目が覚めるとがっこうぐらし!(実写版)の世界だった。   作:RNKI

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実写版はいいぞ。
※こちらは第1話の加筆修正版です、約3000字程加筆しています。
今後も随時修正を行っていくので是非よろしくお願いします。

2025/2/7 3453文字加筆(全8080文字)
2025/2/14 校舎の描写修正(全8128文字)


ぷろろーぐ
第1話 にゅうがく


「入学おめでとう」

聞き馴染みのある声が、私の耳に入ってきた。

何処か見慣れた景色、そして騒がしくも喜びに溢れている人達の声。

同じくその場に立っていた私も、何故かとても嬉しくて。

そしてーー

「     、   」

 

「...あれ?」

何の前触れも無くそれは途切れ、唐突に風景が襲ってくる。

ーー私、何してたんだっけ。

ただ自宅で眠っていた筈、なのに何故かその自信が持てない。

そうしてふと自身の身体に目を向けると、見覚えのある制服を着ている事に気が付いた。

もしかしてまだ夢の中なのではないか、そう考えてしまうくらいには異常な状況。

だって、だってこの服は。

 

巡ヶ丘高校の制服なのだから。

 

 

 

どうやら私は、がっこうぐらし!の世界にやってきてしまったらしい。

しかもそれは、ただのがっこうぐらし!の世界では無く...

「実写版の世界....みたい」

私が漫画やアニメで見慣れていた校舎とは違い、校門からすぐに右へと斜めった道。

校舎を正面にして左側には今まさに運動部の生徒達が使っている校庭があり、その手前には自転車通学の生徒が使用する駐輪場。

右側には恐らく先生や来客用の駐車場があり、既に数台の車が停車している。

そしてその両方に校舎が存在しており、それが南校舎と北校舎なのだと理解した。

やはり原作とは違う学校なのだと実感しながらも、すれ違う生徒の制服や運動着等に確かな名残を感じられる。

ーー....でもこれ、冷静に考えたら結構まずい状況なんじゃ...?

原作とは全く異なる校舎の為地下区画は存在しているのか、そもそもこの世界に抗体に関する設定が存在しているのか。

実写版はアニメと同じく高校を卒業した所で終わってしまうので、先の展開も未知数だ。

ーーというか今日って何年の何月?そもそも由紀ちゃん達って何年生?

尽きない疑問のせいで、気が付けば5分以上校門の前で突っ立っていた。

これ以上此処に立っていても、きっと何も進まないのだろう。

「とりあえず、色々探してみるしかないよね」

私は一つ一つ校舎の配置を記憶しながら校門を通り、校舎内へと入っていく。

すると、生徒達が一箇所に集まって騒いでいるのが見えた。

彼らの目線の先には大きな張り紙があり、それぞれが一喜一憂している。

ーー...もしかして...今日が始業式?だったら私も探さないと!

私もその人混みに割って入り、一つ一つ自分の名前を探していく。

「...あった」

1-Bの欄に載っていた天音春という名前、それが私だった。

 

 

 

「それではまず、自己紹介から始めましょう」

このクラスの担任と思われる先生が、手慣れた様子でHRを進行させていく。

先生は1番から順に呼んでいくと、その彼らに自己紹介をさせていった。

出席番号は名前順ではなく既に決まっているらしく、聞き逃しは許されない様だ。

原作でも実写版でも胡桃ちゃん達は3年生だった為、もし同じクラスに由紀ちゃん、りーさん、胡桃ちゃん、それかチョーカーさんっぽい人が居れば十分に時間はある事になる。

彼女らが3年生の状態でパンデミックが始まる事が確定している今、出来るだけ猶予期間は長い方が有り難い。

ーーちゃんと名前見てくるんだった...

自分の名前を見つけただけで満足してしまった数十分前の私を恨みながら、自己紹介を聞いていく。

「次、祠堂圭さん」

「はい」

「?!」

知っている名前に驚き、つい立ち上がったその彼女に目を向けてしまう。

ーーやばい!!圭だ!!本物の圭だ!!!

