァァァァ!!」

 

「.......」

 

一方は、焦りを悟らせまいと叫び声を上げ、必死な表情で全身全霊といった様子だが、もう一方は顔色ひとつ変えず、ただただ冷静に向かってくる剣を捌き続けている。

 

周りの人からすればその両者の間には明らかな実力の差があるのが理解できるだろう。

 

そして、そんな偽りの均衡なんてあっけなく崩れ去る。

 

「.....ハァッ!」

 

「なっ!?」

 

兄さんの連撃が徐々に緩み始めた瞬間、それを待っていたかのようにクレアさんは兄さんの剣を上空に弾き飛ばし、そして剣の先を兄さんの目の前で止める。

 

「終わりで、いいわよね?」

 

「っ!......参りましたっ....」

 

兄さんは悔しそうに歯を食い縛りながらも、敗けを認めた。

それを聞くと、クレアさんは突きつけていた剣を降ろし、直ぐさま弟の元に走っていった。

 

 

「どう?お姉ちゃん、強いでしょ?」

 

「うん、スゴイネ」

 

 

あー、なるほど、弟愛者(ブラコン)だったか。

だから弟の分も自分がやるとか言ってたのね。

というか、なんか弟の方棒読みじゃない?

 

 

「....すみません、父上。負けてしまいました」

 

対して、こっちに戻ってきた兄さんの表情はめっちゃ暗い。

 

「大丈夫だ。お前はよく頑張った」

 

確かにそれはその通りだ。正直、兄さんには剣の才能みたいなのはない、よくて『凡才』レベル、対してあっちは『天才』だ。

ましてや修練もあまり出来てない子供ではその差はより顕著に出る中、あそこまで食い下がれたのは寧ろよく頑張ったと言えるだろう。

 

「じゃあ、次は俺かなぁ」

 

「.....グラス」

 

「どうしたの、兄さん?」

 

「頑張れよ」

 

「ありがと」

 

こうやって自分が負けても、他の応援したりできるところは普通に尊敬する。

 

よし、じゃあ俺は俺で新しい剣術でも試してみようかな....

 

────────────────────

 

「今度は貴方が相手?」

 

「うん」

 

相手を一人倒して、弟に立派な姉の姿を見せた後、今度はさっき相手より幼い少年が出てくる。

 

「さっきのお兄さんの敵討ちかしら?」

 

「うーん....無い訳じゃないけど、今は....」

 

何やら少し考えた様子を見せてから、目の前の子が剣を前に構えた瞬間────

 

 

 

(これ)だけで何処までやれるか試したい

 

 

 

────彼から発せられる存在感が一気に膨れ上がったように感じた。

 

 

「ッ!!」

 

私は剣を強く握り、瞬時に身構える。さっきまで雰囲気は突如一変し、鋭い緊張感が漂い始める。

 

そして、私が瞬きをした瞬間、彼の姿が視界から消えた。

 

「(どこに....!!)」

 

私は背後に気配を感じ、反射的に剣を滑り込ませると、いつの間にか現れた相手の剣と衝突する。

 

「へぇ、今の防ぐんだ」

 

「(速い!いつの間に....!気配も直前まで全く感じなかった)」

 

私が何とかいなし、反撃に出ようとすると、再び視界から姿を消し、死角から攻撃を仕掛けてくる。

それが繰り返され、さっきの試合とは違い、本当に防戦一方な状態になっていく。

 

私がどうするべくか考えていると....

 

「よし、こんなもんか」

 

「え?」

 

彼はいきなり攻撃を止め、私から距離を取る。

そこから体勢は低く、左腕を前に伸ばし、それに沿わせるように剣を上段に構えると、感じる気配がさらに大きくなった。

 

「!!」

 

「これで終わらせる」

 

目を瞑ると、気配が研ぎ澄まされていく。

端から見れば隙があるように見えるかもしれないが、その気配に今不用意に近づけば、やられると私ははっきりと感じた。

私は今一度心を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をする。

 

数秒たっただろうか、彼は遂に目を開く。

 

「(来る!!)」

 

私は相手の動き見逃すまいと、目を見開き、全神経を集中させる。

 

そして、彼の体が僅かに動くと....

 

「え.....?」

 

「俺の勝ち、だろ?」

 

既に私の手に剣は無く、目の前に相手の剣が突き付けられていた。

 

────────────────────

 

前回の模擬戦で、新しい剣術の試行が出来て、何より意図としてやったわけではないが『普段はやる気ないけど、実はめっちゃ強い』とかいう、隠れた強者ムーブみたいなのが出来て凄い満足......なんだが......

