目が覚めるとがっこうぐらし!(実写版)の世界だった。 作:RNKI
高城真帆
巡ヶ丘学院高校の2年生。
ある時を境に原田璃子をいじめるようになった。
騒動発生時原田璃子を庇って感染し、彼らと化してしまう。
ーー落ち着け、落ち着け。
自分にそう言い聞かせながら、少ない時間をフルに使う為頭を回す。
この場において全員を救う事が出来る人間は私だけ、これは不変の事実だ。
「だ、大丈夫?真帆ちゃん...?」
私が遅かったから、高城さんは感染してしまった。
このまま放っておけば、恐らく数十分後には彼らの一員になってしまうだろう。
そしてそれを防ぐにはこの学校の水道水が必要であり、手に入れるにはこの部屋から出なければならない。
しかし、そこで問題になってくるのが残りの3人だ。
このまま私が水道水を求めて部屋を飛び出してしまうと、彼女達に不信感を与える事になる。
多少の不信感を与えてでも高城さんの命を救う方が先だと言われれば勿論それまでだが、救えた後の事を考えると極力避けて通りたい道だ。
ーーまずは...
「高城さん...噛まれたの?」
「えっ?」
私の一言によって、3人が高城さんに駆け寄ってくる。
高城さんは苦しそうにしながらも、何とか上着をまくって右手を露わにした。
「....これって」
ーーやっぱり、噛まれてる...
肉が抉れ、血痕で真っ赤に染まったそれはあまりにも痛々しく、思わず目を逸らしたくなってしまう。
「私のせいだ...」
「何...言ってんのよ...」
息を荒げながら壁に寄り掛かる高城さんは、宙に浮かせていた右手を重力に従わせ落下させる。
そして彼女は、私とシャベルを交互に確認した後に口を開いた。
「....殺してよ」
「な、何言ってんの?」
動揺する窪田先輩をよそに、その言葉は途切れる事を知らない。
「だって...アイツらにはみんな噛まれた跡があったでしょ...!あんな風になるくらいなら...私はっ...」
「そんな事出来るわけ無いでしょ...?!」
「....私は、天音に言ってんのよ」
その憎しみの籠った言葉の意味を、私はしっかりと理解した。
「...3人共、佐倉先生と合流して欲しい」
「な、貴方は?!」
沢渡先輩が両肩を掴み、動揺と共に少しの痛みを与えてくる。
「私は高城さんと残ります、もし大丈夫だったら後から行きますから」
きっとこれは、遺言の様に聞こえてしまうだろう。
「ま、真帆ちゃん!」
「ごめん原田さん、後窪田先輩も」
そのまま言葉を切ると、私は立ち上がり先程施錠された扉の鍵を解除する。
そして3人が状況を把握し切る前に、胡桃先輩に電話を掛けた。
ーードラマだとこの後2人は...でも3人で、胡桃先輩に迎えにきて貰えればなんとか...!
「もしもし?春か!」
「胡桃先輩、今から南校舎の3階に沢渡ゆかり先輩、窪田梢先輩、原田璃子さんの3人が向かいます、迎えに来てもらっても良いですか?」
「ああ、別に構わないけど...春はどうするんだ?」
「私はもう1人の子と後から向かいます、それでは」
通話終了のボタンを押し、スマホを持っていない左手で扉をゆっくりと開けた。
「先輩方、お願いします」
「いや、でも...」
「2人を置いていくなんて...」
やはりと言うべきか、それぞれ難色を示してしまう。
ーーだったら...
私は掛けていたシャベルを持ち上げ、窪田先輩に向けて差し出した。
「危なくなったら使ってください」
これで更に生存率は上がる筈...