推しの祠堂圭が居る、これがどれだけ幸せな事か。

勿論私はがっこうぐらし!に登場する殆どのキャラクターは大好きなのだが、その中でも特に好きなキャラクター、所謂推しのうちの1人が圭である。ちなみにもう1人はみーくんです、幼馴染最高。

思わずこの場で愛の告白をしたくなる気持ちをグッと堪え、私は一度大きく深呼吸をする。

此処に来てから現実味を全く味わっていないが、それでも彼女を見る事によってようやく自分自身に整理が付いた気がした。

圭はイメージ通りの明るさを披露し出身校と好物を話した後、足早に先に戻って行った。

ーー圭がこのクラスって事は、多分みーくんもこのクラスだよね?!勿論原作だとクラス描写なんて殆ど無かったから確定とは言えないけど....やばい、耐えられるかな....

「次、天音春さん」

「っ...はい」

自分の名前が読み上げられた為、立ち上がって教壇の前へ歩いていく。

ーー上手く自己紹介中にみーくんを見つけられれば....!

「天音春です、好きな食べ物は....カ、カレーです」

ーーあそこには....居ない.........あっ!

無理矢理口を動かしながらクラス全体を怪しまれない程度に見回すと、端の席に目的の人物を見つけた。

ーーか、かわイケメン!!!

「これからよろしくお願いします」

私は何とか興奮を表に出さないように我慢して、数秒礼をした後自分の席へと歩みを進める。

着席をして先生の顔を見ると、幸い特に引き延ばしに対しての違和感を持ってはいない様だった。

ーーとりあえずみーくんと圭と同じクラスなのは良かったんだけど、ってことは由紀ちゃん達は2年生なんだよね...

来年の6月4日にパンデミックが発生するので、猶予期間は約1年。

今私の居る世界は、原作との設定の相互関係が分からない実写版世界であり、何処までその知識が通用するか。

ーー1年って長く感じるけど....1年後、私は人だったものを殺さないといけない。

絶対に来てしまう最悪の未来に強い不安感を覚えるが、希望が全く無いという訳ではない、自分で言うのも何だが私はがっこうぐらし!に関しては詳しい方なのだ。

例えば原作である漫画とそのアニメでは大きな違いがある。

大前提としてアニメでは漫画の第5巻までしか描かれておらず、太郎丸を筆頭としたオリジナル要素も数多く存在している。

がしかしストーリーの流れ自体にはほぼ変化が無く、胡桃ちゃんはめぐねえに噛まれるし、ランダルコーポレーションという名前も若干登場するし、大学編で登場する桐子の姿も確認出来る。

そして実写版に関して言えばみーくん達が居たショッピングモールが登場せず、彼らと化した圭も既に倒してしまっているが、それでも大まかなストーリーの流れ自体は変わっていない。

つまり、最終的に原作後の世界が描かれたおたよりまで辿り着ける可能性はしっかりと存在している、という事なのだ。

ーーつまり私が今しなきゃいけないのは、原作と実写版のキャラクターと仲良くなる事.....

コミュニケーション、自信ないなぁ...

「次、高城真帆」

ーーえっ?!

想定外の人物の名前が呼ばれ、私は立ち上がった彼女に視線を向けた。

黒髪ロングヘアの女子生徒。

それは紛う事なき高城真帆本人だった。

彼女は実写版の前日譚、がっこうxxxに登場する人物だ。

ーーこれでこの世界が本当に実写版なのが確定したけど...高城さんか...

がっこうxxxは、パンデミック当日の朝から夜までを描いたドラマである。

メインとして登場する4人の女子生徒の視点で物語は構成されていて、最終的に全員の死を描写して幕を閉じるバッドエンドの作品だ。

思い返せば作中でみーくんと会話していたが、まさか1年生の頃から同じクラスだったとは思わなかった。

という事は、このクラスに原田璃子も居るのだろう。

高城真帆と原田璃子は幼馴染で、共にメインで描かれるキャラクターだ。

2人は仲の良い幼馴染だったが、ある日を境に高城真帆が原田璃子をいじめ始まる。

その後パンデミックが発生し、原田さんを庇って噛まれた高城さんは感染して彼らに。

原田さんはそんな彼女と部屋に閉じ籠り、死んでしまう...

ーー私がいじめを止める...しかないよね。

いつからかは分からないが、この先確実にいじめは発生する。

それを私が助けられれば、何かが変わって彼女達も生き残れるかもしれない。

勿論その場合次の標的は私になるが、世界が滅びるまでの辛抱だと思えば何とかなる筈だ。

そんな決意を固めながら、私は残りの生徒の自己紹介に耳を澄ました。

 

 

 

「起立、気を付け、礼」

身体に自然と染み付いた行動を行うと、放課後という括りの時間になった。

ーーどうしよ、これから....

