遅くなりましたが、誤字報告してくれた方、感想・評価をくれた方々、ありがとうございます!!
これからも無自覚ヤバい系主人公をお楽しみください。
「────おーい、グラス〜」
「──ん、どした〜?」
「どした?じゃないよ。もう朝だから、学校行くよ」
「あうわぁ....もうそんな時間か」
ベッドから起きた俺は大きく伸びをする。そして、窓の外に映る
俺達がクレアを助けてから数日後、彼女は王都の魔剣士学園への入学のために出発した。しかもクレアは特待生らしくて、いいとこの貴族のボンボンだけが使える学園の寮に住むんだと、すごーい。
ちなみに、実は兄さんも特待生で、クレアに負けたあの日から、さらに剣の修練に力を入れ始めた(時折俺にも魔力の扱い方の教えを請いに来た。)兄さんは、今ではあのクレアと互角に渡り合えるほどに成長していた。
やっぱり兄さんがこの世界の主人公なんじゃないか?
ちなみに俺の方もシドと修行や魔力ありで戦り合ったりして、さらに最強に近づいた。
あとは、去り際にクレアに「アンタも早く学園に来なさい。次こそ私が勝つから」とか宣言されたが、あっちでもまたいつもの感じで絡まれるのかと思うと、正直御免被りたいとこだが....それを言ったら食って掛かって来そうだったので、その言葉は胸の内に留めた。
シャドウガーデン関連であったことと言えば、兄さん達が行った後、俺とシド以外のシャドウガーデンメンバーは俺達の元を離れることになった。
ディアボロス教団壊滅のために他のメンバーを集める必要や教団の情報を掴むためにそれぞれ分かれて各地での活動をした方がいいという考えなのだが....シドはアルファ達は大人になったから、自分の設定に付き合ってくれなくなったと思っているようで、流石に呆れた。
まぁ、そこから数年経って、今では俺とシドの二人も王都に来て、ミドガル魔剣士学園に通っている。
「準備するかぁ....」
俺は寝間着を脱いで、壁にかけておいた魔剣士学園の制服を着る。最後にベッドの横に置いた、学園から支給された剣を腰に着けてから玄関を出た。
「あ、やっと来た」
「グラス君、遅いですよ!」
「そうだぜ。もう学園行きの電車出ちまうぞ!」
「ごめんごめん」
シドの隣にいるこの二人は、金髪がヒョロ・ガリ、坊主がジャガ・イモだ。どっちもギャンブル中毒だったり変態だったり、性格はろくでもないし、剣の実力も中途半端な奴等だが、その感じが学園では『目立たないモブA』を装っているシドのセンサーにビビっと来たらしく、入学してから交流を続けている。
だがこの二人、つるんでいて案外面白い。
多分こいつらが他の貴族より俗世に染まってるからなのか、前世の一般人精神が抜けない俺と話は合うし、居心地はいい....でもクズだ。
よく俺に金貸してくれって頼むし、上級生の女子をナンパしようして許嫁にシメられたりしていたし、全体的にはあまり友達にしない方がいい人間なのは確かである。
「なんか、上げて落とされた気がします」
「それな」
「気のせい、気のせい。ほら、ギリギリなんだろ?さっさと行くぞー」
「お前のせいで遅れたんだが....」
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「ところでシド君。あの約束、覚えていますよね?」
「ん?約束?なんだそれ」
「あ、そういえばその時グラスはいなかったな。実はこの前のテストで成績ビリのヤツが罰ゲームでアレクシア王女に告白するって約束をしてたんだよ」
へえ....話の感じシドが一番悪かったってことだよな....
「....おい、お前わざとだろ」
「....うん。ちょっとやりたいことがあってね」
俺はヒョロとジャガに聞こえないようにシドに耳打ちする。
こいつは確かにアホだが、魔力とか剣とかそういう事に関する知識は人よりずっとあるから学園のテストでこのモブ二人に負けることは普通はない。
まぁ、かく言う俺もテストはそれなりに手を抜いている。また目立ってクレアみたいに挑みかかってくるような奴が現れるのがめんどくさいからな。
実力はあるが、積極的な戦いは好まない....これが俺の今の理想のスタンスッ!....んんっーーーー悪い、少し興奮気味だった。
今はそんなことはいい。
「何だよ、やりたいことって」
「ほら僕、モブ目指してるじゃん」
「おう」
「だから、モブらしく王女に告白してこっ酷くフラれたいんだよね....!」
......なるほどね?確かに恋愛アニメとかには絶対あるな、主人公がヒロインと関わりを持つ前とかに、そのヒロインにどっかのモブが呆気なくフラれたりしてる光景を主人公が見て、
『ねぇ、あれは?』
『アレはこの学校の一番人気の◯◯さんだよ』
みたいな展開。
一見どうでもいいシーンに感じるが、これはそのヒロインがどんなキャラなのかどういう存在なのかを分かりやすく理解させ、主人公がヒロインと関わるきっかけになったりする割りと大事なシーン。
故にそんなモブの存在は作品においても重要なファクターと言っても過言ではない。
それを平凡なモブAを目指すシドがそんな重大イベ逃すはずもなく....