「えっ?....あ、でも!!」
「良いからっ!....早く行って....!」
彼女達を3階へと向かわせる最後の一押しをしたのは、高城さんだった。
息を切らして声を出すのも辛そうな彼女からそう言われてしまったら、きっと3人も従わざるおえないだろう。
「....ごめん」
最初に窪田先輩が歩き出し、次に沢渡先輩、そして最後に原田さんがゆっくりと扉を通った。
「....真帆ちゃんの事、お願い...」
「任せて」
その会話を最後に、一つしかない扉を開けたまま3人の足音は遠ざかっていく。
この空間に居るのは2人、高城さんと私だけだ。
「....シャベルより、自分の手で殺したいって訳?」
「違うよ、私は殺さない」
「は....?」
想定外の返答によって見せた鳩が豆鉄砲を食ったような顔は、何故だかとても美人に思えた。
「まだ歩ける?大変だったら肩貸すよ」
「なっ....無駄よ、自分でも分かるから...もうすぐ死ぬって」
「死なせない、私が助けるから」
「だから...!....もういい、肩貸して」
全てを諦めた様に私に全体重を乗せてきた高城さんを少し移動させると、自然と背負うような形になる。
太ももを両手で持ち上げ、開けたままにしておいた扉を通り階段を登っていく。
「....よりにもよって、あんたが最後に話す人になるなんてね...」
「私は高城さんの事好きだよ、美人だし」
「....分かりやすい嘘....ね...あの時の事覚えてるでしょ....」
来た時よりも上に上がっているシャッターを潜り、廊下に出る。
既に太陽は落ちており、月明かりが照らす校舎内に彼らの姿は無い。
「うん...でも、それでも好きだから」
「....」
もう少し歩けば水飲み場が見えてくる、後はそれを彼女に飲ませれば何とかなる筈だ。
自信はない、原作通り水道水が効くのかなんて分からない。
それでも、助けられるかもしれない人が居るのなら。
水飲み場の前で高城さんを降ろすと、彼女は脱力したまま地面に倒れてしまう。
伸びた黒髪が顔に掛かり、それが汗でくっついている様にも見えた。
「水、飲める...?」
「はぁ.....っ.....」
ーーさっきより酷くなってる...
「起き上がれない?」
彼女は声を出す事すら辛いのか、ゆっくりと首を縦に振った。
ーーどうしよう、水を汲める物なんて...
ーーあっ。
その時、頭の中に浮かんだ5文字の言葉。
慌てて高城さんの顔を見ると、冷や汗が出始めており髪もボサボサになっている。
「.....っ」
ーー.....や、やるしかないっ!!
「ごめんね高城さん...口開けてくれる?」
私は蛇口を捻って水を出し、それを出来る限り多く口に含ませた。
そしてそれを彼女の口にーー
口移しという行為をしたのは、勿論人生で初めてだった。
緊急時だからと割り切ったお陰で特に意識せず水を飲ませる事が出来たが、問題はその後で...
こうして時間が経てば経つ程、その実感が湧いてきてしまうのだ。
「.....ごめんね」
背中で静かに寝息を立てている高城さんに謝りつつ、私は来た道を戻っていく。
過剰なくらいに水を飲ませたからか、今はもう苦しそうな声をあげていない。
ーー成功...で良いのかな。
シャッターを潜って階段を降り、例の空き部屋に到着する。
扉の施錠をした私は、背中に乗っている彼女を起こさない様にゆっくりと床に倒し終えると、いつの間にかため息を吐いていた。
「はぁ....」
高城さんを救う事が出来た、多分だけど。
彼女の容態が落ち着いた所を見るに、原作通り学校の水道水はワクチンになり得るらしい。
つまり水道水のお陰で噛まれても助かるし、何より原作通りに事が進む可能性も大きくなったという事でもあって。
少しの安心感と共に、私はゆっくりと腰を下ろした。
問題は山積みだが、決して不可能という訳じゃない。
このまま皆を助けられたら私はーー
「...そうだ、電話しないと」
時間的に考えると、窪田先輩達は既に胡桃先輩と合流しているだろう。
後は3階の制圧状況を聞いて、私と高城さんが合流出来れば...