未来に不安しかない私が頭を抱えて悩んでいると、いつの間にか教室内はまだ知り合っていない、もしくは親しい仲のクラスメイト達の話し声で溢れかえった。

ーーや、やばいっ!乗り遅れた!!

高校生活において1日目は正に勝負の日、特に知り合いが居ない私なんかは少しでも出遅れるだけで即ぼっちになってしまう。

ーーそ、そうだ!圭は...

急いで先程覚えたばかりの彼女の席に目をやると、どうやら彼女自身も周囲に親しい友人が居ない様子で、あたふたと慌ただしく動いている。

どうやらみーくんを探している様だが、彼女の身長よりも高い男子達が周囲に固まっているせいで中々見つけ出せていない様子。

ーーチャンス!

私はその男子達の隙間を縫う様に移動して、無事彼女の前まで到着する事に成功した。

「ね、ねえ!」

「へ?あ、えっと....あはは」

思い切って声を掛けたが、圭はどうやら何の関わりもない生徒にいきなり話し掛けられて困惑している様子だ。

ーー近くで見ると更に可愛いっ!!...じゃなかったどうしよう!話し掛けたは良いものの、話題何も考えてなかったー!!

何とか話題の種を探そうと彼女の周囲を見てみれば、彼女のカバンからポータブルCDプレイヤーが出ている事に気が付いた。

ーーこれだっ!!

「それ、ポータブルCDプレイヤーだよね?私も使ってるんだけど、まさかこの時代に別の使用者と出会えるとは思えなくて」

「えっ!もしかして君も?!」

彼女は打って変わって驚きの声を上げると、すぐにこちらに興味を示してきた。

ーーあ、危なかった...ありがとうポータブルCDプレイヤー、後で買わせていただきます。

「うん、今日は...というか実は最近使ってないんだけど、つい」

自分が持っていない事を誤魔化す為、遠回しに見せられないアピールをする。

「そっかー...でも良いよね〜!この子だけの魅力が沢山あるし!」

「うん、音が違うからね?」

「えへへ、だよね!!」

ーー可愛い、可愛いが過ぎる....!えへへって何?!可愛いの暴力か?!

私が何とか理性を保っていると、圭が申し訳なさそうな顔をして話しかけてきた。

「あのさ、実はこのクラスに別の友達が居るんだけど...」

ーーみーくんの事かな?ならこの場合...

「へー....あ!私の事は全然気にしないで良いから!」

今無理してみーくんと絡んでも、却って逆効果だろう。

引き際を間違えない事が大事...多分。

「ありがとう!あ....えと...」

「天音春だよ、んーと....祠堂さんだったかな...?」

「えっ!ごめんね!覚えててくれてたのに」

「ううん、私も覚えられたのはほんの数人だけだったから」

そう言って会話を切り上げると、圭は既に居なくなった男子達の立っていた場所を悠々と歩き、みーくんの座っている席に向かった。

ーー今日は此処までかな。

私はゆっくりと自席に戻り、机の横に掛けておいた鞄に手を伸ばす。

「....あ」

その瞬間、今の今まで忘れていた最悪の事実を思い出し、一瞬にして冷や汗が額に噴き出した。

 

ーー家、何処??????

 

 

 

眼前に建つ一軒家、私はこれを見つける為にどれ程の労力を割いただろうか。

「み、見つけたぁ!!」

表札は天音、スマホの地図は此処を刺してる、これはもう間違いない。

あの後一通り鞄の中身やスマホを確認したが住所らしきものは出て来ず。

途方に暮れていた私を救ってくれたのは、ポータブルCDプレイヤーを注文しようと開いたネット通販サイトだった。

サイトのUIから中身、というか私のスマホ自体に違和感は無く、以前と全く同じ要領で使う事が出来た。

ただ一つの違和感は、住所だけ。

巡ヶ丘市なんて市は勿論知らないし、住宅街に見覚えなんてものは無い。

ーー確か錦糸町辺りが元ネタだって聞いたけど、行った事無いからなあ...

その細かい認識のズレが少し気持ち悪かったが、それも家に辿り着けた達成感ですぐに吹き飛んでいった。

私は自宅の鍵らしき物を取り出し、鍵穴に差し込んで回転させる。

心地良い音と共にロックが解除され、その扉は簡単に開かれた。

「...ただいま」

靴を脱いで中に入ると、まずは左に階段が見えた。

どうやら2階建てらしく、1階の奥はリビングになっている。

ーー何だろ...

