目が覚めるとがっこうぐらし!(実写版)の世界だった。 作:RNKI
旧第1話 にゅうがく
「入学おめでとう」
聞き馴染みのある声が、私の耳に入ってきた。
見慣れない景色、そして騒がしくも喜びに溢れている人達の声。
ーー此処は.....
どうやら私は、がっこうぐらし!の世界にやってきてしまったらしい。
しかもそれは、ただのがっこうぐらし!の世界では無く...
「実写版の世界....みたい」
自分が漫画やアニメで見慣れていた校舎とは違い、校門からすぐに斜めった道。
校舎を前にして左には運動部たちが使う校庭があり、やはり原作とは違う学校なのだと実感すると同時に、何処か名残を感じる部分もある。
ーー....ってこれ、冷静に考えたら結構まずい状況なんじゃ...?
原作とは全く異なる校舎なので地下が存在しているのか、そもそもそれ以前にこの世界に抗体に関する設定が生かされているのかが不明な状態。
それに加え、今由紀ちゃん達が何年生かすらも分からない。
「とりあえず、探してみるしかないよね」
私は一つ一つ校舎の配置を記憶しながら、校内へと入っていった。
「それではまず、自己紹介から始めましょう」
このクラスの担任と思われる先生が、手慣れた様子でHRを進行させていく。
先生は1番から順に呼んでいくと、その彼らに自己紹介をさせていった。
ーー確か胡桃ちゃんは3年生だったから...同じクラスに由紀ちゃん、りーさん、胡桃ちゃん、もし居なくてもチョーカーさんっぽい人が居たら十分に時間はある事になる。
彼女らが3年生の状態でパンデミックが始まる事が確定している今、出来るだけ猶予期間は長い方が良い。
「次、祠堂圭さん」
「?!」
知っている名前に驚き、ついその彼女に目を向けてしまう。
ーーやばい!!圭だ!!本物の圭だ!!!
思わずこの場で告白したくなる気持ちをグッと抑え、私は一度大きく深呼吸をする。
此処に来てから現実味を全く味わっていないが、それでも彼女を見る事によってようやく自分自身に整理が付いた気がした。
圭はイメージ通りの明るさを披露し出身校と好物を話した後、足早に先に戻って行った。
ーー圭がこのクラスって事は、多分みーくんもこのクラスだよね?!勿論原作だとクラス描写なんて殆ど無かったから確定とは言えないけど....やばい、耐えられるかな....
「次、天音春さん」
「っ...はい」
自分の名前が読み上げられた為、立ち上がって教壇の前へ歩いていく。
ーー上手く自己紹介中にみーくんを見つけられれば....!
「天音春です、好きな食べ物は....カ、カレーです」
ーーあそこには....居ない.........あっ!
何とか口を動かしながらクラス全体を怪しまれない程度に見回すと、端の席に目的の人物を見つけた。
「これからよろしくお願いします」
私は何とか興奮を表に出さないように我慢して、数秒礼をした後自分の席へと歩みを進める。
着席をして先生の顔を見ると、幸い特に引き延ばしに対しての違和感は持ってはいない様だった。
ーーとりあえずみーくんと圭が居るのが分かったのは良かったけど、つまり由紀ちゃん達は2年生って事だよね...
来年の6月にパンデミックが始まるので、猶予期間は約1年。
今私の居る世界は、原作との設定の相互関係が分からない実写版世界であり、何処までその知識が通用するか。
ーー1年って長く感じるけど....1年後、私は人だったものを殺さないといけない。
希望が全く無いという訳では無い。
例えば原作とアニメ、アニメは最後まで描かれておらず、太郎丸といういわゆるオリジナル要素の様な物も存在している。
がしかしストーリーの流れ自体にはほぼ変化が無く、胡桃ちゃんは噛まれるし、ランダルの名前も若干登場するし、桐子の姿も確認される。
そして実写版ではショッピングモールが登場せず、圭も既に倒してしまっているが、それでも大まかなストーリーの流れ自体は変わっていないのだ。
つまり最終的に、原作後の世界が描かれたおたよりまで辿り着ける可能性はしっかりと存在している、という事だ。
ーーつまり私が今しなきゃいけないのは、原作と実写版のキャラクターと仲良くなる事.....
