グラス(ゼロ)は、後がめんどくさいからやる気を出さないだけで、実力隠すつもりはあんまないです。
後、誤字報告してくれた方、ありがとうございます!!
ガンマにチョコを貰ってから俺達は外にいる二人と合流して、すっかり暗くなった街を門限に間に合うべく必死に走っていた。(本当に必死なのはヒョロとジャガだけ)
「やべぇぞ!コレ間に合わないんじゃねえかっ!?」
「シドくん達が悪いんですよっ!アンケートでイチャコラとっ!!」
「悪かったって〜」
「チョコ無料で貰ってんだから、グチグチ言うなよー」
「「それとことは話が別っ!!」」
がめつい奴等だなぁ.....ん?
走っていると、何処から響く僅かな剣戟が耳に入り、俺と同様に気づいたシドは足を止める。
この夜に剣を打ち合ってるわけもないし....いやはやまさか、ここまですぐに見つかるとはな。
「??どうした、二人共早く来いよ」
「門限過ぎちゃいますよっ」
「あーちょっと用事g「う、う◯こ」....は?」
俺がテキトーに理由付けてヒョロ達を先に行かせようとしたら、シドが突然、腹を押さえ地面に蹲る。
こいつ急に何言って......おい、まさか....!
「う、う◯こ、してくる....ッ!もう限界なんだっ!!」
うわ....最悪だ。確かに理由としては悪くないけど、もう少しまともなのは無かったのか。
「今すぐしないと、走りながら垂れ流すことになる....!」
「それは、確かに大事だな....」
「『門限』か『尊厳』かの問題です」
そんな神妙な面持ちで何を言ってんだお前らは....
「僕を置いて先に行けっ!誰にも、見られたくないんだ....」
いやほんと、こいつ演技だけは上手いな、無駄に。
「で、でもっ!!」
「分かった....お前が野◯したことは誰にも話さねえ!!男と男の約束だっ!!」
お前との約束とか信用できなさすぎだろ。
絶対言うやん、なんなら脚色して学校中に言いふらすだろ。
「シド君の選択は誰がなんと言おうと正しかった、そう思います....!!」
何で泣いてんだこの坊主。
「も、もう保たないっ!は、早く行ってくれ!僕を置いて....早くっ!!」
そのセリフはもっと、仲間が主人公達を逃がす時みたいな感動的な場面で使ってくれよ....理由がクソすぎて、誰も感情移入できないっつーの。
「シドっ!お前のことは忘れねえっ!!」
「例え『野◯』でも、ずっと友達ですっ!!」
「あ、俺はシドを待っとくから先行っていいぞ」
「......二人共!!行けっ!行くんだぁぁぁぁぁ!!」
「「うわぁぁぁぁぁ!!」」
二人は叫び声を上げながら、その瞳から涙を零し、決して振り返ることなく走り去っていった......って、ナニコレ。
「────さて、行こっか」
「お前......まじで『陰の実力者』じゃなくて『俳優』目指せよ」
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「あいつらが例の『人斬り』っぽいな」
二人と感動的な別れをした後、俺達はいつもの装束を着て、剣戟の聞こえた場所に向かうと、そこには黒いローブに身を包んだ三人の男達と、なんとアレクシア王女が戦っていた。
「アレクシアじゃなかったんだ....」
本当に彼女が犯人だと思っていたシャドウが少し驚いた様子を見せてから、その戦いに介入し、一人を瞬殺すると残りの二人はそこから壁を伝って逃亡を謀った。だが....