何か、とても大切な事を忘れている気がする。

それは私にとって、絶対にーーー

「いっっ!!!」

突如として頭に激痛が走り、そのまま床に身体を打ち付けた。

「っ.....あ、れ?」

更なる痛みに備えて頭を抑えていたが、その痛みはいつまで経ってもやって来ず。

代わりにやってきたのは、深い悲しみだった。

いつの間にか溢れていた涙がフローリングを濡らしている。

 

 

 

私の両親は、もうこの世に居ない。

 

 

 

この世界に来て2日目の学校、私は下駄箱で新品の上履きに履き替え歩き出した。

廊下で雑談している生徒の横を通り、1-Bの教室に足を踏み入れる。

「おはよう」

「おはよーっ」

一個人に目を合わせず斜め上を向いて挨拶すると、まだ話した事のない何人かがこちらを見て挨拶を返してくれた。

ーー良かった...まだ何とかなりそう。

そのまま自席に向かう途中、私の存在に気付いた祠堂さんが早足で駆け寄ってきた。

「おはよっ天音さん!」

「お、おはよう!祠堂さん」

同じく挨拶をしてくれた祠堂さんにも同様の事をすると彼女は一度私から離れ、遠くからこちらを見ていたみーくんを引っ張ってきた。

「いきなりだけど、この子が昨日言ってた別の友達ね!」

「あ、えっと...よろしく」

「うん、よろしくね...直樹さん?」

すぐに思い出してしまうと変なので、わざとらしく思い出す演技をした後に彼女の名字を呼ぶ。

「おお、やっぱり名前覚えてるんだ!美紀は私の幼馴染なんだ〜!」

「そんなに自慢する事?」

「幼馴染って希少なんだよっ、アピールしなきゃ損だって」

ーーやり取りが尊いです。

「それで美紀、この子が天音春!何とポータブルCDプレイヤー仲間です!」

「最近はあんまり使ってないんだけどね」

ーーポータブルCDプレイヤー、今週末届きます!

そうして直樹さんと互いに自己紹介をしていると、朝のHRの開始を知らせるチャイムが校舎中に鳴り渡った。

「鳴っちゃったからまたね!」

そうして離れて行く2人を横目に見ながら自席に座り、先生が教室に入ってくるのをジッと待つ。

すると数秒足らずで昨日と同じ先生が前扉を開け、そのまま教卓の前に立って話す姿勢を作り出した。

「おはようございます、今日はこの後体育館で対面式と新入生歓迎会があるので、各自用意をしながら教室で待機していてください」

ーー対面式と新入生歓迎会...って事は、胡桃ちゃん達も居るのかな?

「...........以上で朝のHRを終わります...じゃあ挨拶は仮で、浅野くんお願い」

 

 

「新入生歓迎会って何やるんだろうねー」

「んー、普通に挨拶とかじゃない?」

ーーいつの間にか囲まれてる...!

ナチュラルに私の机の周りを陣取った直樹さんと祠堂さんは、この後行われる行事について会話を交わしていた。

私は手早くファイルに閉じていたパンフレットを取り出すと、何度かページを行き来し目的のページに指を差した。

「ここ、部活動紹介があるってパンフレットに載ってるから、多分これをするんじゃないかな?」

「おお!部活紹介!」

「祠堂さんと直樹さんはもうどれにするか決めてるの?」

「圭で良いよ、何か名字にさん付けだと他人行儀だし...あそうだ!私も春って呼んで良いかな!」

ーーいきなり呼び捨てーっ?!...朝の時間だけで何人か友達作ってたみたいだし、ほんとコミュニケーション能力の塊だ...

「うんっ....じゃあ....圭ちゃん?」

「うんうん!それで部活だっけ?私はまだ決めてないよ、そういう春は?」

「っ〜!!」

「え?何?!どうかした?」

「な、何でもないから大丈夫...」

ーー圭ちゃんからの呼び捨て...破壊力が凄い...!