「あぁ....!麗しのアレクシア王女。学園の女神よ、どうか私と清く正しい交際をっ....!!」
お、ちょうど今も誰かが告白してるじゃん。
へぇ、あの白髪の女の子がアレクシア王女か....何か高飛車で腹黒そうだが、確かにかなり綺麗だな。
あれなら多くの人に告白されるのもおかしくない。
あと、少し下衆な話、王女と結婚できればかなりの玉の輿ってのもあるだろ。あっ、あの人フラれた。
「....今の奴、王都の中でも一二を争うレベルの金持ちらしいぞ」
「そ、そんな人の告白でも断ってしまうのですか....」
「お、おいシド。今更怖気づいたとか言うなよ....?」
「大丈夫。告白の仕方は夜鍋して考えてきたんだ」
俺は自信満々みたいな顔でそう言う、シドの様子に一抹の不安しか感じなかった。
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その日の授業が終わり、日が暮れて辺りが赤金色に染まる中、学園の敷地内にある雑木林の中で、方や超高嶺の花の学園のヒロインの王女様、方や田舎貴族の一般モブの立場が全く違う男女が向かい合っている光景を決死の形相で見るいつもの二人と一緒に茂みから覗き見る。
うわぁ....
告白直前にもアレクシア王女の前で顔を真っ赤にして冷や汗を流し、緊張で落ち着かないような様子で体を震わせ、手汗をズボンで念入りに拭き取ろうとする、というコッテコテの演技をしているシドに心の中で軽く引く。
「あ、アレ、アレクシアおうにょっ!す、す、すす、好きですぅ!!ぼ、僕と、つ、つつつつつ付き合ってくださいぃぃぃぃいいい!!」
......これを夜なべして考えてたのか?バカじゃねえの。しかもちょっと声が裏返ったりしてるところが妙に解像度高くて腹立つ。
その無駄に高い演技能力いらないからその分を人間的な知能に回してくれよ。
けどまぁ、これでモブ告白イベントは終わり──────
「わかりました。貴方のような人を待ってたの────よろしくね」
────あれ?
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「ねぇ、あれじゃない?」
「嘘~。あの子?なんか普通......」
「何かの間違いじゃないの?」
「あ、私ありかも....」
「え~!」
「噂によれば、弱みを握って脅したんじゃないかって」
「まじかよ!」
「許せんなぁ.....?」
王女様が告白を了承した翌日、その情報はあっという間に学園全体に広まった。しかも、相手が片田舎の下級貴族ということも相まって、食堂に入ると女子からは品定めするような、男子から憎悪や嫉妬が籠った視線を向けられて、一部に至っては事故に見せかけて◯すみたいな発言も聞こえてくる。
そんな奇異の視線に囲まれながら、俺たちがテーブルに座って飯を食べていると、唐突にシドが口を開く。
「ねぇ、おかしくない?」
「おかしいな」「絶対おかしいです」
「だよねぇ......」
「正直言って、お前にアレクシア王女と付き合えるだけの度量は到底ない。俺ですら怪しいレベルだぜ?」
「シド君がいけたなら、自分もいけたと思います。告白すればよかったなぁ」
何でこいつらは確実にシドより自分達の方がイケてると思ってんだ?ビジュアルパーツ全部中途半端なチャラ男に空き地で野球に誘われてそうな変態坊主のくせに....