「ぐぁ──ッ!!?」
「まさか逃げれるなんて思っちゃいないよな?」
俺が逃げた建物の屋上に先回りして、片方の男をニ本の氷剣を操り、丁度縦で三枚卸しにする。
そこに後から来たシャドウも合流した。
「っ....!!」
「────流石は至高なる御二方。これほど早く確保なされるとは....」
「ニューか」
「あとはお任せください。情報を引き出します」
そういえば、彼女の専門は『拷問』だったな....ならその道のプロに任せたほうが良いか。
それに今ならまだ門限間に合いそうだし。
「頼んだ」
「抜かるなよ」
「はい」
俺達は偽シャドウガーデンの辻斬りの『処理』をニュー任せ、その場を後にした。
────────────────────
早朝、いつも通り学園行きの機関車に俺達が乗車してきてたら、周囲の学園の生徒達が
『ほら、あいつが』
『走りながら◯ンコ垂れ流したっていう....』
『えぇ....!?』
友情ってこうも脆いもんなんだな。
案の定、ヒョロとジャガは約束を破った挙げ句、シドが公衆の面前で出しちまったヤバい奴として広められていた。
「よ、よう、昨日は災難だったな」
「た、大変でしたね....」
「今日の方がよっぽど試練の日になりそうだけど」
まじで、災難だな、シド。
でもまぁ、野◯を理由にしたお前にも原因の一端h『しかも、その隣の奴は道にゲロ撒き散らしてたらしいぞ』.....あ?
「おい、カス共。なんで、シドを待ってただけの俺まで変な噂が立ってんだ......?」
「っ!?い、いや、それは....」
「さ、さぁ?な、何でだろうなぁ?」
「......」
......お前等がそのつもりならこっちにも考えがあるぞ。
俺は周囲にバレない程度に魔力を集め、それを目の前でこちらに背を向ける二人に
「「ッッ!!!??」」
「な、何だ....き、急には、腹が....!!」
「ぼ、僕の方も....!!」
突然、二人が顔を青くして腹をおさえながら蹲る。
魔力ってのは、昨日のガンマ達にやったみたいに健康にさせることも出来るように、相手の調子を悪くすることも出来る。
それを俺の氷の魔法と合わせれば、腹を下させることも可能だ。
「どうした、二人共?大丈夫かぁ?」
「お、おう。だ、大丈夫だ」
「そ、それより、ちゃんとチョコは、持ってきましたか?」
「一応ね」
「よ、よしっ!じゃあプレゼント大作戦だ....!」
それから、ヒョロとガリが学園に着いてトイレに駆け込むまでの間、俺は二人が苦しみに悶えて、青くなったり緑になったりする二人の表情を愉しむのであった。
────────────────────
『ブシン祭』
二年に一度、国を挙げて行われる魔剣士の剣術大会。
国内に構わず、外からも自分の力を示そうと腕利きの魔剣士達が集まってくる。
当然、この魔剣士学園からも大会参加しようとする奴がいるのだが、あらゆる猛者が集うこの大会、当然参加するものも、それに相応しい実力者でなければならない......まぁ要は、国王やお偉いさんが見ている大会で魔剣士学園から弱いやつが出てきて、学園が恥をかく羽目になるのは避けたいっていう理由で、学園内でブシン祭の選抜大会が行われ、そこで評価された奴が学校から推薦してもらえるわけだ。
ブシン祭に参加するために、いつもは剣を交えることがあまりない他の学年の生徒達が鎬を削る数少ない機会なので、この大会は参加しない生徒にとっても楽しみなイベントになっている。
当然、あんまり目立ちたくない俺は参加しない......つもりだったんだが、今俺は生徒の注目が集まる中、道着を着て、大会用の殺傷の能力のない木剣を持って、競技場のステージに立っている。
しかも、俺が今相対しているのは....
「一回戦目の相手....お前かよ」
「何、嫌なの?」
「......別に」
俺は目の前でこちらを睨みつけてくる一回戦の対戦相手────
「というか、アンタが大会に参加するなんてどういう風の吹き回しよ」
「俺だって参加するつもりなんて無かったわ」
あの
しかも、自分達はチョコ渡す時に色々やらかしたせいで、大怪我して出場してないし。
あいつらと当たったらボッコボコにしたってのに......