「もしもし?胡桃先輩?」
「.....春」
「窪田先輩達は大丈夫そうですか?全員結構疲れていると思うので...」
「....ごめん」
「....え?」
「奴ら、想像より数が多くて....迎えに行った時にはもう....」
吐き気が止まらなかった。
「春?春?!」
機械音のみが流れるスマホから耳を離し、あたしは深く息を吐く。
窪田と沢渡は同学年だった事もあり、すぐに気付く事が出来た。
残りのもう1人は制服からして2年生だと分かって、そこで完全に確信してしまった。
彼女達が持っていたであろうシャベルを振り下ろし、奴らとしての生命活動を停止させたのが十数分前の事。
今のあたしは、安全が確保された空き教室で1人立ち尽くしていた。
ーー....ごめんなさい。
もう一度、彼女達に向けて謝罪する。
それが自己満足だと分かっていても、それでもやらずには居られなかった。
春は今どうしているだろう。
もう1人の子、と呼ばれた人物が居るなら大丈夫だと思いたいが、正直想像するだけでも辛くなってくる。
送り出した知人が3人殺されてしまうなんて、そんなのあまりにも酷過ぎる、春が心配でならない。
「場所さえ分かれば...」
あたしがすぐに迎えに行く、抱き締めて慰めて、全てを受け止める。
その意志があっても動けないというのは、何ともどかしい事なのだろうか。
ーー...戻ろう。
めぐねえもそろそろ心配し始める頃だろうし、明日以降の活動方針も定めたい。
何より早く安全圏を確保して、春を守らないと。
『ねえ、いじめとか良くないよ』
誰かの泣き声で目が覚めた。
心地良い眠りから引き摺り出したそれに若干のイライラを感じつつも、私はすぐに自分の置かれている状況を理解し、混乱した。
ーー....私、どうして生きてるの?
慌てて目を開けると、泣き声の主が視界に入った。
天音春、訳の分からない同級生。
そんな彼女が言葉にならない声と共に、流れ尽きたであろう涙で顔を濡らしている。
その状態の人間に対して、掛ける言葉は一つしか無かった。
「...何があったのよ」
私の言葉に気付いたのか、天音は涙を拭いながら駆け足でこちらに近付いてくる。
床に倒れたままの私を覗き込む様な格好で何度か目線を上下させると、そのままーー
「なっ?!」
私に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと何?!あんた何が?!...」
「...さい....ごめんなさい....ごめんなさい....ごめんなさい」
壊れたカセットテープか、それとも何かの呪文か。
ひたすらごめんなさいという言葉を繰り返す天音に対し、不思議と恐怖心は湧かなかった。
「....何があったか、教えて?」
知り合いの死というものは、言伝では実感が湧かないらしい。
いや、もしかすると泣きながらその報告をした天音を見て、冷静になってしまっただけなのかもしれない。
ーー....璃子....
二度と会えないの意味が分かるのは、まだ少し先になりそうだった。
「それで、どうして私が生きてる訳?何したの?」
「....水...飲ませた...」
「....え、それだけ?」
静かに頷いた彼女を見ている限り、本当の事を言っている様だった。
あまりにも単純過ぎるが故、整理のしようがない。
必ずアイツらになると思っていたのに生きていて、しかもそれが水のお陰かもしれないときた。
ーー馬鹿らし...
そう思う事で、明確な答えの無い疑問を強引に切り上げる。
今考えるべきはそんな疑問ではなく、これからの事だ。
天音の話だと屋上に数名の生徒と佐倉先生、あと妹も居るって言ってたっけ。
生徒の内1人はアイツらになった3人を殺したらしく、戦闘面においては頼りになる人物の筈だ。
ーーまあ、合流しない手は無いか。
となると残る問題は...
「ねえ天音」
『やめなよ、可哀想だよ』
私の命の恩人である彼女と、最初に交わした本格的な会話。
あれは確か、璃子の体操着をハサミで切り裂こうとした時。
ハサミを持った私の手を止めて、臆する事なく注意してきた。
いじめは良くない、そんなのは私だって知っている。
そもそもいじめのきっかけすら覚えていないし、やりたい訳でも無かった。
ただ流れが出来て、それに乗っただけ。
だから注意してきた天音に対して中途半端な嫌悪感を抱き、でもそれを行動に移す事は出来ずにいた。
結局の所私が子供で、天音が大人だったというだけの話。
なんて馬鹿で醜くて、面白くない行動だったんだろう。
こんな状態になって漸く、私はスタートラインに立てたらしい。
つい数時間前まで感じていた憎しみや怒りは一切無く、あるのは罪悪感と羞恥心のみ。
ーーだから、私は。
「....ごめんなさい」
「へっ?」
案の定驚いた顔をされるが、言葉は止まらなかった。
「いじめなんて...しちゃいけなかった...だからこれは天音と璃子への謝罪」
璃子はもう居ないし、天音に関してはただの一方的な八つ当たり。
今更、という一言以外何も考えられなかった。
「....ありがとう」
はぁ?と悪態をつく為に顔をあげたが、私は瞬時にその行動を取り消した。
だってこんなに苦しそうで辛そうなのに、精一杯の笑顔でお礼を言ってくるから。
「...後、口移ししちゃってごめんね」
「はぁ?!?!」
ショッピングモールの空き部屋に逃げ込んでから相当の時間が経過した。
圭は途中で出会った子犬と一緒に眠っており、多分数時間は起きてこない筈だ。
春は大丈夫だろうか。
電話を早々に切られてからもうすぐ1時間、未だ春からの連絡は無い。
こちらから掛けようとも思ったが、もし大変な状況だったらと考えると億劫になってしまった。
このモールは春と何度も出掛けた思い出のモール。
最初は確か圭の誕生日プレゼント、その次が新作のホラー映画。
「....はぁ」
どれだけ楽しい記憶を巡らせても、春に対しての寂しさは消えてくれない。
春に会いたい、声が聞きたい。
『大好きだよっ!』
電話が切れる直前に彼女が放った一言は、未だに私の頬を赤く染めてくれる。
ーー私だって....大好き。
圭を除いて親友と呼べる唯一の存在。
最初圭に紹介された時は、また上辺だけの友人になるものだとばかり思っていた。
でも、今はーー
「?!」
突然スマホが振動し、私は急いで画面を確認する。
ーー天音...春!