私はその事を悟られない様に何とか心を落ち着かせ、途切れた会話を再開させた。

ーー出来る事なら今後の事も考えて運動部が良いんだけど....運動苦手なんだよなあ。

「えと、部活は一応運動系が良いんだけど、私あんまり運動得意じゃないんだよね」

「なのに運動部が良いの?」

どうやら話に違和感を覚えた様で、みーくんが話に入ってくる。

「うん、何があるか分からないから運動はしといた方がいいかなって」

1年後のパンデミックまでに、最低限彼らと戦える出来るレベルにはなっておきたい。

それに陸上部なら実写版の主人公でもある胡桃ちゃんと関わる事も出来るので、正に一石二鳥だ。

「B組ー、そろそろ移動だぞー!」

廊下から男子生徒の声が聞こえ、そろそろ体育館に向かう事を伝えられる。

「それじゃ私達も行こっか」

 

 

 

 

「....以上、映像研究部の沢渡と!」

「山神でした!」

ーー沢渡さんと、山神さん....

どちらも前日譚に登場するキャラクターで、沢渡さんはメインキャラクターのうちの1人だ。

沢渡さんと山神さんは共に体育館で彼らに襲われ、その際山神さんが囮になって沢渡さんを助けるのだが、結局その数時間後に....

ーーあの2人も何とか助けられたら良いんだけど...

そうは言ったものの簡単にどうにか出来る案は思い浮かばず、目線を体育館の床に下げる。

「ねえねえ春」

「ひっ!」

すると突然耳元で囁かれ、私は思わずその場で飛び跳ねてしまった。

私は慌てて周囲を見渡して、圭ちゃん以外にはバレていない事を確認する。

「ちょ、ちょっと!」

軽く睨み付けると、圭ちゃんは笑みを崩さないまま軽く手を合わせた。

「あははは!ごめんごめん、次陸上部だからさ」

少しその意図について考えると、どうやら彼女が私の運動部に入りたいという発言の為に教えてくれたのだと気が付いた。

「ありがとう圭ちゃん、でも次からは...」

「分かってるって....えへへ」

ーーかわいい、ずるい。

もしかして圭ちゃんは自分の可愛さに気付いているのだろうか?だとしたらとても手強い、勿論ポジティブな意味で。

「私達は陸上部です!」

「あっ、始まったよ」

圭ちゃんに急かされるまま舞台上に目をやると、そこには胡桃ちゃんの姿が。

ーーか、かっこいいっ!!

彼らは自分達の実績と今後の目標を高らかに掲げた後、舞台から降りていった。

「どうだった?」

「ひゃっ!」

またしても耳元で吐息混じりに囁かれ、小さく悲鳴を上げてしまう。

「えへへ」

ーーわざとか?!わざとなのか?!

優位に立っている圭ちゃんに少しムカッとした為、お返しにと私も彼女の耳に自分の口を近付ける。

「良さげだよ...」

「ッッッッッ?!?!?!」

彼女はボーッと私の行動を見ていたが、その行動の意味を理解したと同時に耳に囁かれ、驚きと共に顔を赤らめた。

「お返し、もう辞めてね?」

「.......」

私は流石に酷い事をしたと思い彼女が怒ってきたら謝ろうと構えていたが、圭ちゃんは赤面したまま特に反論はせず何処かを呆然と眺めていた。

ーーどうしたんだろ...?

 

 

 

 

自室の扉を開け、制服のままベッドに倒れ込む。

ーー春....春かあ....

私の脳内には、黒く美しい髪を靡かせる同級生の姿が浮かんでいた。

まだ知り合って2日も経っていないのに、何故此処まで馴染めているのだろう。

それは単に彼女に一目惚れしたからでは無く、また彼女が何か特別だからでも無い。

ただ彼女と、相性が良かったから。

素直に友達になりたいと思えた人だったから。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「良さげだよ...」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「っ〜〜!!」

あの時の事を思い出してしまい、枕に顔を埋めたまま足をバタバタ乱暴に動かす。

衝撃でベッドからクッションが落ちたのが分かったが、それを拾い直す気分ではなかった。

まだ耳には、あの感覚が残っている。

「うぅ〜」

ーー私、耳弱いのかなあ。

 

 

 

「お帰りなさい、春」

 

「....えっ」

 

「えって何よ、そんなに寂しかったの?」

 

 

どうしてりーさんが我が家に居るんですか????




ーキャラクター紹介ー
祠堂圭
巡ヶ丘学院高校の2年生(原作開始時)。
原作ではショッピングモールで騒動に巻き込まれるが、実写版では食堂で彼らに襲われ感染してしまい、その後恵飛須沢胡桃によって倒される。
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