「まぁでも、私は嬉しいわよ。こうしてアンタと戦り合えるんだから」
「俺は全然嬉しくねえよ」
何でよりによってこいつなんだよ。
他の知らない奴とかだったらテキトーにやって楽に負けて終われたのに、こいつ相手だと下手に手を抜いたらバレるし、キレるからなぁ......どうしよ。
「これまでの私と同じだとは思わないことね」
「それ、この前も言ってなかったか」
「う、うっさい!!」
そこで会話を終わらせ、俺達は互いに一礼し、剣を構える。
「それでは、『一年 グラス・コーリ』対『三年 クレア・カゲノー』による第一試合......始め!!」
審判の合図と同時に、クレアは地面を強く蹴って、勢いよく飛び出す。
「────ハァッ!」
一気に距離を詰めてきたクレアは、俺の顔面に向けて突きを放ってくる。
俺はそれを剣を盾にして受け止めると、剣の腹と切っ先がぶつかり激しい衝突音が鳴り響く。
「......お前、最初から顔面狙いに来んなよ。殺す気か」
「こんな剣じゃ、アンタが死なないって分かってるもの」
「嫌な信頼のされ方だな」
そこからクレアが剣を引いて、その勢いでの回転から横薙ぎに剣が迫ってくるのを、俺はまた身体とに間に剣を滑り込ませて防ぐ。
さて、この試合....どうやって終わりにしよう....
────────────────────
その後も、超近距離で振るわれるクレアの斬撃を自身からは攻撃をせず、ひたすら受けに徹し続ける時間が続いた。
『流石、特待生のクレア・カゲノー....!』
『あぁ、あの剣の冴え。とても学生とは思えない』
『アイリス王女が一目置くのも無理もない』
『でも、あの一年の子、結構凌いでるよ。凄くない?』
『いや、確かに防げてはいるけど、耐えているだけで全く攻撃に転じられてない』
『クレアさんの攻撃を頑張って防ぐので精一杯なんだよ』
よし、生徒の目はいい感じに騙せてるっぽいな。このまま、いい感じのところで負けて────
「ハァァァァァッ!!!」
「────って、わけにもいかないか」
気合の入った声と共に上から振り下ろされる一撃を、剣の腹を使い両手で抑えて防ぐ。
「....アンタ、手抜いてるでしょ」
やっぱりバレたか。
まぁそりゃ、時々こいつと二人だけで打ち合ってるし、俺がこんな防戦一方になってたら気づくのも当然だよな。
「もしかして、皆の前だから私の顔を立ててくれようとしてるの?それとも、もう私に真面目に戦う価値はないってこと?」
「どっちも違えよ。言っとくが、俺は大して実力もない奴に構ってやるようなお人好しじゃないんでね」
元々、シドに『悪魔憑き』治療してもらったのもあって、魔力量もかなり多いのに加えて、この世界の奴が言う魔力でゴリ押しみたいな感じの『天才の剣』じゃなくて、本当に剣技そのもののセンスがいい。
多分、このまま行けば『七陰』にも並ぶ実力になれると俺は見てる。
「俺が認めてるお前だから、相手してんだ。アホなこと言うな」
「そ、そう?....な、ならなんで今真面目にやんないのよっ!!」
「いやだから、前言ったよな?目立ちたくないんだって。そもそも誰もいない時には相手してやってるんだから、何でわざわざここで戦り合う必要があるんだよ」
「アンタを皆の前でボッコボコにして、私の方が強いって知らしめるために決まってるでしょっ!!」
「最悪すぎる......」
これが本当に特待生の姿か?実力あるって言っても、こんなガキ大将を貴族様と一緒の寮に入れちゃ駄目だろ。
「とにかくっ!!」
「うおっ」
クレアは剣の押し合いを中断し、両手で魔力を込めた振り上げで、ガードごと俺を吹き飛ばすと、二人の間に距離ができる。
「アンタが本気になるまで、負けることも降参することも、許さないからッ!!」
うーん....困った。こんな言い方してるが、真剣に戦おうとしてるわけだし、強者としてはちゃんとその意気に応えてやった方がいいし、もう真面目にやるか?いやでも後々なぁ......