一直後に通話開始ボタンを押し、そのままスマホを耳元に近付けた。
「美紀ちゃん、大丈夫?」
ずっと聞きたかった声は、幸運な事に私への心配も付けてくれていた。
「うん、春の方は...今何処に隠れてるの?他に人は居る?」
が、それを表に出すよりも先にやるべき事があった為、私はそれに沿って疑問点を一つずつ潰していく。
「今は学校、他に人は...うん、まあ結構居ると思う」
ーー生存者、私達以外にも居るんだ...!
離れた場所であっても、生存者が居るという事実がただ嬉しい。
「美紀ちゃんは...リバーシティ?」
「うん、圭と2人で遊びに来てた」
「えっと...圭ちゃんは?」
「今は寝てる、ずっと顔色悪かったから」
「そっか....流石に遠いよね、学校まで」
「うん、徒歩だと半日以上は掛かるかも」
電車で来た道を徒歩で帰る、やった事は無いが掛かる時間は大体想像が付く。
「多分電波が繋がるのは明日までだと思うんだ」
「....そう、だよね」
途端に襲ってくる孤独感によって、スムーズに相槌を打てなかった。
「....よし!明日私がモーニングコールするよ」
「えっ?」
「大丈夫、絶対また会えるから...だから安心して」
あまりにも実直過ぎる励ましの言葉。
普段なら気恥ずかしくなってしまうそれも、今の私にとっては何者にも変えられない言葉だった。
「...期待してる、寝坊しないでね?」
「そしたら美紀ちゃんも寝坊かぁ...ふふっ、面白いかも」
「じゃあその....切るね」
「うん、また明日....大好きだよ」
ーーッ!!
「...わ、私も....大好きだよ」
「えへへ、ありがとう」
通話が終了しても、私は暫くスマホを耳から離せずにいた。
ーー...もう、眠れないよ...っ
「良くもまあ人の前でいちゃつけるわね」
「いちゃっ?!...そ、そういうのじゃないから!」
ーーお、推しなだけだし!!
「それで?上の先輩とも電話するの?」
「...うーん」
正直、胡桃先輩に途中まで迎えに来て貰うのが1番安全な方法だ。
でもそれは、私達にとって安全な方法であって胡桃先輩にとって安全な方法では無いのだ。
今日だけで恐らくOBの葛城先輩と窪田先輩達を手に掛けていて、しかも唯一の戦闘員として3階の安全確保も行っている筈。
きっと精神的にも肉体的にも相当なダメージを受けているに違いない。
それに今此処で胡桃先輩を危険な目に合わせたら、私は今度こそおかしくなってしまう。
「スマホの電池も気を付けたいし、私達だけで行こう」
「....そうね、モーニングコールの約束取り付けてたし」
「うっ...!」
あの謝罪から優しくなってくれるものだと思っていたが、逆に当たりが強くなった気がする。
「口移し、まだ怒ってるのかな...」
「はぁ?!当たり前でしょ?!」
「あっヤバ声出てた....私は気にしてないのに」
「気にしなさいよ!!」
ーー...ど、どっちなの?!
