アレクシアとシド Aルート
アレクシア編
「ハァ..........全くなんで私がポチの事なんか........」
アレクシアは憂鬱な顔で手を覆う、口から吐いた息が白い霧となり空に舞い上がる。ここのところはずっとこんな感じだ。 何かが頭の中から離れない、気にしない様に何かを考えて、行動して、そしてふとした瞬間にまた彼の事を考える。
「……………………………………………………」
そしてまた再び目の前に集中する、手をしっかり握りしめ剣を正面に構える。
「フっ!…………ヤァ!」
一心に、アレクシアは剣を振るう。剣を振り抜く音が「しゅん、しゅん」と静かな空気に広がっていく。
「……………そうよ…………煩わしい事なんかに集中を乱したらダメ…………………」
アレクシアは剣に対して真摯である。ただその一点に関しては、自分でも嫌いではない無かった。
「でもやっぱりダメね」
だがそれだけである、「凡人の剣」、そう_____アイリスとアレクシア姉妹の剣を比べる時、必ずと言っていいほど出てくる言葉がそれだ。
「どうすれば、アレのようにできるのかしら…」
彼女にはそれが限界だった。何がダメで何がいいのか自分では何一つ分からないが_____それでも剣を振るうのを止めない。止めてしまえば、遅々とした歩みでさえ止まってしまうから。
「……シャドウ……だったかしら、何者なのかしら…」
汗が肌を流れて地面に墜ちる、空気が水蒸気を含み気付けば辺りはかなり蒸し暑い。陽の光が体を刺し、肌が焼ける。髪が水分を含んでいるおかげか、うっすらとした汗が体から湧き出る。
疑問がふと口から湧き出る、彼は何者なんだろうか?と、しかし考えても情報が無いアレクシアには分からない。
「でもシャドウ……あの剣は……」
そしてあの時の剣を思い出す
______________
カン、カン、カンと。
場違いなほど軽い剣の音が辺りに響く。
それはまさしく稽古の音だった。
漆黒の刃と白刃が描く剣の軌跡。
いつしかその稽古にアレクシアは見入っていた。
漆黒の刃に魅入られて、目が離せないでいた。
なぜなら、それは……。
「凡人の剣……」
アレクシアの剣の、その先にある姿だったから。
幼い頃、アレクシアが考え抜いた。それは才能でも、力でも、速さでもなく、ただ基本の積み重ねによって辿り着ける持たざる者の剣だった。
しかしそれは姉と比べられて、凡人の剣と揶揄されて、アレクシアは道を見失った。
それでも、捨て切れなかった。
その凡人の剣が今、ゼノン・グリフィという天才を圧倒していた。
「凄い……」
アレクシアはこの剣が好きだ。
剣を見れば、その人の歩んできた道が見える。
この剣はひたむきに、まっすぐに、積み重ねた剣だ。
もしかしたら、姉も。自分と同じ思いを抱いたのだろうか。
「姉様……」
いつかの姉の言葉。
その意味がようやく分かった気がした。
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「そうだわ……私は、…………私は間違ってなんかいなかった」
シャドウの剣は私と同じ基礎に忠実な_______ただ基本の積み重ねによって辿り着ける持たざる者の剣だった。
だが結局のところ同じなだけ、力でも、速さでもシャドウと同じ領域には未だに達していない。
「………でもどうすれば………そうすればいいのかしら…………」
その時、音がするのが聞こえた。
「誰かしら?」
気になって耳を傾ける。どうやら足音がこちらに向かっているようだ。
「ふぅ………あっついなぁ、ん?……アレクシア?……こんな所で剣を持って何してるのさ?」
足音はどうやらシドのものだったらしく、偶然にもこっちに来たのを見ただけのようだ。
「いや、別に.....ただの剣の稽古をしてただけよ」
疑問をぶつけて来たシドに対してアレクシアはぶっきら棒に言葉を返す。だがシドは気にせずにいた。
「ふぅーん……こんな所で?」
「こんな所でよ」
「そうなんだ」
「そうよ」
「何よ、何かあるならハッキリといいなさいよ」
向きになって言い返すアレクシアと心底どうでもよさそうに話シド、まるで科学的に混ざり合うことがない水と油のように、異なるもの同士の相性が合わず、反発してしまう。
だがこのアレクシアはおかしい
「いんや、何もないよ?ただ攫われたばかりだったのに体を動かしても大丈夫かなと思ってさ」
「…………………………」
「どうしたの?……」
(急に何を言うのよ!こいつは!そんな.....心配する言葉を投げかけるなんて.....)