「────グラス〜」
「ん?」
俺がどうしようか思い悩んでいると、後ろの席から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「......シド?」
俺を呼んだ声の主は、なんとシドで、その隣にはヒョロとジャガが少し驚いた様子で座っている。
あいつ何やってんだ....試合中に大声上げるなんて目立たないモブにらしくない行動だろうに。
大体、試合中にわざわざ何を....
「ヒョロとジャガがこの戦いの結果に全部の貯金賭けてるらしいよー。しかも姉さんにー」
........ほう。
「あと、そもそも僕達をエントリーさせたのは、少しでも賭けで勝つ確率を上げるためだってー」
「お、おい?」
「し、シドくんっ?」
........なるほど?
『えー、なにそれ』
『自分の金儲けのために級友を使ったってこと?』
『てか、あの細いのって、この前、婚約者持ちの子にチョコ渡して、詰められた子じゃない?』
『あっちの坊主は、女子へのストーカーが発覚して昨日袋叩きにされてたやつだっ!!』
『俺、グラスに聞いたんだけどよ。あいつがゲロ吐いて回ったって噂。あれ、あの二人が流した嘘なんだってさ』
『まじかよっ!』
『あいつら最低だな!!』
場内はシドの言葉で一気にヒョロとジャガへのブーイングに溢れかえり、二人は顔を真っ青にして怯えている。
俺への風評被害の挙げ句、今度は金儲けの道具に利用する......か。
「ヒョロ、ジャガ」
俺は顔を下に向けたまま、背後の二人に声をかける。
「「ひっ!!」」
「わ、悪かった、グラス!!」
「ほんの出来心だったんですっ!!」
二人は怯えた様子でそう口を開く。
「......そうか。まぁ、俺も悪魔じゃない。お前達が俺の噂を流したことは許すし、チョコの件で迷惑をかけてしまった人に一緒に謝りに行ってやってもいい....」
「ほ、本当か....!」
「さ、流石、グラスk────」
「だが」
俺は顔を上げて、後ろを振り向き、二人に最っっっ高の
「その代わりにお前等には全財産を失ってもらうぞ?」
「「へっ?」」
俺はそれだけ言って振り返り、目の前で起こった出来事に困惑気味になっているクレアに、剣を構える。
「クレア」
「な、何?」
「お望み通り、
「ッ!!そうこなくっちゃ、ねっ!!」
クレアは俺の言葉に笑みを浮かべ、今まで以上の魔力出力でこっちに迫り、突きを放つ。
それは、奇しくも試合開始の時と同じ構図であり、さっきは剣を盾に受け止めたが、今回は......
「甘い」
正確にクレアの剣を見切り、相手の剣の側面に自分のを合わせ、ほとんど魔力も筋力も使うことなく重心移動だけで後ろに受け流すと、俺の背後でクレアは勢いのまま地面に手をつき、唖然とした様子になる。
『え....』
『今、何が起きたんだ?』
「.....」
「おい、クレア。何を固まってんだ。地面に金貨でも落ちてたか?」
「ッ!!」
俺の挑発に、クレアは直ぐ様手元に置いてある剣を握り、振り向きざまに剣を振り上げてくる。
それをまた同じように横にいなすと、クレアの剣は空を切る。
「なっ、またっ....!」
「今度はこっちから行くぞ」
俺は剣を両手で持ち、そのまま一息の合間に縦、横、斜めに真っ直ぐ振るう。
「くっ!!」
クレアはその三連撃を何とか防ぐが、その衝撃で後方に少し飛ぶ。
『な、何だ今のっ!!』
『早すぎて何も見えなかった....』
『いや、アレは早いなんて次元じゃない....まるで同時に3つの斬撃が出たみたいな』
「相変わらず恐ろしいほど早いわね....それに技の繋ぎが殆どわからない」
「お褒めの言葉ありがとう。で、もう終わりか?」