気難しくなった高城さんを背に、ゆっくりと階段を登っていく。
そうしてシャッターを潜った瞬間、緩んでいた空気が一変ピンと張り詰めた。
「....居ない」
「もう夜遅いから、帰っちゃったんだろうね」
武器が無いこの状況、彼らと接敵してしまったらまず勝てないだろう。
その為出来る限り音を立てず、慎重に行動しなければならないのだ。
最新の注意を払って階段を登り、2階に到着する。
影に隠れて廊下の様子を確認すると、数体彼らの姿が見えた。
ーーやっぱり簡単には行ってくれないか...
「どう?」
「居る、そこまで多くないけど」
南校舎の3階に辿り着くには、この先の渡り廊下を渡る必要がある。
武器さえあれば突破出来るのだが、手ぶらの私達にとってその想像は何の利益も産んでくれない。
さて、どうしよう。
彼らは音と光に反応し、身体能力に関してはやや劣化した程度。
此処で幾ら時間を潰しても、引き寄せない限り退いてはくれなさそうだ。
ーー...引き寄せ...か。
どの道中途半端な行動は出来ない以上、思い切ってやるしかない。
「高城さん、私が全力で向こうの奥まで走るから、隙を見て渡り廊下を渡って3階に上がって欲しい」
「い、いやでもそれじゃあ天音は」
「私陸上部だから、引き寄せて帰ってくるくらいの体力はあるよ」
私が1年以上陸上部で身体を鍛え続けたのは、こういう事態を想定してのものだ。
渡り廊下を渡って南校舎までは全力疾走で30秒弱...奥まで引きつけて引き返すなら1分以上は確実に掛かる。
「....あんたがやるなら、それで良いけど」
「ありがとう、なるべく奥まで引きつけるからゆっくりね?」
「分かってる」
「じゃあ行くね、スマホお願い」
スマホを渡して廊下の中央に立ち止まり、ゆっくりとスタートの体勢を取る。
「....天音、待ってるから」
「うん」
言葉を返した数秒後、私は全力で走り出していた。
あっという間に前方の数体を抜き去って、更に奥を確認する。
ーー...1体だけ、ならっ!
私は走る速度を緩め彼らとの距離をある程度維持しつつ、残りの1体に近付いていく。
廊下の中央に立っていたそれを追い抜かし、あっという間に南校舎の端まで到着した。
「はぁ....よし」
息は切れてない、まだ走れる。
適度に走りを緩めたのが功を奏し、彼らは全てこちらに向かってきていた。
ーーこのまま階段登っても良いんだけど...
正直何処まで制圧しているか分からない以上、下手に彼らを3階に連れて行くのは得策ではない。
向こう側までもう一度走り抜け、彼らを撒いた状態で3階に上がるのがベストだ。
「よし...」
壁際に寄り掛かって体勢を整えている間に彼らとの距離が縮まり、夜で無ければ顔が見える程には近付いてきていた。
ーーあと3歩....2歩.......今っ!!
私は姿勢を比較したまま走り出し、まず最前の1体を交わしてそのまま残りの数体に向かっていく。
偶然にも横一列でこちらに向かってきているのを確認し、私は一瞬走りを緩めた。
彼らは音に敏感、つまりこの場合は。
私はわざと斜めに移動し、大袈裟に足音を当てる。
そうして彼らの視線がこちらに向いたのを確認し、私はもう一度斜めに走り出す。
瞬間的な動きにはやはり対応出来ないようで、まるで時が止まったかの様に彼らの視線を置き去りにする事が出来た。
ーーよし、空いた!
そのまま隙間に滑り込み、一気に階段前までスパートを掛ける。
一度振り返ると彼らは遥か後方で、恐らく追ってはこられない位置まで離れられたらしい。
私は一転して音を立てずに階段を登り、3階へと歩みを進める。
階段の前半部分が終わり、そのまま目線を上へ持っていくと。
そこには、壁際に追い詰められ噛まれる寸前の高城さんの姿があった。
もしかすると、運命は変わらないのかもしれない。
死ぬと定められたキャラクターは、多少の誤差はあれど必ず死んでしまうのではないか。
そんな事を一瞬でも考えてしまった自分を殴りたくなった。
「真帆ちゃんッ!!!」
運命なんて関係ない、私が守ると決めたんだから。
だから、だからどうか。
間に合って...!!
先日がっこうぐらし!のpop up storeに行かせていただきました!
懐かしいcmやキャラソンが流れていて感動しました〜!!