コミュニケーション、自信ないなぁ...
「起立、気を付け、礼」
身体に自然と染み付いた行動を行うと、放課後という括りの時間になる。
そして私がどうしようかと頭を悩ませていると、いつの間にか教室内はまだ知り合っていない、もしくは親しい仲のクラスメイト達の話し声で溢れかえった。
ーーやばい乗り遅れた!そ、そうだ!圭は...
何とか覚えていた彼女の席に目をやると、どうやら彼女自身周囲に親しい友人が居ない様子で、あたふたと慌ただしく動いている。
どうやらみーくんを探している様だが、彼女の身長と周囲に男子達が固まっているせいで中々見つけ出せていない様子。
ーーこれはチャンス!
私は男子達の隙間を縫う様に移動して、目的の彼女の前まで移動する事に成功した。
「ね、ねえ!」
「へ?あ、えっと....あはは」
何とか声を掛けたが、圭はどうやら何の関わりもない生徒に話し掛けられて困惑している様子だ。
ーーか、可愛い!!!じゃなかったどうしよう!話し掛けたは良いものの、話題何も考えてなかったー!!
話題の種を探して圭の周囲を見ていると、彼女のカバンからポータブルCDプレイヤーが出ていた。
ーーこれだっ!!
「それ、ポータブルCDプレイヤーだよね?私も使ってるんだけど、まさかこの時代に別の使用者と出会えるとは思えなくて」
「えっ!もしかして君も?!」
彼女は驚きの声を上げると、すぐにこちらに興味を示してきた。
ーーあ、危なかった...
「うん、今日は...というか、実は私自身最近あんまり使ってないんだけど」
自分が持っていない事を誤魔化す為、遠回しに見せられないアピールをする。
「そっかー...でも良いよねポータブルプレイヤー」
「うん、音が違うからね?」
「えへへ、だよね!!」
ーー可愛い、可愛いが過ぎる....!
私が何とか理性を保っていると、圭が申し訳なさそうな顔をして話しかけてきた。
「あのさ、実はこのクラスに別の友達が居るんだけど...」
ーーみーくんの事かな?ならこの場合...
「へー....あ!私の事は全然気にしないで良いから!」
「ありがとう!あ....えと...」
「天音春だよ、んーと....祠堂さんだったかな...?」
「えっ!ごめんね!覚えてくれてたのに」
「ううん、覚えられたのはほんの数人だったからさ」
そう言って会話を切り上げると、圭は既に居なくなった男子達の立っていた場所を悠々と歩き、みーくんの座っている席に向かった。
ーー今日は此処までかな。
私は自席の横に掛けた鞄を持って、それを肩に掛けた。
「おはよう」
「おはよーっ」
教室に入ると同時に挨拶をすると、知り合いでは無い何名かがこちらを見て挨拶を返してくれた。
「おはよっ天音さん!」
「おはよう、祠堂さん」
そして同じく挨拶をしてくれた圭にも同様の事をすると、それと同時にみーくんが近付いてきた。
「いきなりだけどこの子が昨日言ってた、友達の美紀!」
「あ、えっと...よろしくね」
「うん、よろしくね...直樹さん?」
すぐに思い出してと変なので、わざとらしく思い出す演技をした後に彼女の名字を呼ぶ。
とその時、朝のHRを始めるチャイムが教室に鳴り渡った。
「鳴っちゃったからまたね!」
そうして離れて行く2人を横目に見ながら自席に座ると、昨日と同じ先生が教室に入ってきた。
彼女はそのまま教卓の前に立ち、話を始める体勢を作り出した。
「おはようございます、今日はこの後対面式と新入生歓迎会があるので、用意が出来たら体育館へ向かうので教室で待機していてください」
ーー対面式と新入生歓迎会...って事は、胡桃ちゃん達も居るのかな?