「んなワケ、ないでしょッ!!」
クレアは再度距離を詰め、そこからの右上から袈裟斬り。
それを最小限の動きで弾くと、次に放たれた俺の体の左側への横一閃の攻撃は、間に自分の剣を滑り込ませて勢いを止め、そこから相手の剣の下から持ち上げて、上に半円を描くように受け流して、そのまま剣を押さえつける。
「ちぃっ!!」
「どうした?俺を皆の前で倒すんじゃなかったのか?」
「うるさいわねっ!!」
クレアは魔力で腕力を強化して無理矢理剣を振り上げ、そのまま繰り出される振り下ろしの攻撃を俺は逆に振り上げで迎え撃つ。
二つの剣がぶつかり、激しい轟音が響くとともに衝撃波が周りに伝わって、ステージにいた審判は思わず尻餅をつく。
「クレア本当に強くなってるよな。さすが天才」
「なぜかしら....アンタに言われてもまったく嬉しくないわっ!!」
「そりゃ残念だ......フッ!!」
「ッ!!」
クレアの剣を弾き飛ばし、ガラ空きになった胴体に直ぐ様突きを放つ。
その一撃をクレアはギリギリで剣を盾にするが、中途半端な体勢で受けたことで衝撃を緩和しきれずに後ろに突き飛ばされるが、姿勢を上手く整え、しゃがんで着地する。
「ッ!!いない....!後ろっ!!」
クレアの視界から俺の姿が消えた一瞬で回り込んでからの一撃をクレアは咄嗟に剣を後ろに構えて防いだ。
「お見事。さぁ、まだまだこれからだろ?」
「当たり前よっ!!」
クレアが俺の剣を弾いてからは、さっきまでと同じようにクレアの攻撃を俺がいなし、連撃を浴びせてくれば、その繋ぎが甘くなったところにカウンターを入れ、重い一撃は真正面から相手以上の力で振るって、それで出来た隙を突く、という流れが続く。
『おい。あの一年、クレアさんを圧倒してるぞ』
『あんな剣術の流派見たこともねぇ!!』
『あいつ、一体何者なんだ!!?』
そうやって俺が常に有利に試合を進めながらも、クレアはなんとか致命傷となるような一撃は防ぎながら、ずっと食い下がってきた。だが....
「──────っ!はぁ、はぁ、はぁ......」
俺がクレアの攻撃を弾いて吹き飛ばすと、クレアは膝をついて倒れ込む。
呼吸も荒くなってるし、もう限界だな....
「何もう終わったみたいな顔してるのよ......まだよ、まだ終わらないわ......!!」
クレアは自分を奮い立たせるように笑みを浮かべながら立ち上がる。
「アンタに吠え面かかせてやるために......とっておきを用意したんだから」
強くなる理由もうちょっといいのなかったか?それより、『とっておき』か。
「ほう?」
「まだ未完成だったんだけど、さっきまでの打ち合いで
クレアはそう言うと、腰を落とし、前に伸ばした左腕に剣を沿わせるように上に構える。
「!!それ、お前と最初にやったときに俺がやった....」
クレアがそこから集中するように目を瞑ると、クレアの纏う気配が大きくなり、魔力の流れは静かに、そして鋭くなっていく。
従来の膨大な魔力でただ強化するんじゃなくて、その魔力をより洗練させ、必要な箇所にのみ集中させる。
俺のやった技にはその技術が必要で、ただ形を真似るだけじゃ意味ないんだが......クレアの奴、それがちゃんと出来てる。
俺が教えたわけじゃないのに、俺との戦いの中で自力で魔力操作の感覚を掴んだか....
「面白え....!!」
俺は剣を正面に構えて、クレアの一撃が完成するのを待つ。
明らかに様子が変わったクレアとステージの緊張感から、観客たちも自然と沈黙し、あまりに研ぎ澄まされたクレアの気配にゴクリと唾を飲む。
そして遂に、クレアから漏れ出ていた全ての魔力が収束し、開眼する。
来るッ!!