シドは中身はアレだが、外見は冴えない雰囲気があるだけでイケメン....とまでは言えなくても普通に整った顔立ちだからな。
アレクシア様が顔で選定してるんだとしたら、お前たちは選定される以前のレベルだわ。
「はぁ....どうしよう」
「付き合ってたらいいんじゃねえの。それでそのまま結婚して、数年後にはシドがミドガル王国国王に....!」
「グラス......楽しんでるでしょ」
「当然」
あのシドが王女の彼氏って、面白くないわけないだろ。
「まったく....大体、彼女と僕じゃ住む世界が違いすぎる。ほんと、何か裏がありそうで怖いよ」
「いいじゃんかよ別に、あわよくばいい思いが出来るかもしれないぜ?」
「そうですよ。なんなら自分が代わってあげ....て、もぉ......」
「ん?どうしたジャガ....っ!!?」
「────ご一緒してもいいかしら?」
おっと噂をすればアレクシア様本人のご登場だ。周りも騒ぎ始めたし、面倒臭いことに俺はおいとまさせてもらおう。
「俺もう行きますんで、ここ座っていいですよ」
「あら、ありがとう」
俺は早々に退散しようと立ち上がり、食べ終わったあとの食器を運んでいると、視界の端で見覚えのある人物がすごい形相でシド達を睨んでいるのが見え、そいつは俺に気づくと自分のところに来るように手招きする。
俺はため息をつきつつ、食器を片付けてからそこに向かう。
「はぁ....そこで何してんだよ、
俺が支柱に身を隠しながら覗いているサディスティックブラコンお姉様に声をかける。すると、クレアは首をぐるりとこちらに向ける。
「ね、ねぇ、シドが、がが、アレクシアお、王女と、つつっ付き合い始めたって!本当なの!?」
「そうだよ」
「有り得ないわ!!」
「何がだよ」
「何で、何でよりにもよってシドなのよ!!あの子は顔も剣術も頭も全部平凡でっ!王女様が気に入るような要素なんて何一つないのに....!なんでっ!!」
「いやお前、実の弟のこと悪く言い過ぎだろ」
「そんなあの子でも私にとっては大切な弟なのっ!!」
「あっそう。まぁでも、あれじゃね。外見とか強さとか、そういうのじゃ表せない魅力みたいなのをアレクシア様はシドに感じたんじゃない?」
「そんなこと聞いてないわよっ!!」
「いやお前が、なんでって言ったんだろうが....」
まったく、この女、見た目は美少女と言って差し支えないのに、シドが関わると人格が代わったように凶暴になって手がつけられなくなる。こいつこそ、まさしく残念美人。
「大体、アンタもアンタよ!」
クレアは目をつり上げ、ビシッと俺を指差す。
「何で特待生じゃないのよっ!アンタの実力なら特待生として入学することも出来たはずなのに......アンタが普通生徒として入ってきたせいで、立場的にもそうそう喧嘩売るわけにもいかなくなっちゃったじゃない....!」
「それは良かった。てか別に特待生だろうと後輩相手に喧嘩吹っ掛けちゃ駄目だろ。あと勝負するなら兄さんがいるじゃん」
「エースとはもう何度もやったから飽きたわ。それに約束したじゃない。次会う時はまた勝負するって」
「してないな?お前が去り際に一方的に言ってきただけで俺は了承したつもりはないぞ」
「それなのに〜!!」
「聞いちゃいねえな......いいか?俺はお前みたいな、戦えっ戦えって面倒臭いやつに絡まれたくないの。だから、あんまり目立たないようにするって決めたの、わかった?」
「......私との勝負、嫌だった....?」
俺がため息をつきつつ言うと、さっきまで食いかからんとばかりの勢いが嘘のように急にしおらしくなってクレアは小さく呟く。
こいつ都合の良い時に限って....
「......はぁ、分かった、こうしよう。放課後とか誰もいない時なら相手してやるから、な?」
「!!グラス......人目の少ない場所で、か弱い乙女に何をするつもりっ!?」
「よし、殴る」
こいつ....!人がせっかく優しくしてやろうと思ったのによ.....!
「なっ、ちょっと!上級生、しかも女の子の顔を殴ろうだなんて紳士の風上にも置けないわよ!!」
「大丈夫....お前は女の子の皮を被ったバイオレンスゴリラだ。何も問題はない」
「誰がゴリラよ!!!」
「年上のくせに人を見つけ次第襲いかかってきてた野蛮人をゴリラって言って何が悪いんだ〜?」
「〜〜〜〜ッ!!殺すっ!!」
俺の煽りに怒り狂ったクレアと組み合っていると、目立たないためにシド達のところを離れたのに、バリバリ人の注目を集めてしまった。
やはりあの女と関わっていると碌な事にならねぇな。
ちなみにあの後、放課後に武道場を貸し切ってからクレアをボコボコにした。
はっ、ざまぁ。
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その日の夕方、シドに聞いたところ、どうやらアレクシア様は婚約者候補で魔剣士学校教師のゼノン先生を諦めさせるために偽の恋人になってもらおうとしてたらしい。
最初はシドもそんな当て馬みたいなのやりたくないと抗議したらしいのだが、餌付け、いや、金付けされ、泣く泣く(ホントにそうかは知らないが)付き合うことになったんだと。
夢のためにプライドを捨ててでも金を得ようとする、その姿勢はいいんだよ、そうやってただ一心で理想を実現しようとするのは俺も尊敬している、そこだけはね。
ただ、一応闇の組織の首領なんだから、指で飛ばされた金貨を口に加えてキャッチする、みたいな人間としての矜持すら捨てるのはやめて欲しいが......俺も後でやるか。
まぁ、そんなこんなで、シドとアレクシアの偽りの交際から二週間が立った今現在────
「シド・カゲノー。君にはアレクシア王女誘拐の容疑がかけられている。話を聞かせてもらおうか」
俺達、というかシドは学校の門の前で、大勢の魔剣士に囲まれています。
「......お前もうモブじゃなくね?」
「........それは言わないで」
ヒロインってどのくらいが良いんだろ....もう自分のお気に入りのキャラ全部ぶち込むか!