「...........以上で朝のHRを終わります...じゃあ挨拶は仮で、浅野くんお願い」
「新入生歓迎会って何やるんだろうねー」
「んー、普通に挨拶とかじゃない?」
ーーいつの間にか机の周りに....
私の机の周りに陣取ったみーくんと圭は、この後行われる行事の話について会話を交わしていた。
私はファイルに入れていたパンフレットを取り出すと、何度かページを行き来し目的のページに指を差した。
「ここ、部活動紹介があるってパンフレットに書いてあったから、多分それをするんじゃない?祠堂さんと直樹さんはどれにするの?」
「圭で良いよ、何か名字にさん付けだと他人行儀だし...あそうだ!春って呼んで良いかな!」
ーーい、いきなり呼び捨てーっ?!...朝だけでもう何人か友達作ってたみたいだし、コミュニケーション能力の化け物だ...
「う、うん!....じゃあ....圭?」
「うんうん、それで部活だっけ?私はまだ決めてないよ、そういう春は?」
ーー確か胡桃ちゃんが陸上部のはずだから、それに入った方が後々楽だと思うけど.....運動出来るかなぁ。
「一応運動部が良いんだけど、あんまり運動得意じゃないんだよね」
「なのに、運動部が良いの?」
どうやら話に違和感を覚えた様で、みーくんが話に入ってくる。
「うん、何があるか分からないから運動は出来た方がいいかなって」
「そうなんだ」
「1組、そろそろ移動だぞー」
「もう時間みたい、行こっか」
「....以上、映像研究部の沢渡と!」
「山神でした!」
ーー沢渡さんと、山神さん....
実写版の前日譚で登場する2人を目にし、ほぼ確信に近かった実写版世界が確定してしまった。
ーーあの2人、何とかなるかな...?
「ねえねえ春」
「ひっ!」
突然耳元で囁かれ、私は思わずその場で飛び跳ねてしまう、ら
「ちょ、ちょっと!」
軽く睨み付けると、圭は笑みを崩さないまま軽く手を合わせた。
「あははは!ごめんごめん、次陸上部だからさ」
少しその意図について考えると、どうやら彼女が私の運動部に入りたいという発言の為に教えてくれたのだと気が付いた。
「ありがとう圭、でも次からは...」
「分かってるって....えへへ」
ーーかわいい。
「私達は陸上部です!」
「あっ、始まったよ」
私は急いで舞台上に目をやると、そこには胡桃ちゃんの姿が。
彼らは自分達の実績と今後の目標を高らかに掲げた後、舞台から降りていった。
「どうだった?」
「ひゃっ!」
「ふふふっ」
またもや耳元で囁いてきた圭に少しムカッとした為、私も彼女の耳に自分の口を近付ける。
「良さげだよ...」
「ッッッッッ?!?!?!」
彼女はボーッと私の行動を見ていたが、その行動の意味を理解したと同時に耳に囁かれ、驚きと共に顔を赤らめた。
「お返し」
「.......」
私は流石に酷い事をしたと思い彼女が怒ってきたら謝ろうと構えていたが、彼女はまだ赤面したまま何処かを呆然と眺めていた。
ーーどうしたんだろう?
自宅に帰り、ベッドへすぐにダイブをする。
ーー春....春かあ....
私の脳内には、黒く美しい髪を靡かせる同級生の姿が浮かんでいた。
まだ知り合って2日も経っていないのに、何故此処まで馴染めているのだろう。
それは単に彼女に一目惚れしたからでは無く、また彼女が何か特別だからでも無い。
ただ彼女と、相性が良かったから。
友達になりたいと思える人だから。
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「良さげだよ...」
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「っ〜〜!!」
あの時の事を思い出してしまい、枕に顔を埋めたまま足をバタバタ乱暴に動かす。
まだ耳には、あの感覚が残っている。
「うぅ〜」
「お帰りなさい、春」
ーキャラクター紹介ー
祠堂圭
巡ヶ丘学院高校の2年生(原作開始時)。
原作ではショッピングモールで騒動に巻き込まれるが、実写版では食堂で彼らに襲われ感染してしまい、恵飛須沢胡桃によって倒される。