瞬間、クレアの踏む込みと同時に最速の突きが迫ってくる。
初見なら何をされたかも分からないまま終わるが、
それを開発したのは俺だ。速度とタイミングは俺が一番理解してる....!
高速で迫る剣の切っ先に、完全にタイミングを合わせた。俺の振り上げはクレアの剣を弾き飛ばす────
「っ!!」
ことなく、弾こうとした一瞬で剣が一度引かれたことで、俺の剣は空を切る。
こいつ....俺がタイミングを把握してるのを逆手に取って....
「これで終わりよッッ!!!」
引き戻された剣は再度加速し、切り上げたことでガラ空きになった胴体を完璧に捉え、誰もがクレアの勝利を確信した.....!
「────まぁ、そう来るよな」
「えっ......」
俺は
「う、嘘....なんで....」
「
「!!」
互いにその技を知り、なんなら相手の方が技を熟知しているから、それを利用してわざと一度引き、タイミングをずらす。
実にいい考えであるが故に、こっちも予想がついたというわけだ。
そもそも、俺は編み出した剣が十全なレベルに至るまで精錬してきたから、そのパターンを想定していたってのもあるが。
「それで....もう俺の勝ちでいいよな?」
「......ええ」
「ッ!!勝者、『グラス・コーリ』ッ!!!」
審判が勝敗を告げた瞬間、会場は一気に歓声に包まれる。
『す、すげえ!!』
『あいつ、クレアさんに勝ちやがったっ!!』
『まだ一年だよね....!!』
『おい、嘘だろ....』
『グラス君、まじで勝っちゃいましたよ....!僕たちの全財産が....!』
「....はっ、ざまぁ」
俺は後ろの席からの嘆きの声を聞いて満足し、クレアに突きつけていた剣を下ろす。
すると、クレアはどっと疲れが来たように地面に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「....う、うるさいっ....ぐすっ」
「お前......泣いてんのか?」
「な、泣いてないわよっ!!」
いや、泣いてるだろ。目、真っ赤じゃん。
「ほら、手貸してやるから。とっとと立てよ」
「いいわよ、別にっ!ほっといてよっ!」
「お前なぁ....」
今のお前、チャイナ服みたいな服にすごい汗かいてるとかいう、見た目は美少女なのも相まって大変目に毒な状態なんだから。早く立ってくれ。
「そんなこと言ってないで立てって」
「何よ....惨めな負け犬のことなんかほっときなさいよ....!」
「......はぁ」
俺はため息をつき、拗ねた様子で座っているクレアの頭に優しく手を置く。
「あっ....あ、アンタ何を──」
「正直驚いた」
「!!」
「お前が何も教えてないのに、俺の剣術を習得してて、純粋に凄いと思った」
「な、何よっ。慰めなんていらないわよっ!」
「違えよ。普通に褒めてんだ」
こいつが才能にかまけて、練習を怠ったりしてないのは俺はよく知ってる。
兄さんがたまに学園の授業の時も真剣な様子を教えてくるし、放課後に修練場を覗くと一人で鍛練してるのをよく見るからな。
「言っただろ?俺はお前の実力認めてるって」
「....」
そう言い聞かせながら、俺はクレアの黒髪を優しく撫でる。
「お前は凄いよ......よく頑張ったな」
クレア、お前はもっと強くなれるよ。
俺もこれからはこいつとの勝負だけは渋らず受けてやることにしよう。
「....だから、な?もう立って──」
「.....れ.....な.....」
「へ?なんだって?」
俺はクレアが何を呟いたか聞き取れず、耳を澄ます。
「これで勝ったと、思わないでよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
すると、クレア顔を真っ赤にしながら叫び声を上げて、俺の撫でていた手を吹っ飛ばす勢いで一目散に会場を出ていった。
「そんなまた、テンプレな....」
戦闘描写ムズすぎる....!!