※そうただ照れているだけである
極く微妙な、神経的な不調和が、だんだんと周りにはびこりはじめた。
「おーい?」
「ありがとう……」
「へ?」
「だからありがとう!って言ってんのよ!、仮にも私がいないせいで容疑者になってたみたいだし迷惑かけたわね____それと」
「…………………………心配してくれてありがとう」
顔を真っ赤にしてアレクシアはシドにお礼を告げる、数日前とはえらい違いである。
あたりの空気が静かに乾いたように明るい
そしてシドは驚いたように顔を上げて目を見開く
「なんか悪いものでも食べた?」
心配になったシドはアレクシアに尋ねる。
「ハァ!?何でそうなるのよ!こっちがわざわざお礼を言ってみれば!それはないでしょ!」
それに対してアレクシアは馬鹿にされたと思って感情を爆発させる。
「いや、だってさ.....」
シドは躊躇いつつも言葉を投げかける。
「あの時の別れてからてっきり僕は嫌われているかと思ったんだよね」
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「残念とは思わないよ。僕は君の剣が好きだし」
そう言ったシドはアレクシアを怒らせてしまったのだ。
「僕はアレクシアの剣が好きだよ」
しばらく沈黙して、アレクシアが応える。
「その言葉に何の意味があるの」
「何も。ただ、あるとすれば、自分が好きなものを他人に否定されると腹が立つ。そんな気持ち」
「そう」
アレクシアは踵を返し、
「今日は一人で帰る」
歩いていった。
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(そう言えばそうだったわ……)
あれからシャドウの剣について考えていたアレクシアはすっかりその事を忘れていたのだ。
数日前までは、アレクシアはシドの事を別に好きでも無かった、嫌いでも無かったが。
だが、あの時の言葉がただ実直に声を____気持ちを伝えてくれたシドが___その声が頭に残り続けていた
「それは……」
躊躇い、嬉しさ、不安、色んな感情が頭を覆いつくす。アレクシアは言葉が出なかった。
「で?……急にどうしたの?そんな事言って」
疑問に思ったシドがアレクシアに尋ねる、急に優しくなったのはシドからしてみればやはり気になったのだろう
「いえ.....少し大変な事があってたのよ.....それで私は私の剣を嫌いだったのけれど、その出来事があって以来から自分の剣が嫌いではなくなったわ」
「ふーん、なるほど」
シドはどうでもよさそうに返事をする。
「ま、あんたにはどうでもいい話だわ____でも、私にとって大事な事、あの時剣の頂きとも言える物を目にしたのよそれも「凡人の剣」の先にある場所を」
懐かしそうにアレクシアは目を閉じて思い出す。
「それって誘拐された時だよね?」
「ええ、そうよ」
「へーよかったねー、じゃ、僕は気になる事も無くなったから帰るとするよ」
シドはアレクシアにそうポツリ言うと、体を後ろに振り返り歩き出してしまう。
「待ちなさい」
「グぇ!」
だがアレクシアに首をつかまれてしまい、カエルがつぶされたように声が出る。
「少し話があるわ」
真剣な表情で彼女は目を向ける。
「僕には関係ないんだけど……」
シドは鬱陶しそうに彼女にため息をつく。それを聞いたアレクシアは
「今帰ったらお友達にあることない事話そうかしら?それとも……貴方が私を振った事を大げさにしてクラス中に話題にしましょうか?」
笑顔でやくざも真っ青な脅しをかける、自分の話をキカナイトお前はこの先、お先に真っ暗とでも言いたげにシドへと笑う。
「グ……流石アレクシアおうにょ、汚い」
「何か言ったかしら?」
「何も?」
「そう、ならいいわ」
銀発の髪がキラリと光、シドの目に移る。相変わらず黙っておれば美人なんだけどなと思いながらもシドは沈黙する。
ここでいらないこと言って暴力を食らうのはごめんだ。
そして考えをまとめたのかアレクシアが髪を指でクルクルと弄ってたのを止めてこちらに顔を向ける。
「裏のありそうな事件だけど、表面上は解決ということになったわ。でも姉様は専門の調査部隊を立ち上げる準備をしているし、私も協力するつもりだからまだこれからね」
少女が言った。
「ほどほどにね」
