「ん……んぅ……」
カーテンの隙間から差し込む朝日を受けて、私は身動ぎして布団に潜り込む。
しかし、体を揺らされて微睡みを阻まれる。
「ほらヒナ、朝だぞ」
「ん〜……あといちじかん……」
「はあ、仕方な……じゃなくて、朝食が冷めてしまうから早く起きてくれ」
そうやってマコトに連れられて洗面所で顔を洗い、寝癖を整えて食卓へ向かう。
机の上には味噌汁や魚の塩焼きを初めとした丁寧な朝食が並べられ、良い香りを漂わせる。
「いただきます」
「……いただきます」
ずず……と味噌汁を流し込んで一息───
「なんでマコトが私の部屋にいるの??」
「ん……何を言ってるんだ、1週間ほど前から一緒に過ごしてるだろう。と言うか、急に『同棲しよう』とか言い出したのはヒナからだったじゃないか。まだ寝ぼけてるのか……?」
「私から……?1週間前……?」
そうだっただろうか……?どうにも記憶が朧気でうまく思い出せない……
「……どうしたんだ今日は。本当に大丈夫か?なんなら天雨には私の方から休みの連絡を入れるぞ?」
「……いえ、大丈夫よ。問題ないわ」
マコトはそうか、と短く返して食事を続けた。……私が忘れているだけ、なのだろうか。
その後朝食を済ませた私たちは、いつものように支度をして登校した。
その道中───
「あ、マコト議長!おはようございます!」
「ああ、おはよう。今日も元気そうでなによりだ」
「おはよう、マコト。相変わらず2人は一緒なのね。」
「おはよう。まあ……ヒナは放っておくといつまでも寝るからな……」
「マコト議長、早朝からすいません!こちらの議案なのですが──」
「後で確認しよう。執務室の私のデスクに置いておいてくれ」
……ゲヘナの朝はいつもこんなに爽やかだっただろうか?
もっと乱雑に銃弾が飛び交うカオスだったと記憶していたが……
「ゲヘナって……こんなに平和、だったかしら」
「ん?それは……ほら、ヒナを初めとした風紀委員が頑張ってくれたから───」
「───っ!!??!?」
『風紀委員が頑張ってくれたから』、なんて普段のマコトらしからぬセリフが飛び出してきて私の背中にはゾワッとしたなんとも言えない感覚が走った。
「な、なんだか私の知ってるマコトじゃないみたいで……ちょっと気持ち悪い……」
「きもっ……!?な、何故だっ!私は普通に褒めただけだぞ!?」
「いや……私の記憶と随分齟齬が……」
「ヒナの中の私はどうなってるんだ……」
「もっとこう……悪辣で卑怯な感じ……」
「最悪じゃないか……」
あの後無事に学園に到着した私はマコトと別れ、風紀委員室へと向かった。
それからしばらく、今までより少なくなっていた書類の処理をしていたら部屋の扉が勢いく開け放たれ闖入者が現れた。
「っ!!ヒナァ!匿ってくれ!」
「ハア……マコ……羽沼議長、扉はもう少し優しく開けてください」
「あ、ああ、済まなかったな。天雨行政官……って、そうじゃない!ここで少し匿ってくれ!」
「匿うって貴女、なにかに追われてるの?」
「ああ、実は──」
と、マコトがなにか言おうとしたところに再び扉が激しく開け放たれた。
「マコト先輩……みぃつけ、た♡」
「イ、イブキ……っ!」
「イブキさん、貴女もですか……」
開け放たれた扉の向こうには、妖しく目を爛々とさせたイブキが立っていた。
……その両手に包丁を持って。なんで?
「ま、待ってくれイブキ!どうか弁明を……!」
「ダメ、もう今週3回目なんだよ?許さない」
「イブ──」
「死んで償えっ!」
「うひゃぁっ!?」
……イブキとマコトが言い合いをしたと思ったら、突然イブキが包丁を振り回してマコトを追いかけ始めた。
……なにこれ夢?
「……アコ、コーヒー淹れて」
「え、この状況で……?いえ、分かりました。」
私がそう伝えると、アコは手早くコーヒーを入れて持ってきてくれた。
「ありがと。ん……え、おいしっ」
「ありがとうございます」
おかしい……アコのコーヒーは妙な雑味があってもう少し不味かったはず……
「あ、委員長!危な──」
「え」
イブキに追いかけられてたマコトが私の方に突っ込んで───
「ぐぶぇあっ!?」
「ヒナァーーーッ!?」
「委員長ーーー!?」
「って感じの夢を今朝見たんだけど……」
「それを聞かされた私はどうすれば良いんですか……?」
まあ何となくわかるとは思いますがエイプリルフール作品です
過去に書こうとしたマコヒナの供養と言うかなんと言うか……