 

あれから()()()が度々「再戦しろ」と押し掛けてくるようになった。

いや別にそれなりの強さがあるから、俺の剣の練習相手にはなるんだが、俺自身魔法をひけらかすのは『氷結系最強』ってぽくないから実験台にはならないし、昼間やってる魔力操作の練習の邪魔にもなるんだよなぁ....

 

てか今、お前寝てるだけだろ、と思ったそこの君!甘いね。俺は昼寝を楽しみながら、体の中で魔力を練ったり、いろいろ操作したり、新技を考えたりとずっとやっているのだ。

 

『魔力は一日にしてならず』と言うだろう?(言いません)だから、俺は常に自分の実力向上を惜しむことなく、研鑽を続けているのである。

 

それはさておき、クレアの件だが、最初の方は「美少女だ、ラッキー」と思ってないことも無かったんだが、やはりあの女、生粋のブラコン。しかもサディスト。

弟を虐めて楽しむヤバい性癖持ちだった。

 

修練の度に弟を連れてくるし、弟がいないときでも、口から出てくるのは弟の話ばかり。

正直クソほどに面倒臭い。

 

しかも、その弟も時々こっちをなんか凄い目で見てくる時もあるし......あの時やる気出したの、もしかして失敗だった?

 

よし、これからは無闇矢鱈に力を示すのはやめることにしよう。

戦うのは楽しいが、面倒臭く絡まれるのは嫌だからな。

 

ちなみにあの頃からコーリ家の『問題児』から『異端児』にランクアップした。こっちの方がかっこいいし、少しやる気出したのも悪くはなかったな。

 

 

そんなこんなで、面倒な昼の時間が終わり、今は夜。俺はもう日課にすらなった盗賊狩り(金稼ぎ)をしようと暗い森を一人歩いていた。

 

「さて、今日はどんな技を試そうか「うわぁぁぁぁぁ!」なぁ....って、なんだ?」

 

突然聞こえてきた男の悲鳴が気になり、音の方へ向かってみると、そこには....

 

「ヒャハハハハハハ!!てめえ等、有るもん全部置いてって、さっさと逝きやがれぇぇぇ!!!」

 

奇声を発しながら、盗賊達を蹂躙していく少年の姿があった。

 

「えぇ......怖」

 

流石の俺もこれには盗賊達に同情を禁じ得ない。

というかあの武器何だ?もしかしてスライム?へぇ、スライムってあんな感じで使えるんだ。

かっこいいから俺も今度やってみよ。

 

そうやって覗き見を続けていたら、その場にいる盗賊全員やられたので、フードを目深に被り、お手製のかっこいい仮面をつけて、茂みから出る。

 

 

「......これはお前がやったのか?」

 

「!!誰、君?」

 

「....俺もお前のようにこのあたりの盗賊を狩っている者だ。今日も、と思ったんだが、先客がいたようだ」

 

「あっ、ここ最近あいつ等を倒してるのって君かぁ。まったく、おかげでこっちの稼ぎが無くなってるんだよねぇ」

 

背格好からして俺と同じぐらいの子供だが、その歩き方、立ち姿、それにさっきの蹂躙、それらが目の前のあいつは紛れもない『強者』であることを証明している。

 

「そうか、ならどうする?」

 

「分かってる癖に....今ここで、白黒つけるしかないでしょ」

 

そう言って、彼はフードのしたでニヒルな笑みを浮かべ、さっきスライムを剣の形に変形させてこっちに向ける。

 

「ふっ。いいだろう....【氷刃(エスパーダ)】」

 

俺はそれに応えるように、自身の周囲に数本の氷剣を出現させる。

 

「え、その氷の剣....」

 

彼が少し驚いたような様子を見せたが、お構い無しに俺は氷剣を相手に一斉掃射し、串刺しする.....

 

 

 

 

『氷魔ブレイブソルジャー』

 

 

 

 

は?

 

俺はこの世界では聞くはずもない単語が聞こえて、思わず氷剣を宙で静止させる。

 

「お前、何でその名前を....」

 

「やっぱり君だったか!いやぁ、なんか見たことある形状の剣だと思ったんだよねぇ」

 

「お前『転生者』か?」

 

いや、だからと言って俺の()()()を知っている理由には......

 

「あっ、この格好じゃ分かんないか。えっと....そうだ!」

 

ん?何かスライムで作り始めた....って、それは!?

 

「『バール』....!お前まさか『スタイリッシュ暴漢スレイヤー』か!?」

 

「そうだよ。久しぶり」

 

速報、俺異世界に来て約十年、前世の同志と再会を果たす。

 

 

 





主人公の前世の名前ダサいって思った奴....手を上げなさい!




先生もそう思います。


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