少年が言った。
「というわけであなたの容疑は晴れたわ。迷惑かけたわね」
「それはいいんだけどさ」
2人の間に風が通り抜けた。少女のスカートが揺れて、白い脚があらわになる。
「クソ暑いから中に入らない?」
天気のいい本日は、真昼の太陽が燦々と照りつけてくる。 二人の足から濃い影が伸びて、遠くからはもう夏虫の声が聞こえてくる。
「待って。二点、言っておきたい事があって」
「ここで?」
「ここで」
少女は目を細めて青い空を見上げた。
「一点目、一応感謝の言葉を言っておこうと思って。前に、私の剣が好きって言ってくれたでしょ。遅くなったけど、ありがとう」
「いいよ、別に」
「ようやく自分の剣が好きになれたの。あなたのおかげじゃないけれど」
「一言余計だとは思わない?」
「事実だから」
2人の視線がぶつかった。先に視線を外したのは少年だった。
「まぁでも、好きになれたんならよかったんじゃない」
「そうね、よかったわ」
少女は微笑んだ。
「それで二点目は?」
「これまで付き合っているふりをしてきた訳だけど、今回の事件でゼノンが死んでくれたから」
「僕はようやくお役御免って訳だ」
「そこで一つ提案なんだけれど」
少女はどこか言い辛そうに言葉を探す。
「一旦終わる訳だけど……」
「もし、あなたさえ良ければ……」
少女の赤い瞳がキョロキョロする。
「もう少しこの関係を続けてみないかなって」
少しだけ、小さな声で少女は言った。
少年は爽やかに微笑んだ。
「お断りだ」
中指を突き立てて、親指を下に向けて少年は言った。
少女がスラリと剣を抜いた。
「フン!」
少女は剣を横に向けて一線、丁度シドの顔ギリギリに止めた。薄っすら皮膚が切れて血が流れる。
「ア……」
少年は驚いたふりをしつつ、少女に尋ねる。
「あ……アレクシア王女?……これは流石に危ないと思うんだけど……」
少女は笑顔で返す。
「あら……でもここで断るなら別に切っても構わないでしょ?」
ニッコリと顔は笑っているけど目は笑っていない。どうやら完全に怒ってしまったようだ。
「大丈夫、骨が2,3本折れてしまうだけよ……死にはしないわ」
「それは大丈夫じゃないやつだ、僕は知っている…」
「ウフフ……私は欲しいと決めたものは必ず手に入れるのよ何があっても」
「それに私は気が長いのよ……大丈夫……ハイというまで待つわ」
「うわぁー怖いなぁー」
棒読みで演技するシド。
「はあ……」
ため息をついたアレクシアは、剣を下げて弱弱しい笑顔で前を向いた。
「ええ……分かっているわ……私が誘拐されたせいで貴方が迷惑をかけられた事が嫌な事も」
「ただ君とこれ以上付き合いが嫌なだけ」
「そして騎士団に拷問された事もそれに拍車をかけたことも」
「いやアレクシアと付き合いたくないだけ」
「それに貴方は私の剣を好きと言ってくれた、だから恩返しをしたくてね?」
「話聞いてる?」
「ごちゃごちゃ五月蠅いわね」
アレクシアはそう言って懐から金貨をバラまいた。
「拾いなさい」
1枚10万ゼニー、それが少なくとも30枚はある。
「へぇ、僕が金でなびく男に見える?」
僕は地べたに這いつくばって金貨を1枚1枚丁寧に拾いながら言った。
「見えるわね」
「その通りだ」
31枚、32枚、33枚……あ、まだ1枚あるぞ!
最後の1枚に手を伸ばした僕の目の前で、アレクシアのローファーがその金貨を踏みつけた。
僕はアレクシアを見上げた。アレクシアの赤い瞳が僕を見下ろした。プリーツスカートの中身が見えた。
「私と付き合ってくれるわよね?」
性格の悪さが滲み出た微笑みでアレクシアが言う。
「もちろんですとも」
僕は満面の笑みで答える。
「いい子ねシド」
アレクシアは僕の頭をポンポンと撫でて、短いスカートを靡かせ去っていった。
反応良ければまた続きを書こうと思います。
Cルート編は誰がいい?
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7陰ルート
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ナンバーズルート
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王族ルート(ローズorアイリス)